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せ[兄・弟・夫・背] (名)昔、女が男を親しんで呼ぶ称。兄・弟・夫婦・または友人の間柄にも用いられた語。「妹」の対。のち、もっぱら「夫」にいう。万葉、[6-1007]「言(こと)問はぬ木すら妹(いも)と兄(せ)ありとふをただ独り子にあるが苦しさ 市原王」
せあみ[世阿弥] (人名)⇒くわんぜもときよ。
せあみじふろくぶしふ…ジユウ…ジユウ[世阿弥十六部集] (書名)観世元清の遺著。一冊。能楽の芸術論を述べた「花伝書」、能楽の作法を説いた「能作書」、能楽史の根本史料としての「申楽談義」その他、全部で十六種の世阿弥の遺著を集めたもの。吉田東伍校編。明治四十二年(1909)刊。現在では二十三種発見されている。
せい[姓](名)(1)かばね。(2)のち、「氏」の意にも用いられる。
せい[姓] (名)(1)かばね。(2)のち、「氏」の意にも用いられる。
せい[聖] (名)(1)聖人。ひじり。(2)詩歌などにぬきんでた人。「歌聖」「俳聖」「詩聖」(3)帝王に係ることに冠して尊称する語。「聖旨」「聖断」「聖慮」
せい[旌] (名)(1)聖人。ひじり。(2)詩歌などにぬきんでた人。「歌聖」「俳聖」「詩聖」(3)帝王に係ることに冠して尊称する語。「聖旨」「聖断」「聖慮」
せいいうき…ユウ…[西遊記] (書名)「さいいうき」の誤読。
せいいたいしやうぐん…シヨウ…[征夷大将軍] (名)(1)征夷使の総大将軍として臨時に任ずる職。日本紀略、前、十三、延暦十六年十一月「従四位下坂上宿■田村麻呂を征夷大将軍とす」(2)逆徒征討の総大将として臨時に任ずる職。百練抄、十、元歴元年正月十一日「伊予守義仲を征夷大将軍とすべき由、宣旨くださる」(3)幕府の主宰者の称。建久三年(1192)、源頼朝がこれに任じられたのが最初。
せいうん[青雲] (名)(1)あおぐも。晴天の空。(2)高位高官の地位。転じて、立身出身。雨月物語、一、菊花の約「わが子不才にて、学ぶところ時にあはず、青雲の便りを失ふ」
せいが[青蛾](名)(1)まゆずみで美しく描いた眉。青薫。和漢朗詠集、暁「よそほひを金屋の中におごそかにして、青蛾まさにゑがけり」(「金屋」は「黄金で飾った、贅を極めた家」)(2)転じて、うら若い美人。
せいがいは[青海波] (名)雅楽曲。唐楽。盤渉調。舞人は二人。常装束を用い、その袍は青海の波に千鳥の模様のついたもの。太刀を帯びる。ただし、この楽は青海国の楽で「波」は「破」の誤りかという。源氏、紅葉賀「試楽を御前にてせ給ふ。源氏の中将は青海波をぞ舞ひ給ひける」
せいかう…コウ[精好](名)絹織物の名。練糸を経とし、生糸を緯として織る。また、経緯とも練糸のものもある。厚くて美しく、多く袴地とする。精好織。謡曲、二人静「さて、舞ひの衣装は何色ぞ。袴は精好」
せいかんじ[清閑寺] (寺名)真言宗。今、京都市東山区にある。俗称「歌の中山」。徒然草、百六十段「行法も、法の字をすみていふ、わろし、にごりていふと、清閑寺の僧正仰せられき」(この僧正は「道我」と称する人。兼好の友人)
せいきゆうき[西宮記] (書名)二十六巻。西宮(にしのみや)左大臣、源高明の著。村上天皇のころの年中行事などの儀式・作法等をしるした書。西宮日記。西宮抄。徒然草、百九十六段「この相国、北山抄を見て、西宮の説をこそ知らざりけれ」
せいきん[青琴] (人名)中国の神女で美人の名。太平記、一、立后事「毛嬙・西施も面(おもて)を恥ぢ、絳樹・青琴も鏡を掩ふほどなれば」(「毛嬙」「西施」「絳樹」みな美人の名)
せいぐわ…ガ[清華・清花] (名)摂関家に次ぐ高い家柄の抄。大臣・大将を兼ね、太政大臣にのぼり家格。
せいけう…キヨウ[正教] (名)仏教。古今著聞集、六、管絃歌舞「正教に、ひちりきは伽陵頻の声を学ぶといへることあり」
せいこ[西湖] (地名)中国、浙江省杭州の西部にある湖。中国屈指の名勝地。奥の細道「松島は扶桑第一の好風にして、およそ洞庭・西湖を恥ぢず」
