- け -
け[木] (名)「木」に同じ。古事記、上「子のひとつけにかへつるかも」=一片の木のはしくれのような(価値しかない)子どもと(おんみの尊い生命を)とりかえられたものよ。
け[食] (名)くいもの。食物。「御食(みけ)・朝食(あさけ)」
け[笥] (名)食物を盛る器。万葉、[2-142]「家にあれば笥に盛る飯(いひ)を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る。 有間皇子」
け[故] (名)ゆえ。ため。竹取「千たびばかり申し給ふけにやあらむ、やうやう雷(かみ)鳴りやみぬ」
け[気] (名)(1)血行。徒然草、四十二段「気のあがる病ありて」=のぼせる病気があって。(2)ほとぼり。熱。蜻蛉日記「ひがしおもての朝日のけ、いと苦しければ、南のひさしに出でたるに」(3)気配(けはい)。ようす。源氏、空蝉「心地ぞなほ静かなるけをそへばやと」(4)病気。(5)あじわい。
け[褺] (名)ふだん。平生。「晴れ」の対。徒然草、百九十一段「うちとけぬべき折節ぞ、け・はれなく引きつくろはまほしき」=(男女が)うちとけて会うような時は、不断着とか晴れ着とかの区別なく(ちゃんと服装を)ととのえていたいものである。
(接頭)動詞・形容詞などに冠して、やや意を強める語。け劣る。け圧(お)さる。け近し。け長し。け恐ろし。
げ[偈] (名)仏の徳または教えなどを賛美する韻文。多くは四句である。「いろは歌」のもとになったという。「涅槃経の偈」なども「諸行無常、是生滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」の四句である。
げ[夏] (名)僧侶の年中行事の一。陰暦四月十六日から七月十五日までの三か月間、一室に静座して修行すること。結夏(けつげ)。夏安居(げあんご)。夏籠(げごも)り。奥の細道「しばらくは滝にこもるや夏のはじめ 芭蕉」
げ[牙] (名)きば。「象牙」」
(接尾)形容詞や名詞に付けて「さま」「ようす」などの意をあらわし、上の語とともに名詞を構成する語。楽しげ。悲しげ。寒げ。人げ。物思ひげ。(シク活用の形容詞には終止形に、ク活用の形容詞には語幹に付く)
けい[磬] (名)石または銅で作り、つるして打つ楽器。古今著聞集、十五、宿執「善知識の前なる磬をとりて」
けい[卿] (名)大中納言、参議、三位以上の人。⇒くぎやう。
けいかう…コウ[嵆康] (人名)中国、晉の時代の人。竹林の七賢の一人。字は叔夜。老荘の学を好み、「養生篇」を著わす。徒然草、二十一段「嵆康も山沢に遊びて魚鳥を見れば心たのしぶといへり」(「文選」に嵆康が山濤に与えた絶交の文に「遊二山沢一観二魚鳥一、心甚楽レ之」とある)
けいき[京畿] (名)「畿内」に同じ。
けいくわい…カイ[経廻] (名)世を経ること。生活すること。平家、十一、腰越「京都の経廻難治の間、身を在在所所に隠し辺土・遠国をすみかとして」(腰越状の一節)
げいご[囈語] (名)たわごと。うわごと。ねごと。梧窓漫筆、後、下「まことに夢中の囈語なり」
けいさく[警策] (名)(1)馬を打つむち。(2)座禅の時、師僧が弟子僧のねむりをさますために打つむち。この場合には「きやうさく」とよむのが通例。(3)文中で全文を躍動せしめるだけの価値ある主要な短い句。
けいし[家司] (名)家事を司る者。いへづかさ。大鏡、七、太政大臣道長「女房・侍・家司・下人(しもびと)まで」
けいし[京師] (名)みやこ。京都。
けいし[屐子] (名)昔の履物。下駄・足駄の類。枕草子、一「まつりのころぞ、いみじうをかしき。……けいし・くつなどの緒をすげさせ」
けいしやう…シヨウ[卿相] (名)「くぎやう」に同じ。
げいしやうういのきよく…シヨウ…[霓裳羽衣の曲] (名)中国、唐の玄宗皇帝が、ある夜、夢に月宮殿に遊んで天人の舞楽を聞き、これにかたどって作った舞曲という。謡曲、羽衣「をとめは衣を着しつつ、霓裳羽衣の曲をなし、天の羽衣風に和し」
けいしゆ[稽首] (名)頭を地につけたまま拝する礼。また、頭を腰より低く下げて拝する礼。
けいしよ[鶏黍] (名)鶏の吸物と黍の飯。転じて、人を饗応する意。雲萍雑志、四「鶏黍の約を結ばむことを求むれば」
けいじん[鶏人] (名)昔、宮中で暁の時刻を告げる衛士。和漢朗詠集、禁中「鶏人、暁を唱へて、声、明王の眠りを驚かす 都良香」
けいす[啓す] (動、サ変)申し上げる。太皇太后・皇太后・皇后・皇太子に対して用いる語。「奏す」の対。枕の草子、一「よきに奏し給え、啓し給へ」
けいせい[傾城] (名)(1)美人。「漢書」の外戚伝にある。漢の武帝の李夫人の故事「一たび顧みて人の城を傾け、二たび顧みて人の国を傾く」ほどの美人の義に基づく語。平家、十一、那須与一「ただし、大将軍の矢面に進んで傾城を御覧ぜられむところを」(2)転じて、「遊女」の称。
けいせき[景迹] (名)おこない。みもち。
けいせつのこう[螢雪の功] (句)苦学の功。勉学の功。中国晉の車胤が螢の光で書を読み、孫康が雪の明かりで書を読んだ故事に基づく語。保元物語、二、左府御最期「信西を師として読書ありて、螢雪の功をぞ励み給ひける」
けいそくのほら[鶏足の洞] (地名)仏教で、摩訶迦葉の籠ったという鶏足山の洞。鶏足山は、印度の摩訶国にある山で、今のクルキカルの北に当たる。平家、十、高野の巻「かの摩訶迦葉の鶏足の洞に籠つて」
けいちゅう[契沖] (人名)江戸時代の国学者。下川氏。円珠庵と号す。摂津の人。十一歳で僧となり、十三歳で高野山に入り、のち下山して大阪の円珠庵に自適し、国学の研究に精進した。元祿十四年(1701)没、年六十一。主著、万葉代匠記・厚顔抄・和字正濫抄・古語拾遺抄。
けいちゅう[閨中] (名)ねやのうち。
けいてい[逕庭] (名)大いに隔たっていること。かけはなれていること。「逕」は門前の路、「庭」は堂外の地。その間が隔たっているとの意から来た語。
けいてう…チヨウ[京兆] (名)左京職・右京職の唐名。太平記、三十五、尾張小河東池田事「京兆も定めて未練にぞ思ひ給ふらむ」
けいはい[軽輩] (名)身分の軽い者ども。
