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(感)答える時に発する声。おう。源氏、行幸「こなたにと召せば、おといとけざやかに聞えて出て来たり」
おあんものがたり[おあん物語] (書名)関が原の合戦の時、美濃の大垣の城にあって実戦を見聞した物語。冒頭に「おあんさま云々」と書き出したので、この名がある。「おあん」とは「御庵」すなわち「尼」の敬称である。この作者は山田去暦という人の女であるが、その伝も、この本の成立年代も未詳。天保八年(1837)刊。
おいかがまる[老いかがまる] (動、四)老いて腰が曲がる。源氏、若紫「召しにつかはしたるに、おいかがまりて、室の外にもまかんでずと申したれば」
おいかくる[老い隠る] (動、下二)年の老いたところが見えなくなる。古今集、一、春上「うぐひすの笠に縫ふてふ梅の花折りてかざさむ老い隠るやと」
おいかけ[老懸・緌] (名)昔、武官が巻纓の冠をかむる時、その左右両耳の上につけた装飾。
おいがる[老い嗄る] (動、下二)老いて声がかれる。源氏、総角「だらに読む、老い嗄れにたれど」
おいがれ[老嗄] (名)老いて声のかれること。前項の動詞の連用形から転じた名詞。
おいさぶ[老いさぶ] (動、上二)老いこむ。衰える。新六帖、六「野辺見れば花のさかりの過ぎはてて老いさびにける草の霜かな」
おいさらぼふオイサラボウ[老いさらぼふ] (動、四)おいぼれる。老いて衰える。徒然草、百五十二段「むくいぬのあさましく老いさらぼひて、毛はげたるを引かせて」
おいすげ[老いすげ] (名)老いておとろえること。曾我物語、一「むなしく帰り候はば、若き者の老いすげしたるに似て候ふ」
おいそのもり[老蘇の森] (地名)近江の国、滋賀県蒲生郡にある奥石(おいそ)の社の森。新古今、三、夏「ほととぎすなほひと声は思ひ出よおいその森の夜半の昔を 民部卿範光」太平記、二、俊基朝臣再関東下向事「物を思へば夜の間にも、老蘇の森の下草に、駒をとどめてかへりみる」
おいのそこ[老いの底] (名)老いの極限。老衰。和漢朗詠集、冬「歳月は老いの底よりかへりがたし 良春道」
おいへオイエ[御家] (名)(1)「家」の敬称。(2)「人の妻」の敬称。奥方。内室。東海道中膝栗毛、六、下「御家は、どうぢやいな」
おいへものオイエ…[御家物] (名)(1)大名などの家で寵臣や愛妾などの起した騒動を材料とした浄瑠璃・歌舞伎狂言などの総称。伊達騒動・黒田騒動の類。(2)俳優などの得意の芸としてその家に世襲するもの。市川家の荒事、尾上家の怪談物の類。
おいへりうオイエリユウ[御家流] (名)書法の名。伏見天皇の皇子青蓮院尊円親王の創設されたもの。その御座所からいう。
おいほく[老い惚く] ( 動、下二)老いぼれる。落窪物語、一「老いほけて、もののおぼえぬままにのたまへば」
老いほる[老い惚る] (動、下二)老いぼれる。顕宗記、二年九月「置き目(おきめ)、老いくるしみて還らむとまうして曰く、気力(いきちから)衰へすぎ、老いほれうつけつかれたり」
おいらかなり (形動、ナリ)おだやかである。おおようである。源氏、帚木「いとかからで、おいらかならましかばと思ひつつ」竹取「御子たち・上達部聞きておいらかにあたりよりだになありきそとやはのたまはぬといひて、うんじて帰りぬ」
おいらく[老いらく] (名)老いてゆくこと。古今集、七、賀「さくら花散りかひ曇れ老いらくの来ねといふなる道まがふがに 在原業平」=さくらの花よ、かなたこなたに散ってぼかしてくれ、老境の来るという道のまぎれるために。
おうご[擁護] (名)神仏のまもり。国姓爺合戦「あとにおうごの神風や、千波・万波を押し切つて、時も違へず親子の舟もろこしの地にも着きにけり」(あとに「逢ふ期」と「擁護」とをかけている)
おうと[首] (名)「おびと」に同じ。うけらが花、七「沖つ鳥賀茂のうし、空かぞふ大伴のぬし、おうとなる、いみきなる」
おうな[媼・嫗・老女] (名)「おみな」の音便。年老いた女。老婆。竹取、「妻(め)のおうなにあづけて養はす」(「をうな」は「若い女」である)
おうなし[奥なし] (形、ク)「おくなし」の音便。「あうなし」は「奥なし」の字音。「あうなし」に同じ。)
おうよる[奥寄る] (動、四)「老い寄る」の音転。年がよる。としよりになる。蜻蛉日記「ことに今めかしうもあらぬ心地に、よはひなどもおうより」
おおおお (感)はやしことば。笑う声か。神楽歌、阿知女作法「あぢめ、おおおお」
おかめ (名)「おたふく」のこと。「あめのうずめのみこと」の顔から来た語か。⇒ひよつとこ。
おき[熾・燠] (名)(1)燃えてさかっている火。宇津保、嵯峨院「おきの上にゐる心地して」(2)薪などが燃え果てて炤が出ずに炭火のようになったもの。謡曲、草薙「数万のえびすども、皆焼け死にて、その跡のおきは積もつて山の如し」
おきぐち[置口] (名)箱の縁や婦人の装飾の袖口、裳の腰などを金・銀・鍚などで飾ること。また、その縁。宇津保、菊の宴「蒔絵の置口の箱一具(ひとよろひ)に、綾絹たたみ入れ」枕草子、九「人の家につきづきしき物……女は鏡・硯こそ心のほども見ゆるなめれ。置口のはざめに塵ゐなど打ち捨てさるさまこよなしかし」(「こよなし」は「この上なく、わるい」)
おきくものがたり[お菊物語] (書名)元和元年の大阪落城のありさまをしるしたもの。お菊は田中意徳という者の祖母で、豊臣氏に仕えていた者。天保八年(1837)に「おあん物語」と合して刊行。
おきそ[息嘯] (名)ためいきをつくこと。嘆くこと。万葉、[5-799]「大野山霧立ち渡る我が嘆くおきその風に霧立ち渡る 山上憶良」琴後集、三、秋、七夕別「別れ惜しむおきその風に霧立たばせめてやすらへ天の河舟」(「沖そ」という説は非)
おきたらはすオキタラワス[置き足らはす] (動、四)十分に置く。祝詞、六月晦大祓「千座(ちくら)の置座(おきくら)に置き足らはして」
おきつ[興津] (地名)(1)駿河の国、静岡県庵原郡清見潟に臨む地。太平記、二、俊基朝臣再関東下向事「向かひはいづこ三穂が崎、おきつ・かんばら打ち過ぎて」(2)和泉の国、大阪府泉北郡の大津の海浜の地。古今集、十七、雑上「君を思ひおきつの浜に鳴くたづの尋ね来ればぞありとだに聞く」
おきつ[掟つ] (動。下二)(1)命ずる。さしずする。徒然草、百九段「高名の木のぼりといひし男、人を掟てて、高き木にのぼせて梢を伐らせしに」(2)定める。源氏、桐壺「この御子生まれ給ひてのちは、いと心ことにおもほしおきてたれば」(3)処置する。造る。源氏、浮舟「不断の三昧堂など、いとたふとくおきてられたり」
おきつかがみ[奥津鏡・沖つ鏡] (名)あめのひぼこの持って来た「八種の宝」の一。古事記、中「……また、奥津鏡・辺津鏡、あはせて八種(やくざ)なり」(航路の安全を祈るために船中に祭る霊徳の鏡であろう)
おきつすたべ[奥津棄戸] (名)家の奥の方の臥床。一説、おくつきの柩の意。神代紀、上「一書に曰く…柀(まき)は、うつしき青人草の奥津棄戸にもち臥さむ具になすべし」
おきつとり[沖つ鳥] (枕詞)沖に住む鳥の意から「かも」「あぢ」などの水鳥に、また、水鳥が胸を見せながらおよぐので「胸」に冠する。古事記、上「おきつとり鴨着(ど)く島に」万葉、[6-928]「おしてる…沖つ鳥あぢふの原に」古事記、上「おきつとり胸(むな)見るとき
おきつなみ[沖つ波] (枕詞)沖の波は折り重なり、しきり、たわみ、荒れ、高くたつものであるから「しく」「とをむ」「あれ」「たかし」「たつ」などに冠する。万葉、[11-2596]「慰むる心はなしにおきつなみしきてのみやも恋ひわたりなむ」同、[19-4220]「わたつみの……沖つ波、とをむ眉引(まよびき)」以下、例略。
おきつみとし[奥津御年] (名)「稲」の異称。稲は穀物のうち、最もおそくみのるからいう。祝詞、祈念祭「取り作らむ奥津御年を、八束穂のいかし穂に」
おきつもの[沖つ藻の] (枕詞)沖の藻は水中に隠れているので「隠る」の古語「なばり」に、また、波に漂えなびくので「なびく」に冠する。万葉、[1-43]「わが背子はいづく行くらむ沖つ藻のなばりの山をけふか越ゆらむ」(当麻真人麻呂の妻が旅行中の夫をしのんで詠んだもの。「なばり」は伊賀にある地)同、[2-207]「あまとぶや…おきつものなびしき妹は」
おきて[掟] (名)(1)定め。規定。法制。(2)処置。計画。経営。源氏、少女「水のおもむき、山のおきてをおらためて…つくらせ給へり」(3)習慣。しきたり。源氏、薄雲「ただ、もとの御おきてのままにおほやけにつかうまつりて」(4)心ばえ。きだて。宇津保、俊蔭「この人、年を数ふるに十二ばかりにこそなるらめ。大きさ・おきてこそかしこくとも、人の世に経るありさま限りあるものなれば」
おきな[翁] (名)(1)年老いた男。老人。翁(をう)。古事記、上「おきなとおみなと二人ありて、をとめを中にすゑて泣くなり」(2)能楽で、演技のはじめに式典として、天下太平・五穀豊穣を祝い祈るために演ぜられる舞技。太夫・千歳・三番奥の三役を主とする。
おきなさぶ[翁さぶ] (動、上二)老人らしくなる。老人ぶる。伊勢物語「おきなさび人なとがめそ狩衣けふばかりとぞたづも鳴くなる」
おきなぶ[翁ぶ] (動、上二)老人らしくなる。老人ぶる。源氏、常夏「何となく翁びたる心地して」
おぎのり[賖] (名)品物をかけで買うこと。土佐日記「よんべの菜を、そらごとをして、おぎのりわざをして、銭ももてき来ず」
おぎのる[賖る] (動、四)品物をかけで買う。
おきのゐで…イデ[沖の井出] (地名)「都島」とともに陸奥国(みちのく)にあったという地。所在ははっきりしないが、小野小町がある男の都へ行くのを惜しんで歌った歌というから、今の秋田県の地であろう。「伊勢物語、百十五段」参照。古今集、十、物部「おきのゐて身をやくよりも悲しきはみやこしまべの別れなりけり 小野小町」
おきび[熾火] (名)さかんいおきている火。落窪物語「いはでおきびに身はこがれまし」=(そうは)言わないで、(やがて)熾火に身はこがれることでありましょう。
おきへ[沖辺] (名)沖の方。沖べ。古事記、下「おきへには、をぶねつららく、くろざやの、まさづこわぎも、くにへくだらす」=沖の方には、小舟がたくさん連なっている。くろざやのまさづ子である、我が恋人は国へ下って行くよ。(「くろざや」「まさづこ」は、まだ的確な解がない)
おきまどはすオキマドワス[置き惑はす] (動、四)(1)他の物とまぎれるように置く。古今集、五、秋下「心あてに折らばや折らむ初霜の置き惑はせる白菊の花 凡河内躬恒」(2)置き忘れる。源氏、夕顔「かぎをおきまどはし侍りて、いとふびんなるわざなりや」
おきみ[正親] (名)「おほきみづかさ」の略訛。」
おきめ[置女] (人名)近江の国の身分の低い老女。顕宗・仁賢両帝の御父押磐(おしは)天皇の御遺骸を埋めた所を知っていて、顕宗天皇に告げ奉り、その功により特に優遇され、皇居の傍に邸宅を賜わり、自由に宮殿へ出入を許され、鐸(ぬて)すなわち大きな鈴を出入口にかけておいて、参内の際には合図にそれを鳴らしたという。古事記、下「あさぢはら、をだにをすぎて、ももづたふ、ぬてゆらくも、おきめくらしも」=おお、鈴がゆれて鳴っている、合図の鈴が。どうやら置女老女が来るらしい、浅芽原の小谷を過ぎてはるばる都へのぼるようなさまをして。(顕宗帝の御詠)
おきめおみな[置目老媼](人名)前項を見よ。
おぎろなし (形、ク)「おぎろ」は奥の広い意、「なし」は甚だしい意。広大である。万葉、[20-4360]「すめろぎの…あま小舟、はららに浮きて、大御食(おほみけ)に、仕へ奉ると、をちこちに、いさり釣りけり、幾何(そきだく)も、おぎろなきかも 大伴家持」
おく[措く] (動、四)除く。とりのける。古事記、上「たけみなかたの神まうしつらく、かしこし、我(あ)をな殺したまひそ。このところをおきては、あだし処に行かじ」
おくか[奥処] (名)「か」は「ありか」の「か」などのように「処」の義。奥まった処。行き到り果てる処。万葉、[17-3897]「大海の奥処も知らず行くわれをいつ来まさむ問ひし児らはも」
おくがき[奥書] (名)書物などの巻末に、その書の伝来・由来などをしるした文。あとがき。十六夜日記「代代に書きおかれける歌の草紙どもの奥書などして」
おくかなし[奥処なし] (形、ク)行きつく処がわからない。果てがない。万葉、[12-3150]「霞立つ春の長日(ながび)を奥処なく知らぬ山道を恋ひつつか来む」
おくかびの[置く蚊火の] (枕詞)「置く蚊火」は「蚊遣火」。蚊遣火は表面は燃えないで下へこがれてくすびって行くから「下こがる」に冠する。万葉、[11-2649]「あしびきの山田守(も)る翁(おぢ)が置く蚊火の下焦れのみ我が恋ひをらく」
おくしもの[置く霜の] (枕詞)霜は暁方に置くから「暁起き」に、降るということから「振分髪」に、また、白いことから「蓑白衣」に冠する。後撰集、十三、恋五「置く霜の暁起きを思はずば」新葉集、十八「置く霜の振分髪はきのふと思ふに」新葉集、五「置く霜の蓑白ごろも今や打つらむ」
おくじやうるり…ジョウ…[奥浄瑠璃] (名)昔、奥羽地方で行われた浄瑠璃。奥州浄瑠璃。仙台浄瑠璃。「義経記」などを語ったものらしい。奥の細道「その夜、めくら法師の琵琶を鳴らして、奥上るりといふものを語る」
おくす[臆す] (動、サ変)恐れる。おじける。気おくれがする。源氏、少女「少しもおくせず、読みはてたまひつ」
おくす[遣す] (動、四)よこす。くす。狂言、萩大名「のこぎりおくせえ、引き切つて心(しん)に立てうに」
おくだかし[臆高し] (形、ク)臆病心が強い。ひどく臆病だ。源氏、少女「学生十人を召す。式部のつかさの試み題をなずらえて御題賜ふ…おくだかきものどもは物もおぼえずつながぬ舟に乗りて他にはなれ出で、いとすべなげなり」
おくつき[奥津城] (名)墓。墓所。万葉、[3-474]「昔こそよそにも見しかわぎもこが奥津城と思へば愛(は)しき佐保山」
おくつきどころ[奥津城処] (名)前項に同じ。万葉、[3-432]「われも見つ人にも告げむ葛飾の真間の手児名がおくつきどころ 山部赤人」
おくつゆの[置く露の] (枕詞)「白く」「消ゆ」に冠する。万葉、[10-2255]「わが庭の秋萩の上に置く露のいちじろくしもわれ恋ひめやも」同、[10-2258]「秋萩の柀もとををに置く露の消(け)かもしなまし恋ひつつあらずは」
おくどこ[奥床] (名)家の奥の方にある寝床。万葉、[13-3312]「こもりくの……奥床に母はねたり、外床(とどこ)に父はねたり、起き立たば母知りぬべし、出で行かば父知りぬべし」
おくのほそみち[奥の細道] (地名)仙台から岩切を経て塩竉や松島へ通ずる道であろう。奥の細道「かの画図にまかせてたどり行けば、奥の細道の山際に十符(とふ)の菅あり」
おくのほそみち[奥の細道] (書名)松雄芭蕉の書いた俳文的紀行書。芭蕉が元禄二年(1689)三月二十七日、江戸深川の芭蕉庵を立ち、門人河合曾良と共に奥羽を行脚し、北陸を経て美濃の大垣へ着くまでの旅行記。その文は和漢混淆体の簡潔明快な調子に加えて俳味のあふれたスタイルで、後世ひろく読まれた。書名は同書中の前項の地名によるものと思われる。元禄十五年(1702)初刊。明和七年(1770)には素龍の筆蹟の、いわゆる桝形本を蝶夢が出版した。
おくやまの[奥山の] (枕詞)奥山は山の深いことから「ふかき」に、また、真木(檜)は奥山に生ずるので「真木」に冠する。古今集、十一、恋一「飛ぶ鳥の声もきこえぬ奥山のふかき心を人は知らなむ」万葉、[11-2616]「奥山の真木の板戸を音速み妹があたりの霜の上に寝ぬ」
おくりな[贈り名・諡] (名)人の死後に、その人の行状などによって、贈る名。
おくりび[送り火] (名)陰暦七月十六日の夕方、祖先の霊を送るために麻幹(をがら)を焚く火。世間胸算用、一「行く先の七月霊魂の送り火の時、蓮の葉にて包みて極楽へとつて帰るべし」
おくる[後る・遅る] (動、下二)(1)能力がおくれている。遅鈍である。落窪物語「ものうち言ひたるけはひ、ほれぼれしくおくれたれば」(「ほれぼれし」は「ぼうっとしている」)(2)劣る。枕草子、三「梨の花…あいぎやうおくれたる人の顔など見ては、たとひにいふも」(3)気おくれがする。臆する。狂言、文山だち「ああまづ待て待て、なんとおくれたか」(4)おくれて生えた毛髪が、他よりも短い。源氏、葵「ひたひ髪は少し短くぞあめるを、むげにおくれたるすぢのなきや」(5)その他、多くの意味があるが、だいたい現代語と同じ内容である。
おくれがけ[後れ駈け] (名)おくればせ。
おくろど[御黒戸] (名)女房詞で「宮中の御仏壇」の称。
おけ[於介] (感)はやしことば。おかしいという意味の声か。神楽歌、阿知女作法「本。あぢめ、おおおお。末、おけ、あぢめ、おおおお」(催馬楽では「おけや」とはやす)
おここし (形、シク)沈着で毅然としている。綏靖紀、元年前「みかたち、すぐれてたたはし。武きわざ人に過ぎたまふ。面してみこころざしおここし」
おこしごめ[興米・粔籹] (名)(1)もちごめを蒸して干したものを炒ったもの。(2)上述のものに砂糖・飴などを入れて固めた菓子。おこし。古今著聞集、十八、飲食「おこしごめをとらせ給ひて、まゐるよしして、御口のほどにあてて」
おこす (動、下二)よこす。竹取「文をかきてやれども、返りごともせず。わび歌など書きておこすれども、かひなしと思へど」大鏡、二、左大臣時平「こち吹かばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ 菅原道真」⇒こち。
おこたり[怠り] (名)(1)なまけること。(2)過失。あやまち。源氏、須磨「ただ、みづからのおこたりになむ侍る」(3)罪をわびること。謝罪。曾我物語、三「この事かなへぬ怠りに」武蔵の国二十四郡をたてまつらむ」(4)病勢の少し衰えること。源氏、夕顔「いと重くわずらひ給へれど、ことなるなごり残らず、おこたりざまに見え給ふ」
おこたりぶみ[怠り文] (名)わび状。あやまり証文。宇治拾遣、十一「かやうに名簿に怠り文を添へて出す。すでに来たれるなり。されば、あながちに責むべきにあらずとて」
おこたる[怠る] (動、四)(1)なまける。(2)心がゆるむ。油断する。源氏、帚木「君はおぼし怠る時の間なく、心苦しくも恋ひしくもおぼし出づ」(3)病気が快方に向かう。宇津保、忠こそ「山山・寺寺に、おこたり給ふべきことを祈らせ給ふに、験なし」源氏、若紫「御むかへの人人まゐりて、おこたり給へるよろこびきこえ、うちよりも御つかひあり」
おこづくオコズク (動、四)(1)得意になり、調子づいて話す。古今著聞集、十六「仲正がことを、あざけりおこづくやうに言ひければ(2)りきむ。緊張する。
おこづるオコズル (動、四)「をこづる」の訛。⇒をこづる。