せいごおくだん[勢語臆断] (書名)五巻。僧契沖の著。享和二年(1802)刊。「伊勢物語」の注釈書。和漢古今の書を引用し、最も詳細に精確に注釈している。
せいさう…ソウ[星霜] (名)一年。歳月。としつき。平家、二、善光寺炎上「水内郡に安置し奉つしより以来、星霜は五百八十余歳。されども、炎上はこれ初めとぞ奉る」
せいさくのせちゑ…セチエ[正朔の節会] (名)「正」は「正月」、「朔」は「一日」。正月一日の節会。四方拝。古今著聞集、三、公事「正朔の節会より除夜の追儺(つゐな)にいたるまで」
せいし[世子・世嗣] (名)諸侯のあとつぎ。大名のよつぎ。
せいし[西施] (人名)中国、春秋時代の越の美人。呉王夫差の愛姫。太平記、一、立后事「毛嬙・西施も面(おもて)を恥ぢ」
せいしやうなごん…シヨウ…[清少納言] (人名)平安時代の女流文学者。清原元輔の女。「清」は「清原」の略。才学共に秀で、同時代の紫式部と並び称せられた。一条天皇の皇后定子に仕えた。「枕草子」の著者。十世紀の後半から十一世紀の初葉にかけて生存していたことは確かであるが、生没年未詳。晩年ひどく零落したという。
せいしよだう…ドウ[清暑堂] (名)大内裏、豊楽院の正殿。大嘗会・五節などは、ここで行われた。徒然草、七十段「元応の清暑堂の御遊に、玄上は失せにしころ」(「元応」は後醍醐天皇の年号、元年は1319年)
せいち[精治] (名)正しく、よく治まること。祝詞、東文忌寸部献横刀時呪「千城百国、精治、万歳万歳万歳」
せいち[棲墀] (名)束縛されずに住んでいる所。太平記、三十五、北野通夜物語事「かの故宮の有様を見給ひて、いかなる人の棲墀にてかあるらむと、こと言ひ給ふところに」
せいづかひ…ズカイ[勢使ひ] (名)軍勢を招集すること。謡曲、鉢の木「まづまづ今度の勢づかひ、全く余の儀にあらず」
せいなんのりきゆう[城南の離宮] (名)平安城の南、鳥羽にあった離宮の抄。太平記、八、三月十二日合戦事「鳥羽の秋山風に、家家の旗へんぽんとして、城南の離宮の西門より」
せいべう…ヒヨウ[聖廟] (名)(1)聖人の廟。孔子の廟。聖堂。(2)菅原道真の廟。また、道真の称。古今著聞集、一、神祇「聖廟よろこび思し召しける故に」(ここでは、道真)
せいやう…ヨウ[青陽] (名)「春」の異称。「青」は五行説で、「春」に配し、陽気のさかんな時であるからいう。
せいらん[晴嵐] (名)(1)晴れた日、山気の蒸してのぼるもの。平家、三、有王島下り「晴嵐夢を破つては、その面影も見えざりけり」(2)夕やけ。「粟津の晴嵐」
せいりやうざん…リヨウ…[清涼山] (地名)中国、山西省にある「五台山」の別称。平家、灌頂、大原御幸「大江定基法師が清涼山にして詠じたりけむ」
せいりやうでん…リヨウ…[清涼殿] (名)内裏十七殿の一。紫宸殿の西、校書殿の北にある東西の殿舎。主上の常の御座所。せいらうでん。
せいわうぼ…オウ…[西王母] (名)(1)昔の中国の西方の国の名、すなわち西戎。祝詞、東文忌寸部献横刀時呪「左は東王父、右は西王母、五方五亭」(2)仙人の名。漢の武帝の時、あらわれたという(列仙伝)。平家、十、横笛「西王母と謂つし人も、昔はありて今は無し」(3)西王母という仙人が漢の武帝に桃を献じたことから「からもも」の異称となる。
せうけんもつシヨウ…[少監物] (名)中務省の職員、下位の監物。保元物語、一、新院御謀叛思召立つ事「少監物藤原光貞」
せうしシヨウ[笑止] (名)(1)他人の、ものわらいになることを気の毒に思うこと。かたわらいたいこと。(2)自分の上に、困ったと思うこと。「あら、笑止」(3)おかしいこと。
せうしやうのゐシヨウシヨウノイ[少将の井] (地名)京都、烏丸の東、大炊御門の南にあった井の名。枕草子、八「井は…せうしやうのゐ・さくらゐ」
せうせうシヨウシヨウ[少少] (副)すこし。わずかばかり。