けいひつ[警蹕] (名)昔、天皇の御出入の時、御先払いの人の唱える声。源平盛衰記、二十六、法住寺殿御幸「警蹕など、ことごとしく美美しき儀式なり」
けいひつ[勁筆] (名)筆力の強くすこやかなことをいう。
けいめい[経営] (名)「けいえい」の転音という。営み設けること。かけまわって世話をすること。大鏡、六、右大臣道兼「殿には常よりもけいめいして待ち奉り給ふに」
けいめい[鶏鳴] (名)(1)暁に鶏の鳴くこと。(2)「丑の刻」の異名。夜の二時ごろ。(3)早朝。
けいもう[啓蒙] (名)(1)童蒙(こども)の知をひらくこと。こどもに教えること。(2)転じて、一般に、知識の普及によって、伝統的な迷蒙をひらくこと。
けいやうのかね…ヨウ…[景陽の鐘] (句)中国、南北朝時代に、景陽楼上に置かれた鐘。暁を告げる鐘の意に用いる。増鏡、十六、秋のみ山「景陽の鐘も響きを添へたる折柄いみじうなむ」
けいようし[形容詞] (名)文法用語。用言のうち、主として性質・状態をあらわし、文語においては、その終止形の語尾が「し」または「じ」となるものをいう。これに、「ク活用」と「シク活用」との二種がある。「わろし」「まろし」などは「ク活用」、「正し」「すさまじ」などは「シク活用」である。(口語においては、終止形の語尾が「い」となり、活用の仕方は皆同じである)
けいようどうし[形容動詞] (名)文法用語。用言のうち、主として性質・状態をあらわし、文語においては、その終止形の語尾が「なり」または「たり」となるものをいう。「なり」となる語を「ナリ活用」、「たり」となる語を「タリ活用」という。「うららかなり」「しづかなり」などは「ナリ活用」、「洋洋たり」「堂堂たり」などは「タリ活用」である。(口語においては、終止形の語尾が「だ」となり、活用の仕方は皆同じである。
げいらう…ロウ[迎労] (名)迎えねぎらうこと。出迎えること。駿台雑話、四、大仏の銭「伊豆の守……旅装のまま直ちに登城ありしかば、折ふし在城の面面、残らず迎労しけり」
けいゐ…イ[経緯] (名)(1)たてとよこと。また。東と西と。(2)いきさつ。いりくんだ事情。(3)治めととのえること。統治の上で最も重要なもの。古事記、序文「これすなはち、邦家の経緯、王化の鴻基なり」=(帝紀・本辞は)国家を治めととのえるために最も重要なものであり、王化を布く上に最も大切な基礎となるものである。
けいゑんいつし…エン…[桂園一枝] (書名)香川景樹の歌集。二巻。その詠歌約千首を収む。文政十一年(1828)成る。別に景樹の没後に編集したものに「桂園一枝拾遺」一巻がある。嘉永二年(1849)成る。
けう[希有] (名)稀にあること。ふしぎなこと。珍しいこと。徒然草、八十九段「希有にして助かりたるさまにて、はふはふ家に入りにけり」(「はふはふ」は「這いながら」)
けうキヨウ[孝] (名)「かう」に同じ。孝行。
けうがふキヨウゴウ[校合] (名)類本を比較対照して、異同を調べ、誤りを正すこと。また、校正。
けうがるキヨウガル[興がる] (動、四)「きようがる」の古い仮名づかいか。興味のある。義経記、六「けうがる風情にて」
けうがる[希有がる] (動、四)珍しい。怪しい。謡曲、鉢の木「自然、鎌倉に御上りあらばお訪ねあれ。希有がる法師なり。かひがひしくはなけれども、公方の縁になり申さむ」
げうきギヨウ…[澆希] (名)(1)人情うすく、世の乱れる時。末の世。末世。平家、一、資朝俊基関東下向事「時、澆希に及んで、道、塗炭に落ちぬといへども」(2)後の世。末世。平治物語、一「手跡また妙にして、澆希にこれを伝へけり」
けうくわんだいけうくわんキヨウカン……キヨウカン[叫喚大叫喚] (名)「大叫喚」を強めていう語。「大叫喚」は八熱地獄の第五。亡者のひどく叫喚しつつ苦しむところ。平家、灌頂、六道「かくて生き残りたる者どもの喚き叫びし有様は、叫喚大叫喚、無間・阿鼻、焰の底の罪人も、これには過ぎじとこそ覚え侍りしか」
けうくわんぢごくキヨウカンジゴク[叫喚地獄] (名)八熱地獄の第四。亡者の叫喚しつつ苦しむところ。
けうさうキヨウソウ[教相] [(名)仏教で、理論的教義の意。実践的教義の「観心」の対。徒然草、四十二段「行雅僧都とて、教相の人の師する僧ありけり」=行雅僧都といって、仏教の理論的教義の学において、人人が師とする僧があった。
けうしゆキヨウ…[梟首] (名)斬刑に処した罪人の首を木にかけてさらすこと。さらしくび。
けうしよでんキヨウ…[校書殿] (名)昔、大内裏に、累代の書物を納めて置いた殿舎。ふみどの。宇津保、俊蔭「校書殿にて、日高く題を賜ひて、かたく問はる」
けうずキヨウズ[孝ず] (動、サ変)孝行をする。孝養をつくす。大鏡、六、右大臣道兼「傅殿、この入道殿二所は如法に孝じ奉り給ひきとぞ承りし」
けうとしキヨウトシ (形、ク)恐ろしい。こわい。さびしい。徒然草、三十段「骸(から)は、けうとき山の中にをさめて」(今でも、「恐ろしい」ことを「きょうとい」という地方がある)
けうどんみキヨウ…[憍曇弥] (人名)梵語Gautami.釈迦の伯母の名で、釈迦の母摩耶夫人の死後、釈迦を養育した女性。増鏡、四、三神山「宰相のはらからの姫君ぞ、御乳母のやうにて、憍曇弥の釈迦仏を養ひ奉りけむ心地しておはしける」
けうみやうキヨウミヨウ[交名] (名)人名を連ねしるしたもの。連名。保元物語、一、官軍召し集めらるる事「内裏へ召さるべき武士の交名をしるし置かせ給へるなり」
けうらさ (名)うるわしさ。美しさ。形容動詞「けうらなり」の語幹に、接尾語「さ」の付いた名詞。大鏡、五、太政大臣伊尹「御調度どもなどのけうらさこそ、えもいはず侍りけれ」
けうらなり (形動、ナリ)うるわしい。美しい。竹取「火に焼けぬことよりも、けうらなること並びなし」
げうよくギヨウ…[楽欲] (名)仏教で、願い欲する意。徒然草、九段「六塵の楽欲多しといへども、みな厭離しつべし」(「楽」の字音は、音楽の意では「ガク」、楽しむ意では「ラク」、好み願う意では「ガウ(ゴウ)」または「ゲウ(ギョウ)」)
