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の[野] (名)のはら。はら。万葉、一の四八「ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへりみすれば月かたむきぬ 柿本人麻呂」同、五の八三九「春の能に霧立ち渡り降る雪と人の見るまで梅の花散る」(「ぬ」と読まぬ)
の[箆] (名)(1)矢竹。和名抄「箆=乃=箭竹名也」(2)矢柄。太平記、三、笠置軍事「もし鎧の上を射ば、箆くだけ、やじり折れて、通らぬこともこそあれ」
の[荷] (名)にもつ。に。神功紀、仲哀天皇九年三月「荷持、これをノトリといふ」
(助詞)(1)第一類、格助詞。(1)主格を示す。「が」に同じ。「稲葉そよぎて、秋風の吹く」「待つ人のなき」(2)いろいろの意味を持つが、上の語と共に、下の体言を修飾する。「すめろぎの御代」「世の中」「これの歌巻」「越の白山」「富士の山」「口惜しのこと」(2)第三類、副助詞。並列する。狂言、柿山伏「貴い山伏を、いや犬で候ふの猿で候ふのというて」(3)第四類、終助詞。感動の意を示す。狂言、こんくわい「その狐を釣るものを、ちと見たいの」
のう[能] (名)(1)巧みによくなし得ること。才能。能力。諺「能ある鷹は爪を隠す」「能なし犬の高吠え」(2)わざ。芸。技量。芸能。徒然草、五十四段「能ある遊び法師どもなど語らひて」(3)効能。ききめ。「薬の能」
のう[能] (名)⇒のうがく(能楽)。
のういん[能因] (人名)平安時代末期の歌僧。古曾部入道ともいう。俗名は橘永愷(ながやす)。「都をば霞と共に立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関」の歌は人口に膾炙している。生没年未詳。主著、玄玄集・能因歌枕。
のういんじま[能因島] (地名)象潟の中にある小島。能因がこの小島に幽居したのに基づく地名。⇒きさがた。奥の細道「まづ能因島に舟をよせて、三年幽居の跡をとぶらひ」
能楽[能楽] (名)楽劇の一。猿楽能・御能・乱舞などと称せられていたものであるが、主として明治以後、この名で呼ばれるもの。略して「能」ともいう。室町時代に、大和猿楽に属していた結崎(ゆふさき)座の観阿弥が義満将軍に見出され、これまで雑劇の一種であったものを漸次芸術的な楽劇に発展せしめ、次いで、その子世阿弥に至り、堂堂たる芸術的楽劇に大成せしめ、以来もっぱら武家の武楽として隆盛をきわめるようになった。舞い・科(しぐさ)・歌・詞(ことば)・楽を包括した綜合芸術で、能舞台において、シテ・ワキ・ツレ・トモなどの役の演者が、笛・太鼓・大鼓・小鼓と地謡との助けをかりて、詞章たる謡曲の詞を語り謡い、それに相応した動作や舞いや科(しぐさ)で表現する。現在、観世・宝生・金春・金剛・喜多などの流派がある。⇒さるがく。えうきよく。
のうきやうげん…キヨウ…[能狂言](名)(1)「狂言」に同じ。(2)「能楽」に同じ。(3)「能楽」と「狂言」との併称。
のうきやうげん…キヨウ…[能狂言] (名)(1)「狂言」に同じ。(2)「能楽」に同じ。(3)「能楽」と「狂言」との併称。
のうげ[能化] (名)(1)僧の師。その弟子を「所化(しよけ)」というのに対する。(2)西本願寺の学頭。(3)高野山の門首。
のうりき[能力] (名)寺院で、力仕事をする下部の僧。また、寺男。謡曲、道成寺「いかに能力、はや鐘をば鐘楼へ上げてあるか。さんざらふ。はや鐘楼へ上げてさふらふ」
のうれん[暖簾] (名)「なうれん」に同じ。のれん。
のかづき……カズキ[箆被] (名)やじりの矢竹に接する部分の称。太平記、三、笠置軍事「三人張りの弓に、十二束三伏せ箆かづきの上まで、引きかけ、しばし堅めて丁と放つ」
のかのかと (副)泰然として。動じないで。筆のすさび「傍に人なきがごとく、のかのかとして過ぎ行きしかば」
のがみのしゆく[野上の宿] (地名)昔、関が原と中仙道垂井との間にあった名邑。遊女なども多かったが、今は一寒村。今の岐阜県不破郡関原村字野上の地。謡曲、班女「かやうに候ふものは、美濃の国野上の宿の長にて候ふ」