せうとシヨウ…[兄人] (名)「せひと」の音便。女から、その兄弟を指していう語。後世は、もっぱら兄にいう。源氏、少女「せうとのわらは殿上する」(ここでは、弟)伊勢物語「二条の后に忍びて参りけるを、世のきこえありければ、せうとたちの守らせ給ひけるとぞ」(ここでは、兄)
せうなごんシヨウ…[少納言] (名)太政官の判官。
せうにシヨウ…[少弐] (名)太宰府の次官。大弐に次ぐ。
せうべんシヨウ…[少弁] (名)太宰府の官名。⇒べん(弁)。
せうらんシヨウ[照覧] (名)神などが、あきらかに見給うこと。
せがい (名)「背櫂」の義かという。船の両舷に渡した板。船頭が踏んで漕ぎ、または棹さす所。ふなだな。平家、十一、那須与一「みなくれなゐの扇の日出したるを、船のせがいに挟み立て、陸(くが)に向かひてぞ招きける」
せかゐん…イン[清和院] (名)清和天皇の母后の御在所。京都、正親町の南、京極の西にあった。枕草子、一「家は…そめ殿の宮、せかゐん」(「せかゐ」とある本もあるが意は同じ)
せきあく[積悪] (名)悪業の積み重なること。「積善」の対。平家、二、小松教訓「積悪の門には余殃とどまる」
せきあぐ[咳き上ぐ] (動、下二)こみあげる。むせかる。源氏、夕顔「御胸せきあぐる心地し給ふ」
せきかへすセキカエス[咳き返す] (動、四)むせかえす。一度泣いたのに、また涙にくれる。新古今、十二、恋二「忍びあまり落つる涙をせきかへし抑ふる袖ようき名もらすな」
せきけん[赤県] (地名)「幾内」または「京都」の異称。平家、十二、大地震「大地おびただしう動いてやや久し。赤県のうち白河のほとり、六勝寺皆破れ崩る」
せきさん[赤山] (神社名)比叡山の西坂本にある神社。祭神は、すさのおのみこととも大唐神ともいう。平家、一、内裏炎上「去(い)ぬる保安四年四月に新輿入洛の時は、座主に仰せて、赤山の社へ入れ奉らる」
せきしゅ[赤手] (名)手に何も持たぬこと。からて。すで。
せぎじようにつなぐ[赤縄に繋ぐ] (句)夫婦の縁を結ぶ。中国、唐の赤縄子という人が、その袋の中に夫婦の縁を結ぶ赤い縄を持っていたということから起る(続霊怪録)。雨月物語、三、吉備津の釜「かの赤縄に繋ぎては、仇ある家、異なる域(くに)なりとも易(か)ふべからずと聞くものを」
せきしん[赤心] (名)まごころ。「赤心を吐露す」
せきぜん[積善] (名)善行の積み重なること。「積悪」の対。平家、二、小松教訓「積善の家には余慶あり」(「易」の「文言」にある語)⇒せきあく
せきたい[石帯] 束帯の時、袍(はう)の腰を結ぶ帯。河で製し、漆で黒くぬり、玉をつけて飾る。いしのおび。たまのおび。附図参照。
せきぢ…ジ[関路] (名)関所のある街道。平家、四、大衆揃「かの鶏鳴、高き所に走り上り、鶏の鳴くまねをゆゆしうしければ、関路の鶏聞き伝へて、皆鳴きあへり」
せきて[関手] (名)「せきせん」ともいう。通路に関所を設けて、通行人から取った金銭。
せきとく[尺牘] (名)「しやくどく」ともいう。手紙。書簡。
せきのしみづ…シミズ[関の清水] (地名)逢坂の関附近にあった清水。今、大津市の清水町は、その名のなごりをとどめるという。拾遺集、三、秋「あふさかの関の清水に影見えて、今やひくらむ望月の駒 紀貫之」
せきのと[関の戸] (句)関所の門。関門。新後撰、冬「関の戸はまだ明やらで清見潟空よりかよふ小夜千鳥かな」
せきのふぢがは…フジガワ[関の藤川] (地名)歌枕の一。美濃の国、岐阜県不破の古関址の西を流れる小川。古今集、二十、神あそびの歌「みののくに関の藤川たえずして君に仕へむよろづよまでも」
せきひん[赤貧] (名)ひどく貧乏なこと。「赤」は「無一物」。
せきもり[関守・防人] (名)(1)関所の番人。伊勢物語「人知れぬ我が通ひ路のせきもりはよひよひごとにうちも寝ななむ」(2)「さきもり」に同じ。天智紀、十年十一月「たちまちにかしこに到らば、恐らくはかのせきもり驚きて射戦はむ」
せきやま[関山] (名)関所のある山道。多くは「逢坂の関」の山道をいう。更級日記「石山、関山越えていと恐ろし」=石山寺へ詣でるには、逢坂の関ある山道を越えて行かねばならないから、たいそう恐ろしい。