けおさる[気圧さる] (動、下二)「け」は接頭語。圧倒される。徒然草、一段「才なくなりぬれば、品くだり、顔にくさげなる人にも、立ちまじりて、かけずけおさるるこそ本意(ほい)なけれ」=学問がないというと、家柄が劣り、顔のみにくい人たちの中に伍して、わけもなく圧倒されるのが、いかにも残念なことである。
けおそろし[気恐ろし] (形、シク)「け」は接頭語。恐ろしい。
けおとる[気劣る] (動、四)「け」は接頭語。劣る。
げかう…コウ[下向] (名)(1)都から地方へ行くこと。(2)神仏に参詣して帰ること。下山。還向。枕草子、八「うらやましきもの……未(ひつじ)には下向しぬべし」
げかう…コウ[還向] (名)2)神仏に参詣して帰ること。下山。還向。枕草子、八「うらやましきもの……未(ひつじ)には下向しぬべし」
げかうし…コウ…[下格子] (名)格子戸を下ろすこと。大鏡、五、太政大臣兼家「月のあかき夜は、下格子もせで」
けがし[穢し] (形、シク)けがらわしい。きたない。いやしい。万葉、[4-759]「いかならむ時にか妹を葎生(むぐらふ)の穢しき宿に入りまさせなむ」(「いやしき」と読む人もある)
けかつ[飢渇] (名)飢え渇すること。きかつ。方丈記「二年が間、けかつして、あさましきこと侍りき」
けがらひケガライ[穢らひ] (名)けがれ。源氏、夕顔「かかるけがらひありとのたまはすれば、参る人人も皆立ちながらまかでて、人しげからず」
けがらふケガラフ[穢らふ] (動、四)(1)けがれに触れる。けがれる。蜻蛉日記「よしよし、かく穢らひたれば、とまるべきにもあらず」(2)死ぬ。蜻蛉日記「ある大徳の袈裟ひきかけたりしままに、やがてけがらひにしかば」
けがれ[穢れ] (名)(1)人の死や産穢などによる不浄。(2)悪習に染まること。陋劣。(3)月経。つきやく。宇津保、俊蔭「いつよりか御けがれはやみ給ひし。いと近げになり給ふめるを」=いつごろから月経がとまりましたか。たいそう出産が近づいたようにみえますが。
げき[外記] (名)昔、太政官の役人で、いろいろの記録をつかさどる人。徒然草、百一段「六位の外記康綱、きぬかづきの女房を語らひて、かの宣命をもたせて」
げきしゆ[■首] (名)「■」という大きな水鳥の像を船首にえがき、または彫刻したもの。水神を恐れさせるとも、能く風に耐えるともいう。⇒りようとうげきしゆ。
げきぜつ[鴃舌] (名)「鴃」は「もず」。蛮夷の言語のわかりにくいことを軽蔑していう語。⇒なんばんげきぜつ。
げきたく[撃析] (名)拍子木をうって夜まわりをすること。夜まわり。また、拍子木の音。
げきちやう…チヨウ[外記庁] (名)太政官に属した役所。外記の事務を執るところ。⇒げき。古今著聞集、十七、変化「外記庁のうら、東の方なるもみの木のこずゑに、かみをつかみながる法師ひとり臥したりけり」
けぎやう…キヨウ[加行] (名)仏教で、修行を加える意。受戒の準備として一段の力を加えて修行すること。平家、二、山門滅亡「法皇、これ無益なりとて、御加行ばかり御結願ありて、御灌頂をば思し召しとどまらせ給ひけり」
げきやう…キヨウ[顕形・現形] (名)形をあらわすこと。伊勢物語「昔、みかど、住吉にみゆきし給ひけり。……御神現形したまひて」
けぎよし[気清し] (形、ク)「け」は接頭語。清い。枕草子、五「けぎよう聞きも入れでさぶらふを」=(伊周公のいうことを)清く聞き入れもしないで(断然拒絶して)いると。
げきりよ[逆旅] (名)やどや。旅館。
げきりん[逆鱗] (名)天子の怒り。龍の喉(のど)の下に逆さの鱗があって、人がこれに触れると忽ち怒ってこれを殺すという「韓非子」の文から来た語で、龍は天子に比せられるので「天子の怒り」の意となる。保元物語、一「早く凶徒を追討して、逆鱗を休め奉らば」
けぐ (名)「けご」の転。食器。讃岐典侍日記「けぐにしてめすぞ哀れなる」=食器のままでおあがりになるのはお気の毒なことである。
けぐつ[毛沓] (名)毛皮で作り、脛まで覆う深い沓。騎射の時に用いる。太平記、二十三、雲客下レ車事「太く逞しき馬どもに、思ひ思ひの鞍置いて、唐笠に毛沓はき」
げくわん…カン[下浣] (名)「下旬」に同じ。
げげ[下下] (名)(1)したじた。しもじも。身分の低い者ども。(2)下の下。ひどく劣ること。最下等。
げげ[芥下] (名)身分の低い者がはく草履の称。藁草履。平家、九、二度懸け「馬には乗らで、芥下をはき、弓杖を突いて」
けけし (形、シク)(1)かどかどしい。源氏、少女「あたり近くだに寄せず、いとけけしうもてなしたれば」(2)てきぱきしている。発心集、八「新しき者の、御岳へ参るとて、あながちにけけしかりける」
けけれなし[心なし] (形、ク)無情である。なさけがない。東国方言。古今集、二十、東歌「かひがねをさやにも見しがけけれなく横をり伏せるさやの中山」=甲斐の高山をはっきり見たいと思うのに、無情にも横たわっている小夜の中山のために、さえぎられて見えないのが残念だ。⇒かひがね。
けこ[家子] (名)妻子。家人。奴僕。竹取「しかるに祿いまだ賜はらず。これを賜ひて、わろきけこに賜はせむ」
けご[餼子・気子] (名)「笥子」の義。食器。伊勢物語「手づから飯匙(いひがひ)をとりて、けごの器にもりけるを見て」
げこくじやう…ジヨウ[下剋上] (名)「かこくじやう」ともいう。下の者が上の者をしのぐこと。臣下が主君をしのぐこと。太平記、二十七、雲景未来記事「臣、君を殺し、子、父を殺し、力を以て争ふべき時到る故に、下剋上の一端にあり」
けごろも[褺衣] (名)ふだん着。⇒け(褺)
けごろも[毛衣] (名)毛皮の衣服。かわごろも。万葉、[2-191]「毛衣を春冬かたまけていでましし宇陀の大野は思ほえむかも」(「かたまけて」は「ととのえて」)
けごんゐん…イン[華厳院] (寺名)華厳宗の総本山、奈良の東大寺の別称。徒然草、二百八段「華厳院の弘舜僧正」
けごんゑ[華厳] (名)華厳経を読誦する法会。昔、奈良の東大寺で毎年三月十四日に行われた。
けさい[潔斎] (名)「けつさい」に同じ。
けさう…ソウ[化粧・仮粧] (名)けしょう。
けさうずケソウズ[化粧ず] (動、サ変)けしょうをする。伊勢物語「この女、いとようけさうじて、うちながめて、風吹けばおきつ白波たつた山よはにや君がひとり越ゆらむ、とよみけるを」
