~ 春雜歌 ~

1812

[題詞]

春雜歌

[原文]

久方之 天芳山 此夕 霞霏d 春立下

[訓読]

ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも

[仮名]

ひさかたの あめのかぐやま このゆふへ かすみたなびく はるたつらしも

[注解]

歌 [西] 謌

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 飛鳥 地名 枕詞 季節

1813

[題詞]

[原文]

巻向之 桧原丹立流 春霞 欝之思者 名積米八方

[訓読]

巻向の桧原に立てる春霞おほにし思はばなづみ来めやも

[仮名]

まきむくの ひはらにたてる はるかすみ おほにしおもはば なづみこめやも

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 奈良 地名 季節

1814

[題詞]

[原文]

古 人之殖兼 杉枝 霞<霏>d 春者来良之

[訓読]

いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞たなびく春は来ぬらし

[仮名]

いにしへの ひとのうゑけむ すぎがえに かすみたなびく はるはきぬらし

[注解]

<>→ 霏 [西(左書)][元][類][紀] / 之 [元][類](塙) 芝

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 植物 季節

1815

[題詞]

[原文]

子等我手乎 巻向山丹 春去者 木葉凌而 霞霏d

[訓読]

子らが手を巻向山に春されば木の葉しのぎて霞たなびく

[仮名]

こらがてを まきむくやまに はるされば このはしのぎて かすみたなびく

[注解]

凌 [元][類] 陵

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 奈良 地名 枕詞 季節

1816

[題詞]

[原文]

玉蜻 夕去来者 佐豆人之 弓月我高荷 霞霏d

[訓読]

玉かぎる夕さり来ればさつ人の弓月が岳に霞たなびく

[仮名]

たまかぎる ゆふさりくれば さつひとの ゆつきがたけに かすみたなびく

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 奈良 地名 枕詞 季節

1817

[題詞]

[原文]

今朝去而 明日者来牟等 云子鹿丹 旦妻山丹 霞霏d

[訓読]

今朝行きて明日には来なむと云子鹿丹朝妻山に霞たなびく

[仮名]

けさゆきて あすにはきなむと **** あさづまやまに かすみたなびく

[注解]

牟 [元][類] 年 / 鹿丹 [元] 庶

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 御所市 奈良県 地名 季節

1818

[題詞]

[原文]

子等名丹 關之宜 朝妻之 片山木之尓 霞多奈引

[訓読]

子らが名に懸けのよろしき朝妻の片山崖に霞たなびく

[仮名]

こらがなに かけのよろしき あさづまの かたやまきしに かすみたなびく

[注解]

歌 [西] 謌

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春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 御所市 奈良県 地名 季節 序詞

1819

[題詞]

詠鳥

[原文]

打霏 春立奴良志 吾門之 柳乃宇礼尓 鴬鳴都

[訓読]

うち靡く春立ちぬらし我が門の柳の末に鴬鳴きつ

[仮名]

うちなびく はるたちぬらし わがかどの やなぎのうれに うぐひすなきつ

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春雑歌 季節 植物 動物

1820

[題詞]

詠鳥

[原文]

梅花 開有岳邊尓 家居者 乏毛不有 鴬之音

[訓読]

梅の花咲ける岡辺に家居れば乏しくもあらず鴬の声

[仮名]

うめのはな さけるをかへに いへをれば ともしくもあらず うぐひすのこゑ

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春雑歌 植物 動物 季節

1821

[題詞]

詠鳥

[原文]

春霞 流共尓 青柳之 枝喙持而 鴬鳴毛

[訓読]

春霞流るるなへに青柳の枝くひ持ちて鴬鳴くも

[仮名]

はるかすみ ながるるなへに あをやぎの えだくひもちて うぐひすなくも

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春雑歌 植物 動物 季節

1822

[題詞]

詠鳥

[原文]

吾瀬子乎 莫越山能 喚子鳥 君喚變瀬 夜之不深刀尓

[訓読]

我が背子を莫越の山の呼子鳥君呼び返せ夜の更けぬとに

[仮名]