おこと (代)親愛の意をこめた対称代名詞。おんみ。そなた。謡曲、鉢の木「御志はありがたう候へども、自然またおこと世に出で給はむ時の御慰みにて候ふ間、なかなか思ひもよらず候ふ」
おこなひオコナイ[行ひ] (名)(1)行うこと。なすこと。行為。(2)挙動。行状。允恭紀、八年二月「わがせこが、くへきよひなり、ささがにの、くものおこなひ、こよひしるしも 衣通郎姫」=わがせこは、今夜きっと来るであろう。小さな蜘蛛の(網を張る)挙動が、今宵は特に目立って著しいから。(「ささがにの」は枕詞。蜘蛛のことは、当時からの迷信)(3)仏道の修行。和泉式部日記「女、さしもやはと思ふうちに、日ごろのおこなひに苦しうて、うちまどろみたるほどに」更級日記「このごろの世の人は、十七、八よりこそ、経よみおこなひもすれ」
おこなひびとオコナイ…[行ひ人] (名)仏道を修行する人。行者。源氏、若紫「北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこきおこなひびと侍る」
おこなふオコナウ[行ふ] (動、四)(1)する。あつかう。処する。まかなう。はからう。指揮する。落窪物語「君…左衛門蔵人を召して、かれおこなひて少し遠くなせと宣へば」(はからって)同「ここもとはとかくせよなどおこなひて直さす」(指揮して)(2)仏道を修行する。更級日記「うちおどろきたれば、夢なりけりと思ふに、よきことならむかしと思ふに、おこなひ明かす」
おさか[忍坂] (地名)「おしさか」の略。大和の国、奈良県磯城郡城島(しきしま)村大字忍坂(おつざか)の地であろう。道臣命が神武天皇の命をうけて大穴を設けて賊を誘殺したと伝えられる地。祝詞、祈年祭「すめ神たちの前にまおさく、飛鳥・石村・忍坂・長谷・畝火・耳無しと御名はまをして」
おさかのやま[忍坂の山] (地名)前項の地の東方にある山。万葉、[13-3331]「こもりくの、はつせの山、あをはたの忍坂の山は、走り出の、よろしき山の、いでたちの、くはしき山ぞ、あたらしき、山の、荒れまく惜しも」
おさかべのみこ[忍坂部皇子・忍壁皇子] (人名)第四十代天武天皇の皇子。天武天皇の九年(681)詔を奉じて川島皇子および諸臣らと帝紀を撰し、また、上古の事をしるし定められ、第四十二代文武天皇の御代には藤原不比等と共に律令を撰定された。慶雲二年(705)薨。
おさまさ (感)はやしことば。笑う声か。神楽歌、蛬「きりぎりすの……木の根を掘り食んで、おさまさ、角折れぬ。おさまさ、角折れぬ」
おし[押機] (名)人を欺き殺すために設けるおとしあな式のもので、そこを踏めば、くつがえって圧死するような構造。また、猟具の名。古事記、中「大殿を作り、その殿の内に押機をはりて待ちける時に、おとうかし先づまゐむかひて」
おし (感)昔の警蹕(けいひつ)の声。重ねて「おしおし」ともいい、また延ばして「おおしい」ともいう。源氏、宿木「おほんさかづき捧げて、おしとのたまへる」
おしあて[推当] (名)おしはかること。あてすいりょう。源氏、若紫「かの大納言の御むすめものしたまふと聞き給へしは。すきずきしきことにはあらで、まめやかに聞ゆるなりと、おしあてにのたまへば」
おしあゆ[押鮎・押年魚] (名)塩漬けにした鮎。また、干した鮎。昔、元旦の儀式に用いたもの。土佐日記「元日…ただ押年魚の口をのみぞ吸ふ」
おしおし (感)⇒おし(感)。
おしかへすオシカエス[押し返す] (動、四)(1)繰り返す。浜松中納言、一、上「おしかへして人を遣はしたれば」(2)引きかえす。紫式部日記「下仕(しもづかへ)の唐衣に青色をおしかへし着たる」(3)反対になる。あべこべになる。栄花物語、玉のかざり「常の行啓にあらず、おしかへしたるなり」(4)向こうから押して来るのを、こちらから押し退ける。対抗する。浮世風呂「よそのおかみさんたちは、押しかへされねえ形(なり)で、お正月を遊ばすが」(5)甚だしく押しあう。こみあう。
おしがら[押柄] (名)気の強いこと。押しの強いこと。今昔物語、二十八「三条中納言……思ひはかりあり。肝太くして、押柄になむありける」
おしがらだつ[押柄だつ] (動、四)押し強く行う。宇治拾遺、七「三条中納言……心ばへ賢く、肝太く、おしがらだちてなむおはしける」
おしがり[押借り] (名)脅迫して金銭などを借りること。「ゆすり」の類。
おしきのたまかづら…カズラ[押木の玉縵] (名)古代の髪飾りの一。玉で飾った押木型の冠。「押木」の意義は明らかでないが、彫金術に使う特別の木の台ともいう。古事記、下「ここに大日下王(おほくさかのみこ)…さの妹の礼物(ゐやじろ)として、押木之玉縵を持たしめてたてまつりき」
おしきりめ (名)木綿四手(ゆふしで)の一種。枕草子、十「さかしきもの…おのが口をさへひきゆがめて、おしきりめおほかる物どもしでかけ」⇒ゆふしで。
おしごと[押言] (名)推量の言。臆説。独断。古今著聞集、十一、画図「さては、そのこと正体なし。この人はおしごとする人にこそと沙汰ありて、用ひられずなりにけり」
おしこむ[押し込む] (動、四)(1)無理に入る。押しかける。宇津保、嵯峨院「明けたまへば、公達おしこみ入りて、御文を奉りたまへば」(2)わり込む。つめこむ。こみあう。紫式部日記「わたどのの戸口まで、隙もなくおしこみてゐたれば」(3)強盗に入る。」
おしこむ[押し込む] (動、四)前項の他動。押しこめる。大蔵流狂言、樋の酒「両人ともに、蔵へ押し込うで出ようと存ずる」
おしこむ[押し込む] (動、下二)(1)無理に入らせる。押し入れる。源氏、夕霧「いとわりなく、おしこめてのたまふ」(2)ぐっとこらえて、表に出さない。源氏、末摘花「いはぬをいふにまさると知りながら、おしこめたるは苦しかりけり」(3)内に包む。風雅集、春上「のどかなる景色をよもにおしこめて霞ぞ春のすがたなりける」(4)不運の生活を送る。狭衣、四「ただ、かたみにおしこめて、谷の埋れ木にてぞすぐし給ひける」(5)押しこめの刑に処せられる。(「押しこめ」は江戸時代の刑の一つで、ある期間蟄居を命ずること)
おしこめて (副)ひきくるめて。一概に。琴後集、十三、書牘「詞にあやをなすは文雅のもとなるを、おしこめて狂言綺語などいひて、そしるべきことには侍らず」
おしこる[押し凝る] (動、四)おしあう。こみあう。枕草子、十「おしこりて、まどひ乗り果てて出でて」
おしたつ[押し立つ] (動、四)(1)しいて行う。無理に行う。我(が)が強い。落窪物語「さやうなる人の、おしたちてのたまはば、聞かではあらじと、人知れずおぼして」源氏、桐壺「弘徽殿には…いとおしたちかどかどしき所ものし給ふ御方にて」狭衣、一、上「太政大臣の御方は…われはと誇りかにおしたちたる御心おきてにぞおはしける」(2)「立つ」を強めていう語。
おしたつ[押し立つ] (動、下二)(1)無理に出で立たせる。宇津保、蔵開、上「御つかさの人待ちうけ奉りて、おしたてて遊びて殿におはす」(2)押し上げて立たせる。(3)「立てる」を強めていう語。
おしづまりオシズマリ[御寝] (名)おやすみになること。おほとのごもり。
おしづまるオシズマル[御寝まる] (動、四)「寝る」の敬語。おやすみになる。おほとのごもる。
おしで[押し手・符] (名)(1)朱墨をてのひらに塗って押した印。(2)証拠とすべき印。宇津保、蔵開、上「その戸には、文殿とおしでさしたり」(2)琵琶や琴などをひくとき、左手で絃を押し、音を変化させること。また、その左の手。源氏、紅梅「琵琶はおしでしづやかなるをよしとするものなるに」(4)射術の語。左の手。ゆんで。「ひきて」の対。夫木抄、二十「あづさ弓ひきての山のほととぎす雲を宿とやおしでいるらむ」
おしてる[押し照る] (動、四)「押し」は「おしなべて」「あまねく」などの接頭語。あまねく照らす。万葉、[8-1480]「わが宿に月押し照れりほととぎす心あらば今宵来鳴きとよもせ」同、[20-4361]「さくら花今さかりなり難波の海おしてる宮に聞しめすなべ」
おしてる[押し照る] (枕詞)諸説があって明らかでないが、とにかく「なには」に冠する。仁徳紀、二十二年正月「おしてる難波の崎の、並び浜、並べむとこそ、その子はありけめ」=難波の崎の並び浜のように、后妃と並べ立てようと自分も思うし、その女の子も思っているのだろう。(仁徳天皇が八田皇女を宮中に召そうとされて、后妃の反対にあった時、后妃に示された御歌)
おしてるや[押し照るや] (枕詞)「や」は感動の意をあらわす終動詞。前項と同じく「なには」に冠する。古事記、下「おしてるや、なにはのさきよ、いでたちて、わがくにみれば」(「よ」は「より」)
おしなぶ[押し並ぶ](動、下二)(1)すべて一つにする。ひきくるめる。枕草子、三「木は……花の木ども散りはてて、おしなべたる緑になりたるなかに」(2)普通である。世間なみである。源氏、桐壺「御方方の人人、世の中におしなべたらぬを、えりととのへすぐりて」(3)無理に押して並ばせる。
おしなぶ[押し靡ぶ] (動、下二)ひどくなびかせる。強く押しつける。万葉、[6-940]「いなみ野の浅茅おしなべさ寝る夜の日長(けなが)くあれば家し偲ばゆ」
おしなべて[押し並べて] (副)(1)あまねく。一様に。一つにおしならして。万葉1-1「こもよ、みこもち…そらみつ、やまとの国は、おしなべて、われこそをれ」(2)普通に。一般的に。源氏、桐壺「はじめよりおしなべてのうへ宮づかへし給ふべききはにはあらざりき」=はじめから、普通の女官方のように宮中に仕える身分ではなかった。(もっと上の身分だったとの意)
おしなべて[押し靡べて] (副)おしなびかせて。おしつぶして。伊勢物語「おしなべて峰もたひらになりななむ山の端なくば月も入らじを 紀有常」=押しなびかせて峰も平地とひとしくなって欲しい。山の端がなければ、月も入ることもあるまいに。
おしなみ[押し靡み] (動、連用形)「おし靡べ」の転。押しなびかせ。古今集、六、冬「今よりはつぎて降らなむわが宿のすすきおしなみ降れる白雪」
おしはる[押し張る] (動、四)(1)強く張る。新拾遺、俳諧「押し張りて弓の袋と知る知るや思はぬ山のものを射るらむ 藤原実方」(2)意地を張る。落窪物語「御才は限りなく賢く、おしはりてのたはむことを言ひかはすべき上達部もおはせず」
おしまづきオシマズキ[机] (名)(1)脇息。(2)車のとじきみ。
おしわたす[押し渡す] (動、四)揃う。一様である。狭衣、三、中「御供には乳母たち二人、女房二十人ぞ参りける。紅どもに、りんだうの表着、菊の唐衣、おしわたして着たり」
おす[押す] (動、四)(1)一様にする。万葉、[7-1074]「春日山おして照らせるこの月は妹が庭にもさやけかりけり」(2)他にも多くの意味があるが、現代語の内容とほとんどひとしい。
おす[圧す] (動、四)威圧する。圧倒する。源氏、桐壺「右の大臣の御いきほひは、ものにあらずおされ給へり」夫木抄、六「深みどり端山の色をおすまでに藤のむらごは咲きみちにけり」(2)他にも多くの意味があるが、現代語の内容とほとんどひとしい。
おずし[悍し] (形、ク)強情である。勝ち気である。嫉妬深い。おずまし。古事記、下「おほきさきのおずきによりて、八田の若郎女を治めたまはず」
おすひ[襲・襲衣] (名)上古、男女の顔をかくすために、頭からかむり、着物の裾まで垂らした長い布。奈良時代には女子が神を祭る時にだけ用いた。古事記、上「太刀が緒を、いまだ解かずて、おすひをも、いまだ解かねば」(大国主命が)万葉、[3-379]「ひさかたの……たわやめの、おすひ取り懸け、かくだにも、われは祈(こ)ひなむ、君に逢はじかも 大伴坂上郎女」
おずまし[悍し] (形、シク)「おずし」に同じ。
おせがく[音声楽] (名)音楽。転じて、雅楽の曲礼の一(於世楽)。宇津保、俊蔭「天女くだりまして、おせがくをして植ゑし木なり」
おせぐむ (動、四)体格がっしりしている。一説、背が少しかがんでいる。宇津拾遺、九「たけ高くおせぐみたるもの、赤鬚にて、五十ばかりなる、太刀はき、ももぬきはきて出で来たり」
おそ[鈍] (名)愚鈍。おろか。万葉、[9-1741]「常世辺に住むべきものをつるぎたちなが心からおそやこの君」=永久に常世に住んでいればよいのに、自分の心から(郷里へ帰って来るなんて)おろかだなあ、この人は。(「つるぎたち」は枕詞。「な」は「し」とよむ人もある。「自分」の意。浦島子を詠んだ反歌)
おそくづのゑオソクズノエ[おそくづの絵] (名)枕絵。春画。古今著聞集、十一画図「ふるき上手どもの書きて候ふおそくづのゑなどを御覧も候へ」
おぞけだつ[怖気立つ] (動、四)身の毛がよだつ。ぞっとする。
おそし[遅し] (形、ク)(1)のろい。速くない。(2)時間のおくれることにいう。おそい。万葉、[6-981]「かりたかの高円山(たかまとやま)を高みかも出で来る月のおそく照るらむ 大伴坂上郎女」=高円山が(あまり)高いので、それで、月の出がおそいのであろう。(3)おろかである。にぶい。源氏、蓬生「さやうのことにも、心おそくものしたまふ」
おぞし[悍し] (形、ク)「おずし」に同じ。
おぞし[鈍し] (形、ク)「おそし(3)」に同じ。
おそなはるオソナワル[遅なはる] (動、四)おくれる。遅くなる。
おそばふオソバウ (動、下二)ふざける。たわむれる。落窪物語「おそばへて、あれおしこぼちてむと腹立ちののしれば」
おそぶらふオソブラウ (動、四)押しゆるがす。古事記、上「をとめのなすやいたどを、おそぶらひ、わがたたせれば」=少女の家の板戸を鳴らし、押しゆるがして、自分が立っていると。
おそぶる (動、下二)前項の原形。押しゆるがす。ゆすぶる。万葉、[14-3460]「たれぞこの屋の戸おそぶる新(にふなみ)にわが背をやりて斎(いは)ふこの戸を」
おぞまし[悍し] (形、シク)(1)「おずし」に同じ。(2)わるがしこい。ずるい。増鏡、十九、久米のさら山「いづくにも、守護といふものの、目代よりはおぞましきをすゑたれば」
おそり[恐り] (名)おそれ。不安。心配。
おたぎ[愛宕] (地名)古、山城の国の七郡の一。のち「あたご」と呼ばれ、明治以後、その大部分は京都市に編入された。京都市右京区の辺。源氏、桐壺「御送りの女房の車に、したひ乗り給ひて、愛宕という所にいといかめしうその作法したるに」平家、五、都遷「ももとせを四かへりまでに過ぎ来にし愛宕の里の荒れや果てなむ」(「続日本紀」に「於多岐」とあり、当然「おたぎ」であり、それが五音相通の原則で「あたご」となったもので、「をたぎ」と書くのは誤り)
おだし[穏し] (形、シク)おだやかである。おちついている。源氏、帚木「かうのどけきにおだしくて、久しくまからざりしころ」平家、二、少将乞請「もし、この謀叛とげなましかば、御辺とてもおだしうてやはおはすべき」
おだつ[煽つ] (動、下二)おだてる。そそのかす。
おぢ (名)(1) おほぢ(祖父)の略。父の父。そふ。(2)転じて、一般老人の称。老翁。統紀、一、文武天皇即位の宣命「高年老人(おぢ)」
おちうどオチユウド[落人] (名)「おちびと」の音便。人目をしのんで逃げて行く人。逃亡者。平家、七、忠度都落「忠度と名のり給へば、落人かへり来たりとて、その内騒ぎあへり」
おぢおぢオジオジ[怖ぢ怖ぢ] (副)こわがりながら。おずおず。
おちがみの[落ち髪の] (枕詞)脱け落ちた髪のようとの意から「みだる」に冠する。拾遺集、十一、恋一「朝な朝なけづれば積もるおちがみのみだれてものを思ふころかな 紀貫之」(上三句は「みだれ」というための序詞)
おちくぼ[落窪] (名)家の中で、普通のゆかより一段ゆかの低い処。おちくぼんだ処。落窪物語、一「寝殿の放ち出でのまた一間なる落窪なるところの、二間なるになむ住ませ給うける」
おちくぼのせうしやう…シヨウシヨウ[落窪の少将] (人名)仮空の人物である。「落窪物語」に出て来る「左近の少将」を指すのであろう。枕草子、十一「げに、交野の少将もどきたる落窪の少将などはをかし」=まことに、交野の少将を退けて(落窪の君を得た)左近の少将などはおもしろい。
おちくぼのものがたり[落窪物語] (書名)平安時代の小説。シンデレラ式の継子のいじめの物語。ある中納言に数人の児女があったが、その中に一人の異腹の姫があった。継母がこれをにくんで落窪の一室に別居させ、「落窪の君」と呼ばせていたが、のち、その姫が左近の少将と婚して幸福の生活に入るという筋。作者も成立年代も明らかでないが、「宇津保物語」よりは少しおくれ、「源氏物語」よりは少し前、十世紀の末葉に成ったものであろう。文章は、すこぶる稚拙である。
おちたぎつ[落ちたぎつ] (動、四)水がはげしく流れ落ちる。祝詞、六月晦大祓「高山の末、短山の末より、さくな垂りにおちたぎつ早川の瀬にます瀬織津姫といふ神」(この語を「滝」の枕詞と見るのは、「万葉、巻一の三十六」にある柿本人麻呂の長歌「珠水激」であるが、にわかに決定しがたい)
おちつかた (句)降り減ずるころ。水鏡、上「命やうやうおちつかたに、もののあはれをも知り」
おぢなしオジナシ[怖ぢなし] (形、シク)「怖ぢ甚(な)し」の義。甚だしくこわがる。ひどく臆病である。雄略紀、五年二月「舎人、人となりおぢなく、樹によりて色を失ひ」
おちなづさふ (動、四)オチナズサウ(動、四)落ちて水に漬く。落ちて水に浮かぶ。落ちて水に沈む。古事記、下「みずたまうきに、うきしあぶら、おちなづさひ」=みずみずしい美しい盃の中の、あぶらのようなよい酒の上に落ち込んで浮いて。
おちのひと[御乳も人] (名)(1)貴人の乳母。略して「おち」ともいう。今鏡、三「紀の御とて、御乳の人と聞えし」(2)貴人の児女を養育する婦人の称。養育掛りの主任。丹波与作「大上﨟・小上﨟・おさし・抱き乳母・お乳の人」
おちばいろ[落ち葉色] (名)色の名。枯れた落ち葉のような褐色に黄味を帯びた色。
おちふす[落ち伏す] (動、四)罪に服する。水鏡、下「おのおの皆おち伏しにき」
おちふらばふオチフラバウ[落ち触らばふ] (動、下二)「ふらばふ」は「触る」の延音。「触れ合ふ(四段)」という説は非。落ちて触れる。古事記、下「ほつえのえのうらばは、なかつえにおちふらばへ、なかつえのえのうらばは、しもつえにおちふらばへ」=上の枝の梢の葉は、落ちて来て中の枝に触れ、中の枝の梢の葉は、落ちて来て下の枝に触れ。
おちゐるオチイル[落ち居る] (動、上一)おちつく。しずまる。安心する。竹取「ここらの日ごろ、思ひわび侍りつる心は、今なむおちゐぬる」増鏡、二、新島もり「かかれども、少し落ち居ぬ心ばへなどありて、やうやうつはものども背き背きにぞなりにける」(源頼家の性格の軽躁なことをいう)
おつ[乙] (名)十干の第二位。きのと。転じて、ものの順位の第二位。