けさうずケソウズ[懸想ず] (動、サ変)懸想する。恋いしたう。伊勢物語「昔、男ありけり。懸想じける女のもとに、ひじきもといふものをやるとて」(「ひじきも」は「ひじき」のこと)
げさく[外戚] (名)母方の親戚。ぐわいせき。源氏、桐壺「外戚のよせなきにてはただよはさじ」=外戚の頼りのない境涯で寂しがらせておきはしない。
げさく[戯作] (名)江戸時代の小説。特に江戸時代後期、宝暦(1751)ごろ以後の小説。「たわむれに作る」意。
けざけざと (副)はっきりと。鮮明に。讃岐典侍日記「うつつにけざけざと見る心地、ただおしはかるべし」
けざやかなり (形動、ナリ)「け」は接頭語。「さやかなり」に同じ。はっきりしている。鮮明である。大鏡、七、太政大臣道長「その削りあとは、いとけざやかにて侍るめり」
けざやぐ (動、四)はっきりする。きわだつ。源氏、松風「あさましう覚ゆれど、今こそ、さらにうちけざやぎて参りぬ」
げざん[見参] (名)(1)節会・宴会などに伺候した人が記名して天子の御前へ出すこと。(2)転じて、「会う」ことの敬語。おめにかかる。げんざん。
けし[家司] (名)家事を司る者。いへづかさ。けいし。
けし[衣] (名)ころも。古事記、上「ぬばたまの黒きみけしを」⇒けす。
けし[怪し・異し] (形、シク)(1)怪しい。異様である。伊勢物語「この女、かく書き置けるを見て、けしう心おくべきことも覚えぬを」増鏡、十八、むら時雨「内には、いつしか、けしかるものなど住みつきて」(狐・狸などの怪しいものが住みついて)(2)悪い。不実である。古事記、上「けしき心なし」源氏、帚木「中の品の、けしうはあらぬ、えり出でつべきころほひなり」=中の等級の、悪くはない(婦人を)、選ぶべき時代である。紫式部日記「けしからぬ人」=よろしい人。(3)怪しくない。徒然草、二百三十五「こだまなどいふけしからぬ形」=こだまなどという怪しい形。(否定の否定)
げし[下司] (名)したやく。したづかさ。
けしき[気色] (名)(1)ようす。そぶり。けはひ。竹取「皇子(みこ)は、われにもあらぬ気色にて、肝消えゐたまへり」伊勢物語「この女、けしきをとりて」=この女、男の疑うそぶりを見てとって。(2)わけ。しさい。源氏、帚木「式部がところにぞ、けしきあることはあらむ。少しづつ語り申せ」(3)希望。のぞみ。源氏、桐壺「引入れの大臣のみこ腹に、ただ一人かしづき給ふ御むすめの、春宮よりも御けしきあるを」(4)気うけ。おぼえ。機嫌。古今著聞集、十六、興言利口「小川滝口定継といふ、御けしきよき主侍りけり」伊勢物語「おほやけの御けしきあしかりけり」(5)けしきのわるいこと。不興。栄花、玉の村菊「世にかく漏り聞えたるに、院のみけしき、いといみじきなり」
けしきだつ[気色だつ] (動、四)(1)そのようすが見える。一段と際立って見える。徒然草、十九段「花もやうやうけしきだつ程こそあれ」(2)いろめきたつ。けしきばむ。栄花、見はてぬ草「御文など奉り給ひ、けしきだたせ給ひけれど」
けしきづくケシキズク[気色づく] (動、四)(1)そのようすが見える。一段と際立って見える。徒然草、十九段「花もやうやうけしきだつ程こそあれ」(2)いろめきたつ。けしきばむ。栄花、見はてぬ草「御文など奉り給ひ、けしきだたせ給ひけれど」
けしきどる[気色取る] (動、四)(1)ようすを見て悟る。(2)ようすぶる。きどる。
けしきばかり[気色ばかり] (句)しるしばかり。いささか。源氏、桐壺「朝がれひをけしきばかり触れさせ給ひて」
けしきばむ[気色ばむ] (動、四)(1)ようすが外に現われる。宇津保、俊蔭「子生まるべくなりぬ。けしきばみ悩めば、媼、きも・こころをまどはして」(2)怒りを外に現わす。源氏、帚木「人をうらみて、けしきばみそむかむ、はたをこがまし」(3)きどる。枕草子、二「権中納言見給へば、そこによりて、けしきばみ申す」
けしやき[芥子焼] (名)護摩を焚くこと。芥子の実を入れて焚くのでいうと。蜻蛉日記「芥子焼のやうなるわざすれど、なほしるしなくて」
げしやく[外戚] (名)母方の親戚。ぐわいせき。げさく。
げしやく[牙笏] (名)象牙で作った笏。五位以上の人の用いるもの。
げしやくばら[外戚腹・外借腹] (名)本妻以外の女の産んだ子。庶子。
げじょう[下乗] (名)乗物から下りること。徒然草、二百一段「退凡・下乗の卒都婆」⇒たいぼん。
けす[着す] (句)「着る」の敬語。お召しになる。「衣」を「けし」というのは、この語の連用形が名詞に転じたものである。古事記、下「かれ、赤猪子が泣く涙に、そのけせる丹摺(にすり)の袖、とほりて濡れぬ」⇒す(助詞)
げす[下司] (名)身分の低い役人。したづかさ。宇治拾遺、二「門をおびただしく叩きければ、下司出で来て」
げす[下衆] (名)(1)身分の低い者。蜻蛉日記「後(しり)の方を見れば、木樵りしたる下衆ども」(2)根性のいやしいこと。また、その人。
げす[解す] (動、サ変)(1)理解する。(2)消す。除く。「毒をげす」
げすげすし (形、シク)きわめて、いやしい。源氏、東屋「いとむくつけく、げすげすしき女とおぼして」
けすさまじ[気凄じ] (形、シク)「け」は接頭語。「すさまじ」に同じ。興がない。面白くない。枕草子、三「こと人のやうに読経し、歌うたひなどもせず。けすさまじ」
げせつ[下説] (名)しもじもの者の言うところ。下流社会の風説。
げせつ[下拙] (代)謙遜していう自称代名詞。拙者。やつがれ。手前。(江戸時代の語)
げせわ[下世話](名)しもじもの者が平生口にするところ。下流社会でよく言うことば・ことわざ。「下世話に申す通り」
けそう[顕証] (名)「けしよう」ともいう。特に目立つこと。いちじるしいこと。竹取「この児(ちご)のかたち、けそうなること世になく、家の内は暗き処なく光満ちたり」枕草子、九「たかつきにまゐりたるおほとのあぶらなれば、髪の筋なども、なかなか昼よりは顕証に見えてまばゆけれど」
