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丸山林平「定本古事記」

- 中巻 -

【 垂仁天皇 】

原 文
於レ是、天皇、患賜而、御寢之時、覺二于御夢一曰、修二│理我宮、如二天皇之御舎一隅、御子必眞事登波牟。【自レ登下三字、以レ音。】如レ比覺時、布斗庄邇邇占相而、求二何突之心、爾崇、出雲大突之御心。故、其御子、令レ拜二其大突一將レ虔之時、令レ副二誰人一隅吉爾、曙立王食レ卜。故、科二曙立王、令二宇氣比白、【宇氣比三字、以レ音。】因レ拜二此大突一誠有レ驗隅、住二是鷺厥池之樹一鷺乎、宇氣比落。如レ比詔之時、宇氣比其鷺墮レ地死。樸、詔二│之宇氣比活爾一隅、更活。樸、在二甜白檮之電一葉廣熊白檮、令二宇氣比枯、亦、令二宇氣比生。爾、名賜二其曙立王、謂二倭隅師木登美豐朝倉曙立王。【登美二字、以レ音。】來曙立王・菟上王二王、副二其御子一虔時、自二那良竿一蓚二跛・盲。自二大坂竿一亦蓚二跛・盲。唯木竿是腋月之吉竿卜而、出行之時、譌二到坐地、定二品遲部一也。故、到二於出雲、拜二│訖大突、裝上之時、肥河之中、作二僂厥橋、仕二│奉假宮一而坐。爾、出雲國芟之督、名岐比佐綾美、餝二呟葉山一而、立二其河下、將レ獻二大御食一之時、其御子、詔言、是於二河下一如二呟葉山一隅、見レ山非レ山。若坐二出雲之石脾曾宮一葦原色許男大突以伊綾玖之凸大庭乎問賜也。爾、館レ虔御汽王等、聞歡見喜而、御子隅坐二檳榔之長穗宮一而、貢二│上驛使。爾、其御子、一宿婚二肥長比賣。故、竊伺二其美人一隅蛇也。來見畏萵膩。爾、其肥長比賣、患、光二恭原、自レ焙膊來故、環見畏以、自二山多和一【此二字、以レ音。】引二│越御焙、膩上行也。 於レ是、覆奏言、因レ拜二大突、大御子物詔故、參上來。故、天皇歡喜、來羮二菟上王、令レ芟二突宮。 於レ是、天皇、因二其御子一定二鳥孚部・鳥甘部・品遲部・大湯坐・若湯坐。
読み下し文
是に、天皇、患ひ賜ひて、御寝ませる時に、御夢に覚して曰りたまひけらく、「我が宮を修理りて、天皇の御舎の如ならしめたまはば、御子必ず真事登波牟。【登より下の三字、音を以ふ。】と、のりたまひき、如此して覚めたまひし時に、布斗摩邇に占相て、「何の神の心ぞ。」と求めたまひしに、爾の崇は、出雲の大神の御心なりき。故、其の御子をして其の大神の宮を拝ましむるために遣はさむとしたまふ時に、誰人を副はしめてば吉けむと、うらなふに、曙立王卜に食へり。故、曙立王に科せて、宇気比て白さしめたまひけらく、【宇気比の三字、音を以ふ。】「此の大神を拝むに因りて誠に験あらば、是の鷺巣の池の樹に住める鷺や、宇気比落ちよ。」と、まをさしめたまひき。かく詔りたまはしめし時に、宇気比し其の鷺地に堕ちて死にけり。又、「宇気比活き爾。」と詔らしめたまへば、濘に活きけり。樸、甜白檮の前に在る葉広熊白檮を、宇気比枯らしめ、亦宇気比生かしめき。爾、其の曙立王に名を賜ひて、倭者師木登美豊朝倉曙立王と謂はしめたまひき。【登美の二字、音を以ふ。】即ち曙立王・菟上王、二王を其の御子に副へて遣はしたまひし時に、「那良戸よりは跛・盲に遇はむ。大坂戸よりは亦跛・盲に遇はむ。唯木戸ぞ腋月の吉き戸。」と卜ヘて、出で行かしむる時に、到り坐す地毎に、品遅部を定めしめたまひき。故、出雲に到りて、大神を拝み訖へて還り上ります時に、肥の河の中に、黒きの巣橋を作りて、仮宮を仕へ奉りて坐さしめき。爾に、出雲の国造の祖、名は岐比佐都美、青葉の山を餝りて、その河下に立てて、大御食を献らむとせし時に、其の御子、詔言りたまひけらく、「是の河下に青葉の山如せるは、山と見えて山にあらず。若し出雲の石脾の曽の宮に坐す葦原色許男の大神を以伊都玖祝の大庭か。」と問ひ賜ひたまひき。 爾、遣はさえし御伴の王等、聞き歓び見喜びて、御子をば檳榔の長穂の宮に坐せまつりて、駅使を貢上りき。爾に、其の御子、一宿肥長比売と婚ひしたまひき。故、竊に其の美人を伺ひたまへば蛇なりき。即ち見畏みて萵膩げたまひけり。爾に、其の肥長比売、患ひて、海原を光らして、焙より追ひ来たりければ、益見畏みて、山の多和【此の二字、音を以ふ。】より御焙を引き越して逃げ上り行でましけり。 是に、覆奏言しけらく、「大神を拝みたまへるに因りて、大御子物詔りたまへるが故に、参上り来つ。」 と、まをしけり。 故、天皇歓喜びたまひて、即ちに大上王を返して、神の宮を造らしめたまひき。 是に、天皇、其の御子に因りて、鳥取部・鳥甘部・品遅部・大湯坐・若湯坐を定めたまひき。
丸山解説
〔覺時〕底本は 「さとしたまふ時に」と訓じているが、夢から「覚めたもうた時に」であろう。〔布斗庄邇邇占相而〕既出。〔宇氣比白〕「比白」を諸本「皆」の一字に作る。延本の改めたのに従う。底本も、これに従っている。〔宇氣比三字、以レ音〕この注も諸本に「宇氣二字、以レ音」とある。「宇氣皆」と誤写したことによる。これまた、延本の改めたのに従う。底本も、これに従っている。〔鷺厥池〕今の奈良県橿原市畝傍町大字四分の鷺栖の森にある鷺巣八幡の所在地にあった池か鷺の多く棲んでいた森であろう。〔宇氣比其鷺云々〕記伝は「宇気比」の三字を読むべからずと言う。読んでよい。
田中孝顕 注釈

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