わがせこを なこしのやまの よぶこどり きみよびかへせ よのふけぬとに

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春雑歌 地名 動物 枕詞

1823

[題詞]

詠鳥

[原文]

朝井代尓 来鳴<杲>鳥 汝谷文 君丹戀八 時不終鳴

[訓読]

朝ゐでに来鳴く貌鳥汝れだにも君に恋ふれや時終へず鳴く

[仮名]

あさゐでに きなくかほどり なれだにも きみにこふれや ときをへずなく

[注解]

果→ 杲 [類][矢]

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春雑歌 動物 恋情

1824

[題詞]

詠鳥

[原文]

冬隠 春去来之 足比木乃 山二文野二文 鴬鳴裳

[訓読]

紫草の根延ふ横野の春野には君を懸けつつ鴬鳴くも

[仮名]

むらさきの ねばふよこのの はるのには きみをかけつつ うぐひすなくも

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春雑歌 大阪市 地名 動物 植物 枕詞 季節

1826

[題詞]

詠鳥

[原文]

春之<在>者 妻乎求等 鴬之 木末乎傳 鳴乍本名

[訓読]

春されば妻を求むと鴬の木末を伝ひ鳴きつつもとな

[仮名]

はるされば つまをもとむと うぐひすの こぬれをつたひ なきつつもとな

[注解]

去→ 在 [元][類][紀]

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春雑歌 季節 動物

1827

[題詞]

詠鳥

[原文]

春日有 羽買之山従 <狭>帆之内敝 鳴徃成者 孰喚子鳥

[訓読]

春日なる羽がひの山ゆ佐保の内へ鳴き行くなるは誰れ呼子鳥

[仮名]

かすがなる はがひのやまゆ さほのうちへ なきゆくなるは たれよぶこどり

[注解]

猿 →狭 [元][類]

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春雑歌 奈良 春日 地名 動物 恋情

1828

[題詞]

詠鳥

[原文]

不答尓 勿喚動曽 喚子鳥 佐保乃山邊乎 上下二

[訓読]

答へぬにな呼び響めそ呼子鳥佐保の山辺を上り下りに

[仮名]

こたへぬに なよびとよめそ よぶこどり さほのやまへを のぼりくだりに

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春雑歌 佐保 奈良 地名 動物

1829

[題詞]

詠鳥

[原文]

梓弓 春山近 家居之 續而聞良牟 鴬之音

[訓読]

梓弓春山近く家居れば継ぎて聞くらむ鴬の声

[仮名]

あづさゆみ はるやまちかく いへをれば つぎてきくらむ うぐひすのこゑ

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春雑歌 枕詞 動物 季節

1830

[題詞]

詠鳥

[原文]

打靡 春去来者 小竹之末丹 尾羽打觸而 鴬鳴毛

[訓読]

うち靡く春さり来れば小竹の末に尾羽打ち触れて鴬鳴くも

[仮名]

うちなびく はるさりくれば しののうれに をはうちふれて うぐひすなくも

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春雑歌 植物 動物 季節

1831

[題詞]

詠鳥

[原文]

朝霧尓 之<努>々尓所沾而 喚子鳥 三船山従 喧渡所見

[訓読]

朝霧にしののに濡れて呼子鳥三船の山ゆ鳴き渡る見ゆ

[仮名]

あさぎりに しののにぬれて よぶこどり みふねのやまゆ なきわたるみゆ

[注解]

怒 →努 [元][類]

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春雑歌 吉野 地名 動物 季節 叙景

1832

[題詞]

詠鳥

[原文]

打靡 春去来者 然為蟹 天雲霧相 雪者零管

[訓読]

うち靡く春さり来ればしかすがに天雲霧らひ雪は降りつつ

[仮名]

うちなびく はるさりくれば しかすがに あまくもきらひ ゆきはふりつつ

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春雑歌 季節

1833

[題詞]

詠鳥

[原文]

梅花 零覆雪乎 L持 君令見跡 取者消管

[訓読]

梅の花降り覆ふ雪を包み持ち君に見せむと取れば消につつ

[仮名]