けたい[懈怠] (名)「けだい」「げたい」などともいう。なまけること。おこたること。徒然草、九十二段「わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろそかにせむと思はむや。懈怠の心みづから知らずといへども、師これを知る」(「おろかに」は「おろそかに」)
げだう…ドウ[外道] (名)(1)仏教で、仏教以外の修道・法門をいう。太平記、二十四、依二山門嗷訴一公卿僉議事「炎さかんに外道が身にかかりければ、外道が門人、悉く舎利弗(しやりほつ)の前に倒れ伏して」(3)転じて悪者。曾我物語、三、ふん女が事「瞋恚を旨として驕慢にあまりければ、外道にも近づきけり」
けだし[蓋し] (副詞)推測するに。もしや。たぶん。あるいは。万葉、[3-427]「ももたらず八十隅坂に手向けせば過ぎにし人に蓋し遭はむかも」⇒やそすみさか。
げだつ[解脱] (名)仏教で煩悩束縛から脱して悟りの境地に入ること。また、亡者が地獄の苦しみを脱して浮かぶこと。。
けたのさき[気多の崎] (地名)因幡の国、鳥取県気高郡の海浜「正木が鼻」の古称。古事記、上「ここに、気多のさきに到りける時に、裸(あかはだ)なる兎伏せり」
けち[結] (名)(1)二人相対して弓を射、勝負を決すること。源氏、花宴「右のおとどの弓のけちに、上達部・みこたち多くつどへたまひて」(2)囲碁で、終局に近づき、隅隅のきまらない目を詰め寄せること。源氏、空蝉「碁打ち果てて、けちさすわたり、心とげに見えて」
けち[闕] (名)「けつくわん」に同じ。
けち (名)(1)貧弱。粗末。俠詞花川戸「江戸で噂の花川戸、幡随長兵衛といふ、けちな野郎でござります」(2)臆病。(3)けちん坊。(4)凶事。不吉。(5)卑賤。卑劣。(6)不愉快。(7)悪評。欠点。「人にけちをつく」
げぢ…ジ[下知] (名)(1)命令。指揮。(2)判決。判決文。
けちえん[結縁] (名)仏門に入る縁を結ぶこと。けつえん。徒然草、百四十段「うれしき結縁をもしつるかな」
けちえんなり[掲■なり] (形動、ナリ)いちじるしい。あらわである。源氏、少女「夜に入りては、なかなか今少しけちえんなる火影に」落窪物語「この聟の君は、悪しき事をもかしがましく言ひ、よき事をば掲■にほむる心ざまなれば」
けぢかしケジカシ[気近し] (形、ク)「け」は接頭語。近い。また、親しい。
けちぐわん…ガン〔結願] (名)(1)仏に願をかけた日数の果てること。(2)数日続いた仏事の講義などの終わること。けつぐわん。
けちみやく[血脈] (名)(1)血統。けつみやく。(2)仏教で法門を正して、師から弟子に伝えること。法脈。また、在家の結縁の者に与える法門相承の略譜。おけちみゃく。
けぢめケジメ (名)(1)区別。差別。伊勢物語「この人は、思ふをも思はぬをも、けぢめ見せぬ心なむありける」(2)しきり。隔て。源氏、若菜、下「ひさしの中の御さうじを放ちて、こなたかなた御几帳ばかりをけぢめにして」
げちやく[下着] (名)都から田舎へ到着すること。
けつ[■] (人名)中国、夏(か)の天子の名。殷の紂王と並んで暴君の名が高い。徒然草、百二十一段「生(しやう)を苦しめて目を喜ばしむるのは■・紂が心なり」
けつ[消つ] (動、四)(1)消す。蜻蛉日記「火けたせて」(2)あしざまに言う。けなす。そしる。源氏、帚木「光源氏、名のみことごとしう。言ひ消たれ給ふとが多かなるに」(3)おさえつける。圧倒する。源氏、澪標「かんの君の御おぼえにおしけたれ」
けつえん[結縁] (名)「けちえん」に同じ。奥の細道「衣の上のおんなさけに大慈の恵みを垂れて、けつえんさせ給へと泪(なみだ)をおとす」(御出家としてのおなさけで)
けつかい[結界] (名)(1)僧侶の仏道修行に障害のないように、衣食・人員・地域などに一定の制限を設けること。(2)堂塔・伽藍の境界を定めること。(3)寺院の外陣中に、僧侶の座席を分ける木欄。(4)出入を禁ずること。禁制。(5)帳場の格子。
けつかいのち[結界の地] (句)仏道修行の障害とならぬように、外道・女人などの立ち入ることを禁ずる地。太平記、十八、比叡山開■事「この山をわれに与へよ。結界の地となし、仏法をひろめむとのたまひければ」
けつかふさ[結跏跌坐] (名)僧侶のすわり方の一。左の足を右の股の上におき、右の足を左の股の上におくすわり方。
げつきゆう[月宮] (名)月の中にあるという宮殿。月宮。謡曲、鶴亀「その後、月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて候ふ」
げつきゆうでん[月宮殿] (名)月の中にあるという宮殿。月宮。謡曲、鶴亀「その後、月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて候ふ」
けつく[結句] (名)詩歌の終末の句。あげく。
けつく[結句] (副)(1)つまるところ。結局。(2)むしろ。
けつくわん…カン[闕官] (名)(1)その官職に任ずべき人の欠けていること。(2)免官。解官。平家、一、殿上闇討「早く殿上の御簡(みふだ)を削つて、闕官停任行はるべきか」
けつげ[結夏] (名)夏安居(げあんご)のはじめの日。陰暦四月十六日。げのはじめ。入安居。結制。
げつけい[月卿] (名)「くぎやう」に同じ。天子を日に、公卿を月にたとえていう語。「月卿・雲客」
けつさい[潔斎] (名)祭祀に仕える人が、まず身心のけがれを断ち、清浄を保つこと。精進。ものいみ。
けつしよ[闕所] (名)(1)昔、荘園などの、前の領主が罪に当てられて滅び、まだ次の領主の定まらないところ。闕国。闕地。(2)江戸時代の刑の一。追放以上の刑の附加刑としてその田畑を取り上げること。没収。籍没。
けつじよう[結縄] (名)まだ文字のなかった中国の古代で、縄を結んで記憶に資した方法。世界の各地にもあった。
げつだん[月旦] (名)(1)月の初日。ついたち。(2)人物の批評。月旦評。中国、後漢の許劭が、毎月ついたちに郷党の人物を批評した故事にもとづく語。
けつてき[闕腋] (名)(1)衣服の両脇の下を縫いつけずに、前後分かれたままにしておくこと。わきあけのころも。(2)次項の略。