せきらう…ロウ[夕郎] (名)中国で「黄門郎」の異称。日暮れに青瑣門を拝するところから、起った名。また「蔵人」の唐名。平家、十二、吉田大納言沙汰「夕郎の貫首を経」
せぎり[瀬切] (名)瀬を押しきって流れ行くこと。はやせ。急流。増鏡、五、内野の雪「熊野川せぎりにわたす杉船のへなみに袖の濡れにけるかな」⇒へなみ。
せきりのしん[戚里の臣] (句)外戚の臣。天皇の外戚に当たる臣。平家、十、首渡し「このともがらは先帝の御時より戚里の臣として、久しく朝家に仕うまつる」
せきる (動、下二)「堰き入る」の略か。水をせきとめて他へ導きいれる。栄花、歌合せ「千代を経てすむべき水をせきれつつ池の心にまかせたるかな」
せぎる (動、四)水の流れをせきとめる。せく。さえぎる。
せく[節供](名)佳節に食物を供する義。せちく。せつく。枕草子、一「十五日は、もち粥のせくまゐる」
せく[節供] (名)佳節に食物を供する義。せちく。せつく。枕草子、一「十五日は、もち粥のせくまゐる」
ぜく[絶句] (名)「ぜつく」に同じ。源氏、松風「おのおのぜくなど作りわたして」
せぐくまる[跼まる] (動、四)かがむ。こごむ。
ぜげん[女衒] (名)江戸時代、遊女や奉公人などの口入業。また、その業を営む人。
せけんだましひ…ダマシイ[世間魂] (名)世俗に関する心のはたらき。世才。大鏡、八「世間魂はしも、いとかしこく侍る」
せけんむねさんよう[世間胸算用] (書名)浮世草紙。五巻。井原西鶴の作。元禄五年(1692)刊。一巻四話、すべて二十話。多くは、貧民が年の瀬を越すためのやりくりさんだんや悪辣さを写し、その間に長者の生活を插み、貧富の懸隔を示しているが、千編一律で文章の風格もとぼしい。
せこ[兄子] (名)女から男を親しみ尊んで呼ぶ称。兄弟・夫婦または友人の間柄にも用いられたが、多くは夫に用いた。せ。万葉、[1-43]「わがせこはいづく行くらむ奥津藻のなばりの山をけふか越ゆらむ 当麻真人麻呂の妻」
せこ[勢子・列卒] (名)狩の時、鳥獣をかりたてる人夫。曾我物語、一、奥野狩座の事「方方よりせこを入れて、野干(やかん)を狩りけるほどに」(「野干」はここでは「獣」の総称)
ぜざう…ゾウ[軟障] (名)寝殿造における屏風具の一。絹地に高い松などの絵をかいた幕のようなもので、屏風の前や壁などにかけ、時には室と室との隔てなどにも用いた。ぜじやう。せんじやう。せんざう。蜻蛉日記「引きたるぜざうなども、はなちたぐりたる、ひしひしと取りはらふに、心地はあきれて」
せざきばおり[背割羽織・背裂羽織] (名)昔、乗馬または旅行に用いた羽織で、背中の中央以下を縫い合わせないで、裂けたようにしてあるもの。ぶつさきばおり。さきばおり。
ぜじやう…ジヨウ[軟障] (名)「ぜざう」に同じ。
せす[施す] (動、サ変)ほどこす。供養する。宇治保、俊蔭「これを山の王に施し奉ると涙を流していふ時に、牝熊・雄熊荒らき心を失ひて」
せぜ[瀬瀬] (名)多くの瀬。あの瀬この瀬。千載集、六、冬「朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬瀬のあじろぎ 中納言定頼」
せせらかす (動、四)もてあそぶ。
せせらぎ (名)水の流れる浅い瀬。謡曲、鵜飼「小鮎さばしるせせらぎに」
せせる (動、四)(1)つっつき掘る。(2)触れて、いじる。もてあそぶ。なぐさみものにする。(3)迫る。こせこせする。こせつく。(4)つぶやく。ひとりごとをいう。
せた[勢田・勢多] (地名)琵琶湖から流れる瀬田川の左岸に位し、対岸の大津との間に瀬田橋を架す。更級日記「その夜、勢多の橋のもとに、この宮をすゑ奉りて」
せだえ[瀬絶え] (名)瀬を流れる水の絶えること。
せたのからはし[勢田の唐橋] (名)瀬田と大津との間に渡した瀬田川の橋。⇒せた(勢田)。
せたのながはし[勢田の長橋] (名)前項に同じ。