うめのはな ふりおほふゆきを つつみもち きみにみせむと とればけにつつ

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春雑歌 植物 季節

1834

[題詞]

詠鳥

[原文]

梅花 咲落過奴 然為蟹 白雪庭尓 零重管

[訓読]

梅の花咲き散り過ぎぬしかすがに白雪庭に降りしきりつつ

[仮名]

うめのはな さきちりすぎぬ しかすがに しらゆきにはに ふりしきりつつ

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春雑歌 植物 季節

1835

[題詞]

詠鳥

[原文]

今更 雪零目八方 蜻火之 燎留春部常 成西物乎

[訓読]

今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを

[仮名]

いまさらに ゆきふらめやも かぎろひの もゆるはるへと なりにしものを

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春雑歌 季節

1836

[題詞]

詠鳥

[原文]

風交 雪者零乍 然為蟹 霞田菜引 春去尓来

[訓読]

風交り雪は降りつつしかすがに霞たなびき春さりにけり

[仮名]

かぜまじり ゆきはふりつつ しかすがに かすみたなびき はるさりにけり

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春雑歌 季節

1837

[題詞]

詠鳥

[原文]

山際尓 鴬喧而 打靡 春跡雖念 雪落布沼

[訓読]

山の際に鴬鳴きてうち靡く春と思へど雪降りしきぬ

[仮名]

やまのまに うぐひすなきて うちなびく はるとおもへど ゆきふりしきぬ

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春雑歌 動物 季節

1838

[題詞]

詠鳥

[原文]

峯上尓 零置雪師 風之共 此聞散良思 春者雖有

[訓読]

峰の上に降り置ける雪し風の共ここに散るらし春にはあれども

[仮名]

をのうへに ふりおけるゆきし かぜのむた ここにちるらし はるにはあれども

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春雑歌 茨城県 地名 季節

1839

[題詞]

詠鳥

[原文]

為君 山田之澤 恵具採跡 雪消之水尓 裳裾所沾

[訓読]

君がため山田の沢にゑぐ摘むと雪消の水に裳の裾濡れぬ

[仮名]

きみがため やまたのさはに ゑぐつむと ゆきげのみづに ものすそぬれぬ

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春雑歌 地名 植物 恋情

1840

[題詞]

詠鳥

[原文]

梅枝尓 鳴而移<徙> 鴬之 翼白妙尓 沫雪曽落

[訓読]

梅が枝に鳴きて移ろふ鴬の羽白妙に沫雪ぞ降る

[仮名]

うめがえに なきてうつろふ うぐひすの はねしろたへに あわゆきぞふる

[注解]

徒→徙 [西(訂正)][温][矢][京]

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春雑歌 植物 動物 季節

1841

[題詞]

詠鳥

[原文]

山高三 零来雪乎 梅花 <落>鴨来跡 念鶴鴨 [一云 梅花 開香裳落跡]

[訓読]

山高み降り来る雪を梅の花散りかも来ると思ひつるかも [一云 梅の花咲きかも散ると]

[仮名]

やまたかみ ふりくるゆきを うめのはな ちりかもくると おもひつるかも [うめのはな さきかもちると]

[注解]

<>→ 落 [西(右書)][元][類][紀]

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春雑歌 問答 植物 季節

1842

[題詞]

詠鳥

[原文]

除雪而 梅莫戀 足曳之 山片就而 家居為流君

[訓読]

雪をおきて梅をな恋ひそあしひきの山片付きて家居せる君

[仮名]

ゆきをおきて うめをなこひそ あしひきの やまかたづきて いへゐせるきみ

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春雑歌 問答 植物

1843

[題詞]

詠霞

[原文]

昨日社 年者極之賀 春霞 春日山尓 速立尓来

[訓読]

昨日こそ年は果てしか春霞春日の山に早立ちにけり

[仮名]

きのふこそ としははてしか はるかすみ かすがのやまに はやたちにけり

[検索用キーワード]

春雑歌 奈良 地名 季節

1844

[題詞]