のぎ (名)とげ。古事記、上「このごろ、たひなも、のみどにのぎありて、物え食はずと愁ひまをせば、必ずこれ取りつらむ」=このごろ、鯛が、のどにとげがささっていて、物も食べられないと悲しんでいますから、きっと、この鯛が取ったのでございましょう。
のぎやうかう…ギヨウコウ[野行幸] (名)天子が鷹狩に行幸されること。野のみゆき。古今著聞集、十一、画図「承保の野行幸には、虎の皮をばおほはれざりけるとなむ」
のぐちのうまや[野口の駅] (地名)未詳。丹波の国の船井郡にあるともいい、周防の国の玖珂郡にもあるという。その他、野口という名邑が多くて不明。枕草子、十「うまやは…のぐちのうまや」
のけざまに(副)あおのけに。竹取「やしまの鼎の上に、のけざまに落ちたまへり」
のけされかへるノケサレカエル] (動、四)あおのけに倒れる。宇治拾遺、一「小藤太、おびえてのけされかへりけるほどに」
のけぞりかへるノケゾリカエル (動、四)ひっくりかえる。
のけぞる (動、四)あおのけにそる。うしろへ、そりかえる。
のけに (副)あおのけに。平家、五、文覚被レ流事「拳を強く握り胸をはたと突いて、後ろへのけに突き倒す」
のこぎりびき[鋸引] (名)刑罰の一。鋸で頭を挽き切るもの。江戸時代には、両肩に傷をつけて、その血を鋸に塗り、鋸で切ったさまを表して、町に二日間さらし、のち引き回した上、はりつけに行った。
のこのうら[能許の浦] (地名)福岡湾の中央の海島。海を隔てて糸島郡の韓亭(からとまり)と対する。今の福岡県早良郡に属する残島の浜辺の古称。万葉、十五の三六七〇「からとまり能許の浦浪立たぬ日はあれども家に恋ひぬ日はなし」
のこのとまり[能許の泊] (地名)前項に同じ。万葉、十五の三六七三「風吹けば沖つ白浪かしこみと能許のとまりにあまた夜ぞ寝(ぬ)る」
のごふノゴウ[拭ふ] (動、四)「ぬぐふ」に同じ。
のこりおほしノコリオオシ[残り多し] (形、ク)心残りが多い。残念である。
のこんのゆき[残んの雪] (句)残っている雪。残雪(ざんせつ)。
のさかのうら[野坂の浦] (地名)肥後の国、熊本県葦北郡田浦村の海浜。万葉、三の二四六「葦北の野坂の浦ゆ船出して水島にゆかむ浪立つなゆめ」(「ぬさか」と読まない)
のさき[荷前] (名)「荷」は「貢物の荷」、「前」は「初穂・初物」の義。昔、諸国のみつぎの穀物・絹布などの初穂・初物を選び分けて置いて、十二月十三日に、または別に定められた日に、伊勢の大神宮や十陵・八墓に奉り、残りを天皇が受納されるもの。祝詞、祈念祭「荷前は、皇大御神の大前に横山のごと打ち積み置きて、残りをば平らけく聞こしめし」
のさきのつかひ……ツカイ[荷前の使い] (名)昔、朝廷で十二月の吉日を選んで、荷前を十陵・八墓に奉る時、荷前を持って行く使いの人。十陵・八墓は、天皇や皇太后の御陵、外戚の御墓などのことで、御代御代によって違う。徒然草、十九段「御仏名、荷前の使ひ立つなど、あはれにやむごとなき公事ども繁く」
のさきのはこ[荷前の箱] (名)荷前を納めた箱。万葉、二の一〇〇「あづま人の荷前の箱の荷の緒にも妹が心に乗りにけるかも」
のさきのよぼろ[荷前の丁] (名)諸国から朝廷に奉る荷前を都へ運ぶ人夫。琴後集、十一、若桂の序「去年の冬、荷前のよぼろにめされて都にのぼりぬるに」
のざはぼんてうノザワ…チヨウ[野沢凡兆] (人名)江戸時代の俳人。宮城氏ともいう。加賀の金沢の人。芭蕉の門人。「猿蓑」の編者の一人。正徳四年(一七一四)没。生年未詳。
のざらしきかう……コウ[野ざらし紀行] (書名)紀行文。一巻。松尾芭蕉の著。明和五年(一七六八)刊。芭蕉が貞享元年(一六八四)から同二年にわたって、東海道から伊勢・大和・山城を経て、近江・美濃・甲斐などを行脚し吟行した時の紀行文。書名は、巻頭の「のざらしを心に風のしむ身かな」によるもの。
のし[熨斗] (名)(1)火のし。大鏡、五、太政大臣兼通「寝たまふ時には、大きなる熨斗もちたる女房三、四人ばかりいできて、かのおほとのごもるむしろをば、あたたかにのしなでてぞ寝させ奉り給ふ」(2)「のしあはび」の略。(3)進物・祝儀品などに添える飾りの紙。今日、用いている。
のじ[虹] (名)「にじ」の古語。古事記、中「日のひかりのじのごと、そのほとを指したるを」万葉、十四の三四一四「伊香保ろのやさかのゐでに立つのじのあらはろまでもさ寝をさ寝てば」(「ぬじ」と読まない)