おつ[落つ] (動、上に)(1)ないがしろにする。そまつにする。祝詞、龍田風神祭「神たちをば、天つやしろ・国つやしろと忘るることなくおつることなく」(2)病気がなおる。快癒する。十六夜日記「仏の御前にて心を一つにして法華経を読みつ。そのしるしにや、なごりなくも落ちたる折しも」(3)白状する。義経記、四「あまりに強く責められて、ありのままにぞおちにける」(4)精進をやめる。土佐日記「舟君、節忌(せちみ)す。精進物なければ……米(よね)とりかけておちられぬ」(5)残る。欠ける。古事記、上「うちみる島の崎崎、かきみる磯の崎おちず」(6)失せる。消える。古事記、下「宮人の足結の小鈴おちにきと、宮人とよむ」(7)沈む。古事記、上「青人草の憂き瀬に落ちて苦しまむ時」(8)その他多くの意味があるが、現代語の「落ちる」内容とほとんどひとしい。
おづオズ[怖づ] (動、上二)恐れる。ひるむ。古事記、中「ここにその国主(こにきし)おぢかしこみて申しけらく」
おついう…ユウ[乙由] (人名)⇒なかがはおついう。
おづおづオズオズ[怖づ怖づ] (副)おそるおそる。こわごわ。蜻蛉日記「参り来まほしけれど、つつましうてなむ。たしかに来(こ)とあらば、おづおづもとあり」
おつかみ (名)久しく剃らないで長く延びた頭髪。宇治拾遺、一「頭おつかみなる法師」⇒をつかみ。
おつきや[御春屋] (名)江戸幕府営中の諸士に給する領米をつく建物。折り焚く柴の記、中「御春屋を移されし後に」
おつさまに[追様に] (副)「追ひさまに」の音便。やがて。追っつけ。平家、十、三日平氏「未だ安堵しても覚え候はねば心少しおとしすゑて、おつさまにこそ参り候はめ」
おと[乙・弟] (名)(1)おとうと。「兄」の対。(2)いもうと。「姉」の対。古事記、上「その姉は、いとみにくきによりて、見かしこみて、返し送りたまひて、そのおと木の花の咲くや姫をのみとどめて一夜にみあひしたまひき」(3)末子。女殺油地獄「姉が手を引き、おとは抱く、中はてて親肩車に」
おと[乙・弟] (接頭)名詞に冠して、「おとうと」「いもうと」「若い」等の意を添える語。おとうかし。おとひめ。おとたなばた。
おとがひオトガイ[願] (名)あご。(転じて、ものを言う意に用い、「おとがひを開く」「おとがひをたたく」「おとがひを鳴らす」などという。卑しめていう語である)
おとぎ[お伽] (名)「とぎ」の」敬語。(1)つれづれの時などに話をすること。大鏡、はしがさ「ありつる人の帰り来むほどお伽せむはいかが」(2)女が男の寝室に侍すること。(3)夜、寝ずに病人につき添うこと。(4)死者の枕辺で通夜すること。(5)「おとぎばなし」の略。
おとぎき[音聞き] (名)(1)音の聞えること。(2)うわさ。風聞。外聞。風評。大鏡、四、右大臣師輔「おとぎき見苦しきことなりと聞えさせ給ひけるを」
おとぎさうし…ソウシ[御伽草子] (書名)室町時代を中心に発生した児女向きの短編物語の総称。文正草子・鉢かづき・唐糸草子・物臭太郎・一寸法師・浦島太郎・酒呑童子・俵藤太の類。すべて作者も成立年代も不明。文章は、すこぶる稚拙であるが、江戸時代の仮名草子連なるに文学史的価値は認めなければならぬ。
おどく (動、下二)(1)おおまかである。おおようである。のんびりしている。おほどく。源氏、椎木「なにごとにもあるに従ひて心を立つる方もなく、おどけたる人こそ、ただ世のもてなしに従ひて」(2)おどける。ふざける。冗談をいう。
おとご[乙子・末子] (名)(1)末の子。末子。落窪物語「おとど、おとごにてかなしうし給へば」(2)「おとごづき」の略。
おとこづき…ズキ[乙子月] (名)陰暦十二月の異称。おとご。
おとしぶみ[落とし文] (名)あらわに言いにくいことを、だれのしわざともわからぬように、文書にしたためて、屋内または路上などに落としておくもの。らくしよ。
おとしむ[貶しむ] (動、下二)劣ったものと見る。見さげる。さげすむ。源氏、桐壺「はじめよりわれはと思ひあがり給へる御方方、めざましきものにおとしめそねみ給ふ」
おどす[威す] (動、四)おどかす。こわがらせる。恐れさせる。おびやかす。枕草子、一「上にさぶらふ御ねこは…日のさしあたりたるにうち眠りてゐたるをおどすとて、翁丸いづら、命婦のおもと食へといふに」
おとたちばなひめ[弟橘媛] (人名)日本武尊の妃。尊の東征に従い、相模(神奈川県)から走り水(東京湾)を渡り、上総(千葉県)に向かう途中、海が荒れたので、入水して海神をなだめた。
おとたなばた[乙棚機] (人名)若くて美しい機織女。仮空の人物。古事記、上「あめなるや、おとたなばたの、うながせる、たまのみすまる」⇒うながせる。
おとづき…ズキ[乙月] (名)「おとごづき」に同じ。
おとと[弟] (名)(1)「おとうと」の略。男女に通じていう。(2)年の劣っていること。また、その人。宇津保、蔵開、上「女(むすめ)一人十余ばかりにて、男二人、一つ二つがおととにてなむ」(3)のちには、もっぱら男についてだけいうようになった。
おとど (名)「大殿(おほとの)の」転。(1)貴人の邸宅の称。源氏、若菜、上「南のおとどの西の放ち出で」(2)大臣・公卿らの尊称。宇津保、国譲、下「左大臣のおとど」同、梅花笠「おとど、ただいまは納言になむ侍るめる」(3)貴婦人の尊称。源氏、玉■「母おとど明け暮れ嘆きいとほしがれば」
おととえ[兄弟] 兄弟。姉妹。はらから。
おととひオトトイ (名)(1)兄弟。姉妹。・はらから。(2)おとうと。琴後集、十五、祭二芳宜園大人墓一文「ふみ読むとては、君を師ともたふとみ、歌つくるとては、われをおととひのつらにぞ数へたまひける」
おとどろ (名)古来、諸説があるが、「おとづれ」の方言と見るのが妥当であろう。音信。たより。万葉[11-2805]「伊勢の海ゆ鳴き来る(たづ)のおとどろも君が聞こさばわれ恋ひめやも」(上二句は序詞である。「君のたよりだけでもあれば、こんなに恋いわびるだろうか、たよりのないのがうらめしい」との意)
おとな[大人] (名)(1)十分に成長した人。(2)元服した後の人の称。源氏、桐壺「大人になり給ひてのちは、ありしやうに御簾のうちにも入れ給はず」(3)国司。枕草子、三「若き人と児は肥えたるよし。受領などおとなだちたる人は太きいとよし」(4)上位の女房。源氏、蜻蛉「弁のおもととて、なれたるおとな」(5)大名の家老・年寄・宿老・侍頭・組の頭などの類。折り焚く紫の記、上「若侍ども、夜毎に垣を超えて出で遊ぶ者多くして、供にさぶらひしおとなども、制止すべきやうなしと申されければ」(ここは「組の頭」)
おとなおとなし[大人大人し] (形、シク)「おとなし」の重言。おとなびておちついている。源氏、若紫「「おとなおとなしう恥づかしげになるにつつまれて、とみにもえうち出で給はず」
おとなし[大人し] (形、シク)(1)おとなびる。ふんべつができて来たさまである。宇津保、国譲、中「いとおとなしくなりまさに給ふなりし心地」(2)おもてだっている。上位である。宇治拾遺、三「ただここにあらむとてかと思ひておとなしき人寄りていふ」(3)穏和である。ものしずかである。
おとなしがは…ガワ[音無川] (地名)歌枕の一。紀伊の国、和歌山東牟婁郡を流れる熊野川上流の称。もと熊野本宮附近を「音無の里」と称したのに基づき、本宮辺を流れる熊野川をいうのである。枕草子、三「川は……おとなし川おもはすなる名とをかしきなり」(思いもよらぬ名でおもしろいとの意)夫木抄「はるばるとさかしき峰を分けてきて音無し川をけふ見つるかな 後鳥羽院」
おとなしのたき[音無の滝] (地名)(1)山城の国、京都府愛宕郡大原村の来迎院の東方、小野山の山腹にかかる小滝。平滑な岩面にかかるので、水の音がしないのに基づく名。源氏、夕霧「朝霧になく音をたつる小野山は絶えぬ涙や音無の滝」枕草子、三「たきは、おとなしの滝」(2)紀伊の音無川にある滝をいう。拾遺集、十二、恋二「恋ひわびぬ音をだに泣かむ声たてていづこなるらむ音なしの滝」(一本に「音無の里」とある)⇒おとなしがは。
おとなひオトナイ (名)(1)音。ひびき。声。古事記、上「ここをもて、荒ぶる神のおとなひ、さばへなすみなわき」(2)おとずれること。訪問。見舞。
おとなふオトナウ (動、四)(1)音を発する。ひびく。十訓抄、上、一「やりみづ、心ぼそくおとなひたり」(2)おとずれる。訪問する。見舞う。源氏、末摘花「古りにたるあたりとて、おとなひ聞ゆる人もなかりけるを」源氏、宿木「さしはへて、おとなはず侍るめり」=わざと訪れないようである。
おとなぶ[大人ぶ] (動、上二)おとなびる。大人らしくなる。大人らしくする。
おとにきく[音に聞く] (句)(1)評判に聞く。噂の高い。名高い。竹取「おかで、このかぐや姫をえてしがな、見てしがなと、音に聞きめでまどふ」金葉集、八、恋下「音に聞く高師(たかし)の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ 一宮紀伊」=有名な高師の浜の、むなしく寄せては返す、あのあだ波のように、浮気者で名高いあなたの情は受けますまい。あなたの情にほだされたら、結局は、波がかかって着物が濡れるように、涙で袖が濡れるばかりですから。⇒たかしのはま。(2)噂に聞く。人づてに聞く。徒然草、七十三段「音に聞くと見る時とは、何事もかはるものなり」
おとにのみ[音にのみ] (枕詞)音にのみ聞くの縁で「きく」に冠する。古今集、十一、恋一「音にのみ菊の白露夜はおきて昼は思ひにあへず消ぬべし 素性法師」続拾遺集、十四「音にのみ企救(きく)の浜松した葉さへうつろふころの人は頼まじ」(「企救」は福岡県小倉市の南方の地)
おとね[乙子] (名)月の最後の子の日。
おとはがはオトワガワ[音羽川] (地名)山城と近江との国境にそばだつ音羽山の麓を流れる川。新古今、十八、雑下「浅からぬ心ぞ見ゆる音羽川せき入れし水の流れならねど 周防内侍」
おとはのたきオトワ…[音羽の滝] (地名)次項(1)にかかる細い滝。古今集、十三、恋三「やましなの音羽の滝の音にだに人の知るべくわが恋ひめやも うぬめ」
おとはやまオトワ…[音羽山] (地名)(1)京都の東山三十六峰の一。山麓に清水寺がある。古今集、三、夏「音羽山けさ越え来ればほととぎす梢はるかに今ぞ鳴くなる 紀友則」(2)山城と近江との国境にそばだつ高い山。新後撰、春上「音羽山花咲きぬらし逢坂の関のこなたに匂ふ春風 宗尊親王」(「枕草子、一」の「山は…おとは山」は、いずれか不明)
おとはやまオトワ…[音羽山] (枕詞)「音」に冠する。古今集、十一、恋一「音羽山おとに聞きつつ逢坂の関のこなたに年をふるかな 在原元方」
おとひめ[弟姫・乙姫] (名)妹の姫。若い姫。また、龍宮にいるという若い美しい姫。
おどろ[荊棘] (名)(1)草木などのぼうぼうと茂っているやぶ。増鏡、一、おどろのした「奥山のおどろの下もふみわけて道ある世ぞと人に知らせむ 後鳥羽上皇」(2)垣や髪などの乱れていることの比喩。枕草子、三「紫野のわたり近きあやしの家ども、おどろなる垣根などに、いと白う咲きたるこそをかしけれ」散木集「ふけ来ればしどろに見ゆる山がつのおどろの髪もあふひかけけり」
おどろおどろし (形、シク)恐ろしい。さわがしい。仰仰しい。源氏、帚木「目に見えぬ鬼のかほなどのおどろおどろしくつくりたるものは」竹取「あななひに、おどろおどろしく二十人の人のあがりて侍れば」大鏡、二、左大臣時平「まことにおどろおどろしきことはさるものにして」
おどろく (動、四)(1)眠りからさめる。目をさます。万葉、[4-741]「夢(いめ)の逢ひは苦しかりけりおどろきてかき探れども手にもふれぬば 大伴家持」(2)びっくりする。気がつく。
おなじまち[同じまち] (句)同じであること。同等。紫式部日記「齢(よはひ)のほどおなじまちのは、をかしと見かはしたり」
おにおにし[鬼鬼し] (形、シク)鬼のように恐ろしい。「おにし」を強めていう。源氏、夕霧「いとおにおにしう侍るさがなものをとて」=たいそう恐ろしい悪党といって。
おにがみ[鬼神] (名)荒ら荒らしく恐ろしい神。鬼神(きじん)。古今集、序「やまと歌は…目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ」古川柳「目に見えるおにがみの来るおほみそか」
おにつら[鬼貴] (人名)⇒かみじまおにつら。
おにどころ[鬼野老・山■薢] (名)山野に自生する、山の芋に似た植物。枕草子、八「名おそろしきもの…おにどころ」
おにのしこぐさ[鬼の醜草] (名)紫苑(しをん)の古名か。謡曲、大江山「鬼の醜草とは、誰がつけし名なるぞ」
おにのま[鬼の間] (名)清涼殿の西廂の最も南にある室。壁に白沢王の鬼を切る絵があるのでいう。
おにやらひ…ヤラヒ[鬼遣らひ] (名)昔、宮中で追儺(つゐな)といい、おおみそかの夜、邪鬼を払う儀式を行ったことをいうので、「つゐな」に同じ。今日、民間で節分に行われるのは、そのなごりである。
おぬし (代)やや、よそよそしい感じのする対称代名詞。狂言、聟貫「たい、そこな者、おぬしがところへは、もはやあの娘はやらぬぞ」
おの (代)(1)自称代名詞。われ。おのれ。自分。古事記、上「山幸もおのがさちさち、海幸もおのがさちさち」(2)対称代名詞。あなた。汝。古事記、中「こはや、みまきいりひこはや、みまきいりひこはや、おのがをを、ぬすみしせむと、しりつとよ、いゆきたがひ、まへつとよ、いゆきたがひ、うかがはく、しらにと、みまきいりひこはや」=これはまあ、みまき入彦の命よ、みまき入彦の命よ、あなたの御生命をこっそり取ろうとして、或は宮殿の後門から、或は前門から、できるだけ人に逢わないように、見つけられないようにと忍んで、御生命をうかがいねらっている者のあるのに、それも知らないでいられるとは、まことにお気の毒なみまき入彦の命よ。⇒わざうた。
おのおの (代)多人数をさす対称代名詞。あなたがた。狂言、竹生島詣「おのおのこれに御座れども、それがしは所用御座候ふによって」
おのおの (副)めいめい。竹取「賜はせたる物は、おのおの分けつつ取る」
おのおのがた (代)「おのおの」がすでに複数なのであるが、さらに「がた」をつけた語。「諸君たち」などというのに似た語。江戸時代などに用いられた。「おのおのがた、いかがでござる」
おのがじし (副)おのおの思い思いに。各自めいめい。源氏、帚木「おのがじし、うらめしきをりをり、待ちがほならむ夕暮れなどこそ見所はあらめ」
おのごろじま[磤馭廬島] (地名)神代に、いざなぎ、いざなみの二神が天の浮橋に立って、天の沼矛で滄海を探って引き上げた時、矛先から滴り落ちた湖がおのずから凝って成ったという島。今の淡路島の西南または西北の小島かと伝えられている。古事記、上「かれ、二柱の神、天の浮橋に立たして、その沼矛(ぬぼこ)を指し下ろしてかきたまへば、しほこをろこをろにかきなして、引き上げたまふ時に、その矛のさきよりしたたるしほ、つもりて島となりぬ。これおのごろじまなり」
おのし (代)「おぬし」の訛。「おぬし」に同じ。
おのづからオノズカラ (副)(1)人工を加えずに。ひとりでに。万葉、[13-3235]「山のべのいそしの御井はおのづからなれる錦を張れる山かも」(2)当然。自然に。古事記、上「五柱の男子(ひこみこ)は、物実(ものざね)あが物によりて成りませリ。かれ、おのづからあがみ子なり」更級日記「心苦しがりて、母、物語など求めて見せ給ふに、、げにおのづから慰みゆく」(3)万一。もしも。殷富門院大輔集「あす知らぬ命をぞ思ふおのづからあらば逢う夜を待つにつけても」(4)偶然。たまたま。枕草子、一「わざと消息して呼び出づべきことにもあらぬを、おのづから静かに局などにあらむにも言へかしとて笑へば」
おのもおのも (副)おのおの。めいめい。各自。古事記、上「ふねごとにおのもおのも頭を垂れてその酒を飲みき」
おのら (代)(1)自称代名詞の複数。おのれら。われら。自分たち。宇津保、俊蔭「おのらがいとけなきを見すてて天上へ帰り給ひしかば」(2)対称代名詞の複数。おのれら。汝ら。狂言、二人大名「おのらが脱ぎをつて、つばうてをる姿(なり)は」
おのれ[己] (名)自身。自分。徒然草、百九段「目くるめき、枝あやふきほどは、おのれが恐れ侍れば申さず」
おのれ (代)(1)自称代名詞。われ。わたくし。自分。宇津保、俊蔭「山の主、俊蔭にのたまふ。おのれは天上より来たり給ひし人の御子供なり」(2)対称代名詞。尊大ぶっていう語。徒然草、六十六段「また武勝に、さらば、おのれが思はむやうにつけて参らせと仰せられたりければ」
おのれ (副)自然に。ひとりでに。源氏、末摘花「松の木の、おのれ起きかへり」
おのれ (感)相手に対する激しい感情をあらわす語。「おのれ、につくき奴」
おのれなりに (副)自然のままに。自己流に。曾我物語、一「内はおのれなりにして、外は梨地に蒔きて」花伝書、直面「かほけしきをば、いかにもいかにも、おのれなりにつくろはで、すぐにもつべし」
おのれら (代)(1)自称代名詞の複数。われら。狭衣「さるものから、おのれらをも、おぼしうとみ」(2)対称代名詞の複数。おまえたち。徒然草、六十九段「うとからぬおのれらしも恨めしくわれをば煮て、からきめを見するものかな」
おば (名)「祖母(おばば)」の略。「おぢ」の対。(1)祖母(そぼ)。源氏、桐壺「かの御おば北の方、慰む方なくおぼし沈みて」(2)転じて、老女。おうな。⇒をば。
おばしま[欄] (名)らんかん。うけらが花、二、夏「西河やせき入れし水のおばしまにしばしば秋の風ぞ通へる」
おはしまさふオワシマサウ (動、四)次項の延音。「ある」「いる」「来る」「行く」の敬語。   大鏡、七、太政大臣道長「おのづから、男も女も、よきあしきまじりてこそおはしまさふめりしか」
おはしますオワシマス (動、四)(1) 「ある」「いる」「来る」「行く」の敬語。竹取「いづれ劣り優りおはしまさねば」(2)助動詞的に用いて敬意をあらわす語。源氏、桐壺「上も御涙のひまなく流れおはしますを」
おはすオワス (動、四)(1)「ある」「いる」「来る」「行く」の敬語。宇治拾遺、三「わたうたちこそ、させる能もおはさねば、物をも惜しみ給へ」(2)助動詞的に用いて敬意をあらわす語。宇津保、俊蔭「三条殿に渡り給ひて、取らせおはしたり」
おはすオワス (動、下二)意味は前項に同じ。ただ活用を異にする。(1)竹取「ここにおはするかぐや姫は、重き病をしたまへば、え出おはしますまじ」(2)宇津保、蔵開、上「右の大臣、いでいでとて、寄りおはすれば」
おひオイ[笈] (名)山伏などが旅行の時、いろいろの物を入れて負うて行く具。謡曲、安宅「あの強力が負ひたる笈を、そと御肩に置かれ、御笠を深深と召され」
おひいづオイイズ[生い出づ] (動、下二)(1)生まれ出る。生え出る。万葉、[11-2778]「水底に生ふる玉藻の生ひ出でずよしこの頃は斯くて通はむ」(2)成長する。生い立つ。更級日記「あづまぢの道のはてよりも、なほ奥つかたにお生ひ出でたる人」
おひかぜオイ…[追風] (1)後から追いかけるように吹いて来る風。(2)船を吹き送る風。順風。おひて。(3)窓から吹き込む風。(4)衣にたきしめている香を、からだの動くにつれて、他に伝える風。源氏、若紫「そらだきもの心にくくかをりいで、名香の香などにほひみちたるに、君の御追風いとことなれば」