詠霞

[原文]

寒過 暖来良思 朝烏指 滓鹿能山尓 霞軽引

[訓読]

冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく

[仮名]

ふゆすぎて はるきたるらし あさひさす かすがのやまに かすみたなびく

[検索用キーワード]

春雑歌 奈良 地名 季節

1845

[題詞]

詠霞

[原文]

鴬之 春成良思 春日山 霞棚引 夜目見侶

[訓読]

鴬の春になるらし春日山霞たなびく夜目に見れども

[仮名]

うぐひすの はるになるらし かすがやま かすみたなびく よめにみれども

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春雑歌 奈良 地名 動物 季節

1846

[題詞]

詠柳

[原文]

霜干 冬柳者 見人之 蘰可為 目生来鴨

[訓読]

霜枯れの冬の柳は見る人のかづらにすべく萌えにけるかも

[仮名]

しもがれの ふゆのやなぎは みるひとの かづらにすべく もえにけるかも

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 季節

1847

[題詞]

詠柳

[原文]

淺緑 染懸有跡 見左右二 春楊者 目生来鴨

[訓読]

浅緑染め懸けたりと見るまでに春の柳は萌えにけるかも

[仮名]

あさみどり そめかけたりと みるまでに はるのやなぎは もえにけるかも

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 季節 叙景

1848

[題詞]

詠柳

[原文]

山際尓 雪者零管 然為我二 此河楊波 毛延尓家留可聞

[訓読]

山の際に雪は降りつつしかすがにこの川楊は萌えにけるかも

[仮名]

やまのまに ゆきはふりつつ しかすがに このかはやぎは もえにけるかも

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春雑歌 植物 季節 叙景

1849

[題詞]

詠柳

[原文]

山際之 雪<者>不消有乎 水飯合 川之副者 目生来鴨

[訓読]

山の際の雪は消ずあるをみなぎらふ川の沿ひには萌えにけるかも

[仮名]

やまのまの ゆきはけずあるを みなぎらふ かはのそひには もえにけるかも

[注解]

<>→ 者 [元][類][紀]

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春雑歌 季節

1850

[題詞]

詠柳

[原文]

朝旦 吾見柳 鴬之 来居而應鳴 森尓早奈礼

[訓読]

朝な朝な我が見る柳鴬の来居て鳴くべく森に早なれ

[仮名]

あさなさな わがみるやなぎ うぐひすの きゐてなくべく もりにはやなれ

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春雑歌 動物 季節 植物

1851

[題詞]

詠柳

[原文]

青柳之 絲乃細紗 春風尓 不乱伊間尓 令視子裳欲得

[訓読]

青柳の糸のくはしさ春風に乱れぬい間に見せむ子もがも

[仮名]

あをやぎの いとのくはしさ はるかぜに みだれぬいまに みせむこもがも

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春雑歌 植物 恋情

1852

[題詞]

詠柳

[原文]

百礒城 大宮人之 蘰有 垂柳者 雖見不飽鴨

[訓読]

ももしきの大宮人のかづらけるしだり柳は見れど飽かぬかも

[仮名]

ももしきの おほみやひとの かづらける しだりやなぎは みれどあかぬかも

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春雑歌 植物 枕詞 季節

1853

[題詞]

詠柳

[原文]

梅花 取持見者 吾屋前之 柳乃眉師 所念可聞

[訓読]

梅の花取り持ち見れば我が宿の柳の眉し思ほゆるかも

[仮名]

うめのはな とりもちみれば わがやどの やなぎのまよし おもほゆるかも

[注解]

持 [元][類][紀] 持而

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 恋情

1854

[題詞]

詠花

[原文]

鴬之 木傳梅乃 移者 櫻花之 時片設奴

[訓読]

鴬の木伝ふ梅のうつろへば桜の花の時かたまけぬ

[仮名]

うぐひすの こづたふうめの うつろへば さくらのはなの ときかたまけぬ

[検索用キーワード]

春雑歌 動物 植物 季節

1855

[題詞]

詠花

[原文]