のしあはび……アワビ[熨斗鮑] (名)「伸し鮑」の義。鮑の肉を薄く長く剥ぎ、引きのばして筋として乾かしたもの。古くは食料とし、のちには儀式の時の肴とし、また祝儀の進物などに添えて飾りとする。のし。うちのし。あはびのし。かひざかな。
のしひとへ……ヒトエ (名)張った練絹の単衣。枕草子、十二「みぐるしきもの…のしひとへも同じく透きたれど、それはかたはにも見えず、臍(ほぞ)のとほりたればにやあらむ」
のしま[奴島] (地名)今の兵庫県三原郡の南の海上にある沼島であろう。土佐日記「奴島
といふ所を過ぎて」
のじま[野島] (地名)和歌山県日高郡野島村。熊野街道に当たる地。万葉、一の一二「わが欲りし野島は見せつ底ふかきあこねの浦の珠ぞ拾はぬ」(「ぬじま」と読まない)
のじまがさき[野島が崎] (地名)次項に同じ。新古今、四、秋上「こと問はむ野島が崎のあまごろも波と月とにいかがしをるる 七条院大納言」
のじまのさき[野島の崎] (地名)淡路の国、兵庫県津名郡岩屋の西北部の海浜。万葉、三の二五〇「たまも刈るみぬめを過ぎて夏草の野島の崎に舟近づきぬ 柿本人麻呂(「ぬじまのさき」と読まない)⇒なつくさの。
のしめ[熨斗目] (名)無地の練貫で、腰の辺にだけ縞を織り出した衣。江戸時代、かみしもの下に着用したもの。五位以下の武家の礼服。
のす (接尾)「なす」の転。「のごとく」の意を含む副詞を作る。万葉、十四の三四一三「利根川の川瀬も知らずただ渉り浪に遇ふのす逢へる君かも」
のぞきのふち[のぞきの淵] (地名)所在未詳。枕草子、一「淵は…かくれのふち、のぞきのふち、玉淵」
のぞく[臨く] (動、四)(1)臨む。源氏、帚木「人人、渡殿より出でたる泉にのぞき居て酒飲む」(2)さしかかる。中務集「池にのぞきたる松に藤かかれり」
のぞこる (動、四)除かれて消える。無くなる。斉明紀、三年九月「牟婁のゆに往きて…病おのづからのぞこりぬ」
のだいこ[野太鼓] (名)職業的な幇間でなく、内職に太鼓持をする者。転じて、太鼓持またはおべっかを卑しめていう語。漱石の「坊ちゃん」の中にも、この語がでている。
のたうぶノトウブ[宣ぶ] (動、四)「のりたまふ」に同じ。おっしゃる。お告げになる。蜻蛉日記「つかさのかみの、こぞよりいとせちにのたうぶことのあるを」
のだつ (動、四)「伸び立つ」の義。成長する。
のだのたまがは……ガワ [野田の玉川](地名)歌枕の一。六玉川の一。宮城県塩竃市附近の川。新古今、六、冬「夕されば汐風越してみちのくの野田の玉川千鳥鳴くなり 能因法師」
のたまはくノタマワク (副)言われるには。おっしゃることには。言われるよう。神代紀、上「陰神(めがみ)まづ唱へてのたまはく、あな、うれしや、うましをとこに遇ひぬ」竹取「御子、のたまはく、命を捨てて、かの玉の枝持ちて来たる」
のたまふノタマウ (動、四)「のりたまふ」の略。「言ふ」「告ぐ」の敬語。おっしゃる。お告げになる。竹取「かぐや姫、のたまふやうにたがはず、作り出でつ」
のため[箆矯・箆撓] (名)矢の箆の曲がったのを矯めなおすこと。また、その具。すじかいに溝を彫り刻んだ細い木に、箆を入れて撓めなおす。太平記、十七、山門攻事「金磁頭二つ箆撓に取り添へて道道撓めなおし」
のためがた[箆矯形・箆撓形] (名)前項参照。「のため」の具に似た形。すなわち、すじかい。ななめ。平家、九、宇治川「梶原が乗つたりける磨墨は、河中よりのためがたに押し流され、遙かの下(しも)より打ち上げたり」
のたりのたり (副)しずかに、のたうつさまにいう語。蕪村の句「春の海ひねもすのたりのたりかな」
のぢ……ジ[野路] (名)野の中の道。のみち。慕景集「急がずば濡れざらましを旅人のあとより晴るる野路のむらさめ」
のぢ……ジ[野路] (地名)近江の国、滋賀県犬上郡老上村の大字。鎌倉街道に当たる。十六夜日記「野路といふ所は、来し方・ゆくさき、人も見えず、日は暮れかかりて、いと物悲し」
のちおひ……オイ[後生ひ] (名)後から生まれる人。後から生ずるもの。宇津保、藤原の君「などか実忠をしもおぼしおとすべき。のちおひといふものなり」(「後生恐るべし」との意)曾丹集「のちおひのつのぐむ芦のほどもなきうき世の中は住みうかりけり」
のちおひ……オイ[後追ひ] (名)時機におくれること。落窪物語「のちおひなる御物詣でなめりや」