けつてきのはう…ホウ[闕腋の袍] (句)闕腋に仕立て、裾に襴をつけない袍。武官の束帯の上衣に用いる。
げつばく[月迫] (名)月末。多くは十二月の末をいう。
けつばん[結番] (名)組を設け、順番を定めて任務につくこと。保元物語、一、将軍塚鳴動「日夜に結番し、禁固を守り給ふ」
けつみやく[血脈] (名)「けちみやく」に同じ。
げつらう…ロウ[月老] (名)「月下老人」の略。媒酌人。
けづりぐしケズリ…[梳り櫛] (名)髪をくしけずること。かみゆひ。また、その櫛の称。宇津保、蔵開、中「その夜は梳り櫛せさせ、湯殿などせさせ給ふほどに」
げてん[外典] (名)仏教で、仏書以外の書をさしていう語。主に儒書をさす。仏書を「内典」というのに対する。
げでん[下田] (名)地味のやせた田。「上田」の対。
けどほしケドオシ[気遠し] (形、ク)「け」は接頭語。「遠し」に同じ。(1)遠い。近くない。源氏、帚木「まらうどは寝給ひぬるか。いかに近からむと思ひつるを、されどけどほかりけりといふ」(2)うとましい。親密でない。源氏、澪標「気遠からずもてなさせ給はばなむ、ほいなる心地すべき」
けどる[気取る] (動、四)(1)もののけなどが、人の魂をその身体から抜き取って殺す。昔の迷信である。源氏、夕顔「いといたく若びたる人にて物にけどられぬるなんめりとせむかたなき心地し給ふ」(2)(相手の)心の中を悟る。
けながし[け長し] (形、ク)「け」は「日」。時日が長く経過する。古事記、下「きみがゆき、けながくなりぬ、やまたづのむかへをゆかむ、まつにはまたじ」=(我が愛する)君が行かれてから、長い月日がたちました。(さあ)お迎えにまいりましょう。とても(このまま)待ってはいられません。(「やまたづの」は「むかへ」の枕詞)
けなり[異なり] (形動、ナリ)異なっている。まさっている。ことさらである。古事記、下「こは、けなることなくこそ」伊勢物語「忘るらむと思ふ心のうたがひにありしよりけにものぞ悲しき」
げに[実に] (副)まことに。果たして。竹取「げにただ人にはあらざりけりとおぼして」
けにくし[気憎し] (形、ク)「け」は接頭語。(1)みにくい。不快である。大鏡、八「気憎き顔には物言ひふれにくきものなり」(2)にくい。こにくらしい。腹だたしい。源氏、柏木「けにくく心づきなき山伏どもなど」(3)無愛想である。そっけない。源氏、行幸「初めの事は知らねど、今はけにくくもてなすにつけて」
げにげに (副)「げに」を重ねて強調する語。まことに、まことに。もっとも、もっとも。
げにげにし (形、シク)まじめらしい。もっともらしい。徒然草、三十七段「なほげにげにしく、よき人かなとぞ覚ゆる」
けにん[化人] (名)かりに人の形を現わした神や仏をいう。宇治拾遺、四「後にたびたび尋ねけれど、尋ね逢はずしてやみにけり。若し化人にやありけむと思ひけり」
けにん[家人] (名)(1)上代、主家に隷属して労役に服する者。やつこ。(2)武家時代、武家の臣下。家の子。郎党。
げにん[下人] (名)身分の低い者。下郎。
げにん[外任] (名)地方官に任ずること。
げにん[解任] (名)任をとくこと。官職をやめさせること。
けのあらきもの[毛の■き物] (句)毛のあらい、大きな獣。「けのにごもの・けのにぎもの」の対。古事記、上「ほをりの命は山幸彦として、けのあらもの・けのにごものを取り給ひき」
けのあらもの[毛の■物] (句)毛のあらい、大きな獣。「けのにごもの・けのにぎもの」の対。古事記、上「ほをりの命は山幸彦として、けのあらもの・けのにごものを取り給ひき」
けのにぎもの[毛の柔物] (句)毛のやわらかい、小さな獣。「けのあらもの・けのあらきもの」の対。古事記、上「ほをりの命は山幸彦として、けのあらもの・けのにごものを取り給ひき」
けのにごもの[毛の柔物] (句)毛のやわらかい、小さな獣。「けのあらもの・けのあらきもの」の対。古事記、上「ほをりの命は山幸彦として、けのあらもの・けのにごものを取り給ひき」
けはけはしケワケワシ (形、シク)はっきりしている。曾我物語、四「されども、けはけはしくまことの妻とも頼まざりければ」
けはなし[蹴放し] (名)(1)蹴放すること。(2)門の内外のしきりで、溝のない、取りはずしの出来る敷居。(3)階段の蹴上げ。
けはいケワイ (名)ようす。そぶり。源氏、桐壺「命婦かしこにまかで着きて、かど引き入るるより、けはひあはれなり」
けひのうみ[気比の海] (地名)越前の国、福井県敦賀の海。謡曲、安宅「浅茅色づく有乳山、気比の海、宮居久しき神垣や」(「宮居」は敦賀の「気比神社」をさす)
けびゐし…イ…[検非違使] (名)(1)平安時代に京都中の非法・非違を検察し、糺弾・追捕・断罪・聴訴をつかさどった職。(2)昔、国郡または伊勢神宮・大社などに属し、検察・追捕をつかさどった職。
けぶきぐさ[毛吹草] (書名)江戸時代初期の俳人松井重頼の俳諧集。五巻。貞門派の代表書。正保二年(1645)成る。
けふそくキヨウ…[脇息・脇足] (名)すわった時に臂をかけ、からだを安楽に支える具。ひじかけ。源氏、帚木「人人笑ふ。あなかまとて、けふそくによりおはす」
けふけふとキヨウキヨウ…[今日今日と] (枕詞)「今日」に続く「明日」の意から、大和の「あすか」に冠する。万葉、[16-3886]「かもかくも命(みこと)受けむと、けふけふと飛鳥に到り」
けふしようキヨウ…[夾鐘] (名)中国の音楽の調子十二律の一。これを月に配して「夾鐘」は「二月」に当たる。転じて「二月」の異称。古事記、序文「歳(ほし)、大梁にやどり、月、夾鐘にあたりて」=酉の年の二月に。
げほくめん[下北面] (名)六位の北面の武士。「上北面」の対。平家、一、鵜川合戦「下北面より上北面にあがり」。
げほふ…ホウ[外法] (名)(1)妖術。魔法。平家、一、鹿谷「かの外法行ひけるひじりを追ひ出さむとす」(2)仏教でいう邪神。増鏡、九、北野の雪「外法とかや祀るに」
けむケン (助動)過去を推量する意をあらわす助動詞。たであろう。「○・○・けむ・けむ・けめ・○」と活用する。すなわち、終止形・連体形・巳然形の三形しかない。すべての活用語の連用形に付く。雪の降りけむ。いかに寒かりけむ。さぞ壮快なりけむ。知らざりけむ。