櫻花 時者雖不過 見人之 戀盛常 今之将落

[訓読]

桜花時は過ぎねど見る人の恋ふる盛りと今し散るらむ

[仮名]

さくらばな ときはすぎねど みるひとの こふるさかりと いましちるらむ

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春雑歌 植物 季節

1856

[題詞]

詠花

[原文]

我刺 柳絲乎 吹乱 風尓加妹之 梅乃散覧

[訓読]

我がかざす柳の糸を吹き乱る風にか妹が梅の散るらむ

[仮名]

わがかざす やなぎのいとを ふきみだる かぜにかいもが うめのちるらむ

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 季節

1857

[題詞]

詠花

[原文]

毎年 梅者開友 空蝉之 <世>人君羊蹄 春無有来

[訓読]

年のはに梅は咲けどもうつせみの世の人我れし春なかりけり

[仮名]

としのはに うめはさけども うつせみの よのひとわれし はるなかりけり

[注解]

<>→ 世 [西(右書)][元][類][紀]

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春雑歌 植物 枕詞

1858

[題詞]

詠花

[原文]

打細尓 鳥者雖<不>喫 縄延 守巻欲寸 梅花鴨

[訓読]

うつたへに鳥は食まねど縄延へて守らまく欲しき梅の花かも

[仮名]

うつたへに とりははまねど なははへて もらまくほしき うめのはなかも

[注解]

子→ 不 [元][類][紀]

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春雑歌 動物 植物 比喩 恋情

1859

[題詞]

詠花

[原文]

馬並而 高山<部>乎 白妙丹 令艶色有者 梅花鴨

[訓読]

馬並めて多賀の山辺を白栲ににほはしたるは梅の花かも

[仮名]

うまなめて たかのやまへを しろたへに にほはしたるは うめのはなかも

[注解]

<>→ 部 [矢][京]

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春雑歌 京都府 地名 枕詞 植物 叙景

1860

[題詞]

詠花

[原文]

花咲而 實者不成登裳 長氣 所念鴨 山振之花

[訓読]

花咲きて実はならねども長き日に思ほゆるかも山吹の花

[仮名]

はなさきて みはならねども ながきけに おもほゆるかも やまぶきのはな

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春雑歌 植物 比喩

1861

[題詞]

詠花

[原文]

能登河之 水底并尓 光及尓 三笠乃山者 咲来鴨

[訓読]

能登川の水底さへに照るまでに御笠の山は咲きにけるかも

[仮名]

のとがはの みなそこさへに てるまでに みかさのやまは さきにけるかも

[検索用キーワード]

春雑歌 奈良 地名 叙景 季節

1862

[題詞]

詠花

[原文]

見雪者 未冬有 然為蟹 春霞立 梅者散乍

[訓読]

雪見ればいまだ冬なりしかすがに春霞立ち梅は散りつつ

[仮名]

ゆきみれば いまだふゆなり しかすがに はるかすみたち うめはちりつつ

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 季節

1863

[題詞]

詠花

[原文]

去年咲之 久木今開 徒 土哉将堕 見人名四二

[訓読]

去年咲きし久木今咲くいたづらに地にか落ちむ見る人なしに

[仮名]

こぞさきし ひさぎいまさく いたづらに つちにかおちむ みるひとなしに

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春雑歌 植物 叙景

1864

[題詞]

詠花

[原文]

足日木之 山間照 櫻花 是春雨尓 散去鴨

[訓読]

あしひきの山の際照らす桜花この春雨に散りゆかむかも

[仮名]

あしひきの やまのまてらす さくらばな このはるさめに ちりゆかむかも

[検索用キーワード]

春雑歌 枕詞 植物 叙景

1865

[題詞]

詠花

[原文]

打靡 春避来之 山際 最木末乃 咲徃見者

[訓読]

うち靡く春さり来らし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば

[仮名]

うちなびく はるさりくらし やまのまの とほきこぬれの さきゆくみれば

[検索用キーワード]

春雑歌 季節 叙景

1866

[題詞]

詠花

[原文]