のちくやし[後悔し] (形、シク)後になって、くやしい。後悔する。竹取「深き心も知らで、あだ心つきなば、後くやしきこともあるべきをと思ふばかりなり」
のちせ[後世] (名)のちの世。後世。
のちせ[後瀬] (名)下流の瀬。一説、早瀬。後に逢う機会の意に用いることが多い。万葉、十一の二四三一「鴨川の後瀬静かけく後も逢はむ妹には我は今ならずとも」源氏、帚木「見なほし給ふのちせもや」
のちせのやま[後瀬の山] (地名)若狭の国、福井県小浜市の南方にある小山。万葉、四の七三七「かにかくに人はいふとも若狭道(わかさぢ)の後瀬の山の後も会はむ君 大伴坂上大嬢」枕草子、一「山は…のちせの山」
のちせやま[後瀬山] (枕詞)前項参照。頭音を重ねて「のち」に冠する。万葉、四の七三九「後瀬山のちも逢はむと思へこそ死ぬべきものを今日までも生けれ 大伴家持」
のちとげ[後遂げ] (名)最後までなしとげること。終りを全うすること。大鏡、七、太政大臣道長「いかづちは、いかなるぞと問ふに、一きははいと高く鳴れど、のちとげのなきなり。されば、御末いかがおはしまさむと見えたり」
のぢのさと…ジ……[野路の里] (地名)近江の国、滋賀県犬上郡老上村の大字。平家、十、海道下り「雲雀あがれる野路の里」
のちのつき[後の月] (名)(1)次の月。翌月。(2)「■月に同じ。(3)陰暦九月十三日の夜の月。「八月十五夜の月」の対。
のちのよ[後の世] (名)(1)将来。未来。後代。後世。万葉、十六の三七九一「いにしへの賢(さか)しき人も、後の世のかたみにせむと、老人を送りし車、持ちかへり来し」同、十九の四一六五「ますらをは名をし立つべしのちのよに聞きつぐ人も語りつぐがね 大伴家持」(2)死後の世界。ごせ。ごしやう。らいせ。宇津保、蔵開、下「この世経む限りは更にもいはず、後の世にもかかる中に生まれかへらむ」
のづかさ……ズカサ[野づかさ] (名)「つかさ」は丘。野中の小高い丘。万葉、十七の三九一五「あしびきの山谷超えてのづかさに今は鳴くらむうぐひすのこゑ」(「ぬづかさ」と読まない)
のつと[祝詞] (名)「のりと」に同じ。謡曲、藍染川「さらば、のつとを参らせうずるにてさふらふ」
のつと (副)「ぬつと」に同じ。芭蕉の句「梅が香にのつと日の出る山路かな」
のつとり[野つ鳥] (枕詞)「野の鳥」の義。「さのつとり」とひとしく、「きじ」すなわち「きざし」に冠する。万葉、十三の三三一〇「野つ鳥きざしとよみ、家つ鳥かけも鳴く」
のつとる[則る] (動、四)「のりとる」の音便。法(のり)として従う。模範とする。基準とする。
のつとる[乗つ取る] (動、四)「のりとる」の音便。乗り込んで奪い取る。
のと[祝詞] (名)「のりと」の略。のつと。宇津保、菊宴「御舟ごとにのと申して、一度は御はらへらすほどに」
のどかなり[長閑なり] (形動、ナリ)(1)静かだ。うららかだ。ゆったりしている。のんびりしている。枕草子、一「やよひ三日、うらうらと、のどかに照りたる」源氏、花宴「起ちて、のどかに袖かへす」(2)平然としている。落ちついている。源氏、帚木「改めてのどかに思ひならばなむ、あひ見るべきなど言ひしを」増鏡、九、北野の雪「かくて少し人人の心のどかに、うち静まりておぼさるるに」
のとがはの…ガワ…[能登川の] (枕詞)「のと」の類音から「のち」に冠する。万葉、十九の四二七九「能登川ののちには逢はむしましくも別るといへば悲しくもあるか」(しばしの間も)
のどけし (形、ク)(1)うららかである。静かである。古今集、二、春下「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ。」⇒しづごころ。(2)おだやかである。のんびりしている。ゆったりしている。徒然草、七段「つくづくと一年をくらすほどだにも、こよなうのどけしや」
のとせがは……ガワ[能登瀬川] (地名)「のとせのかは」も同じ。大和の国、高市郡にある川。曾我川の上流で、巨勢路を流れる時の称。万葉、三の三一四「さざれ波磯こせぢなるのとせ川音のさやけさたぎつ瀬ごとに」同、十二の三〇一八「巨勢にある能登瀬の川の後も逢はむ妹にはわれは今ならずとも」
のどに[長閑に] (副)「のどかなり」の語根から来た語。のどかに。続紀、十七、天平勝宝元年四月「大君の辺(へ)にこそ死なめ、のどには死なじ」万葉、二の一九七「あすか川しがらみ渡し塞(せ)かませば流るる水ものどにかあらまし」