けむつかし (形、シク)「け」は接頭語。むずかしい。むさくるしい。きみがわるい。むくつけし。古今著聞集、二十、魚虫禽獣「ただ今、かかることこそありつれ。よにけむつかしくてなどいふを聞きて」(うすきみが悪くて)
げめん[外面] (名)外に現われた顔色。かおつき。
けものたふし…タオシ[蓄仆し] (名)家畜を斃死させること。祝詞、六月晦大祓「高つ鳥のわざはひ、蓄仆し、まじものせる罪」
げもん[解文] (名)(1)昔、八省以下の諸役所から太政官または所管の官庁に奉る公文書。解状。(2)人を推挙する文書。
けもんりよう[花文綾] (名)花の模様を浮き織りにした綾。宇津保、俊蔭「赤朽葉の花文綾の小袿」
けやかなり (形動、ナリ)尊く見える。上品である。雄略紀、十四年四月「根使主(ねのおみ)着くる所の玉かつら、はなはだけやかにて、いとうるはし」
けやけし (形、ク)珍しい。きわだって甚だしい。大鏡、八「末代には、けやけき命もちて侍る翁なりかし」増鏡、十七、春のわかれ「あづまより人参りて、本院の一の宮を定め申しつ。いとけやけくきこしめせど、いかがはせむにて」
げゆ[解由] (名)次項に同じ。土佐日記「例の事ども皆しをへて、解由など取りて、住む館より出でて」
げゆじやう…ジヨウ[解由状] (名)平安時代、国司などの任の果てた時、事務引きつぎの滞りなく済んだということをしるした文書。前任者が、これを後任者から受け取る。解由。
げらう…ロウ[下郎] (名)めしつかい。しもべ。
けらし (句)助動詞「けり」の連体形「ける」と助動詞「らし」とが連なり、「ける」の「る」が省略された語。過去を推量する意をあらわす。「けらし」を一語の助動詞と見る説もあるが、そうすれば、「あめり」「なめり」なども一語とすべきである。「あめり」「なめり」の品詞は何であろうか。ここでは二つの助動詞の連なったものとする。「べかめり」なども同様である。人ありけらし。春来にけらし。⇒けり。⇒らし。
げらふ…ロウ[下﨟] (名)(1)﨟を積むことが浅くて低いもの。もと僧侶の階級をいう語であるが、一般にもいう。「上﨟」「中﨟」の対。源氏、桐壺「同じほど、それより下﨟の更衣たちは、まして安からず」⇒らふ(﨟)(2)のち、「下郎」の意に用いる。
けり (助動)過去・継続・詠嘆の意をあらわす。すべての活用語の連用形に付く。昔、男ありけり。涼しかりけり。静かなりけり。行かざりけり。「けら・けり・けり・ける・けれ・○」とラ変的に活用する。ただし、未然形は「万葉集」に用例があるだけ、連用形は鎌倉時代に用例があるだけで、普通には終止形・連体形・巳然形しか用いない。(1)過去の意に用いた例。万葉、[5-817]「梅の花咲きたる花の青柳はかづらにすべく成りにけらずや」(2)継続の意に用いた例。古今集、一、春上「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほいける 紀貫之」(3)詠嘆の意に用いた例。芭蕉の句「枯れ枝に鳥のとまりけり秋の暮れ」
げり[外吏] (名)昔、地方官の称。国司・受領など。後撰集、十五、雑一「外吏にしばしばまかりありきて」
げり (助動)「けり」に同じ。ただし、「て」「ん」の下に付く用例しかない。伊勢物語「あるじ許してげり」古今著聞集、五、和歌「死ぬるとても歌を詠みてんげり」
けん[券] (名)(荘園などの)てがた。
けん[乾] (名)「いぬゐ」の方。西北方。
げん[験] (名)加持・祈禱などの効果。また、薬のききめ。
けんえい[巻纓] (名)冠の纓を内側に巻いたもの。五位以上の武官が警固などに当たり弓箭を帯する時に用いる。
けんかい[狷介] (名)かたくなで、人を容れない性質。「性、狷介にして、人を容れず」
けんかう…コウ[兼好] (人名)⇒よしだけんかう。
けんかう…コウ[兼行] (名)(1)二つ以上のことを兼ね行うこと。(2)昼に夜を継いで急ぐこと。「昼夜兼行」
げんかうしやくしよ…コウ…[元亨釈書] (書名)吉野時代の僧、師錬の著。三十巻。推古天皇以来元亨年中に至る七百余年間における日本仏教の略史、高僧の伝記、仏教伝来の始末などを漢文でしるした書。元亨二年(1322)成る。
げんがた[験方] (名)修験道の行者。修験者。験者。源氏、若紫「今はこの世のことを思ひたまへねば、げんがたの行ひも忘れて侍るを」
けんがのべん[懸河の弁] (句)河水の流れるような勢いの弁。よどみのない弁。
けんき[軒騎] (名)車に乗った人と馬に乗った人と。平家、一、我身栄花「軒騎群集して、門前市をなす」
げんき[験気] (名)病気平癒のしるしの見えること。
げんきもん[玄輝門] (名)玄暉門・玄亀門などとも書く。内裏の内郭門の一。北面正中の門。
げんきもんゐん…イン[玄輝門院] (人名)後深草天皇の妃。伏見天皇の御生母。名は藤原■子。左大臣藤原実雄の女。元徳元年(1329)薨、御年八十三。徒然草、三十三段「玄輝門院御覧じて、閑院殿の櫛形の穴は、まろく、縁もなくてぞありしと仰せられける、いみじかりける」
けんきやう…キヨウ[牽強] (名)こじつけ。牽強附会。
けんきやうふくわい…キヨウ…カイ[牽強附会] (名)こじつけ。牽強。
げんくう[源空] (人名)⇒ほふねん(法然)
げんくらべ[験比べ] (名)修験者の験術の競争。
げんけん[原憲] (人名)中国、春秋時代の人。孔子の門人。性、狷介、清貧に安んじた。平家、灌頂、大原行幸「黎藋深く鎖せり。雨、原憲がとぼそをうるほす」⇒れいてう。
けんこう[軒后] (人名)中国の古代の天子「黄帝」の別称。古事記、序文「道は軒后に過ぎ、徳は周王にこえ給ふ」
けんこん[乾坤] (名)(1)天地。陰陽。古事記、序文「乾坤はじめて分かるる時、参神造化のはじめとなり」(2)「いぬゐ」と「ひつじさる」と。西北と西南と。
げんざ[験者] (名)修験者。験者(げんじや)。枕草子、一「まして、げんざなどのかたは、いと苦しげなり」
げんざん[見参] (名)「面会」または「対面」の敬語。げざん。保元物語、一「からめとつて、見参に入れよ」