せたむ (動、下二)ひどく責める。いじめる。さいなむ。
せため (名)ひどく責めること。いじめること。さいなむこと。狭衣、三、上「母代(ははしろ)またせために寄り来たるに」
せち[節] (名)(1)時節。季節。(2)「せちゑ」「せつく」に同じ。(3)「節振舞」のこと。蜻蛉日記「今年はせち聞し召すべしとて、いみじく騒ぐ」
せちく[節供] (名)節日に供える食物。せく。おせち。
せちに[切に] (副)ひたすら。たって。しきりに。しいて。せつに。竹取「よき人にあはせむと思ひはかれど、せちに否といふことなれば」源氏、桐壺「いと若ううつくしげにて、せちに隠れ給へど、おのづからもり見たてまつる」
せちにち[節日] (名)昔、季節の変わる折などに祝った日。
せちぶ[節分] (名)「せちぶん」に同じ。
せちぶん[節分] (名)(1)季節の分かれる前夜の称。立春・立夏・立秋・立冬などの前夜。せちぶ。(2)後世は、もっぱら立春の前夜をいう。せつぶん。
せちみ[節忌] (名)「せちいみ」の略。斎日に精進・潔斎すること。また、その日の称。土佐日記「舟君、せちみす」
せちゑ…エ[節会] (名)平安時代、宮中において節日または公事の日の集会の称。元日節会・白馬節会・豊明節会・相撲節会の類。
せつ[拙] 謙称の自称代名詞。やつがれ。
せつかう…コウ[浙江] (地名)中国、浙江省にある川の名。奥の細道「江の内三里、浙江の潮をたたふ」(浙江ほどの満満たる潮をたたえているとの意)
せつかく[折角] (名)骨を折ること。保元物語、一、新院御所各門門固めの事「中にも折角の合戦二十余箇度なり」
せつかく[折角] (副)骨を折って。わざわざ。
せつきやう…キヨウ[説経] (名)(1)僧が経分の意義を信徒に説き聞かせること。枕草子、二「説経師は…そこに説経しつ、八講しけりなど、人のいひつたふるに」(2)妻帯の法師が仏法の尊いことなどを平俗な語りものとして節をつけて謡ったもの。説経祭文。のち、歌念仏・説経節などに転じた。
せつく[節供] (名)人日・上巳・端午・七夕・重陽の五箇の節日の称。佳節。(「節句」と書く典拠は見当たらない)
せつく (動、四)しきりに催促する。
ぜつく[絶句] (名)漢詩の一体。五言または七言の漢詩で、起・承・転・結の四句からなるもの。ぜく。
せつしやう…ショウ[摂政] (名)天子を輔佐し、代わって、万機のまつりごとを行う職。多くは大臣がこれを兼ねる。幼帝・女帝などの場合に置く。
せつしやうせき…シヨウ…[殺生石] (名)火山地方や温泉地方などで、噴気孔から噴出する有毒ガスのため、附近の生物の死ぬことのある岩石の称。奥の細道「これより殺生石に行く」(ここでは、那須高原にある殺生石を指す)
せつせん[雪山] (地名)印度の「ヒマラヤ山」をいう。謡曲、鉢の木「仙人に仕へし雪山の薪、かくこそあらめ」
せつぞくし[接続詞] (名)文法用語。活用しない自立語で、文節と文節、または文と文などを接続せしめる用をなす単語。かつ・また・および・されど・ただしの類。
せつとうご[接頭語] (名)文法用語。単独で用いられることなく、いつも他の単語の上に付いて、その単語と共に一つの単語をつくる語。「おん前」の「おん」、「たなびく」の「た」、「を暗し」の「を」の類。
せつな[刹那] (名)梵語Sanaの音写。極めて短い時間。一瞬間。徒然草、百八段「刹那覚えずといへども、これを運びてやまざれば、命を終ふる期(ご)、たちまちに至る」
せつびご[接尾語] (名)文法用語。単独で用いられることなく、いつも他の単語の下に付いて、その単語と共に一つの単語をつくる語。「法師ばら」の「ばら」、「老いばむ」の「ばむ」、「をこがまし」の「がまし」の類。
せつぶん[節分] (名)立春の前夜の称。⇒せちぶん。
せつようしふ…シユウ[節用集] (書名)辞典。室町時代の人、林宗二の著。明応五年(1496)成るか。簡略・便利な日用辞典で、天地・気候・人倫・人名・官名・支体・財宝・食服・草木・畜類・光粉・言語・数量の十三門に分類し、日用の熟語や文字について解説したもの。室町時代から江戸時代にわたり、大いに行われた。