のどのどと (副)のどかに。ゆったりと。悠悠と。悠然と。更級日記「人目もみえず、のどのどと霞みわたりたるに」狭衣、一、下「大方は、いと騒がしく、いそがしげなる頃なれど、この御方には、のどのどとして」
のどまる (動、四)のどかになる。しずまる。おちつく。源氏、玉■「少し心のどまりて」増鏡、五、内野の雪「天の下のさわぎ、少しのどまりぬべきにやと見えつるに」
のどむ (動、下二)前項の他動。のどかにする。しずめる。おちつかせる。ゆったりさせる。蜻蛉日記「のどらかにうち置きたるものも、のどめ得ぬ癖なむありける」(静かに眺め得ぬ癖)源氏、帚木「そのたなばたの裁ち縫ふ方をのどめて」(ゆっくりさせて)増鏡、十二、老のなみ「御本省も、「いとうるはしく、のどめたるさまにおぼして」
のどやかなり (形動、ナリ)(1)うららかである。更級日記「春ごろ、のどやかなる夕つかた」徒然草、十九段「鳥の声なども、ことのほか春めきて、のどやかなる日影に」(2)静かである。ゆったりしている。源氏、帚木「殿上にもをさをさ人ずくなに、御とのゐ所も例よりはのどやかなるここちするに」
のどらかなり (形動、ナリ)前項に同じ。蜻蛉日記「いかなるも、のどらかにうち置きたるものも、のどめ得ぬ癖なむありける」⇒のどむ。
のどろに (副)やたらに広まり、延びるさまにいう語。しまりなく。むやみに。「のどろに広し」「のどろに深入りす」
のどわ[喉輪] (名)鎧の具。鎧につけて、あごの下からのどのところにかけて蔽うもの。
のなかのしみづ……シミズ[野中の清水] (地名)播磨の国、兵庫県の印南野の中にあったという清水。はじめは冷たい清水であったが、のちにはぬるい清水になったといわれ、はじめには優れていたが、のちには衰えたもののたとえとしてしばしば和歌などに詠じられる。古今集、十七、雑上「いにしへの野中の清水ぬるけれどもとの心を知る人ぞ汲む」増鏡、十九、久米のさら山「野中の清水、ふたみの浦、高砂の松など、名ある所所ごらんじわたさるるも、かからぬ御幸ならば、をかしうもありぬべけれど」
ののしる (動、四)(1)声高く言いさわぐ。わめく。竹取「われこそ死なめとて、泣きののしること、いと堪へがたげなり」土佐日記「その日、しきりに、とかくしつつ、ののしるうちに、夜ふけぬ」徒然草、八十七段「山だちありと、ののしりければ」(2)さかんにさわぎ立てる。評判になる。大鏡、はしがき「年頃、ここかしこの説経とののしれど、何かはとて参ることもし侍らず」徒然草、一段「いきほひ猛にののしりたるにつけて、いみじとは見えず」=威勢が盛んで、世間が騒ぎ立てて評判するにつけても、えらいとは見えない。(3)けぶりをきかせる。威勢がいい。大和物語「その後、左大臣の北の方にて、ののしり給ひける時、詠みておこせたりける」(4)声が高い。また、ごうごうと高鳴る。源氏、浮舟「里びたる犬ども出で来て、ののしるも、いと恐ろしく」同、蜻蛉「川の方を見やりつつ、響きののしる水の音を聞くにも」
ののしる[罵る] (動、四)前項の転。声高く、しかりつける。どなる。また、口ぎたなく悪口を言う。けなす。罵詈する。
ののみや[野の宮] (名)昔、皇女が斎宮または斎院にお立ちになる前、斎戒のために一年間おこもりになる宮殿。斎宮の場合には京都西嵯峨の有栖川に、斎院の場合は京都紫野の東にあった。徒然草、二十四段「斎宮の野の宮におはしますありさまこそ、やさしく、面白きことの限りとはおぼえしか」
ののみゆき[野の御幸] (名)天子が鷹狩に行幸されること。のぎやうこう。神皇正統記、五「古の跡を興されて、野のみゆきなどもあり」
ののめく (動、四)「ののしる」と「わめく」との合成語であろう。ののしる。わめく。大声を立てる。宇治捨遺、十二「上人、涙を流して三度礼拝す。見る人皆ののめき感じ、或は泣きけり」太平記、十、稲村崎成二干潟一事「両方名誉の大力どもが、人まぜもせず、いくさする、あれ見よとののめきて、敵みかたもろともに、固唾を呑うで汗を流し」
のばはるノバワル[延ばはる] (動、四)のびる。延び引く。宇津保、国譲、下「この朝臣見る時こそ、齢のばはる心地すれ」
のばふノバウ[述ばふ] (動、下二)「述ぶ」の延音。述べる。言う。古今集、十九、長歌「伊香保のぬまの、いかにして、おもふこころを、のばへまし」