おひかぜよういオイカゼ…[追風用意] (名)前項(4)の心づかい。徒然草、四十四段「寝殿より御堂の廊に通ふ女房の追風用意など、人目なき山里ともいはず、心づかひしたり」=寝殿から本堂への渡り廊下を通る女房たちの、衣装に香をたきしめて、通り過ぎたあとによい匂を漂わせるための身だしなみなど、人も見ていない山里にもかかわらず、よく気をつけている。
おひこるオイコル生い凝る] (動、四)生い茂る。繁茂する。宇津保、俊蔭「草の生ひ凝りて、家の荒るるままに」
おひさきオイ…[生ひ先き] (名)生い立ってゆくさき。成長する前途。源氏、帚木「おひさきこもれる窓のうちなるほどは」=年が若くて、有望な前途をもっている身が深窓に養われている間は。(長恨歌の「楊家有レ女初長成、養在二深窓一人未レ識」に基づく)
おひしくオイシク[追ひ及く] (動、四)追いつく。古事記、上「かのおひしきによりて、道敷(ちしき)の大神ともいへり」
おひしくオイシク[生い敷く] (動、四)生いつづく。次次に生える。万葉、[10-1984]「このごろの恋の繁けく夏草の刈りはらへども生ひしくごとし」
おびと[首] (名)「大人(おほびと)の義。(1)首長。統率者。古事記、上「いましは我が宮のおびとたれ」(2)上古の姓(かばね)の一。のち連(むらじ)となる。(3)或人をうやまっていう称。
おびとりがは…ガワ[帯取革] (名)太刀の足金に絡んで、腰に帯びる革緒。太刀の緒。
おひなるオイナル[生い成る] (動、四)生い立つ。成長する。源氏、浮舟「見るままに、いと美しげに生ひ成りて、愛敬づき」
おひばらオイ…[追腹] (名)主君の後を追うて腹を切ること。殉死。
おびる (動、下二)(1)おおようである。穏やかである。源氏、若菜「女御の、あまりやはらかに、おびれ給へるこそ、かやうに心がけ聞えむ人は、まして人みだれなむかし」(2)ぼける。ぼうっとなる。源氏、横笛「君たちのいわけなく寝おびれたるはひ」
おひわけオイ…[追分] (名)街道の左右二路に分かれるところをいう。牛馬を左右に追い分けたことに基づく語。方方にこの名の地があるのは、道の追分に当たる地である。
おふオウ[負ふ] (動、四)(1)背中にのせる。せおう。しょう。(2)身に引き受ける。身にきる。「いたでを負ふ」(3)無実の罪をこうむる。古今著聞集、五、和歌「御衣一重失せたりけるを、負ひて北野にこもりて」(4)姓名などを冒す。名のる。命名する。万葉、[18-4094]「大伴の、遠つ神祖(かむおや)の、その名をば、おほくめぬしと、負ひ持ちて、仕へしつかさ、海行かば水漬くかばね、山行かば草むすかばね 大伴家持」(5)ふさわしい。相応する。新六帖、六「秋草の咲き乱れたる花盛りわが身に負はぬ宿にもあるかな 藤原為家」
おぶ[佩ぶ] (動、四)腰に下げる。帯びる。古事記、上「臂(ただむき)には、いつの竹鞆(たかとも)を佩ばして」
おぶ[帯ぶ] (動、上二)(1)前項に同じ。(2)たもつ。含みもつ。枕草子、三「木の花は……梨花一枝春の雨を帯びたりなどいひたるは」(長恨歌の「玉容寂寞涙闌干、梨花一枝春帯レ雨」をいう)(3)めぐらす。とりまく。天智紀、元年十二月「避城(へさし)は、西北のかた帯ぶるに古連(これん)・旦涇(たんけい)の水を似てし」(4)一身に引き受ける。負ふ。「任務を帯ぶ」
おふけなしオウケナシ (形、ク)「おほけなし」に同じ。
おふしもとオウ…[生ふ楉] (枕詞)「しもと」は大木の根元から蕞生するものであるから、「木下(このもと)」に冠するという説が最も妥当であろう。万葉、[14-3488]「おふしもとこのもと山のま紫にも告(の)らぬ妹が名ト兆(かた)に出でみかも」
おふすオウス[生ふす] (動、四)「生ほす」に同じ。生えさせる。はやす。増鏡、二十、月草の花「四条中納言隆資といふも頭おろしたりし、また髪おふしぬ」
おふすオウス[負ふす] (動、下二)「負ほす」の東国方言。負わせられる。仰せつけられる。万葉、[20-4389]「しほ船の舳(へそ)越そ白浪俄(にほ)しくもおふせ賜ほか思はへなくに 防人の歌」=海行く船の舳先を、波が越すように、俄かに思いがけなくも、(防人を)仰せつけられたことであるよ。(すべて東国方言)
おふせオウセ[仰せ] 「おほせ」に同じ。
おぶつみやう…ミョウ[御仏名] (名)昔、宮中で行われた仏名会。毎年、十二月十五日から十七日まで、のちには十九日から二十一日までの三日間、仏の御名をとなえて、罪障の消滅を祈る法会。徒然草、十九段「御仏名、荷前の使ひ立つなどぞ、あはれにやむごとなき」
おふてオウテ[追手] (名)(1)「追ふ人」の義。敵が正面から攻めて来るのを追い払うこと。「からめて」の対。(2)転じて、敵の正面を攻撃する軍隊。「からめて」の対。(3)城郭の正門。おほて。
おふなおふなオウナオウナ (副)(1)身分相応に。分に応じて。伊勢物語「おふなおふな思ひはすべしなぞへなく高きいやしき苦しかりけり」(「なぞへなく」は「比較すべきものもなく、すべて」)(2)できるだけ。せいいっぱい。源氏、桐壺「御心につくべき御遊びをし、おふなおふなおぼしいたつく」(3)ねんごろに。ていねいに。源氏、早蕨「いかでか、この君さへおふなおふなここといづるを、ものうくはもてなすべき」
おふのふらオウ…[相生の浦] (地名)伊勢の国。三重県志摩郡加茂村および錦浦村の海浜、大潟浦の辺であろう。をふのうら。枕草子、九「浦は、おふのうら」(一本に「をふのうら」とあるが、同じところ)
おふをオウオ[大魚] (名)「大魚(おほうを)の約転。大きな魚。くじら・まぐろ・ぶりの類。出雲風土紀、意宇郡「をとめの胸(むな)鉏(すき)取らして、おふをの腮(きだ)衝きわけて」=少女の胸のような平たい大きな鋤をお取りになり、大魚のえら(あぎと)を衝いて切り分けるようにして。
おふをよしオウオ…[大魚よし] (枕詞)「大魚よ」の意。「し」は強めの助詞。「大きな魚よ」の意で「しび」(まぐろ)の一種)に冠する。古事記、下「おふをよし、しびつくあまよ、しがあれば、うらこほしけむ、しびつくしび」=鮪を衝く海人よ、その鮪にたとえられる美女が、私の手にあれば、なおさら浦がうら恋いしくなることでしょうよ。どうです、美女を手に入れようとなさる海人よ。
おほあがたぬしオオ…[大県主] (名)古代、広範囲にの県(あがた)を支配したあがたぬし。古事記、中「このすめらみこと、丹波(たには)の大県主、名はゆごりが女、竹野姫を娶(め)して生みませる御子、ひこゆむすみの命」
おほあらきオオ…[大荒木] (地名)歌枕の一。山城の国、京都府乙訓郡淀村の古称という。万葉、11-2839]「斯くしてやなほも守らむ大荒木の浮田のもりの標(しめ)ならなくに」
おほあらきのもりオオアラキ…[大荒木の森] (地名)前項の地の与村神社(よどじんじや)の森を称したという。「うきたのもり」ともいう。古今集、十七、雑上「おほあらきの森の下草おいぬれば駒もすさめずかる人もなし」(「老いる」と「生いる」をかけている)枕草子、六「もりは、おほあらきの森」
おほあらめオオ…[大荒目] (名)鎧の縅の一。幅の広い札を、太い糸で間をあらく縅すこと。また、その縅。太平記、十五、正月二十日合戦事「三塔名誉の悪憎あり。鎖(くさり)の上に大荒目の鎧を重ねて」
おほいオオイ (接頭)「大き」の音便。「大」「長」「正」などの意を冠する語。おほい君。おほい子。おほいよつのくらゐ。(正四位)
おほいきみオオイ…[おほい君] (名)貴人の長女の尊称。第一の姉の君。おほいこ。「中の君」「三の君」等の対。落窪物語、一「おほいきみ・なかのきみには聟どりして、西の対、東の対に、花花として住ませ奉り給ふ」
おほいこオオイ…[おほい子] (名)前項に同じ。土佐日記「かの舟酔ひの淡路島のおほいこ、都近くなりぬといふを喜びて」
おほいしだオオ…[大石田] (地名)出羽(羽前)の国、山形県北村山郡、尾花沢の西方、最上川の畔にある水駅。船の出入多く、酒田まで水路二十余里。奥の細道「最上川乗らむと、大石田といふ所に日和待つ」
おほいそオオ…[大磯] (地名)相模の国、神奈川県中郡の南部、相模湾に臨む地。古来、東海道の重要駅の一。鎌倉時代に最も繁栄した。太平記、二、俊基朝臣再関東下向事「足柄山のたうげより、大磯・小磯みおろして」
おほいどのオオイ…[おほい殿] (名)大臣。左右の大臣。源氏、桐壺「おほい殿の君、いとをかしげにかしづかれたる人」
おほいまうちぎみオオイモウチ…[大臣] (名)「大前つ公」の転で、天皇の御前に候する公の義。大臣。左右の大臣。おほいどの。おほいまちぎみ。伊勢物語「昔、左のおほいまうちぎみいまそかりけり」古今集、十四、恋四「右のおほいまうちぎみ住まずなりければ」
おほいまちぎみ[大臣] (名)前項の同じ。成務紀、三年正月「武内宿穪を似ておほいまちぎみとなす」(別訓「おほまへつぎみ」)
おほいまつりごとのおほまへつぎみオオイ…オオマエ…[太政大臣] (名)「だじやうだいじん」に同じ。
おほいまつりごとのつかさオオイ…[太政官] (名)「だじやうくわん」に同じ。。
おほいらたかオオ…[大苛高] (名)「大平高(おほひらたか)の義か。大きく平たい粒の数珠玉。義経記、七「弁慶…首にかけたる大苛高の数珠とつて押し揉み」
おほいらつこオオ…[大郎子] (名)長男。固有名詞にもなる。
おほいらつめオオ…[大郎女・大嬢] (名)第一の娘。長姉。固有名詞にもなる。
おほうたオオ…[大歌] (名)わが国古来の歌謡中、朝廷の公儀に用いられた神楽歌・催馬楽・風俗歌などの総称。上古は雅楽寮、平安時代には大歌所で取扱われ、練習された。「小歌」の対。江次第、十「次に大歌・小歌、発声つねのごとし」
おほうたどころオオ…[大歌所] (名)平安時代に、大歌すなわち神楽歌・催馬楽・風俗歌などをつかさどる役所。また、宮中で和歌のことをつかさどる所。文徳実録、弘仁七年「興世朝臣書主よく和琴を弾くを似て、よりて大歌所別当となし」
おほうちオオ…[大内] (名)皇居の異称。大内山。大宮。内裏。禁裏。禁中。禁廷。禁闕。宮城。御所。ここのへ。ももしき。古今著聞集、十一、画図「閑院に大内を移されて後」おほうちぎオオ…[大袿](名)「うちぎ」のゆき・たけなどを大きく仕立てて、祿などに賜わるもの。拝領したものは、自分の身に合わせて仕立てなおして着る。「こうちぎ」の対。源氏、桐壺「御祿のもの、うへの命婦とりて賜ふ。白き大袿に御衣一くだり、例のことなり」⇒うちぎ。
おほうちやまオオ…[大内山] (名)「大内」に同じ。源氏、末摘花「もろともに大内山は出でつれど入るかた見せぬ十六夜の月」
おほうちやまオオ…[大内山] (地名)山城の国、京都府葛野郡御室の北嶺の称。第五十九代宇多天皇の離宮のあった所。大和物語「堤中納言、内裏(うち)の御使ひにて大内山の院のみかどおはしますに参り給へり」
おほうみおオオ…[大海] (名)(1)大きな海。(2)海辺のさまの模様を施し裳の称。おほうみの裳。枕草子、十二「裳は、おほうみ・しびら」
おほうみのもオオウミ…[大海の裳] (名)前項の(2)に同じ。宇津保、楼上、下「かうのかさね色の地摺の大海の裳なり」
おぼえ[覚え] (名)(1)人望。評判。声望。徒然草、七十六段「世のおぼえ花やかなるあたりに」(2)君。寵愛。源氏、桐壺「上達部・うへ人なども、あいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御おぼえなり」(3)興味。感興。おもしろみ。徒然草、百三十九段「遅き梅は桜に咲きあひて、おぼえ劣り」(4)技術・力量などの自信。宇治拾遺、二「この尻蹴よといはるる相撲は、おぼえある力、他人よりはすぐれ」(5)記憶。知っていること。落窪物語「おもしろの駒の手なれば、おぼえなくあさまし」(案外であるとの意)
おほえのあさつなオオ…[大江朝綱] (人名)平安時代の詩人・書家。後江相公と称せられた。「和漢朗詠集」に多くの漢詩が収められている。中でも「前途程遠、馳二思於雁山之暮雲一、後会期遥、霑二纓於鴻臚之暁涙一」は最も名高い。天徳元年(957)没。年七十一。
おほえのさだもとオオ…[大江定基] (人名)平安時代の僧。僧名は寂昭。長保四年(1002)入宋。長元七年(1034)寂、生年未詳。平家、灌頂、大原御幸「大江定基奉師が、清涼山にて詠じたりけむ、笙歌遙聞狐雲上、聖衆来迎落日前とも書かれたり」
おほえのちさとオオ…[大江千里] (人名)平安時代、宇多天皇のころの歌人。その歌は「古今集」以下の勅撰集に入っている。「月見ればちぢに物こそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど」の詠者。生没年未詳。主著、大江千里集。
おほえのまさひらオオ…[大江匡衡] (人名)平安時代の漢学者・歌人。文才、当代随一と称せられた。文章博士となる。長和元年(1012)年六十。主著、江吏部集。
おほえのまさふさオオ…[大江匡房] (人名)平安時代の漢学者・歌人。江帥(がうそつ)と称す。中納言・大蔵卿に至る。天永二年(1111)没、年七十。主著、江家次第・江談抄。
おほえびかづらオオ…カズラ (名)「ぶどう」の古名。
おほえまるオオ…[大江丸] (人名)⇒おほとものおほえまる。
おほえやまオオ…[大江山] (地名)丹波の国と丹後の国との境にある山。歌枕としては「与謝の大山」という。金葉集、九、雑上「大江山いく野の遠ければまだふみも見ず天の橋立 小式部内侍」⇒あまのはしだて。
おぼおぼし (形、シク)(1)おぼろげである。おぼつかない。はっきりしない。源氏、常夏「たそがれ時のおぼおぼしきに」(2)うとうとしい。水くさい。冷淡である。源氏、夢の浮橋「おぼしへだてて、おぼおぼしくもてなさせ給ふ」
おほおみオオ…[大臣] (名)臣(おみ)姓の族の統率者。連(むらじ)姓の族の統率者を大連(おほむらじ)というのに同じ。「だいじん」とは異なる概念。おほみ。
おほかがみオオ…[大鏡] (書名)仮名まじり文の歴史物語。またの名を「世継物語」という。第五十五代文徳天皇の時代(850)から第六十八代後一条天皇の時代(1025)に至る百七十六年間の歴史を列伝体にしるしたもの。その動機は「栄花物語」とひとしく、藤原氏の全盛と道長の栄華をとを物語ろうとするにある。作者は未詳。記述のさまは、雲林院の菩堤講に詣でた大宅世継および夏山繁樹といふすこぶる高齢の二老翁が故事を語り合うのを、第三者が筆記したように装うたるものである。文章は、この種のうちでは最もすぐれている。
おほがきオオ…[大垣・大檣] (名)皇居または一般邸宅の周囲にめぐらした大きな垣・築地などの称。宇治拾遺、十一「大宮をくだり往きければ、大檣の内に人の立てるけしき」源氏、榊「ものはかなげなる小柴を大垣にて」
おほかしはでのつかさオオカシワデ…[大膳職] (名)⇒だいぜんしき。
おほかはぢオオカワジ[大川道] (名)「川道」は、川の流れゆく道筋。大川の本流。祝詞、六月晦大祓「四国ト部(よくにうらべ)ども、大川道に待ちまかりて祓ひやれとのる」
おほかわらオオカワラ[大河原] (名)大きな川原。古事記、中「うみがゆけば、こしなづむ、おほかはらの、うゑぐさ、うみがはいさよふ」⇒うみが。⇒うゑぐさ。
おほかみのたけオオ…[大神の岳] (地名)伯耆の国、鳥取県西伯郡の東南隅にある大山(だいせん)の古称。出雲風土記、意宇郡「かため立てしかしは、伯耆(ははぎ)の国なる大神の岳これなり」(「かし」は「船をつなぐ材」。やつかみづおみつのの命が、いわゆる国引きをされたと時、この山を「かし」とされたという。
おほかめりオオ…[多かめり] (句)「多くあるめり⇒多かるめり⇒多かんめり⇒多かめり」と、漸次に変化された形。多いようである。
おほがりオオ…[大雁] (名)(1)「ひしくひ」の古名。(2)「鵞鳥」の古名。雄略紀、十年九月「むさの村主(すぐり)青、呉(くれ)のたてまつれる二つのおほがりをもて、筑紫に到れり」
おほきオオキ (接頭)「大」または「正」の意を冠する語。「おほい」に同じ。大きひじり。大きおみ。おほきものまうすつかさ。おほきみつのくらゐ(正三位)
おほきおとどオオキ…[太政大臣] (名)「だじやうだいじん」に同じ。
おほきおほいどのオオキオオイ…[太政大臣] (名)「だじやうだいじん」に同じ。
おほきおほいまうちぎみオオキオオイモウチ…[太政大臣] (名)「だじやうだいじん」に同じ。
おほきおみオオキ…[大臣] (名)「だいじん」に同じ。
おほきさきオオ…[大后] (名)(1)皇后。正妃。嫡妃。神武紀、辛酉正月「この歳を天皇の元年(はじめのとし)となす。正妃を尊びておほきさきとなしたまふ」古事記、上「その神のおほきさきすせりひめの命、いたくうはなりねたみしたまひき」(2)皇太后。綏端紀、元年正月「母皇后を尊びておほきさきとまうす」
おほしきオオシキ[大きし] (形、ク)大きい。
おほきなりオオキナリ[大きなり] (形動、ナリ)大きい。甚だしい。一通りでない。竹取「御命のあやふさこそ大きなるさはりなれ」宇津保、俊蔭「山のあるじ大きに驚きて」
おほきまうちぎみオオキモウチ…[大臣] (名)「だいじん」に同じ。
おほきみオオ…[大君] (名)(1)天皇。(2)諸王。
おほきみのオオ…[大君の] (枕詞)昔、天皇の行幸の時、御後から「きぬがさ」をかざして奉ったが、これを「みかさ」とも言ったので、「みかさ」に冠し、大君の「たかみくら」から「高倉山に冠する。万葉、[8-1554]「おほきみの三笠の山のもみぢ葉はけふの時雨に散りか過ぎなむ」橘守部集、雑「大君の高倉山の高嶺より落つるしづくやみめぐみの露」
おほぎりオオ…[大切・大喜利] (名)演劇用語。(1)芝居の二番め狂言の最後の幕。「おほづめ」ともいう。(2)その日の芝居の最後の狂言。
おほくかずオオ…[大句数] (名)一時に多くの俳句を詠ずることをいう。「矢数俳諧」ともいう。
おほくちオオ…[大口] (名)「大口袴」「大口の袴」が正式の名であるが多くは略して「大口」という。袴の裾の口が大きくあいているので、この名がある。束帯の時、表袴の下にはくものと、これだけをはくものとの二種がある。枕草子、七「大口、長さよりは口の広ければ、袴いとあぢきなし」平家二、小松教訓「素絹の衣の短らかなるに、白き大口踏みくくみ」
おほくちのオオ…[大口の] (枕詞)「狼」を「真神」ともいったが、狼は口が大きいから「まがみ」に冠するという。万葉、[8-1636]「大口の真神の原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに」⇒まがみのはら。
おほくづれオオクズレ[大崩れ] (名)(1)戦争で、ひどく敗れること。大敗。謡曲、朝長「また、朝長は、都、大崩れにて、膝の口を射させ」(2)山などの大きく崩れること。また、その崩れた場所。