せつり[刹利] (名)梵語Ksatriyaの音写。「刹帝利」ともいう。古代印度四階級の第二位。王および武士の階級。保元物語、一、法皇崩御の事「無常の境界は刹利も首蛇もかはらねば」
せつろく[節籙] (名)「摂政」の異称。「籙」は「符」。天子に代わって符をとる義。
せどうか[旋頭歌] (名)五七七、五七七の六句から成る和歌。頭句(五七七)をめぐらす意から名づけたものという。「双本歌」ともいう。
せな (名)女から夫・兄などの男子に対して親しんで呼ぶ語。万葉、[20-4422]「わがせなを筑紫へ遺りて愛(うつく)しみ帯は解かななあやにかも寝も 防人の妻」
せにじもに[千文字] (書名)「せんじもん」の古称。中国、梁の周興嗣の撰。一巻。「天地玄黄」に始まる四言古詩二百五十句、一千字。応神天皇の朝、百済の王仁(わに)が「論語」と共に持って来たという伝説による漢籍伝来の最初の書。古事記、中「わにきし、即ちろにご(論語)十巻、せにじもに一巻、あはせて十まり一巻、この人に付けて即ちたてまつりき」(この年は、紀元四〇〇年前後と推定される)
せばし[狭し] (形、ク)せまい。
せばし[狭し] (形、シク)意は前項に同じ。堀川百首、雑、松「みさごゐる磯まに生ふる松の根のせばしく見ゆるよにもあるかな」
ぜひなし[是非なし] (形、ク)(1)是非に関係しない。善悪にかかわらない。栄花、岩蔭「ぜひなくうれしうこそは思し召すべきを」(2)ぜひもない。しかたがない。やむを得ない。
せぶし[瀬伏し] (名)川の瀬に伏しひそむこと。永久百首、鵜川「飼ひのぼる鵜舟の縄のしげければ瀬ぶしの鮎の行く方やなき」
せふしんシヨウ…[浹辰] (名)「浹」は「ひとめぐり」。子から亥に至る一めぐり。十二日間。古事記、序文「未だ浹辰を移さずして気沴おのづから清まりぬ」⇒きれい(気沴)。
せまくら[瀬枕] (名)川瀬の波が枕のようにまるく高く見えるさまをいう語。平家、九、宇治川「白浪おびただしう漲り落ち、瀬枕大きに滝鳴つて逆巻く水も早かりけり」
せみのをがは…オガワ[瀬見に小河] (地名)京都の賀茂神社のそばを流れる小川。新古今、十九、神祇「石川やせみの小河の清ければ月も流れを尋ねてぞすむ 鴨長明」
せみのをがは…オガワ[瀬見の小河] (書名)四巻。伴信友の著。文化四年(1807)成る。京都の賀茂神社に関する各般の事項について考証したもの。
せみまる[蝉丸] (人名)平安時代の歌人・琵琶師。醍醐天皇の第四皇子とも宇多天皇の皇子敦実(あつみ)親王の雑色ともいう。盲目で、和歌をよくし、琵琶の名手であった。「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」の詠歌は名高い。生没年未詳。
せむ[迫む] (動、下二)せまる。押し寄せる。追いつめる。万葉、[6-1028]「ますらをの高円山(たかまとやま)にせめたれば里に下りけるむささびぞこれ」
せむ[攻む] (動、下二)攻める。「防ぐ」の対。
せむ[責む] (動、下二)(1)人にせまって苦しめる。さいなむ。(2)責める。叱責する。なじる。(3)せきたてる。うながす。催促する。枕草子、四「末はいかにいかにとあるを…たどたどしきまんなに書きたらむも見ぐるしなど思ひまはすほどもなく、せめまどはせば」(4)切迫する。つまる。源氏、若菜、下「月月とどこほることしげくて、かく年もせめければ」(5)せがむ。せびる。しいて求める。枕草子、五「今宵はよめなどせめさせ給へど」(6)馬を乗りならす。
せめぐ[■ぐ] (動、四)互に恨みあう。互に怒り争う。
せんえうでん…ヨウ…[宣耀殿] (名)内裏十七殿の一。貞観殿の東、麗景殿の北に位する。後宮の一で、女御の居所。せんにようでん。附図参照。大鏡、三、左大臣師尹「村上の御時の宣耀殿の女御、かたちをかしげに美しうおはしけり」
せんか[泉下] (名)黄泉の下。めいど。