春雉鳴 高圓邊丹 櫻花 散流歴 見人毛我<母>

[訓読]

雉鳴く高円の辺に桜花散りて流らふ見む人もがも

[仮名]

きぎしなく たかまとのへに さくらばな ちりてながらふ みむひともがも

[注解]

裳→母 [類][紀]

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春雑歌 奈良 地名 動物 植物 哀惜

1867

[題詞]

詠花

[原文]

阿保山之 佐宿木花者 今日毛鴨 散乱 見人無二

[訓読]

阿保山の桜の花は今日もかも散り乱ふらむ見る人なしに

[仮名]

あほやまの さくらのはなは けふもかも ちりまがふらむ みるひとなしに

[検索用キーワード]

春雑歌 地名 植物 哀惜

1868

[題詞]

詠花

[原文]

川津鳴 吉野河之 瀧上乃 馬酔之花會 置末勿動

[訓読]

かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞはしに置くなゆめ

[仮名]

かはづなく よしののかはの たきのうへの あしびのはなぞ はしにおくなゆめ

[検索用キーワード]

春雑歌 吉野 地名 植物 動物

1869

[題詞]

詠花

[原文]

春雨尓 相争不勝而 吾屋前之 櫻花者 開始尓家里

[訓読]

春雨に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめにけり

[仮名]

はるさめに あらそひかねて わがやどの さくらのはなは さきそめにけり

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 季節

1870

[題詞]

詠花

[原文]

春雨者 甚勿零 櫻花 未見尓 散巻惜裳

[訓読]

春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも

[仮名]

はるさめは いたくなふりそ さくらばな いまだみなくに ちらまくをしも

[注解]

春 [類] 春乃

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春雑歌 植物 哀惜

1871

[題詞]

詠花

[原文]

春去者 散巻惜 梅花 片時者不咲 含而毛欲得

[訓読]

春されば散らまく惜しき梅の花しましは咲かずふふみてもがも

[仮名]

はるされば ちらまくをしき うめのはな しましはさかず ふふみてもがも

[注解]

梅 [矢][京] 桜

[検索用キーワード]

春雑歌 植物 哀惜

1872

[題詞]

詠花

[原文]

見渡者 春日之野邊尓 霞立 開艶者 櫻花鴨

[訓読]

見わたせば春日の野辺に霞立ち咲きにほへるは桜花かも

[仮名]

みわたせば かすがののへに かすみたち さきにほへるは さくらばなかも

[検索用キーワード]

春雑歌 奈良 地名 植物 季節 叙景

1873

[題詞]

詠花

[原文]

何時鴨 此夜乃将明 鴬之 木傳落 <梅>花将見

[訓読]

いつしかもこの夜の明けむ鴬の木伝ひ散らす梅の花見む

[仮名]

いつしかも このよのあけむ うぐひすの こづたひちらす うめのはなみむ

[注解]

<>→梅 [西(右書)][類][紀][矢]

[検索用キーワード]

春雑歌 動物 植物

1874

[題詞]

詠月

[原文]

春霞 田菜引今日之 暮三伏一向夜 不穢照良武 高松之野尓

[訓読]

春霞たなびく今日の夕月夜清く照るらむ高松の野に

[仮名]

はるかすみ たなびくけふの ゆふづくよ きよくてるらむ たかまつののに

[検索用キーワード]

春雑歌 奈良 高円 地名 叙景

1875

[題詞]

詠月

[原文]

春去者 紀之許能暮之 夕月夜 欝束無裳 山陰尓指天 [一云 春去者 木陰多 暮月夜]

[訓読]

春されば木の暗多み夕月夜おほつかなしも山蔭にして [一云 春されば木蔭を多み夕月夜]

[仮名]

はるされば このくれおほみ ゆふづくよ おほつかなしも やまかげにして [はるされば こかげをおほみ ゆふづくよ]

[検索用キーワード]

春雑歌 異伝

1876

[題詞]

詠月

[原文]

朝霞 春日之晩者 従木間 移歴月乎 何時可将待

[訓読]