のばふノバウ[延ばふ] (動、下二)延べる。延ばす。延べ引く。後撰集、七、秋下「かずしらず君が齢をのばへつつなだたるやどの露とならなむ 伊勢」
のび[野火] (名)春さきなどに、野山の枯草を焼く火。
のびやかなり (形動、ナリ)さわりなく伸びている。
のびらかなり (形動、ナリ)(1)前項に同じ。源氏、末摘花「御鼻…あさましう高うのびらかにさきの方すこし垂りて」(2)ゆるやかである。なごやかである。くつろいでいる。源氏、初音「おのづから、人の心ものびらかにぞ見ゆるかし」
のびる [野蒜](名)蒜(ひる)に同じ。古事記、中「いざこども、のびるつみに、ひるつみに」(「ぬびる」と読まない)
のぶか [箆深](名)矢が箆のところまで深く入ること。平家、宇治川「向かひの岸より、山田の次郎が放つ矢に、畠山、馬の額を箆ぶかに射させ」
のぶし[野伏] (名)「やまぶし」に同じ。
のぶし[野武士] (名)「野伏」とも書く。山野をさすらう、統率者のない兵。のぶせり。
のぶせり[野伏せり・野臥せり] (名)(1)前項に同じ。(2)山野に潜伏して、劫奪するもの。山賊。やまだち。(3)山野に露宿する乞食。やどなし。
のべ[野辺] (名)(1)野のあたり。のはら。野。(2)火葬。荼毘。新千載集、哀傷「深草の野辺の煙となりもせばいづれの雲を分きて訪はまし」
のべおくり[野辺送り] (名)遺骸を火葬場または埋葬地へ送ること。のべのおくり。
のぼの[能褒野] (地名)伊勢の国、三重県鈴鹿川の北の原野。亀山と庄野との中間に当たる。古事記、中「能煩野に到りませる時に国をしのばして歌ひたまはく」(「のぼぬ」と読まない)
のぼりびと[上り人] (名)地方から都へ来た人。おのぼり。古今著聞集、二十、魚虫■獣「ただの直垂上下に、編笠着たるのぼり人、馬よりおりて」
のぼる[上る・登る・昇る] (動、四)(1)高いところへ行く。上へ進む。(2)上流へ行く。さかのぼる。古事記、上「その河上に人ありけりとおもほして、まぎのぼりいでまししかば」(3)沖から陸へ向かって行く。万葉、十五の三六四三「沖べより船人のぼる呼び寄せていざ告げやらむ旅のやどりを」(4)貴人の許へ参る。源氏、桐壺「まうのぼり給ふにも、あまりうちしきるをりをりは」更級日記「梅壷の女御ののぼらせ給ふ音なひ、いみじく心にくく優なるにも」(5)地方から都へ行く。更級日記「をばなる人の田舎よりのぼりたる処にわたいたれば」(6)試験場へ出る。宇津保、俊蔭「たびたびのぼりたる学生のざえある男、てまどひをして、一くだりの文を奉らぬに」(7)のぼせる。逆上する。落窪物語「はづかしと思ひいりつるに、気(け)ののぼりたらむ」
のま[野間] (地名)尾張の国、愛知県知多郡の西海岸にある野間村。平治の乱に、源義朝が長田庄司忠致(ただむね)に殺された地。平治物語、ニ、義朝野間下向の事「まづ尾張の野間に生き、忠致に馬、物具請うて通らむずると宣へば」謡曲、朝長「明けなば河船に召され、野間の内海(うつみ)へ御落ちあるべきとなり」
のみ (助詞)第三類、副助詞。その事物だけと限定する意を示す語。だけ。ばかり。「御胸のみふたがり」「ただ泣くのみなり」「悲しくのみ思はる」「悲しきのみならず」「静かなるのみにて活気なし」
「見てのみや人にかたらむ桜花」 のみど[喉](名)「飲み門」の義。のど。のんど。咽喉。古事記、上「たひののみどを探れば、つりばりあり」
のみのすくね[野見宿禰] (人名)勇力をもって聞えた人。出雲の人。垂仁天皇の朝、当麻蹶速(たぎまのくゑはや)と角力してこれを倒し、のち、朝廷に仕え、殉死の風習を嘆いて、埴輪を以て代えることを上言し、その功により陶の地を賜い、土部職に任じ、土部連の姓を賜うた。「垂仁紀、七年」以降にくわしい。
のみのゐやじろ……イヤジロ[祈の御幣物] (句)「のみ」は「謝罪」の義。謝罪のしるしとして奉る献上物。古事記、下「かれ、のみのゐやじろをたてまつる」
のむ[祈む] (動、四)(1)祈る。おがむ。万葉、十一の二六六〇「夜並べて君を来ませとちはやぶる神のやしろを祈まぬ日はなし」(2)罪を謝す。謝罪する。あやまる。古事記、上、「かくして、たしなめ給ふ時にのみまをさく、あは今よりゆくさき、ながみことの昼夜のまもり人となりてぞ仕へまつらむ」景行紀、二十五年十二月「日本武尊、■(みぞ)の中の剣をぬきて川上梟師の胸をさしたまうふ。未だ死なずして、川上梟師のみて曰く、しばし待ちたまへ」