せんかう…コウ[先考] (名)子が、亡父を称する語。「先妣」の対。
せんがく[仙覚] (人名)鎌倉時代の歌僧。万葉学者。常陸の人。鎌倉比企谷の新釈迦堂の僧。「万葉」の訓詁・注釈に力を尽くした。建仁三年(1202)生まれ、寂年未詳。主著、万葉集仙覚称・先覚奏覧状。
ぜんがふ…ゴウ[禅閤] (名)仏門に入った太閤の称。
せんぎ[僉議] (名)衆人の評議。
せんぎ[詮議] (名)(1)評議して、理を明らかにすること。(2)罪人を糺問すること。吟味。
せんきやう[仙境] (名)神仙の住む所。俗界を離れた場所。
せんげ[宣下] (名)勅宣の下ること。定期の除目以外に、臨時に宣旨の下ること。
せんげ[遷化] (名)僧侶の死をいう。入寂。
ぜんこん[善根] (名)仏教で、善果を得べき行為。功徳。水鏡、中「汝、心みだれ、善根すくなくて、浄土へ参るべきほどにいまだ至らず」
せんざい[前裁] (名)(1)植えこみのある庭。徒然草、十段「前裁の草木まで、心のままならずつくりなせるは、見る眼も苦しく」(2)庭前に植える草木。また、植えてある草木。拾遺集、三、秋「嵯峨に前裁堀りにまかりて 藤原能」枕草子、二「おまへはつぼなれば、前裁など植ゑ、ませゆひて、いとをかし」⇒つぼ(壺)。
せんざいわかしふ…シユウ[千載和歌集] (書名)二十一代集、第七番めの勅撰集。平安時代最後のもの。八代集の一。後白河法皇の院宣により、文治三年(1187)、藤原俊成撰進。二十巻。千二百八十四首。
せんじ[宣旨] (名)最も簡単な形式の勅命。源氏、桐壺「てぐるまの宣旨などのたまはせて」同、同「内侍、宣旨うけたまはり伝へて、大臣まゐり給ふべき召しあれば、参り給ふ」
ぜんじ[前司] (名)前(さき)の国司。「信濃の前司」「三河の前司」「近江の前司」などという。
せんしうらく…シユウ…[千秋楽] (名)(1)雅楽曲の一。唐楽の盤渉(ばんしき)調に属し、舞いは伴わない。(2)能楽・歌舞伎・相撲などの興行期日の最後の日をいう。
せんじがき[宣旨書] (名)(1)宣旨の文章。仰せがき。(2)代書すること。また、その書状。せじがき。宇津保、蔵開、中「大将見給ひて、あぢきなのせんじがきやとひとりごちて」
ぜんじもん[千字文] (書名)⇒せにじもに。
ぜんじやう…ジョウ[軟障] (名)「ぜざう」に同じ。
せんそ[践祚・践阼] (名)先帝が崩じて、ただちに嗣君が位を継ぎ給うこと。⇒そくゐ。
せんだい[闡堤] (名)仏法をそしり、因果の理法を信じない者。同名の悪僧から出た語。一闡堤。謡曲、土車「凡そ弥陀の悲願には、破戒・闡堤をも洩らさず」
せんたう…トウ[専当] (名)寺院の雑務に当たる僧職。妻帯を許される。専当法師ともいう。平家、一、御輿振「神人・宮任・しら大衆・専当満ち満ちて、いくらといふ数を知らず」
せんだう…ドウ[山道・仙道] (名)山間を通る街道。「海道」の対。(2)「中山道・中仙道」の略。平家、四、源氏揃「木曾冠者義仲は、甥なれば取らせむとて、山道へこそ赴きけれ」
ぜんだうくわしやう…ドウカシヨウ[善導和尚] (人名)「善導大使」「光明寺和尚」ともいう。中国、唐の光明寺の住職。隋の煬帝大業九年生まれ。浄土宗を大成して弘めた。高宗の開耀元年(681)寺前の柳樹に登り、みずから飛び下りて入寂、年六十八。主著、観無量寿経疏・住生礼讃・観念法門。平家、灌頂、大原御幸「左に普賢の絵像、右に善導和尚並びに先帝の御影をかけ」
せんたうほうし…トウホウシ[専当法師] (名)「専当」に同じ。
せんだち[先達] (名)「せんたつ」の義で、我より先にその道に達すること。また、その人。導く人。案内人。また「せんだつ」に同じ。徒然草、五十二段「すこしのことにも、せんだちはあらまほしきことなり」
せんだつ[先達] (名)(1)前項に同じ。(2)修経者で、勤行を積み、峰入の時など同業者の先導をする者。謡曲、安宅「弁慶はせんだつの姿となりて、主従以上十二人」