おほくにぬしのかみオオ…[大国主の神] (神名)「大」は美称、「国王」は国を領知するの意。出雲族の首長。のち、高天原族に国をゆずり、出雲の大社に祀られる。多くの名がある。古事記、上「大国主の神、またのみ名はおほなむぢの神と申し、またのみ名は、あしはらしこをの神と申し、またのみ名は、やちほこの神と申し、またのみ名は、うつくしくにたまの神と申す。あはせて五つのみ名あり」
おほくびオオ…[袵] (名)袍・直垂・狩衣などの衿から褄に到る半幅。おくび。おくみ。平家、十一、那須与「与一そのころは未だ二十ばかりの男なり。かちに赤地の錦を似て、袵・端袖いろへたる直垂に萌黄緘の鎧着て」
おほくまことのみちオオ…[大隈言道] (人名)幕末の歌人。福岡の人。歌と書を二川相近に、漢学を広瀬淡窓に学ぶ。のち、難波(大阪)へ出て門弟を指導した。明治元年(1868)没、年七十。主著、ひとりごち・草径集・南楼集。
おほくらきやうオオ…キヨウ[大蔵卿] (名)昔の、大蔵省の長官。一人。正四位下相当。源氏、桐壺「大蔵卿くら人つかうまつる」(「くら人」の意は不明。或は「くし人」すなわち「理髪の役」の誤りか)
おほくらしやうオオ…シヨウ[大蔵省] (名)昔の八省の一。おほくらのつかさ。全国の調庸を管理し、銭・金銀・数珠・権衡・度量・売買の価格などのことをつかさどる役所。
おほくらのつかさオオ…[大蔵省] (名)昔の八省の一。おほくらのつかさ。全国の調庸を管理し、銭・金銀・数珠・権衡・度量・売買の価格などのことをつかさどる役所。
おほけなさオオ… (名)「さ」は形容詞の語幹について「度合」または「さま」の意を添えて名詞とする接尾語。身分不相応さ。大胆さ。もったいなさ。源氏、葵「けしからぬ心のおほけなさを聞こしめしつけたらむ時と、恐ろしければ」大鏡、八「それに、女房の御心のおほけなさは、さばかりの事を簾おろして、わたり給ひしはとよ。あさましかりしことぞかしな」
おほけなしオオケナシ (形、シク)(1)身分不相応である。大胆である。千載集、十七、雑中「おほけなくうきよの民におほふかなわがたつ杣に墨染の袖 法印慈円」⇒見分不相応にも、自分はこの比叡の山に立って、天下の民衆を自分の墨染のころもの袖でおおうことになった。(「杣」は「杣山」で、ここでは「比叡山」をいう)(2)もったいない。おそれおおい。増鏡、二、新島もり「また、信頼衛門督、おほけなく二条院をおびやかし奉り」
おほごしよオオ…[大御所] (名)(1)親王の御隠居所。転じて、その親王を指していう(2)将軍の父の居所。転じてその人を指していう。僣して、関東管領の場合にも称した。
おほざうオオゾウ (名)おもてむき。公然の状態。なおざり。普通。源氏、帚木「やむごとなく、せちに隠し給ふべきなどは、かやうにおほざうなる御厨子などに、うち置き散らし給ふべくもあらず」同、藤袴「おほざうの宮仕えの筋に、らうらうせむとおぼしおきつる」
おほさかオオ…[大阪] (地名)河内から大和に通ずる坂路。今の奈良県北葛城郡下田村大字逢坂の地。古事記、下「おほさかに、あふやおとめを、みちとへば、ただにはのらず、たぎまぢをのる」=(河内の方から)大阪峠にさしかかり、逢った少女に道をたずねたら、まっ直ぐに行かれる近道の大阪路を教えないで、わざわざ遠まわりのたぎま路を行けと教えた。(「たぎま」は今の奈良県北葛城郡当麻(たいま)村の辺)
おほさかどくぎんしふオオ…シユウ[大阪独吟集] (書名)江戸時代初期の俳人西山宗因の編著。二巻。上巻には幾音・素言・三昌・意楽・鶴永の五人。下巻には由平・未学・悦春・重安の四人、計九人の句を収め、佳句には宗因の批判を施している。談林風を知るによい書。延宝三年(1675)刊。
おほさきオオ…[大前・大先] (名)上達部や殿上人の拝賀参内の時、先追いの声を長く引くこと。「小前」の対。枕草子、四「近衛の御門より左衛門の陣に入り給ふ上達部のさきども、殿上人のは短ければ、大前・小前と聞きつけてさわぐ」⇒さきおひ。
おほさざきのもことオオ…[大鷦鷯尊・大雀命] (天皇名)仁徳天皇の御名。「記紀」に多くの御歌が収められている。
おほさぶらいオオサブライ[大侍] (名)有力な大名。古今著聞集、十五、闘争「鎌倉の右府将軍家に、正月朔日、大名ども参りたるけるに、三浦介義村、もとよりさぶらひて、おほさぶらひの座上にさぶらひけり」
おぼし (名)思い給うこと。おぼしめし。栄花、見果てぬ夢「ただにもあらぬ御身にて、人人聞ゆれど、おぼしのままになり給ひぬるも、ことわりに見え給ふ」
おぼし (形、シク)思わしい。思っている。大鏡、はしがき「おぼしきこと言はぬは、げにぞ腹ふくくる心地しける」徒然草、十九段「おぼしきこと言はぬは腹ふくくるわざなれば」
おほしかふちのみつねオオシコウチ…[凡河内躬恒] (人名)平安時代の歌人。三十六歌仙の一人。紀貫之・壬生忠岑と並称される。「古今集」の撰者の一人であるが、生没年未詳。「躬恒集」がある。
おぼしけつ[思し消つ] (動、四)思い消す。うち消す。何とも思わない。気にかけない。源氏、桐壺「いとおしたちかとかどしき所ものし給ふ御方にて、ことにもあらずおぼしけちて、もてなし給ふなるべし」=(弘徽殿の女御は)たいそう我(が)が強くて、負けず嫌いの所のあるお方で、(更衣のなくなったことや、みかどの御悲しみなど)何事でもないように思い消して、御自由に振舞われるのであろう。
おほしたつオオシタツ[生し立つ] (動、下二)育てあげる。養育する。成長させる。宇津保、俊蔭「言ひ教ふることもなくておほしたつるに」
おぼしのどむ[思しのどむ] (動、下二)ゆるゆると考える。うけらが花、七、文詞「後瀬(のちせ)しづかにおぼしのどめたまへかしといふ」
おほしまの[大島の] (枕)周防(山口県)の大島と本土との間に鳴門(なると)があるので「なる」に、また、島は浦に近いことから「うら」に冠する。後撰集、九、恋一「人しれず思ふ心は大島のなるとはなしに嘆くころかな」源氏、玉蔓「舟人も誰を恋ふとかおほしまのうらがなしげに声の聞ゆる」
おほしまれうたオオ…リヨウ[大島蓼太] (人名)江戸時代の俳人。名は陽喬。信濃の国、伊那の人。江戸へ出て、吏登の門に入り、天明俳壇の一巨匠となった。天明七年(1787)没、年六十九。主著、蓼太句集・発句小鑑・筑波紀行。
おほじやうやオオジヨウ[大庄家] (名)江戸時代に庄家の上に位し、数村または数十村、時には一郡を支配したもの。領主から任命され、多くは世襲であった。郡代や代官の支配下。大総代。大横目。大肝煎。検断。
おほすオオス[負はす] (動、下二)「負はす」の転。(1)背にのせる。負わせる。おぶせる。しょわせる。(2)責をおわせる。罪をきせる。かぶせる。古今集、二、春下「木伝(こづた)へばおのが羽風に散る花を誰に負ほせてここら鳴くらむ 素性法師」(3)借金する。狂言、胸突「世に金銭をおほせた者もあれど、金銭故に命を取られた者もないものぢや」(4)名をつける。命名する。古事記、上「名を稲田の宮ぬし須賀のやつみみの神と負はせたまひき」
おほすオオス[仰す] (動、下二)(1)「言う」の敬語。おっしゃる。のたまふ。(2)「命ず」の敬語。御命じになる。言いつけられる。竹取「かの十五日(もち)の日、つかさ・つかさに仰せて」
おほすオオス[課す・科す] (動、下二)(1)物または労力を出すことを命ずる。課す。徴す。徴収する。神代紀、上「もろもろの神たち、罪をすさのをのみことによせ、おほするに千座の置戸(ちくらのおきと)をもつてし」(2)受けさせる。こうむらせる。孝徳紀、大化元年八月「遂に軽さ重さを似て、罪をおほせむ」(3)程に合わせる。似合わせる。源氏、蜻蛉「さまざまにせさせ給ふことは多かりけれども、おどろおどろしかりぬべければ、ただ人人おほせたるほどなり」(4)当てる。打つ。後撰集、十九、離別「をしと思ふ心はなくてこのたぶは行く馬に鞭をおほせつるかな」(「をし」は「愛し」)
おほすオオス[生ほす] (動、四)(1)生じさせる。はやす。古今著聞集、十「爪を長くおほして、敵うをかきけるに」(2)育てる。養育する。成長させる。栄花、花山「母おはせぬ姫君を、わがふところにおほし奉りたれば」
おほす (動、下二)助動詞的に、他の動詞の下に付けて、果たす・終える・とげるなどの意をあらわす語。源氏、末摘花「いとよう書きおぼせたり」
おぼす[思す] (動、四)(1)「思ふ」の敬語。おぼしめす。お思いになる。(2)寵愛される。伊勢物語「昔、おぼやけおぼしてつかう給ふ女の、色許されたるありけり」(「色許される」は禁制の色の衣を着ることを許される)
おほぞらオオ…[大空] (名)広大な空。青空。(2)思慮のないこと。いいかげんなこと。紫式部日記「心にくからむと思ひたる人は、大空にては文や散らすらむと疑はるべかめれば」
おほたかオオ…[大鷹] (名)「小鷹」の対。(1)大きな鷹。また、鷹の雌。(2)「大鷹狩」の略。きじ・うさぎなどをとる鷹狩。徒然草、七十四段「小鷹によき犬、大鷹につかひぬれば、小鷹にわろくなるといふ」(「小鷹」は「小鷹狩」の略で、しぎ・うずらなどをとる鷹狩)
おほたかがりオオ…[大鷹狩] (名)「大鷹狩」の略。きじ・うさぎなどをとる鷹狩。徒然草、七十四段「小鷹によき犬、大鷹につかひぬれば、小鷹にわろくなるといふ」(「小鷹」は「小鷹狩」の略で、しぎ・うずらなどをとる鷹狩)
おほたがきれんげつにオオ…[太田垣蓮月尼] (人名)幕末の女流歌人。名は誠(のぶ)。京都の人。近江(滋賀県)彦根の近藤某の妻となり、夫の死後尼となって、千種有功の門に和歌を学ぶ。陶器を制し、自詠の歌を書きつけて売り、大いに世に称せられた。明治八年(1875)寂、年八十四。主著、蓮月歌集・海仕の刈藻。
おほたきんじやうオオ…ジヨウ[太田錦城] (人名)江戸時代の儒者。名は元貞。加賀の人。江戸へ出て、殆ど独学で大成し、折衷学の権威となった。文政八年(1825)没、年六十。主著、梧窓漫筆・論語大疏・孟子精蘊。
おほたくみオオ…[大匠] (名)「大」は美称。大工。古事記、下「おほたくみ、をぢなみこそ、すみかたぶけり」=大工が甚だ拙劣だから、(家の)隅が傾いているのだ。(「をぢなみ」は)甚だ拙劣なので」)
おほただうくかんオオタドウカン[太田道灌] (人名)室町時代の武将・歌人。名は持資。江戸城を築いた。文明十八年(1486)没、年五十四。
おほたてあげオオ…[大立挙] (名)総体鉄製のすねあて。
おほたなんぽオオタ…[大田南畝] (人名)⇒しよくさんじん。
おほたふのみやオオトウ…[大塔宮] (人名)「だいたふのみや」ともいう。後醍醐天皇の第一皇子。護良親王。天台座主になられたのでこう呼ぶ。太平記、五、大塔宮熊野落事「大塔(おほたふ)宮はいらせ給はで、大唐(おほたう)の玄弉三蔵こそおはしけれとたはぶれければ」⇒だいたふのみや。
おほぢオオジ[祖父] (名)「大父(おほちち)の約転。(1)父母の父。そふ。(2)転じて、老翁。老爺。老人。
おほぢオオジ[大路・大道] 大きな道。本通り。
おほちからオオ…[大税] (名)「おほ」は「正」の意味の接頭語。正税。続紀、文武天皇八月宣命「今年より始めて三とせ、大税の利を収めず」
おぼち・すすち・まぢち・うるち…マジチ… (句)神話で、海神が山幸彦に教えたという呪詛の語。諸説があるが、妥当と思う解を示す。気のふさぐ鉤、心細くなる鉤、貧乏になる鉤、愚かになる鉤。古事記、上「この鉤を、そのいろせに賜はむ時にのりたまはむさまは、この鉤は、おぼち・すすち・まぢち・うるちといひて、後手(しりへで)に賜へ」「神代紀、下」には「おほち・すすみち・まぢち・うるけち」とある。
おほつオオ…[大津] (地名)「大」は美称、「津」は「港」の義。(1)近江の国、琵琶湖の岸にある今の大津市。万葉、[3-288]「わが命しまさきくあらばまたも見む志賀の大津に寄する白波」(2)土佐の国、高知県長岡市の南部、大角(おほつ)郷の一部。浦戸湾に臨む地。土佐日記「二十七日、大津より浦戸をさして漕ぎ出づ」(3)和泉の国、大阪府泉北郡、大津川の川口、大阪湾に臨む地。更級日記「冬になりてのぼるに、大津といふ浦に舟に乗りたるに」
おぼつかなし[覚束なし] (形、ク)(1)不安である。心もとない。源氏、桐壺「若宮のいとおぼつかなく、露けきなかにすぐし給ふも」(2)待ち遠しい。もどかしい。源氏、帚木「いとど長居侍らひ給ふを、大殿にはおぼつかなく恨めしくおぼしたけれど」(3)はっきりしない。古今集、一、春上「をちこちのたづきも知らぬ山中におぼつかなくも呼ぶ子鳥かな」
おほつのみこオオツ…[大津皇子] (人名)天武天皇の第三皇子。歌人・漢詩人。短歌は「万葉集」に冠詩は「懐風藻」に収められている。持統天皇の朱鳥元年(686)十月三日、死を賜った。御年二十三。⇒いしかはのいらつめ。
おほつのみやオオツ…[大津の宮] (地名)天智天皇の皇居。近江の国、滋賀県滋賀郡南滋賀村崇福村がその址というが、明確ではない。万葉、[1-29]「ささなみの大津の宮に、天の下知らしめしけむ、すめろぎの、神のみことの大宮は、ここと聞けども」(柿本人麻呂の長歌の一節)
おほつべオオ…[大津辺] (名)港のほとり。海岸。祝詞、六月晦大祓「大津辺にをる大船を、舳(へ)解き放ち艫(とも)解き放ちて、大海原に押し放つことの如く」⇒おほつ。
おほつぼオオ…[虎子] (名)小便を流し込む筒または壺。増鏡、十、あすか川「殊の外に黄に見えければ、いと怪しうて御おほつぼを召し寄せてごらんぜらる」
おほつゑオオツエ[大津絵] (名)江戸時代に、近江の国(滋賀県)大津で売り出した走り書きの粗画。元祿以前から起り、もと仏画であったが、次第に戯画となり、鬼の念仏、弁慶と釣鐘、藤娘、槍持奴などが主な画題となった。芭蕉の句「大津絵の筆のはじめは何ぼとけ」
おほてオオ…[大手] (名)追手に同じ。太平記、一、頼員回忠事「かやうに大手のいくさ強ければ」
おほててオオ…[大父] (名)祖父。おほぢ。栄花、衣の珠「おほててがおはしけりたるを知らで」
おほどかなりオオドカナリ(形動、ナリ)ゆるやかである。静かである。おおようである。寛大である。源氏、帚木「ふみを書けど、おほどかにことえりをし(ゆったりと) 増鏡、一、おどろがした「このみかどは、いとあてにおほどかなる御本性にて」(寛大な)
おほどくオオドク (動、四)のんびりしている。ゆったりしている。おおようにふるまう。源氏、帚木「かたちをかしく、うちおほどき」狭衣、一、下「年は、はたちにぞなり給ひけれど、いたくおほどき過ぎて、あまりいはけなく、ものはかなきさまにて」
おほとしオオ…[大歳・大年] (名)おおみそか。
おほとじオオ…[大刀自] (名)官女。また、官女のうち、妃の次位にあるもの。
おほとなぶらオオ…[大殿油] (名)「おほとのあぶら」の約。神殿・宮中等において燈台に火をともすための油。転じて、その燈火。宇津保、俊蔭「大殿油も参らざるければ、暗うて見えねば」源氏、帚木「おほとなぶら近くて、ふみどもなど見給ふ」
おほとねりオオ…[大舎人] (名)宮中に宿直し、警衛その他の雑事に仕え行幸の時には供奉する者。大舎人寮に属する。
おほとねりれうオオ…リヨウ[大舎人寮] (名)「おほとねりのつかさ」ともいう。大舎人に関する事務を司る役所。中務省の管下。
おほとのオオ…[大殿] (名)(1)上古の宮殿の正殿の称。(2)大臣(3)摂政・関白・大臣などを子に持った貴人の称。(4)貴人の当主。「世子」の対。
おほとのあぶらオオ…[大殿油] (名)「おほとのなぶら」の原形。
おほとのごもりオオ…[大殿隠り] (名)(貴人)の寝ること。(貴人)の眠ること。源氏、桐壺「ある時には、おほとのごもりすぐして、やがてさぶらはせ給ひなど」
おほとのごもるオオ…[大殿隠る] (動、四)(貴人が)寝る。(貴人が)眠る。おやすみになる。伊勢物語「みこ、おほとのごもらで、あかし給ひてけり」増鏡、二十、月草の花「とりわきて密教の秘法を試みさせ給へば、夜もおほとのごもらぬ日数へて、さすがにいたう困じ給ひにけり」
おほとのほがひオオ…ホガイ[大殿祭] (名)「ほがひ」は「ほがふ」すなわち「祝ふ・寿ふ」の名詞形。宮中の仁寿殿において行う儀式で、宮殿に災変のないようにと祈る祭。「祝詞」に「大殿祭」がある。
おほとものオオ…[大伴の] (枕詞)上古、難波(なには)一帯の地は、大伴氏の領地であったので、そのあたりの地を大伴といった。そこで、その地にあった地名「御津」「高師」に冠する。「みつ」は難波の津。「たかし」は和泉の国、大阪府大鳥郡にあり、今は「高石」という。万葉、[1-63]「いざ子どもはやく大和へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ 山上憶良」同、[1-66]「大伴の高師の浜の松が根を枕(ま)きてし寝(ぬ)れど家し偲ばゆ」
おほとものおほえまるオオ…オオ…[大伴大江丸] (人名)江戸時代の俳人。本名は安井政胤。大阪の人で飛脚問屋を業とした。大島蓼太の門人。その俳風は軽妙酒悦で、談林の風を好んだ。文化二年(1805)没、年八十三。主著、俳諧袋・俳懺悔。
おほとものくろぬしオオ…[大伴黒主・大友黒主] (人名)平安時代の歌人。六歌仙の一人。近江の大友郷の人。貞観年中(860頃)円城寺の神祠の別当となる。その歌は多く「古今集」およびそれ以後の勅撰集に収められている。生没年未詳。
おほとものさかのうへのいらつめオオ…ウエ…[大伴坂上郎女] (人名)奈良時代の女流歌人。「万葉集」の代表的歌人の一人。大伴旅人の妹。大伴家持の叔母。大伴郎女・坂上郎女ともいう。宿奈麻呂の妻となり、大嬢(おほいらつめ)を産む。神亀五年(728)大宰府で没、生年未詳。その歌は、すこぶる多く「万葉集」の収められている。
おほとものさかのうへのおほいらつめオオ…ウエ…オオ…[大伴坂上大嬢] (人名)奈良時代の女流歌人。大伴坂上郎嬢女と宿奈麻呂との間に生まれ、長じて大伴家持の妻となる。家持との贈答歌が多く「万葉集」に収められている。生没年未詳。
おほとものさてひこオオ…[大伴狭手彦] (人名)宜化・欽明朝(536-571)の武人。新羅・高麗を征して功があった。かつて半島へ赴く時、肥前松浦の弟日姫子(おとひひめこ)またの名松浦佐用姫(まつらさよひめ)が別れを惜しんで領巾(ひれ)を振ったという伝説がある。肥前風土記、松浦郡「大伴狭手彦の連、船びらきして仁那(みまな)に渡る時、弟日姫子ここに登りて褶(ひれ)をもて振り招(を)く」
おほとものたびとオオ…[大伴の旅人] (人名)奈良時代の武将・歌人。坂上郎女の兄。家持の父。その歌は多く「万葉集」に収められている。中でも、万葉、[3-338―350]にわたる「酒を讃(ほ)むる歌。十三首は特に有名である。天平三年(731)没、年六十六。
おほとものやかもちオオ…[大伴家持] (人名)奈良時代の武将・歌人。旅人の子。「万葉集」の編者であろうと見られている。作風は個性に富み、感傷的であり、かつすこぶる流麗である。万葉の代表的大歌人。延歴四年(785)没、生年未詳。家集に「家持集」がある。
おほとりオオ…[大鳥] (名)わし・つる・こう・ほうおうなど、すべて形の大きな鳥の総称。