のむらばうとうに…ボウ…[野村望東尼] (人名)江戸時代末期の女流歌人・勤王運動家。名は、もと。福岡藩士野村貞貫の妻。夫の没後、剃髪。和歌を大隈言道に学び、一方、高杉晋作らの勤王志士を庇護し、罪を得て姫島へ流された。慶應三年(一八六七)寂、年六十一。主著、向陵集。
のもせに[野も狭に] (副)野も狭くなるまでに。野一面に。「もせに」は接尾語。故に、「のもせに」は一単語である。風雅集、恋四「秋なれば萩の野も狭に置く露のひるまにさへも恋ひしさやなど」
のもり[野守] (名)野を守る人。野の番人。古今集、一、春上「かすが野の飛ぶ火の野守いでて見よいま幾日(いくか)ありて若菜摘みてむ」⇒かすがの。⇒とぶひの。
のや[野矢] (名)狩猟に用いる矢。ししや。一説、征矢(そや)のことで、戦場に用いる矢。平家、八、征夷将軍院宣「白う作つたる太刀一ふり、滋藤の弓に野矢そへて賜ぶ」
のらす[宣らす・告らす] (句)「のる」の敬語。おっしゃる。お告げになる。万葉、一の一「この丘に、菜摘ます児、家聞かな、名告らさね」⇒す(助詞)
のらふノラウ[宣らふ・告らふ] (動、四)「のる」の延音。言う。述べる。告げる。万葉、九の一七四〇「しまらくは、家に帰りて父母に、ことものらひ、あすのごと、われは来なむと、言ひければ」
のり[法・則] (名)(1)一定の道理。一定の教理。(2)のっとるべき物事。標準または手本として従い守るべき物事。制度。規準。典範。神代紀、上「こは太古ののこせるのりなり」(3)主権者のたてた規則。法律。続紀、一、文武天皇元年八月「すめらがみかどの敷きたまひ行ひたまへる国ののりをあやまち犯すことなく」(4)仏法。仏教。仏典。内典。源氏、御法「薪こるおもひは今日を初めにてこの世に願ふのりぞはるけき」(5)仏事。法会。狂言、柱杖「出家になれば、それぞれののりを勧め、経陀羅尼も覚ねえばならず、身持ちがとつとむづかしうござる」
のりあひ……イア[乗合] (名)(1)乗り合うこと。同乗すること。(2)互に乗り物に乗って、途中で出合った際に、身分の低い方が下乗しないこと。義経紀、二「九条の上人と申すに乗りあひし、これを罪科にて上野の国成島と申す処に流され参らせて」
のりいち[乗一] (名)乗り心地のよいことが第一等であること。平家、四、競「これは乗一の馬で候ふぞ」
のりうち[乗打] (名)下乗すべきを、そのまま通ること。太平記、十一、筑紫合戦事「菊地入道、櫛田の宮の前を打ち過ぎける時、いくさの凶をや示されけむ、また乗りうちにしたりけるをや御とがめありけむ、菊池が乗つたる馬、俄かにすくみて」
のりくち[乗口] (名)手綱で引くこと。一説、鎧の所に寄ってさし縄を引くこと。平家、九、宇治川「或は乗口に引かせ、或は諸口にひかせ」⇒もろぐち。
のりごつ (動、四)仰せになる。御命令になる。古事記、上「天つ神もろもろのみこともちて、いざなぎのみこと・いざなみのみこと二柱の神に、このただよへる国をつくりをさめ固め成せとのりごちて」応神紀、五年八月「諸国にのりごちて」
のりごと (名)仰せ。命令。みことのり。
のりじり[乗尻] (名)馬に乗る人。騎手。古今著聞集、十五、宿執「高陽院にて競べ馬ありけるに、狛の助信のりじりに入りにけり」宇治捨遺、五、陪従清仲の事「この清仲は、法性寺殿の御時、春日の祭の乗尻に立ちけるに」
のりと[祝詞] (名)「のりとごと」に同じ。
のりとかう…コウ[祝詞考] (書名)三巻。賀茂真淵の著。明和五年(一七六八)成る。「延喜式」に収められている祝詞を注釈したもの。同著者の前に著わした「延喜式祝詞解」に大修正を加えたもので、その注釈はすこぶる詳密、祝詞のみならず、古典注釈書として重要な地位を占めている。
のりとごと[祝詞ごと] (名)思うに「のりと」は「のりごと」の略であり、「のりとごと」は更にそれに「言」を重ねた語であろう。宣長流の「のりときごと」の略などという説は、音韻転訛の上から信じられない。神に対して宣り申すことば。のりと。のつと。のと。古事記、上「天のこやねの命、ふとのりとごとねぎまをして」(「ふと」は美称)祝詞、鎮火祭「天つ祝詞のふとのりとごともちて、たたへごと竟(を)へまつらくとまをす」