けんじ[剣壐] (名)(1)天子の御剣と御印と。転じて、天子の位。(2)三種の神器の中、草薙の剣と八尺瓊の勾玉と。
けんじつ[兼日] (1)日を兼ねること。数日に渉ること。(2)かねての日。期日より前の日。古今著聞集、五、和歌「この讃、兼日に敦光朝臣作りて」
げんじになす[源氏になす] (句)親王に源(みなもと)の氏を賜わって、臣籍に列せしめる。源氏、桐壺「源氏になしたてまつるべくおぼしおきてたり」
源氏物語[源氏物語] (書名)紫式部の著。五十四帖。成立年代は、だいたい長保一寛弘年間(999-1011)であろう。前の四十四帖は、光源氏を主人公とし、これに幾多の女性を配してその交渉を物語り、後の十帖は、世に「宇治十帖」と呼ばれ、源氏の子薫大将を主人公として描き出されている。前の四十四帖には比較的明かるい世界が描かれているが、後の十帖には主人公の運命にやや暗い傾向が見られる。そして、主人公の光源氏をはじめとして、それを中心とする幾多の女性や男性の思想や行動は、いわゆる「もののあはれ」に即したものであった。その注釈書はきわめて多く、また近時、そのその現代語訳、戯曲化、演劇などがすこぶる流行している。
げんしやう…シヨウ[沅湘] (地名)沅江と湘江との二つの川。沅江は中国の貴州省に発源して東北に流れ、湘江は広東省南嶺山脈に発源して北に流れ、共に洞庭湖に注ぐ。徒然草、二十一段「沅湘日夜東に流れ去る、愁人の為にとどまることしばらくもせずといへる詩を見侍りしこそ、あはれなりしか」(この詩は、中国の戴叔倫の湘南即時詩「蘆橘花開楓葉衰、出レ門何処望二京師一、沅湘日夜東流去、不下為二愁人一住少時上」)
げんじやう…[玄上・玄象] (名)皇室御秘蔵の琴の名。仁明天皇の時、遣唐使が持ち帰ったという名高い琴。鎌倉時代の末には紛失した。徒然草、七十段「元応の清暑堂の御遊に、玄上は失せにし頃」(「元応」は後醍醐天皇の年号)
げんじやうさんざう…ジヨウ…ゾウ[玄弉三蔵] (人名)中国、唐の高僧。姓は陳氏。河南洛陽の人。貞観三年(629)印度へ渉り、在留十七年、経典六百五十余部を携えて帰り、これを漢訳した。麟徳元年(664)寂、年六十四。主著、大唐西域記。太平記、五、大塔宮熊野落事「大塔の宮はいらせ給はで、大唐の玄弉三蔵こそおはしけれ」
けんじやうのしやうじ…ジヨウ…シヨウジ[賢聖の障子] (名)内裏の紫宸殿にある襖障子の名。東西各四間に中国の聖賢名臣の像三十二人を描く。平家、一、二代の后「かの紫宸殿の皇居には、賢聖の障子を立てられたり」
けんじよそうじやう…ジヨウ[賢助僧正] (人名)太政大臣藤原公守の子。東大寺の長者。のち、醍醐寺第六十二代の座主。吉田兼好より三歳の年長という。徒然草、二百三十八段「賢助僧正に伴なひ、加持香水を見侍りしに」⇒かぢかうする。
げんしよらう…ロウ[現所労] (名)現在疲労または病気であること。平家、十一、一門大路被レ渡「讃岐の中将時実も同車に渡さるべかりしかども、現所労として渡されず」
げんせき[阮籍] (人名)中国、晉代の人。竹林の七賢人の一。「晉書」に、阮籍はいやな客には白眼(にらむ目つき)を以て対し、好きな友には青眼(すずしい目つき)を以て接したとある。徒然草、百七十段「阮籍が青きまなこ、誰もあるべきことなり」
けんぷ[乾符] (名)天子たる符(しるし)。古事記、序文「乾符を握りて六合(りくがふ)を摠(す)べ」=天皇の御位に即かれて天下を統治せられ。
げんぶく[元服] (名)男子の成人したことを祝う儀式。髪をおとなふうに改め、冠をかむり、おとな仕立の服を着る。年齢は不定であるが、だいたい十五、六歳ごろ行った。加冠。初元結(はつもとゆひ)。源氏、桐壺「この君の御わらは姿、いと変へまうくおぼせど、十二にて御元服し給ふ」
げんぶくおとり[元服劣り] (名)児童が元服したために、前より容貌がわるくなること。あげおとり。大鏡、五、太政大臣兼家「御元服劣りの殊の外にせさせ給ひにしをや」
げんぺいせいすゐき…スイ…[源平盛衰記] (書名)軍記物語。四十八巻。二条天皇の応保年間から安徳天皇の寿永年間にわたる、およそ二十余年間における源平二氏盛衰のあとを詳叙したもの。葉室時長著作説もあるが確かではない。成立年代も未詳。本書は「平家物語」の幾種かの異本を集成した一種の異本であると見る説が有力であって、古本平家物語から新しく発生したものであることは内容によってうかがわれる。文章は流布本の平家物語に比して、やや劣る。
げんぼ[玄圃] (地名)中国の崑崙(こんろん)山の異名。。ここに天帝がいるということから、「内裏」の意に用いる。太平記、四十、最勝講之時及二闘諍一事「あさましいかな、紫宸・北闕の雲の上、玄圃・茨山の月の前には、霜剣の光すさまじく」
けんみつ[顕密] (名)「顕」は「顕教」、「密」は「密教」。真言宗で、自宗を密教と称し、他の宗派、天台・華厳・浄土などを顕教という。徒然草、百六十五段「本寺・本山を離れぬる顕密の僧、すべてわが俗にあらずして、人に交はれる、見ぐるし」=顕教の僧にせよ、密教の僧にせよ、本寺・本山を離れて、他の宗門に出入する僧たちなど、すべて自分の本来の所属に安んじていないで、他に交わるのは、見ぐるしいことである。
けんみつけんがく[顕密兼学] (名)天台宗と真言宗との教義をあわせ学ぶこと。あらゆる仏教の教義を学ぶ意にも用いる。平家、二、座主流し「明雲大僧正は、兼密兼学して」
けんもつ[監物] (名)昔、大蔵・内蔵などの出納を監査した職。中務省の所管。
けんれいもんゐん…イン[建礼門院] (人名)高倉天皇の中宮。御名は徳子。平清盛の女。安徳天皇の御生母。文治元年、安徳天皇と共に壇の浦の海に投じられたが、救われて京都に帰り、薙髪されて真如覚と称せられた。建保元年(1213)薨、御年五十六。
けんれいもんゐんのうきやうのだいぶ…イン…キヨウ[建礼門院の右京大夫] (人名)建礼門院に仕えた女房で、藤原伊行の女。すぐれた女流歌人。主著、建礼門院右京大夫集。
げんゑ…エ[玄慧] (人名)吉野時代の学僧。「庭訓往来」の著者。正平五年(1350)寂、年八十二。

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