おほとりあゆみオオ…[大鳥歩み] (名)大股に歩くこと。謡曲、烏帽子折「熊坂の長範……五尺三寸の大太刀を、するりと抜いて打ちかたげ、大鳥歩みにゆらりゆらりと歩み出で」
おほとりのオオ…[大鳥の] (枕詞)「羽」「わし」などに冠する。万葉、[2-210]「大鳥のはがひの山に、わが恋ふる、妹はいますと、人の言へば」山斎集、上「大鳥の羽根の崎なる白波にたゆたふ舟の泊まり知らずも」同、同「大鳥の鷲尾の山に並み立てる妻まつの木の年の知らなく」
おほどるオオドル (動、下二)(1)のんびりしている。ゆったりしている。おおようである。源氏、東屋「大路近き所におほどれたる声して」(2)乱れひろがる。源氏、手習「髪のすその俄かにおほどれたるやうに、しどけなく」
おほなおほなオオ…オオ… (副)「おふなおふな」に同じ。
おほなかぐろオオ…[大中黒] (名)上と下が白く、中部に大きい黒い斑のある矢羽。附図参照。保元物語「二十四差したる大中黒の矢、頭高に負ひなし」
おほなかとみのよしのぶオオ…[大中臣能宜] (人名)平安時代の歌人。三十六歌仙の一人。梨壺の五人の一人。坂上望城らと共に「後撰集」を撰した。正暦二年(991)没、年七十。主著、大中臣能宜朝臣集。
おほなほびオオナオビ[大直び] (名)悪事・凶事がりっぱになおって平常に復すること。祝詞、遷却崇神祭「高天原に始めし事を、神ながらも知ろしめして、神直び大直びに直し給ひて」
おほなほびオオナオビ[大直日] (名)前項の意から転じて、神祭の終った後の宴会をいう。なほらひ。古今集、二十、大歌所御歌「おほなほびの歌 あたらしき年の初めにかくしこそ千年をかねてたのしきをへめ」(「おほなほび」にこの歌をうたった。近代では、鎮魂祭にこれを歌う)
おほなほみオオ…[大直日] (名)前項に同じ。神楽歌、或説「宮人の、しでは栄ゆる、おほなほみ、いざわがともに」
おほなむちのかみオオ…[大己貴神・大汝の神] (神名)「おほくにぬしのかみ」に同じ。
おほなむぢのかみオオナムジ…[大穴牟遅神] (神名)「おほくにぬしのかみ」に同じ。
おほにへオオニエ[大嘗] (名)「おほ」は美称。「にへ」は食事。(1)御食事。古事記、上「おほにへきこしめす殿に、くそまり散らしき」(2)特に、新米を饗する儀式。古事記、下「難波の宮にましましし時、大嘗にまして、とよのあかりせす時に、大御酒にうらげて大御寝ましき」
おほにへのまつりオオニエ…[大嘗の祭] (名)前項(2)に同じ。祝詞「おほにへのまつり」
おほぬさオオ…[大幣・大麻] (名)「おほ」は美称または「大きい」義、「ぬさ」は祓をする時、神主または陰陽師の持つ串につるす麻・木綿(ゆふ)・帛・紙などをいう。昔、祓の終った時、人人がその「ぬさ」を引き寄せて撫でる習慣があった。伊勢物語「大幣の引く手あまたになりぬれば思へどえこそたのまざりけれ」(女から、浮気な男に言ってやった歌)
おほねオオ…[大根] (1)(名)だいこん。つちおほね。古事記、下「つぎねふ、やましろめのこ、くはもち、うちしおほね」=山城の女子が鍬をもって掘り起こした大根(の葉)。(「つぎねふ」は枕詞)(2)太い矢の根。大磯虎稚物語「大根の雁股」(3)ものごとの起り。根源。心底。古川柳「腰元の親もおほねはその気なり」(殿の寵愛を受けることを望む心底)
おほのうらオオ…[於保の浦] (地名)「おほ」は意宇(おう)の転訛。古の出雲の国の意宇川の河口で、海に臨む地。今の島根県八束郡出雲郷(あだかい)村の海岸。万葉、[20-4472]「大君のみことかしこみおほの浦を背向(そがひ)見つつ都へのぼる」
おほのかなりオオノカナリ (形動、ナリ)「おほどかなり」の訛。ひどく大きい。おおようである。おおまかである。おおげさである。枕草子、五「あさましきもの……さるおほのかなるものは、ところせく久しくなどやあらむとこそ思ひしか」(ひどく大きい)宇治拾遺、一「あさましう、おほのかにものいふものかなと聞きて寝入りぬ」(おおげさに)
おほのひさすけオオ…[多久資] (人名)鎌倉時代の人。神楽および高麗楽の舞人。永仁三年(1295)没、年八十一。徒然草、二百二十五段「多久資が申しけるは、通憲入道、舞ひの手の中に興あることをえらびて磯の禅師といひける女に教へて舞はせけり」
おほのやすまろオオ…[太安万呂・太案麻呂] (人名)奈良時代の文学者・国史編修者。民部卿。元明天皇の命により、和銅五年(712)稗田阿礼の誦述をもととして「古事記」三巻を献進し、さらにのち、舎人親王の下で「日本書紀」の編修に当たった。養老七年(723)没、生年未詳。
おほばオオ…[祖母] (名)「大母(おほはは)」の約転。父母の母。そぼ。
おほばオオ…[大庭] (名)「大庭(おほには)」の約転。宮殿前の広場。
おほはらオオ…[大原] (地名)(1)昔の山城の国愛宕郡の東南部、今の京都市左京区大原の地。大原女・寂光院などで有名。平家、溝頂、大原御幸「法皇は文治二年の春のころ、建礼門院の大原の閑居の御栖居ごらんぜまほしうおぼされ」内藤丈草の句「大原や蝶の出て舞ふおぼろ月」=静かな大原の野のおぼろ月の夜、白い蝶が出て、ふわりふわりと舞っている、幻想的な想像的情景。(2)大和の国、奈良県高市郡飛鳥村小原の地。藤原の別称。藤原鎌足の本居。万葉、[2-103]「わが里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後」
おほはらのオオ…[大原野] (神社名)藤原氏の氏神「大原野神社」の略。京都府乙訓郡の西端の大原野にある。枕草子、十一「神は……大原野・かもはさらなり」徒然草、二十四段「ことにをかしきは、伊勢・加茂……大原野」
おほはらひオオハライ[大祓] (名)(1)国家の行う大きな祓。古事記、中「国の大祓をして、また、建内宿禰、沙庭にゐて神のみことを請ひまつりき」(2)六月・十二月の晦日に行われた大きな祓。親王以下、百官、朱雀門に会して、ト部が祝詞を奉し、祓を行った。百官・万民の犯した罪やけがれを除き去るためである。
おほはらへオオハラエ[大祓] (名)六月・十二月の晦日に行われた大きな祓。親王以下、百官、朱雀門に会して、ト部が祝詞を奉し、祓を行った。百官・万民の犯した罪やけがれを除き去るためである。
おほはらやまオオ…[大原山] (地名)⇒をしほやま。
おほばんオオ…[大判] (名)徳川幕府の発行した橢円板状の大きな金銀貨。すなえあち大判金・大判銀の総称。「小判」の対。また、特に「大判金」をいう。
おほばんオオ…[大番] (名)(1)諸国の武士が交代の京都へのぼり皇居を護衛し、市中を巡警すること。大番勤。大番役。(2)殿上人が殿上に当直すること。「小番」の対。(3)徳川幕府の職名。戦時は先鋒の精兵となり、平時は江戸城営中および二の丸諸門を警護する。
おほばんしゅうオオバン…[大番衆] (名)(1)の人人の称。平家、四、信連合戦「先年、所にありし時、大番衆の者どものとどめかねたりし強盗六人に、ただ一人追つかかり」(「所」は「蔵人所」)
おほばんづとめオオバンズトメ[大番勤] (名)大番(1)に同じ。曾我物語、一「さすがに俟野は角觝(すまふ)の大番勤に都へのぼり、三歳の間、都にて角觝になら、一度も不覚をとらぬ者なり」
おほばんやくオオ…[大番役] (名)大番(1)に同じ。曾我物語、一「さすがに俟野は角觝(すまふ)の大番勤に都へのぼり、三歳の間、都にて角觝になら、一度も不覚をとらぬ者なり」
おほひづかさオオイズカサ[大炊寮] (「大飯(おほいひ)寮」の義。諸国から運んで来る飯米・雑穀を収納し、諸司の食料分給のことをつかさどる役所。おほひれう。宮内省の所管。附図参照。竹取「人の申すやうは、おほひづかさの飯炊ぐ屋の棟に、つくの穴ごとに燕は巣をくひ侍り」
おほひどのオオイ…[大炊殿] (名)邸宅の一部、食物を調理する所。源氏、明石「うしろの方なる、大炊殿とおぼしきやうにうつし奉りて」
おほひのみかどオオイ…[大炊帝・大炊天皇] (天皇名)第四十七代淳仁天皇の別称。天皇のいみなを「大炊」と称したのによる。古今著聞集、二、釈教「大炊天皇の御時、横佩(よこはぎ)のおとどといふ賢智の臣侍りけり」
おほひるめのみこと大…[大日■尊] (神名)天照大御神の別名。次項参照。神皇正統記、一「地神第一代大日■尊、これを天照大神と申す」
おほひるめのむちオオ…[大日■貴] (神名)前項に同じ。「大」は美称、「ひる」は「昼」、「めし」は「女」、「むち」は「親しみ」の尊称。すなわち、昼をつかさどる女神。太陽神である。あまてらすおほひるめのみこと。おほひるめのみこと。神代紀、上「ここに共に日の神を生みます。大日■貴とまうす。大日■貴、これをばオホヒルメノムチといふ」
おほひれうオオイリヨウ[大炊寮] (名)「おほひづかさ」に同じ。
おほひれやまオオ…[大比礼山] (地名)「枕草子春曙抄」に「摂津の国なり」とあるが、今のどの山に当たるか未詳。枕草子、一「山は……いはた山、おほひれやまもをかし」
おほひんがしオオ…[大東] (名)「おほ」は「正」の意の接頭語。正しく東に当たること。真東。宇治拾遺、一「あれは七条町に、江冠者が家のおほひんがしにあるいもじ」
おほふんどうオオ…[大分銅・大法馬] (名)江戸時代、天秤ばかりの分銅の形に鋳た厚い地金。目方は四十四貫七百匁という。折り焚く柴の記「神祖の御時、黄金千枚づつを居以て大法馬をつくられ」(「神祖」は「家康」を指すが、大分銅の作られたのは万治年中(1660頃)であるから、白石の誤りであろう)
おほべオオ…[大嘗] (名)「おほにへ⇒おほんべ⇒おほべ」と変化した語。「だいじやうゑ」に同じ。
おぼほし (形、シク)(1)おぼつかない。おぼろげである。おぼおぼし。万葉、[10-1909]「春霞山にたなびきおぼほしく妹を相見てのち恋ひむかも」(2)心が晴れない。気がふさいでいる。万葉、[4-611]「今更に妹に逢はめやと思へかもここだわが胸おぼほしからむ 大伴家持」
おぼほす[思ほす] (動、四)「思ふ」の敬語。お思いになる。おぼしめす。おぼす。源氏、桐壺「いよいよあかずあはれなれなるものにおぼほして」
おぼほる[溺ほる] (動、下二)(1)水に沈む。溺れる。古今集、十九、長歌「くれたけの……なにはのうらに、たつなみの、なみのしわにや、おぼほれむ」(壬生忠岑の長歌の一節)(2)ぼんやりする。ぼける。うろうろする。増鏡、はしがき「若かりし世に見聞き侍りし事は、ここらの年ごろに、うば玉の夢ばかりだになくおぼほれて、何のわきまへか侍らむ」紫式部日記「きのふしをれくらし、けさのほど朝霧におぼほれつる女房など、みなたち散(あか)れつつ休む」
おほまうちぎみオオモウチ…[大臣] (名)「おほまへつぎみ」の音便。だいじん。
おほまちぎみオオ…[大臣] (名)前項の約。だいじん。
おほまえオオマエ[大前] (名)「神仏・天皇・貴人等の前」の敬称。おんまへ。みまへ。ふとまへ。ひろまへ。祝詞、祈年祭「すめおほみかみの大前に、横山のごとうち積み置きて」
おほまへつぎみオオマエ…[大臣] (名)天皇の前にさぶらう人を「まへつぎみ」といい、その中で最上位にある意で「大」を冠したもの。すなわち、だいじん。成務紀、三年正月「武内宿禰を以ておほまへつぎみとみなす」(「おほいまちぎみ」とも訓ずる。「おほおみ」ではない。武内家は「おみ」姓ではないからである)
おほまんどころオオ…[大政所] (名)摂政・関白などの母の称。
おほみオオ…[大臣] (名)「おほおみ」の約。「おほおみ」にお同じ。古事記、下「すなはち、その天皇の頸を打ち斬り、都夫良おほみの家に逃げ入りましき」
おほみオオ…[大身] (名)天皇または皇族の御身。
おほみオオ…[大御] (接頭)神・天皇などに関する語に冠して、大いに尊ぶ意を示す。音便で「おほん」となることもある。おほみ神。おほみ代。おほみ手。おほみさかづき。おほん時。
おほみあへオオミアエ…[大饗] (名)(1)天皇に奉る御食物。(2)宮中で諸臣に賜わる酒宴。
おほみかむなぎオオミカン…[大御巫] (名)「かむなぎ」の敬称。祝詞、祈年祭「おほみかむなぎのたたへごと竟(を)へまつる」
おほみきオオ…[大御酒] (名)「酒」の敬称。おみき。伊勢物語「親王(みこ)に、馬頭(うまのかみ)おほみきまゐる」
おほみけオオ…[大御食] (名)天皇のきこしめす食物。
おほみけつかみオオ…[大御膳都神] (神名)「みけつかみ」すなわち「いなりの神」の敬称。祝詞、祈年祭「大宮のめ、大御膳都神、ことしろぬしと、御名はまをして」
おほみこともちのかみオオ…[太宰帥] (名)大宰府の長官。
おほみこともちのつかさオオ…[太宰府] (名)太宰府。天皇の大御言を捧持して任国を治める官府の義。
おほみたからオオ…[公民・人民] (名)「天皇の大御宝」の義で、国民大衆をいう。祝詞、広瀬大忌祭「天の下のおほみたからのとり作れる奥つ御歳を、悪しき風、荒き水にあはせたまはず」(「おきつみとし」は「稲」)古事記、中「この天皇の御世に、疫病(えやみ)さはに起り、おほみたから死(う)せて尽きなむとす」
おほみなとオオ…[大湊] (地名)土佐の国、高知県長岡郡と香美郡との間にあった港であろう。はっきりしない。土佐日記「二十八日、浦戸より漕ぎ出でて大湊を追ふ。
おほみねオオ…[大峰] (地名)「大峰山」の略。水鏡、上「大峰・葛城などには、尊きことにも、また、恐ろしきことにも遇ひ侍る」
おほみねいりオオ…[大峰入] (名)修験者が修行のために大峰山に入ることをいう。「みねいり」ともいう。熊野側から入るのを「順の峰入」といい、吉野側から入るのを「逆の峰入」という。
おほみねさんオオ…[大峰山] (地名)奈良県吉野郡の中部を南北に走り、紀伊山脈の中軸をなす一大連峰。略して「大峰」という。古来、修験道修行の霊地として峰入をする行者が多い。
おほみまオオ…[大御身] (名)「おほみ」は敬意を示す接頭語、「ま」は「身」の転音。「身」の敬称。古事記、上「あは、おほみまの祓せむとのりたまひて」(高貴の方は、自身のことに敬語を用いる)。
おほみまオオ…[大御馬] (名)「馬」の敬称。天皇のお乗りになる馬。
おほみやオオ…[大宮] (名)(1)「大御家」の義。宮殿。禁裏。(2)おほきさき。太皇太后または皇太后。源氏、少女「大宮はあかずあさましきこととおぼしたるぞ、ことわりにいとほしかりける」「大宮御所」
おほみやすどころオオ…[大御息所] (名)(1)天皇の御休息所。(2)転じて、「後宮」のこと。
おほみやすみどころオオ…[大御息所] (名)(1)天皇の御休息所。(2)転じて、「後宮」のこと。
おほみやすんどころオオ…[大御息所] (名)「おほみやすみどころ」の音便。おほみやすどころ。伊勢物語「昔、おほやけおぼして仕う給ふ女の、色ゆるされたるありけり。おほみやすんどころとていますかりけるいとこなりける」
おほみやびとオオ…[大宮人] (名)宮中に仕えまつる百官の人人。男女共にいう。万葉1-30
「ささなみの志賀の唐崎さきくあれど大宮人の船待ちかねつ 柿本人麻呂」=滋賀の唐崎は昔のままの美しい景色であるが、(昔の大津の宮の)大宮人の船は、いくら待っても、やって来ない。さてさて寂しいことだ。(「ささなみの」は枕詞)
おほみわオオ…[大三輪] (地名)「大」は美称。「三輪山」のこと。祝詞、出雲国造神賀詞「やまとの大物主櫛■玉命と名をたたへて、大三輪のかむなびにませ」⇒みわやま。
おほみわじんじやオオ…[大神神社] (神社名)大和の国、奈良県磯城郡三輪町諸山にある神社。祭神は、やまとの大物主櫛■玉命(大国主命のさきみたま・くしみたま)である。古来、酒の神として酒造家の信仰があつい
おほむねオオ…[大旨] (名)だいたいの意味。主旨。大意。
おほむねオオ (副)おおよそ。だいたい。おおかた。ほぼ。
おほむらじオオ…[大連] (名)連(むらじ)姓の族の統率者。臣(おみ)姓の族の統率者たる大臣(おほおみ)と共に政治に参与した。。
おぼめかし (形、シク)はっきりしない。がてんがゆかない。ぼうっとしている。枕草子、一「そのかたおぼめかしからぬ人、ふたりみたりばかり召し出でて」=そのかた(古今集のことなどを)はっきり知っている女房を二、三人お召しになって。
おぼめかす (動、四)ほのめかす。それとなく知らせる。
おぼめく (動、四)おぼつかない。はっきりしない。ぼかす。まどう。⇒うちおぼめく。
おほめつけオオ…[大目附] (名)徳川幕府の職名。老中の耳目となって、幕府の政務を監察し、かつ諸大名の糾察をつかさどる職。折り焚く柴の記、中「大目附・勘定奉行らの人人召し供せられし」
おほものぬしのかみオオ…[大物主神] (神名)「大国主神」の一名。
おほもんのさしぬきオオ…[大紋の指貫] (名)大形の模様のある指貫。平家、二、教訓「小松殿、烏帽子・直衣に、大紋の指貫のそばを取って、ざやめき入り給へば」⇒さしぬき。
おほやオオ…[大矢] (名)(1)普通より長い矢。(2)大矢を引く人。
おほやうオオヨウ (副)たいがい。だいたい。古今著聞集、十二、博奕「よきほどほどにおし出だすに、おほやうは、かきおほせて」
おほやかずオオ…[大矢数] (名)(1)一昼夜の間、矢を射つづけること。日中だけの場合を「小矢数」という。(2)転じて、一時に、早く、つづけざまに俳句を作ること。談林派は興行的に行い、西鶴のごときは一昼夜に二万三千五百句をたてつづけに作ったという。
おほやけオオ…[公] (名)(1)朝廷。政府。官庁。竹取「くらもちの御子は、心たばかりある人にて、おほやけには、筑紫の国に、ゆあみにまからむとて暇申して」(朝廷)(2)天皇または皇后。竹取「かぐや姫……いみじく静かに、おほやけに御文たてまつりたまふ」(天皇)(3)国家。世間。枕草子、二「こころゆくもの……おほやけ・わたくしおぼつかならず聞きよきほどに語りたる」(4)表にあらわすこと。秘密にしないこと。「おほやけにす」
おほやけごとオオ…[公事] (名)(1)公に仕えること。公務。まつりごと。源氏、真木柱「おほやけごとのしげきにや、わたくしのこころざしの深からぬにや」(2)宮廷の儀式・節会などの総称。公事(くじ)。伊勢物語「おほやけごとどもありければ、えさぶらはで」(3)私事でなく、公共的・世間一般のこと。
おほやけどころオオ…[公所] (名)(1)宮中。朝廷。官庁。(2)朝廷の御領地。官有のところ。
おほやけのうしろみオオ…[公の後ろ見] (名)(1)摂政。関白。(2)朝政を補佐すること。
おほやけのかためオオ…[公の固め] (名)(1)摂政。関白。(2)朝政を補佐すること。
おほやけばらオオ…[公腹] (名)公憤。義憤。
おほやけばらたつオオヤケバラタツ[公腹立つ] (動、四)私事でなく、公のことで怒る。世に行われた不正などに対して腹を立てる。枕草子、十「たのもしきもの……あさましうおほやけばらだちて、眷属(けんぞく)のここちも心憂く見ゆべけれど、身の上にては、つゆ心苦しき思ひ知らぬよ」
おほやけびとオオ…[公人] (名)朝廷に仕える人。官人。宮仕えする人。男女ともにいう。竹取「ここらのおほやけびとに見せて恥見せむ腹立ちをり」