せんだん[栴檀] (名)梵語Chandanaの音写。南天竺に産する香木の名。材の色より、赤檀・紫檀(黒色)・白檀などの区別がある。宇津保、俊蔭「栴檀のかげに虎の皮を敷き、三人の人並び居て琴を弾き遊ぶ」曾我物語、三、兄弟を母の制する事「栴檀はふたばより香ばしとは、かやうのことに知られたり」
ぜんちしき[善知識] (名)高徳の僧。名僧。
せんぢやく…ジヤク[染着] (名)しみつくこと。愛欲の心が外者に浸染して離れないこと。執着。
せんぢゆう…ジユウ[先住] (名)(1)前に住んでいたこと。「先住民族」(2)寺の、前代の住持。
せんど[先途] (名)(1)大事の折り。せとぎわ。勝敗分けめの時。保元物語、二、白河殿攻め落す事「ここを先途と防ぎけり」(2)事物の終局。おちつく先。太平記、七、吉野城軍事「しばらく生きて宮の御先途を見はてまゐらせよと庭訓を残しければ」(3)その家柄では、それ以上に進むことのできない極限の官職。極官。平治物語、一、信頼信西不快の事「執柄の息、英才のともがらも、この職を先途とす」
せんとう[仙洞] (名)(1)仙人の住所。(2)上皇の御所。仙人の住所に擬していう。仙洞御所。霞の洞。(3)転じて、上皇の御称。
ぜんに[禅尼] (名)仏門に入った婦人の称。「禅門」の対。
せんのりきゆう…キユウ[千利休] (人名)茶道千家流の祖。名は宗易。通称は田中与四郎。和泉の堺の人。茶道をもって、初め信長に仕え、のち秀吉に仕えて厚遇されたが、天正十九年(1591)、あることで秀吉の怒りに触れ死を賜う。年七十。
ぜんばう…ボウ[前坊] (名)前皇太子の称。先坊(せんぼう)ともいう。
ぜんぴ[先妣] (名)子が、亡母を称する語。「先考」の対。
ぜんぼふ…ボウ [懺法](名)仏教で、罪を懺悔するために行う修法。宇津保、国譲、下「その寺にも、めぐりの寺にも、御読経せさせ、懺法せさせなどし給ひて」
せんみやう…ミヨウ[宣命] (名)勅命を宣る義。純粋の国語で、勅命をしるした文書。「祝詞」に類する。即位・立皇后・立太子・改元・譲位・大官任命・贈位などの際に下す。源氏、桐壺「三位のくらゐ贈り給ふよし、勅使来て、その宣命よむなむ、悲しきことなりける」
ぜんもん[禅門] (名)(1)仏門に入った男子の称。「禅尼」の対。(2)禅宗の法門。禅宗。(3)仏門。
せんりう…リユウ[川柳] (名)俳諧の前句付(まへくづけ)の独立した十七音の戯歌。字数は俳句と同じであるが、内容において、人情・風俗・人生・社会の弱点を突き、滑稽・諧謔・風刺・機知・奇警などを蔵し、形式において、活用語の連用形で止めるものの多い点などが特色とされる。明和(1764-1771)のころ、江戸浅草の人、前句付の宗匠、柄井川柳がse創始したのでいう。⇒まへくづけ。
せんりうてん…リユウ…[川柳点] 柄井川柳の点した川柳。また、その撰集。やなぎだる。前項参照。
せんりよう[潜龍] (名)「せんりゆう」とも読む。(1)池中などにひそんでいて、まだ天にのぼらない龍。(2)転じて、まだ、帝位に即かれないお方。皇太子。古事記、序文「潜龍、元を体し」(天武天皇がまだ皇太子でいられた時、一般人民の意を体し)(3)暫く帝位を避け給うお方。(4)帝位をねらう者の称。
ぜんりん[禅林] (名)(1)禅宗の寺院。(2)僧侶の仲間。または、僧侶の和楽する園林。
ぜんりんのじふいん…ジユウ…[禅林の十因] (書名)仏書。一巻。原名は「往生十因」。浄土宗西山派禅林寺の永観律師の著。永観は源隆国の子。天永二年(1111)寂、年七十九。念仏往生の十因を説いたもの。すなわち広大善根・衆罪消滅・宿縁深厚・光明摂取・聖衆護持・極楽化生・三業相続・三味発得・法身同体・随順本願の十因。徒然草、四十九段「今、火急のことありて、すでに朝夕に迫れりとて、耳をふたぎて念仏して、ついに往生をとげけりと、禅林の十因に侍り」
ぜんゐ…イ[禅位] (名)「禅」は「譲る」。天子が位をゆずりわたすこと。譲位。退位。

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