朝霞春日の暮は木の間より移ろふ月をいつとか待たむ

[仮名]

あさかすみ はるひのくれは このまより うつろふつきを いつとかまたむ

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春雑歌

1877

[題詞]

詠雨

[原文]

春之雨尓 有来物乎 立隠 妹之家道尓 此日晩都

[訓読]

春の雨にありけるものを立ち隠り妹が家道にこの日暮らしつ

[仮名]

はるのあめに ありけるものを たちかくり いもがいへぢに このひくらしつ

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春雑歌 恋情

1878

[題詞]

詠河

[原文]

今徃而 聞物尓毛我 明日香川 春雨零而 瀧津湍音乎

[訓読]

今行きて聞くものにもが明日香川春雨降りてたぎつ瀬の音を

[仮名]

いまゆきて きくものにもが あすかがは はるさめふりて たぎつせのおとを

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春雑歌 飛鳥 地名

1879

[題詞]

詠煙

[原文]

春日野尓 煙立所見 D嬬等四 春野之菟芽子 採而煮良思文

[訓読]

春日野に煙立つ見ゆ娘子らし春野のうはぎ摘みて煮らしも

[仮名]

かすがのに けぶりたつみゆ をとめらし はるののうはぎ つみてにらしも

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春雑歌 奈良 地名 植物 野遊び

1880

[題詞]

野遊

[原文]

春日野之 淺茅之上尓 念共 遊今日 忘目八方

[訓読]

春日野の浅茅が上に思ふどち遊ぶ今日の日忘らえめやも

[仮名]

かすがのの あさぢがうへに おもふどち あそぶけふのひ わすらえめやも

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春雑歌 奈良 地名 野遊び 宴席

1881

[題詞]

野遊

[原文]

春霞 立春日野乎 徃還 吾者相見 弥年之黄土

[訓読]

春霞立つ春日野を行き返り我れは相見むいや年のはに

[仮名]

はるかすみ たつかすがのを ゆきかへり われはあひみむ いやとしのはに

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春雑歌 奈良 地名 宴席 野遊び

1882

[題詞]

野遊

[原文]

春野尓 意将述跡 <念>共 来之今日者 不晩毛荒粳

[訓読]

春の野に心延べむと思ふどち来し今日の日は暮れずもあらぬか

[仮名]

はるののに こころのべむと おもふどち こしけふのひは くれずもあらぬか

[注解]

命→ 念 [西(訂正)][類][古][紀]

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春雑歌 野遊び

1883

[題詞]

野遊

[原文]

百礒城之 大宮人者 暇有也 梅乎挿頭而 此間集有

[訓読]

ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる

[仮名]

ももしきの おほみやひとは いとまあれや うめをかざして ここにつどへる

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春雑歌 野遊び 枕詞 植物

1884

[題詞]

歎舊

[原文]

寒過 暖来者 年月者 雖新有 人者舊去

[訓読]

冬過ぎて春し来れば年月は新たなれども人は古りゆく

[仮名]

ふゆすぎて はるしきたれば としつきは あらたなれども ひとはふりゆく

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春雑歌 移ろい 問答

1885

[題詞]

歎舊

[原文]

物皆者 新吉 唯 人者舊之 應宜

[訓読]

物皆は新たしきよしただしくも人は古りにしよろしかるべし

[仮名]

ものみなは あらたしきよし ただしくも ひとはふりにし よろしかるべし

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春雑歌 移ろい 問答

1886

[題詞]

懽逢

[原文]

佐吉之 里<行>之鹿歯 春花乃 益希見 君相有香開

[訓読]

住吉の里行きしかば春花のいやめづらしき君に逢へるかも

[仮名]

すみのえの さとゆきしかば はるはなの いやめづらしき きみにあへるかも

[注解]

得→ 行 [万葉考]

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春雑歌 大阪 地名 枕詞 恋愛

1887

[題詞]

旋頭歌

[原文]

春日在 三笠乃山尓 月母出奴可母 佐紀山尓 開有櫻之 花乃可見

[訓読]