おほやしまオオ…[大八洲・大八島] (地名)日本国の古称。「おほやしまぐに」の略。古事記、序文「飛鳥の清原(きよみはら)の大宮に、大八洲しろしめしし天皇の御世におよびて」
おほやしまかまどのかみオオ…[大八島竈の神] (神名)昔、大炊寮に祭られた神。日本中のかまどを司る神。⇒やしまのかなへ
おほやしまぐにオオ…[大八洲国・大八島国] (地名)日本国の古称。古事記、上「かれ、この八島まづ生みませるくになるによりて大八島国といふ」
おほやちまたオオ…[大八衢] (名)「大」は美称。「八衢」道の諸方へ分かれるところ。道の辻。祝詞、道饗祭「大八衢にゆついはむらの如く塞がります」=道の辻に磐石のように、立ちふさがっている。
おほやまとオオ…[大倭] (地名)日本国の古称。「大」は美称、「やまと」は大和の国の一地方の名から起って、全日本国の意となったものという。おほやまととよあきつしま。おほやまとねこ。
おぼゆ[覚ゆ] (動、下二)(1)思う。感ずる。(2)記憶する。(3)学んで知る。(4)話す。記憶をよびおこして語る義。大鏡、一、はしがき「いと興あることなり。いでおぼえ給へ。時時さるべきことのさしいらへ、繁樹もうちおぼえ侍らむかし」(5)似る。源氏、若柴「あま君の見上げたるに、すこしおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ」
おほゆかオオ…[大床] (名)(1)神社の簣子縁。(2)武家の邸宅の広廂(ひろびさし)。
おほゆゑ[大湯坐] (名)貴人の御子の沐浴を司る婦人中の主任。副主任を「わかゆゑ」という。古事記、中「御母(みおも)を取り、大湯坐・若湯坐を定めて、ひたし奉るべし」=乳母をつけ、お湯をつかわせる主任・副主任を定めて、お育てになるのがよろしいでしょう。
おほよそにオオヨソニ (副)だいたいに。一通りに。かりそめに。なおざりに。万葉、[7-1312]
「おほよそにわれし思はば下に着て穢(な)れにし衣(きぬ)を取りて着めやも」=わたくしがあなたのことをいいかげんに思っているなら、下に着ていてよごれた着物を再び取って着るように、古い恋人のあなたに再び逢おうと思うでしょうか。
おほよそびとオオヨソ…[凡人] (名)ゆかりのない人。一般世人。おほよその人。
おほよどオオ…[大淀] (地名)伊勢の国、三重県多気郡の、伊勢湾に臨む海浜の地。斎宮の御禊をされたところ。伊勢物語「昔、男、狩の使ひより帰り来けるに、大淀のわたりに宿りて、斎宮のわらべにいひかけける」
おほろかにオオロカ二 (副)形容動詞の連用形かと思われるが、「-なり」「-なる」の用例が見えないから、しばらく副詞としておく。(1)怠慢に。疎略に。おろそかに。なおざりに。古事記、下「然るに、そのくろびこのみこ、うちも驚かずて、怠緩(おほろか)におもほせり」仁徳紀、三十年十一月「つぬさはふ、いはのひめが、おほろかにきこさぬ、うらぐはのき」=磐之媛が疎略にお思いにならない桑の木。(2)多く。宇治拾遺、二「卒都婆に、血のおほらかにつきたりければ」
おぼろげ[朧気] (名)(1)たしかでないこと。漠然としていること。(2)一通り。普通。尋常。枕草子、十一「御棧敷の前に陣をすゑさせ給へるは、おぼろげのことか」(「ことか」は「ことかは」の意。)(3)転じて、「おぼろげならず」の意。一通りでないこと。土佐日記「おぼろげの願ひによりてにやあらむ。風も吹かず、よき日出で来て」
おほわだオオ…[大曲] (名)入江。湖などの大きく曲がり込んで水のよどんでいるところ。万葉、[1-31]「ささなみの志賀のおほわだよどむとも昔の人にまたも逢はめやも 柿本人麻呂」=琵琶湖の入江よ、いかによどんで待とうとも、(大津の宮の)昔の大宮人たちにまた逢うことができようか。(「ささなみの」は枕詞)
おほわだのはまオオ…[大和田の浜] (地名)歌枕の一。摂津の国三島郡神崎川の河口附近の海浜。今は大阪市に編入されている。万葉、[6-1067]「浜清み浦うるはしみ神代より千船の泊まる大和田の浜」
おほわらわオオ…[大童] (名)(1)おとなの、髪の結びが切れて、童のおかっぱのようになること。乱髪。平家、七、篠原合戦「かぶとも打ち落され、大童になりて」(2)冠をつけない姿。古事談、ニ「長季は宇治殿若気也。すなはち大童にて首服を加へず」
おほゐがはオオイガワ[大堰川・大井川] (地名)山城の国の川。今、京都市に属す。上流を保津川といい、嵐山と亀山との間を流れる。枕草子、三「川は……おほゐ川・いづみ川」徒然草、五十一段「亀山殿の御池に大井川の水をまかせられむとて」(「まかせられる」は「お引きになる」)
おほゐがはオオイガワ[大井川] (地名)静岡県の大河。上流を田代川といい、駿河と遠江との国境を流れて駿河湾に入る。十六夜日記「思ひ出づる都のことは大井川いくせの石のかずもおよばじ」(「多い」と「大井」とをかけている)俚謡「箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川」
おほゐこがはらオオイ…[大井子が原] (地名)大和の国、奈良県南葛城郡御所町と秋津村大字池内との中間にある蓬原の古称という。古事記、中「みもろの、そのたかきなる、おほゐこがはら、おほゐこが、はらにある、きもむかふ、こころをだにか、あひおもはずあらむ」=(愛する皇后よ、あなたは宮中に帰って来ないが)あの三宝山のあたりの高城にある大井子が原に住む大猪の腹にも心がある。(別れていても)心だけでも相思わぬということがあろうか。(「きもむかふ」は「心」の枕詞。
おほをオオオ[大丘・大峰] (名)大きな丘。大きな峰。古事記、下「こもりくの、はつせのやまの、おほをには」
おほをオオオ[大緒] (名)鷹の足革を結びつける緒。宇津保、吹上、下「鷹四つすゑたり。白き緒のおほを」
おほをそどりオオオソ…[大嘘鳥] (名)烏をののしっていう語。万葉、[14-3521]「からすとふおほをそどりの真実(まさで)にも来まさぬ君を児ろ来(く)とぞ鳴く」=からすという大うそつきのあわて鳥が、ほんとうに来ない君がいかにも来るように「ころく」などと鳴いている。
おほをぢオオオジ[大伯父・大叔父] (名)祖父母の兄または弟。
おほをばオオオバ[大伯母・大叔母] (名)祖父母の姉または妹。
おほんオオン[大御] (接頭)「おほみ」の音便。⇒おほみ。
おほんぞオオン…[大御衣] (名)「おほみそ」の音便。御衣服。
おほんたからオオン…[公民・人民] (名)「おほみたから」に同じ。
おほんべオオ…[大嘗] (名)「おほにへ」の転。「だいじやうさい」に同じ。
おまし[御座] (名)(1)天皇または貴人のおいでになるところ。伊勢物語「親王(みこ)よろこび給うて、夜のおましの設けせさせ給ふ」(2)しきもの。しとね。紫式部日記「御帳のかたびらかけ、おましども持てちがふほど、いとさわがし」
おましどころ[御座所] (名)天皇または貴人のおいでになるところ。二重畳の上に敷物を敷く。おまし。おましましどころ。御座所(ござしよ)。祝詞、鎮御魂斎戸祭「来たる十二月(しはす)に到るまでに、平らけくおましどころに御座(まさ)しめ給へと」
おまします[御座す] (動、四)おいでになる。まします。いらせられる。おはします。神皇正統記、二「第三代、安寧天皇は……天下を治めたまふこと三十八年、五十七歳おましましき」
おまへオマエ[御前] (名)(1)「前」の敬語。おほまへ。みまへ。枕草子、七「なほ世にめでたきもの、臨時の祭の御前ばかりのことは、何事にかあらむ」(臨時の祭の、天皇の御前の儀式)(2)天皇または貴人の別称。枕草子、一「かけまくもかしこきおまへを始め奉り」(天皇)
おまへのいけオマエ…[おまへの池] (地名)大和の国、奈良県生駒郡にある池(金子元臣の説)。枕草子、三「池は…おまへの池、また何の心につけけるならむとをかし」(「何の心に」は「どういう意味で」)天皇)
おまへまうしオマエモウシ[御前申し] (名)天皇に申し上げること。奏聞。奏上。蜻蛉日記「おまへまうしこそ、御いとまひまなかんべかんめれば、あいなけれ」⇒あいなし。
おみ[臣] (1)朝廷に仕える臣(しん)。臣下。(2)姓(かばね)の一。上代、多く臣籍に列せられた皇族の方に賜わり、連(むらじ)と並んで朝政に参加した。天武天皇の八色の姓を定められた時には、第六位に置かれた。「記紀」に「わにのおみ」「みちのおみ」などとあるのが、その姓のその人である。⇒おほおみ。
おみ (接頭)「おほみ」の略。敬意を示す語。おみこし。おみき。
おみな[嫗] (名)年老いた女。老女。おむな。おうな。古事記、上「おきなとおみなとふたりありて、をとめを中にすゑて泣くなり」(備考、「をみな」「をんな」は「女」)
おみのをとこ…オトコ[臣の男] (名)天皇に仕える壮年の男子。万葉、[3-369]「もののふの臣のをとこは大君の任(まけ)のまにまに聞くとふものぞ」(御命令のままに働く意)
おみのをとめ…オトメ[臣の少女] (名)天皇に仕える年少の女子。古事記、下「みなそそく、おみのをとめ、ほだりとらすも」=臣の少女がほだり(酒器)をとるよ。(「みなそそく」は「おみ」の枕詞)
おみやうじオミヨウジ[陰陽師] (名)「おんやうじ」に同じ。宇津保、藤原の君「おみやうじ・かんなぎ。ばくち・京わらべ・おきな・おうなを召し集めて」
おむ[怖む] (動、下二)恐れる。臆する。おづ。弁内侍日記、下「やり水に落ち入り侍りしを、おめたる鬼とて人人笑はせ給ふ」「おめずおくせず」
おむかしさ (名)よろこばしさ。うれしさ。
おむかしみ (名)よろこばしいと思うこと。うれしく思うこと。神功紀、四十九年三月「相見ておむかしみす」
おむかしむ (動、四)うれしくおもう。よろこぶ。雄略紀、四年八月「天皇その心あるをおむかしみたまひて」(別訓「よろこび」)
おむな[嫗] (名)「おみな」の音便。「おみな」に同じ。
おむろ[御室] (寺名)「御室御所」の略で、「仁和寺」のこと。山城の国の葛野郡花園村字御室(今、京都市右京区に編入)の仁和寺を、宇多法皇が皇居とされたことから、御室御所と呼び、略して御室と呼ぶ。徒然草、、五十四段「御室にいみじきちごのありけるを」⇒にんなじ。
おも[母] (名)(1)はは。ははおや。古事記、上「おもの乳汁(ちしる)」(2)乳母。めのと。万葉、[12-2925]「みどりごのためこそおもは求むといへ乳(ち)飲めや君がおも求むらむ」
おもがい[面繋] (名)「おもがき」の音便。馬具の一。馬の頭から轡にかけて飾りとする組緒。
おもがくし[面隠し] (名)(1)女が恥ずかしさに顔を隠すこと。万葉、[12-2916]「たまかつま逢はむといふは誰なるか逢へる時さへおもがくしする」(「たまかつま」は「逢ふ」の枕詞)(2)見苦しいところを隠すこと。
おもがくす[面隠す] (動、四)(1)女が恥ずかしさに顔を隠す。万葉、[11-2554]「相見ては面隠さるるものからに継ぎて見まくの欲しき君かな」(2)見苦しいところを隠す。枕草子、十一「屋の上は、ただおしなべて白きに、あやしきしづの屋もおもがくして」
おもかし (形、シク)うれしい。よろこばしい。
おもかぢ…カジ[面舵] (名)船の舳先を右へ向ける時の舵のとりかた。「とりかぢ」の対。太平記、七、先帝船上臨幸事「船頭まことにうれしげなる気色にて、取舵・面舵とりあはせて、片帆にかけてぞ馳せたりける」
おもかつ[面勝つ] (動、四)顔をあわせて恥じない。ものに向かって恐れない。古事記、上「いましは、たわやめなれども、い向かふ神と面勝つ神なり」
おもがはり…ガワリ[面変はり] (名)おもざしの変わること。かおつきの変わること。源氏、榊「東宮見奉らで、面変はりせむことをあはれにおぼさるれば」
おもしろ[面白] (名)おもしろいこと。古語拾遺「あはれ、あな、おもしろ」謡曲、絵馬「おもしろや、おもてしろやと、覚えず岩戸を少し開いて感じ給へば」
おもただし[面ただし] (形、シク)面目がある。おもておこしである。「おもぶせ」の対。源氏、桐壺「年頃、うれしくおもただしきついでにて、立ち寄り給ひしものを」枕草子、十一「そこに入りゐて見るは、いとおもただし」
おもづら…ズラ[靮・韅] (名)「おもてづな」の義。馬の面の鼻の上にかける綱。装飾とともに牽くに便利のために用いる。「おもがい」とは異なるもの。古今著聞集、十六、興言利口「さてさて、また何かにあると度度いはれて、憚りたる気色にて、御おもづらも候ふといひたりける」
おもて[表] (名)(1)連歌・俳諧などで懐紙の初折の表の半面の見渡し。百韻の懐紙には四折とも表裏があるが、普通にただ「表」というのは初折の表のこと。(2)家のうちで客の接待をするところ。表座敷。「奥」の対。源氏、桐壺「月影ばかりぞ八重葎にも障らずさし入りたる。南おもてにおろして、母君とみにえものものたまはず」(勅使を正面の表座敷へお通しするために、車をその前でおろしたのである)(3)その他多くの意味があるが、現代語の内容とだいたい同じである。
おもて[面] (名)(1)めんぼく。もんもく。源氏、榊「いづこをおもてにかは、またも見え奉らむ」(2)能楽に使用する仮面。めん。狂言、抜殻「ここに鬼のおもてがござるほどに」(3)かお。つら。面体。万葉、[5-804]「よのなかの……か黒き髪に、いつの間か、霜の降りけむ、くれなゐの、おもての上、いづくゆか、皺(しわ)かき垂りし」(山上憶良の長歌の一節)おもで[重手](名)重いきず。痛手。深手。重傷。
おもておこし[面起し] (名)面目をほどこすこと。名誉。源氏、榊「みづからのおもておこしになむ」琴言集、十五、祭二芳宜園大人墓一文「また、ことこのみの人は、その名を君に知られては、身のおもておこしと思ひて、世にもほこり」
おもておこす[面起す] (動、四)面目をほどこす。名誉になる。宇津保、俊蔭「この子は、わが面起しつべき子なり」増鏡一、おどろのした「構へて、まろが面起すばかり、よき歌つかうまつれ」
おもてがた[面形] (名)おもて。めん。仮面。今昔物語、二十八「面形を取り去らば、人もぞ見知ると思ひければ、面形をしながら申の時ばかりに馳っせて行きければ」
おもてしろ[面白] (名)「おもしろ」に同じ。
おもてつれなし[面つれなし] (形、ク)恥ずかしい顔もせず平気である。厚顔無恥である。鉄面皮である。薄情である。平治物語、二、義朝敗北の事「日本一の不覚人、かかる大事を思ひ立ちて、一いくさだにせずして、我が身も滅び、人をも失ふにこそ、面つれなうものをばのたまふものかなとて」
おもてはつく[表八句] (名)連歌・俳諧用語。連歌百句を書くのに、四枚の懐紙を用い、第一の懐紙の表に、百句の最初の八句をしるしたもの。奥の細道「表八句を庵の柱に懸け置き」(「草の戸」の句を発句とし、長短の付句(連歌)八句を表に書きつらね、芭蕉庵の柱に懸けて置き、奥羽行脚の旅に立ったのである)
おもてふす[面伏す] (動、下二)面目なさに面を伏せる。恥ずかしいさまである。大鏡、六、内大臣道隆「また、身捨てがたしとて、もの覚えぬ名簿(みやうぶ)うちして、わが面伏せて、いでや、さありしかど、かかるぞかしと」
おもてぶせ[面伏せ] (名)恥ずかしさに面を伏せること。面目ないこと。不名誉。「おもただし」「おもおこし」の反対。源氏、帚木「うとき人に見えば、おもてぶせにや思はむと、はばかり恥ぢて」
おもてる[面照る] (動、四)(1)顔が赤くなる。光で顔が照りかがやく。蜻蛉日記「螢 さみだれやこぐらき宿の夕さればおもてるまでも照らすほたるか」(2)恥ぢ入る。赤面する。
おもてをむかふ…オムコウ[面を向かふ] (句)顔を向けて抵抗する。平家、七、燧合戦「何面を向かふべしとも見えざりけり」=何者でも、顔を向けて抵抗することができるとも見えなかった。
おもと[御許] (名)御座所。おそば。景行紀、十二年十二月「よろしく重きまひなひをみせ、以ておもとに召し納(い)るべし」(2)女を敬していう語。民部のお許。大式部のお許。
おもと[御許] (代)前項(2)から転じて、婦人に対する対称代名詞となった語。宇津保、俊蔭「苦しうもあらず、御許を思へばとてとどまるべくもあらず」
おもとの (連体詞)おもな。おもだった。平治物語、二、義朝敗北の事「右衛門督左馬頭以下(いげ)おもとの人人は、みな大内・六波羅にて討死し給ひぬ」
おもとびと[御許人] (名)貴人の側近に仕える男女の称。侍者。(2)侍従。「おもとびとまちぎみ」の略。
おもな[面無] (名)「おもなし」の語幹が名詞となったもの。(1)恥ずかしいこと。おもはゆいこと。謡曲、葛城「名に負ふ葛城の神の顔かたち、面なや、おもはゆや、恥づかしや、あさましや」(2)転じて、全く反対に、恥ずかしいと思わぬこと。あつかましいこと。源氏、紅葉賀「おもなのさまやと見給ふもにくけれど」
おもなし[面無し] (形、ク)(1)恥ずかしい。おもはゆい。面目ない。源氏、真木柱「いとおもなう、人笑ひなることなり」(2)転じて、全く反対に、何事にも平気でとらわれない。あつかましい。押しがつよい。竹取「かの鉢を捨てて、またいひけるよりぞ、面なきことば、はぢを捨つとはいひける」枕草子、三「年老いて、物の例など知りて、おもなきさましたるも、いとつきづきしうめやすし」
おもなる[面慣る] (動、下二)見慣れる。常となる。平気になる。新後撰、恋一「憂き身には絶えぬ嘆きにおもなれてものや思ふと問ふ人もなし 鴨長明」
おもの[御物] (名)「食物」の敬称。天皇または貴人の食物。宇津保、忠こそ「夏冬の御装束、あした夕さりの御物に多くの物をつくして」源氏、桐壺「あさがれひのけしきばかり触れさせ給ひて、大床子のおものなどは、いとはるかにおぼしめしたれば」⇒だいしやうじ。
おものし[御物師] (名)裁縫師。仕立屋。
おものやどり[御膳宿・御物宿] (名)宮中で、お膳を納めておくところ。
おものやどりのとじ[御膳宿の刀自] (名)「おものやどり」をつかさどる女官。
おもはゆ[面映ゆ] (名)「おもはゆし」の語幹が名詞となったもの。恥ずかしいこと。きまりのわるいこと。謡曲、葛城「面なや、おもはゆや、恥づかしや、あさましや」。
おもはゆし[面映ゆし] (形、ク)面を合わせるのがまばゆい。恥ずかしい。きまりがわるい。義経紀、六、静若宮八幡へ参詣の事「さすがに鎌倉殿の御前にての舞ひなれば、おもはゆくや思ひけむ、舞ひかねてぞ休らひける」
おもひあがるオモイアガル[思ひ上がる] (動、四)(1)思いおごる。自負する。たかぶる。源氏、桐壺「はじめより、われはと思ひあがり給へる御方方、めざましきものにおとしめそねみ給ふ」=はじめから、われこそみかどの寵を一身に得ようなどと思いあがっていられた女御たちは、事の意外なのに驚いて、(桐壺の更衣を)けなしたり、そねんだりしていられる。(2)転じて、心がけだかくなる。高尚で上品になる。うけがら花、七、文詞「齢(よはひ)の末に至りては、いたく思ひあがりて、まうけずかざらず、誰も心の及びがたきふしをのみ作られき」