のりのころも[法の衣] (名)僧の衣。法衣。
のりのし[法の師] (名)法師。僧。源氏、帚木「のりの師の、世のことわり説ききかせむ所のここちするも、かつをかしけれど」(説教所のような心地がするのも)
のりのつかさ[法の司] (名)「式部省」のこと。
のりのゑ……エ[法の会] (名)法会。源氏、藤裏葉「今日の御法の会にもたづねおぼさば、罪を許し給ひてよや」
のりもの[賭物] (名)弓馬・囲碁・双六などの勝負事に賭ける品物。賭物(かけもの)。源氏、宿木「よきのりものはありぬべけれど」
のりもの[乗物] (名)馬・牛・車・輿など、すべて人の乗って行くものの総称。徳に、輿をいうことが多い。
のりゆみ[賭弓] (名)(1)物を賭けて弓を射ること。のりもののゆみ。(2)「のりゆみのせち」の略。宇治捨遺、十五「よく射るよし聞えありて、召し出されて賭弓仕うまつるに」増鏡、一、おどろのした「古より殿上の賭弓といふことは」
のりゆみのせち[賭弓の節] (名)昔、正月十八日、天皇が弓場殿に臨御になり、左右近衛・兵衛の舎人らの射を御覧になる儀。賭物には佐渡布を賜わった。のりゆみ。宇津保、蔵開、下「正月十八日ののりゆみのせちに、左勝ちければ」
のる[宣る・告る] (動、四)言う。述べる。告げる。古事記、下「おほさかに、あふやをとめを、みちとへば、ただにはのらず、たぎまぢをのる」⇒おほさか(大坂)。万葉、一の一「我こそはのらじ、家をも名をも」
のる[詈る・罵る] (動、四)怒って宣る。ののしる。悪口を言う。罵詈する。古事記、中「その国主(こにきし)の子、心奢りて妻(め)をのれば」徒然草、百七十五段「あるは酔ひ泣きし、下ざまの人はのりあひ、いさかひて、あさましく、恐ろし」
のる[似る] (動、四)「にる」の古語。神代記、下「時に、この神、かたちおのづから天稚彦とひとしく相のれり」崇神紀、六十年七月「これ小児の言にのらず」
のる[伸る・延る・仰る] (動、四)のびて長めになる。長くなって、前または後ろに曲がる。太平記、八、山徒寄二京都一事「太刀の少しのつたるを、門の扉に当てて推し直し」「のるかそるか」
のろし[烽火] (名)「飛ぶ火」ともいう。昔、戦争などの合図のために、煙を上げるもの。薪を焚きまたは筒に火薬を込めて点火する。昼と夜とで、その方法が異なる。
のろのろし (形、シク)のろいがましい。いまわしい。いまいましい。栄花、花山「のろのろしきことども多かり」
のろのろしげ (名)うらめしそうであること。いまいましげ。平治物語、一、光頼卿参内の事「前代未聞の不思議かなとて、のろのろしげに憚る所なく口説き給へば」
のろふノロウ[詛ふ・呪う] (動、四)怨みのある相手やにくい相手などに禍や失敗のあるようにと神仏に祈願し、または心で、祈る。伊勢物語「かの男はあまの逆手を打ちてなむ、のろひ居たる」⇒あまのさかで。
のろま (名)(1)気のきかないこと。のろのろしていること。また、その人。(2)次項の略。六玉川、五「人形の中でものろまは毒らしき」
のろまにんぎやう……ギヨウ[野呂松人形] (名)操人形の一。寛文・延宝(一六六一―一六八〇)のころ、江戸の人形使い野呂松勘兵衛の創始した道化人形。高さ一尺五寸くらい、顔色の青黒い、頭の平たい、下品なもの。その動作がすこぶる遅鈍であったので、遅鈍のことを「のろま」というようになったという俗説もある。のろま。
のわき[野分] (名)「野の草を吹き分ける風」の義。二百十日前後に吹く疾風の称。暴風。台風。のわきのかぜ。のわけ。源氏、桐壺「野分に、いとど荒れたるここちして」徒然草、十九段「また、野分の朝(あした)こそをかしけれ」芭蕉の句「芭蕉野分して盥に雨をきく夜かな」
のわきだつ[野分きだつ] (動、四)野分の風が吹きはじめる。野分めく。源氏、桐壺「のわきだちて、にはかに肌寒き夕ぐれのほど、常よりもおぼし出づること多くて、靱負(ゆげひ)の命婦といふをつかはす」
のわけ[野分] (名)「のわき」に同じ。相模集「浅茅原のわけにあへる露よりもなほありがたき身をいかにせむ」(「ありがたき」は「あることがかたい」「保つことがむずかしい」)

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