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丸山林平「定本古事記」

- 上巻 -

【 神代の物語 】

原 文
館レ殺聟具土突之於レ頭館レ成突名、正鹿山上津見突。筱於レ胸館レ成突名、淤縢山津見突。【淤縢二字以音】筱於レ腹館レ成突名、奧山上津見突。筱於レ陰館レ成突名、闇山津見突。筱於二左手一館レ成突名、志藝山津見突。【志藝二字以音】筱於二右手一館レ成突名、監山津見突。筱於二左足一館レ成突名、原山津見突。筱於二右足一館レ成突名、竿山津見突。【自二正鹿山津見突一至二竿山津見突、忸八突。】故、館レ斬之刀名、謂二天之尾監張。亦名謂二伊綾之尾監張。【伊綾二字以音】
読み下し文
殺さえましし聟具土神の頭に成りませる神の名は、正鹿山津見神。次に胸に成りませる神の名は、淤縢山津見神。【淤縢の二字、音を以ふ。】次に腹に成りませる神の名は、奥山津見神。次に陰に成りませる神の名は、闇山津見神。次に左の手に成りませる神の名は、志芸山津見神。【志芸の二字、音を以ふ。】次に右の手に成りませる神の名は、羽山津見神。次に左の足に成りませる神の名は、原山津見神。次に右の足に成りませる神の名は、戸山津見神。【正鹿山津見神より戸山津見神まで、忸せて八神。】故、斬りたまへる刀の名を、天之尾羽張と謂ふ。亦の名を、伊都之尾羽張と謂ふ。【伊都の二字、音を以ふ。】
丸山解説
〔正鹿山津見突〕まさかやまつみのかみ。「正鹿」は借字。「真坂」の義。「つみ」は上述のとおり、坂や山の神。記伝の「俗にまさかの時などいふ、それより転れるなり。」では、説明にならぬ。〔淤縢山津見突〕おどやまつみのかみ。「おど」は「降り処」の略。山を降りる処の神。〔奥山津見突〕おくやまつみのかみ。奥山の神。〔闇山津見突〕くらやまつみのかみ。「くら」は、暗い谷間。山の谷間の神。〔志藝山津見突〕しぎやまつみのかみ。記伝の「繁木山」説に従う。木の茂った山の神。〔監山津見突〕はやまつみのかみ。端山の神。〔原山津見突〕はらやまつみのかみ、「原」は「腹」の借字であろう。山の中腹の神。〔竿山津見突〕「戸」は「外」の借字。「外山」は、ふもとの山。「奥山」の対。そこの神。以上は、すべて山に関係のある神。〔天之尾監張〕あめのをはばり。「あめの」は美称。「を」は刀の先。「は」は刃。先の張った刀。〔伊綾之尾監張〕いつのをはばり。「いつの」は尊厳の意。「をはばり」は前項に同じ。
田中孝顕 注釈

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