おもひいるオモイイル[思ひ入る] (動、四)深く思う。伊勢物語「昔、男、京をいかが思ひけむ、東山に住まむと思ひ入りて」
おもひいるオモイイル[思ひ入る] (動、下二)意は前項に同じ。源氏、夕顔「つらきも、憂きも、かたはらいたきことも、思ひ入れたるさまならで」神皇正統記、五「兄の大臣は本性穏やかにおはしければ、思ひ入れぬさまにて過されける」
おもひくたすオモイクタス[思ひ腐す] (動、四)心で軽蔑する。心でおとしめけなす。十訓抄、上「小野小町が……よろづの男をば賤しくのみ思ひくたし、女御・后に心をかけたり」
おもひくづほるオモイクズオル (動、下二)思ひ屈する。気落ちする。臆する。源氏、桐壺「この人の宮づかへのほい、かならずとげさせてたてまつれ。われなくなりぬとて、口惜しう思ひくづほるな」=この人(後に桐壺更衣となる人)の宮仕えの希望を、かならずとげさせてあげなさい。自分(父大納言)が死んだからといって、残念にも気落ちして、希望を捨てさせるようなことをなさるな。
おもひぐまなしオモイグマナシ[思ひ隅なし] (形、ク)(1)心があまねく行き渡らない。深い思慮がない。枕草子、七「思ひぐまなくあしうしたりなど、例の女のやうにいはむとこそ思ひつるに」=深い思慮がなく、悪く取りはかったなどと、普通の女のように言うだろうと思っていたのに」(2)遠大な希望がない。将来の望みをうしなう。狭衣、四、上「うちうちの苦しさをば慰めても過し給はめ。思ひぐまなうては何のかしこかるべき」(3)思いやりがない。同情心がとぼしい。千載集、四、秋上「思ひぐまなくても年の経ぬるかなもの言ひかはせ秋の夜の月 源俊頼」
おもひけつオモイケツ[思ひ消つ] (動、四)しいて忘れる。しいて思いきる。源氏、賢木「今日はこの御事と思ひ消ちて」
おもひとるオモイトル[思ひとる] (動、四)(1)思い定める。決心する。徒然草、五段「不幸にうれへに沈める人の、かしらおろしなど、ふつつかに思ひとりたるにはあらで」=身の不幸で悲嘆に沈んでいる人が、すぐに頭を剃って仏道に入るなどという、そんなに浅はかに決心したのではなくて。(2)心にさとる。思い知る。源氏、帚木「世のことわりを思ひとりて恨みざりけり」
おもひなるオモイナル[思ひなる] (動、四)その考えになる。その気になる。源氏、桐壺「今はなき人と、ひたぶるに思ひなりなむと、さかしうのたまひつれど」
おもひのいろオモイ…[思ひの色] (名)緋色。紅色。「おもひ」の「ひ」を「緋」にかよわせた語であろう。古今集、十九、誹諧「みみなしの山のくちなし得てしがな思ひの色の下染めにせむ」
おもひのたまオモイ…[念ひの珠] (名)「念珠」の訓。ねんじゆ。数珠(ずず)。謡曲、盛久「左には金泥の御経、右には念ひの珠の緒の」
おもひはかるオモイハカル[思ひはかる] (動、四)おもんぱかる。思いめぐらす。竹取「よき人に婚(あ)はせむと思ひはかれども」
おもひはるくオモイハルク[思ひ晴るく] (動、下二)心が晴れやかになる。気がさっぱりする。源氏。夕霧「例のけしきなる今朝の御文にもあらざめれど、なほえ思ひはるけず」
おもひやむオモイヤム[思ひやむ] (動、四)思いきる。あきらめる。竹取「色好みといはるるかぎり五人、思ひやむ時なく、よるひる来けり」
おもひわぶオモイワブ[思ひ侘ぶ] (動、四)思いなやむ。わびしく思う。千載集、十三、恋三「おもひわびさても命はあるものをうきにたへぬは涙なりけり 道因法師=(思う人に逢うことがなく)思いなやんでいるのだが、それでもなお命だけはあるのに、そのわびしさに耐えられないで、流れて来るのは自分の涙であるよ。
おもぶく[赴く] (動、下二)従うようにさせる。従わせる。続紀、十、天平元年八月の宜命「教へたまひ、おもぶけたまひ」
おもぶせ[面伏せ] (名)面目なく、うつぶすこと。不名誉。おもてぶせ。落窪物語「いふがひなきわざをなむし給ひたる、子どもの面伏せにとて、おとどいみじう腹立ち給うて」
おもへらくオモエ…[以為] (副)思うのには。考えるのには。
おもへらずオモエ…[思へらず] (句)思わない。土佐日記「舟子・楫取は、舟唄歌ひて、何とも思へらず」
おもへりオモエリ (名)顔つき。顔色。応神紀、四十年正月「ここに天皇、よろこびたまはぬみおもへりあり」
おもほえず[思ほえず] (副)思いがけなく。不意に。伊勢物語「おもほえず袖にみなとの騒ぐかなもろこしぶねのよりしばかりに」
おもほし[思ほし] (形、シク)思い望んでいる。万葉、[13-3336]「思ほしき言伝(ことつ)てむやと、家問へば」
おもほしおきてたれば (句)思って、とりあつかっているので。おぼしめして、もてなされていられるので。源氏、桐壺「このみこ生まれ給ひてのちは、いと心ことに思ほしおきてたれば」
おもほす[思ほす] (動、四)「思ふ」の敬語。お思いになる。おぼす。おぼしめす。古事記、上「その妹いざなみの命を相見まくおもほして」源氏、桐壺「いよいよあかずあはれなるものに思ほして」
おもほてり[面ほてり] (名)怒る色の顔にあらわれること。神代紀、上「つきよみのみこと、おもほてりして」
おもほてる[面ほてる] (動、四)怒って、顔があつくなる。いきどおる。古事記、上「かれ、あぢしきたかひこねの神は、おもほてりて飛び去りたまふ時に」
おもほゆ[思ほゆ] (動、下二)自然にそう思われる。「思ふ」と自発の助動詞「ゆ」との合して転じた語。万葉、[9-1740]「春の日の、かすめる時に、すみのえの、岸に出でゐて、釣舟の、とをらふ見れば、いにしへの、ことぞ思ほゆる」(「とをらふ」は「通る」または「ただよふ」)
おもむき[趣] (名)(1)こころ。わけ。意味。事情。古事記、序文「すでに訓によりて述ぶれば、ことば心におよばず、全く音を以てつらぬれば、事の趣さらに長し」(2)感興。趣味。雅致。ふぜい。面白み。源氏、少女「水のおもむき、山のおきてを改めて、さまざまに、御かたがたの御願ひの心ばへを造らせたまへり」
おもむく[赴く] (動、四)(1)(その方に)向く。竹取「この吹く風は……よき方におもむきて吹くなり」(2)従う。なびく。宇津保、藤原の君「なでふことのたばかりをしてか、女のおもむくべきとのたまふ」
おもむく[赴く] (動、下二)前項の他動。向かわせる。従わせる。なびかせる。崇神紀、十年七月「群卿にみことのりして日く、民を導くの本は教へおもむくるにあり」
おもむけ[化・教化] (名)前項の連用形が名詞に転じた語。教え導くこと。教化。崇神紀、十年七月「これ未だ君のおもむけに習はざるのみ」源氏、藤裏葉「ただ大殿の御おもむけの異なるにこそあれ」
おもむろに (副)ゆるやかに。静かに。そろそろと。徐徐に。古くは「おもむるに」「おもぶるに」ともいった。」
おももち (名)かおいろ。かおつき。
おもや (名)「おもわ」と同じく「かお」のこと。(略解の説)万葉、[8-1535]「わがせこをいつぞ今かと待つなべにおもやは見えむ秋の風吹く」
おもや[母屋・主屋] (名)屋敷内の主要な建物。もや。
おもやす[面痩す] (動、下二)顔がやせる。顔がやつれる。源氏、桐壺「いとにほひやかに、うつくしげなる人の、いたうおもやせて」
おもらかに[重らかに] (副)おもおもしそうに。かるがるしくなく。十訓抄、上「すべて人の振舞は、おもらかに、ことばずくなに」(この語、次項と同じく形容動詞であろうと思われるが、この形以外の用例が見えないから、しばらく「副詞」としておく)
おもりかなり[重りかなり] (形動、ナリ)(1)重そうである。源氏、末摘花「ころもばこのおもりかに古代なるうちおきておし出でたち」(2)おもおもしい。かるがるしくない。源氏、末摘花「いとわかびたる声の、ことにおもりかならぬを、人づてにはあらぬやうに聞えなせば」
おもわ[面輪] (名)かお。おもや。「わ」は輪郭の意の接尾語。万葉、[19-4192]「桃の花、くれなゐ色に、にほひたる、面輪のうちに、青柳の、細き眉根を」
おもんぱかり (名)「思ひ量り」の音便。深い考え。深い思慮。
おもんぱかる (動、四)「思ひ量る」の音便。深く考える。
おもんみる (動、上二)「思ひみる」の音便。考えてみる。思いめぐらす。謡曲、安宅「それ、つらつらおもんみれば、大恩教主の秋の月は、■槃の雲にかくれ」
おやこたはけ…タワケ[親子婚] (名)親子間の婚。上古の罪の一。古事記、中「おやこたはけ・うまたはけ・うしたはけ」
おやじ[同じ] (形、シク)「同じ」の古語。古事記、下「その隼人(はやびと)に、けふ、おほおみとおやじ盞(つき)の酒を飲みてむとすとのりたまひて」
おやしらず[親知らず] (地名)越後の国、新潟県西頸城郡市振(いちぶり)村の海岸。極めて嶮岨なところで、通行の際、親は子をかえりみず、子は親をかえりみないということから起こった名。奥の細道「けふは親しらず・子しらず・犬戻り・駒がへしなどいふ北国一の難処を超えて、つかれはべれば」
おゆらく[老ゆらく] (名)老いてゆくこと。老いらく。万葉、[13-3246]「あめなるや月日のごとく我が思へる君が日に日(け)に老ゆらく惜しも」=月や太陽のようにわたくしが思っていたあなたが、日に日に老いてゆかれるのが惜しくてなりませんよ。(「あめなるや」は枕詞)
およずく (動、下二)(1)おとならしくなる。成長する。源氏、桐壺「月日へて、若宮まゐり給ひぬ。いとどこの世のものならず、きよらにおよずけ給へれば」(2)老朽に見える。巧者らしく見える。大鏡、八「院にならせ給ひ、都ばなれたる所なればといふこそ、あまりにおよずけたれ」(3)老人じみる。
琴後集、十、記「あながちに取りよそふとはすめれど、まみ・口つきなど、いつしかとおよずけ」
およずけ (名)「およずく」の連用形が名詞に転じた語。おとなびた人。およずけもの。栄花、玉の村菊「東宮は二十三にぞおはしましける。こよなきほどの御およずけなり」
およずけもの (名)前項に同じ。古今著聞集、十八、飲食「道良(みちよし)は、およずけものなり」
およづれオヨズレ[妖言] (名)怪しいことば。妖言。うそ。およづれごと。万葉、[3-420]「なゆ竹の…人ぞ言ひつるおよづれか、わが聞きつるまがごとか」
およづれごとオヨズレ…[妖言] (名)怪しいことば。妖言。うそ。およづれごと。万葉、[3-420]「なゆ竹の…人ぞ言ひつるおよづれか、わが聞きつるまがごとか」
および[指] (名)「指」の古語。万葉、[8-1537]「秋の野に咲きたる花をおよび折りかきかぞふればななくさの花」枕草子、四「くつの音の夜ひとよ聞ゆるが、とまりて、ただおよび一つして叩くが、その人ななりと、ふと知るこそをかしけれ」
およる (名)おやすみになること。「およる」という動詞の終止形を名詞とした珍しい例。「きかふ」「すまふ」などと共に、ごく少数の例である。弁内侍日記「御所もいまだおよるにもならせおはしまさず、御手習ひなどありて」
およる (動、四)夜(よる)を動詞にはたらかせた語か。おやすみになる。おねむりになる。古今著聞集、五「月をもごらんぜでおよるなれば、この御文まゐらするに及ばず」生玉心中「案じて一日もおよらず」
およんなる (動、四)前項に同じ。「およるなる」または「およりなる」の音便訛。
おらがはる[おらが春] (書名)江戸時代の俳人小林一茶の俳文的随筆。信濃(長野県)柏原の故郷へ帰ってからの一茶が、見聞・感想・俳句などを日記体にかきつらねたもの。一茶自筆の稿本に挿絵などを施して嘉永七年(1854)に刊行したもの。
おらびなく (動、四)叫び泣く。慟哭する。垂仁紀、百年三月「たぢまもり…すなはち天皇のみささぎにまゐりて、おらびなきてみづから死(まか)れり」
おらぶ (動、四)さけぶ。声を立てて泣く。古事記、中「その木の実をささげて、叫びおらびて」
おりさわぐ[おり騒ぐ] (動、四)あわてて下座する。水鏡、上「郡のつかさ聞き驚きて、おり騒ぎ拝し奉りて」
おりたつ[下り立つ] (動、四)(1)おりる。おりて行く。おりて、その場に立つ。源氏、葵「袖ぬるるこひぢとかつは知りながらおりたつ田子のみづからぞうき」(2)親しくその事を行う。立ち入って事をする。源氏、夕顔「人にも漏らさじと思ひ給ふれば、惟光(これみつ)おりたちてよろづはものし侍るなどと申す」
おりどのうまや[下戸の駅] (地名)尾張の国、愛知県中島郡下津(おりづ)村の旧称。東海道の一駅であった。十六夜日記「二十日、尾張の国下戸といふうまやを行く」
おりのべ[織延] (名)「おりのべぎぬ」の略。
おりのべぎぬ[織延絹] (名)昔、美濃の国(岐阜県)で産した絹織物。他国のより長さ一尺ほど多いので、この名がある。おりのべ。美濃絹。平家、四、南部牒状「近江米二万石、北国の織延絹三千疋、往来のために山門へ寄せられる」
おりひめ[織姫] (名)はたを織る女。また、織女(星)。
おりゆ[下湯] 入浴すること。保元物語、三、為朝生捕流罪に処せらるる事「温疾(うんしつ)大切の間、古き湯屋を借りて、常に下湯をぞしける」
おりゐのみかどオリイ…[下居の帝] (名)退位された天皇、上皇。太上天皇。源氏、若菜、上「おりゐのみかどとひとしく定まり給へれど」
おりゐるオリイル[下り居る] (動、上一)(1)車・馬などから下りて、そこにいる。高いところから低いところへ下りて、そこにいる。伊勢物語「その沢のほとりの木のかげにおりゐて、かれいひ食ひけり」(馬から下りいて)土佐日記「磯におりゐて別れがたきことをいふ」(高いところから下りいて)(2)天皇が退位される。大和物語、一「今はおりゐ給ひなむとするころ」
おれ (代)(1)自称代名詞。われ。古今著聞集、十六「おれが母にて候ふものこそ、姉よりもよく候へ」(2)対称代名詞。汝。神武紀、元年前、戊午八月「いやしきやつこが造れる屋には、おれみづからいりゐよといふ。爾、これをばオレといふ」枕草子、十「ほととぎすよ、おれよ、かやつよ、おれ鳴きてぞわれは田にたつ」
おれもの (名)愚者。痴者。馬鹿者。蜻蛉日記「我が一人のおれものにて、向かひ居たれば」
おろおろ (副)事物の不十分または不完全であることをあらわす語。(1)少し。少しばかり。宇治拾遺、十一「年七十あまりばかりなる翁の、髪も禿げて、白きとてもおろおろある頭に」(2)大略。概略。水鏡、上「神の世より見侍りしこと、おろおろ申し侍らむ」
おろおろと (副)泣き声のうるむさまにいう語。鑓の権三、上「にらむ眼のうちおろおろと、女は涙もろかりし」
おろおろごゑ…ゴエ[おろおろ声] (名)泣きそうな声。
おろおろなみだ[おろおろ涙] (名)おろおろと泣き流す涙。
おろか[疎か] (名)(1)おろそか。疎略。竹取「うたてものたまふものかな。みかどの御使ひをば、いかでおろかにせむといへば」(2)いうまでもないこと。もちろん。国姓爺合戦、二「虎はおろか、象でも鬼でも一ひしぎ」
おろしこ[下ろし籠む] (動、下二)御簾・蔀・格子など、室の内外を隔てるものを下ろしてとざす。戸じめにする。源氏、澪標「御さうじにて、御簾おろしこめて、おこなはせ給ふ」狭衣、一、上「またの日見給へしかば、おろしこめて人もさぶらはざりしあやしさに、かたはらの人に問ひさぶらひしかば、筑紫へまかりにける長門守といふ人の家にさぶらひける」
おろす (句)「織る」の敬語。「織らす」の転。お織りになる。古事記、中「めどりの、わがおほきみの、おろすはた、たがたねろかも 仁徳天皇」=わが女鳥の王よ、あなたのお織りになっていられる布は、(いったい)誰の衣になさるためなのですか。(「女鳥のおほきみ」は仁徳天皇の異母妹)
おんあい[恩愛] (名)めぐみ。いつくしみ。おんない
おんあびらうんけん[唵阿毘羅吽欠] (句)梵語Om avirahumkhan の音写。「唵」は帰依、「唵阿毘羅吽欠」は地水火風空の義。呪文の語。人が、この呪文を唱えれば、大日如来の加持力によって、無上菩提に入ることができるという。謡曲、安宅「唵阿毘羅吽欠と、数珠さらさらと押しもめば」
おんぎやうのじゆ…ギョウ[隠形の呪] (名)形を隠す為の呪文。太平記、五、大塔宮熊野落事「隠形の呪を御心のうちに唱へてぞおはしける」
おんざうし…ゾウシ[御曹司] (名)「曹司」は部屋の義。部屋住みの、堂上諸家の子息をいう。武家でも、この称を用い、特に源氏の子息を指すことが多い。義経記、二「禅師大いによろこび給ひて、御曹司を入れ奉り」(義経をいう)謡曲、鳥帽子折「祕術を尽くす大太刀も、御曹司の小太刀に斬りたてられ」(義経をいう)
おんじき[飲食] (名)飲むことと食うことと。また、飲食物。)
おんじやう…ジヨウ[音声] (名)声。音声。「大音声をあげて」
おんぞ[御衣] (名)衣服の敬称。みぞ。みけし。
おんな[嫗] (名)老女。「おみな⇒おむな⇒おうな⇒おんな」と変化しているが、意は同じ。この変化は国語の通則である。(注意、「女」は「をんな」)
おんない[恩愛] (名)「おんあい」に同じ。
おんはかせ[音博士] (名)昔、大学寮の博士の一。「文選」「爾雅」などの書によって、漢字の呉音・漢音・四声などのことをわきまえ、素読を教えることをつかさどる人。令制により、二人である。おんぱかせ。こゑのはかせ。
おんべ (名)「にへ」の敬語。(1)「おほにへ」に同じ。太平記三十二、無二剣爾一御即位無レ例事「ただ、ともかくも、その議に随ふべしとておんべのまつりをば致されけるとぞ承る」(2)御贄。上古、諸国から朝廷に奉る土産の種種の貢ぎ物。北山抄、一、元旦宴会「ひのためし・腹赤(はらか)のおんべ」
おんふく[御服] (名)「服喪」の敬語。折り焚く柴の記、下「当時は幼主の御事なれば御服もおはしまさず」
おんみ[御身・卿] (代)やや敬意を含む対称代名詞。
おんみつ[隠密] (名)(1)かくれひそかなこと。(2)江戸時代、探偵の称。
おんみやうだう…ミヨウドウ[陰陽道] (名)「おんやうだう」に同じ。徒然草、九十一段「赤舌日といふこと、陰陽道には沙汰なきことなり」=赤舌日などということは、陰陽道では問題にしないことである。
おんもと[御許] (代)やや敬意を含む対称代名詞。
おんやうけ…ヨウ…[陰陽家] (名)陰陽師の家柄。また、陰陽師。
おんやうじ…ヨウ…[陰陽師] (名)昔、陰陽寮に属し、陰陽道のことをつかさどった人。のちは、易者のことをいう。伊勢物語「なほ、わりなく恋ひしうのみ覚えければ、陰陽師・かんなぎ呼びて、恋せじといふ祓の具してなむいきける」
おんやうだう…ヨウドウ[陰陽道] (名)陰陽寮の学科の一。陰陽五行の説に基づき、日月・千支の運を考え、相生・相剋の理を推して、吉凶を定め、ト筮・占星・相地等のことをきわめる方術。おんみやうだう。
おんやうのつかさ…ヨウ…[陰陽寮] (名)天文・暦数・日月星辰・風気雲色の変を見ることをつかさどる役所。
おんやうれう…ヨウリヨウ[陰陽寮] (名)天文・暦数・日月星辰・風気雲色の変を見ることをつかさどる役所。おんやうのつかさ。うらのつかさ。

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