春日なる御笠の山に月も出でぬかも佐紀山に咲ける桜の花の見ゆべく

[仮名]

かすがなる みかさのやまに つきもいでぬかも さきやまに さけるさくらの はなのみゆべく

[注解]

歌 [西] 謌

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春雑歌 奈良 地名 植物 旋頭歌

1888

[題詞]

旋頭歌

[原文]

白雪之 常敷冬者 過去家良霜 春霞 田菜引野邊之 鴬鳴焉

[訓読]

白雪の常敷く冬は過ぎにけらしも春霞たなびく野辺の鴬鳴くも

[仮名]

しらゆきの つねしくふゆは すぎにけらしも はるかすみ たなびくのへの うぐひすなくも

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春雑歌 動物 季節 旋頭歌

1889

[題詞]

譬喩歌

[原文]

吾屋前之 毛桃之下尓 月夜指 下心吉 菟楯項者

[訓読]

我が宿の毛桃の下に月夜さし下心よしうたてこのころ

[仮名]

わがやどの けもものしたに つくよさし したこころよし うたてこのころ

[注解]

歌 [西] 謌

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春雑歌 植物 比喩

1890

[題詞]

春相聞

[原文]

春<山> <友>鴬 鳴別 <眷>益間 思御吾

[訓読]

春山の友鴬の泣き別れ帰ります間も思ほせ我れを

[仮名]

はるやまの ともうぐひすの なきわかれ かへりますまも おもほせわれを

[注解]

日野 →山 [新校] / 犬→ 友 [類] / 春春→ 眷 [西(訂正)][細][京]

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春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 動物 恋情 序詞

1891

[題詞]

[原文]

冬隠 春開花 手折以 千遍限 戀渡鴨

[訓読]

冬こもり春咲く花を手折り持ち千たびの限り恋ひわたるかも

[仮名]

ふゆこもり はるさくはなを たをりもち ちたびのかぎり こひわたるかも

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春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 恋情

1892

[題詞]

[原文]

春山 霧惑在 鴬 我益 物念哉

[訓読]

春山の霧に惑へる鴬も我れにまさりて物思はめやも

[仮名]

はるやまの きりにまとへる うぐひすも われにまさりて ものもはめやも

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春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 動物 恋情

1893

[題詞]

[原文]

出見 向岡 本繁 開在花 不成不止

[訓読]

出でて見る向ひの岡に本茂く咲きたる花のならずはやまじ

[仮名]

いでてみる むかひのをかに もとしげく さきたるはなの ならずはやまじ

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春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 比喩 恋情

1894

[題詞]

[原文]

霞發 春永日 戀暮 夜深去 妹相鴨

[訓読]

霞立つ春の長日を恋ひ暮らし夜も更けゆくに妹も逢はぬかも

[仮名]

かすみたつ はるのながひを こひくらし よもふけゆくに いももあはぬかも

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春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情

1895

[題詞]

[原文]

春去 先三枝 幸命在 後相 莫戀吾妹

[訓読]

春さればまづさきくさの幸くあらば後にも逢はむな恋ひそ我妹

[仮名]

はるされば まづさきくさの さきくあらば のちにもあはむ なこひそわぎも

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春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 恋情

1896

[題詞]

[原文]

春去 為垂柳 十緒 妹心 乗在鴨

[訓読]

春さればしだり柳のとををにも妹は心に乗りにけるかも

[仮名]

はるされば しだりやなぎの とををにも いもはこころに のりにけるかも

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

春相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 恋情

1897

[題詞]

寄鳥

[原文]

春之在者 伯勞鳥之草具吉 雖不所見 吾者見<将遣> 君之當<乎>婆

[訓読]

春さればもずの草ぐき見えずとも我れは見やらむ君があたりをば

[仮名]

はるされば もずのくさぐき みえずとも われはみやらむ きみがあたりをば

[注解]

遣将→将遣 [元][矢][京] / <>→乎 [元][類][紀]

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春相聞 植物 恋情

1898

[題詞]

寄鳥

[原文]

容鳥之 間無數鳴 春野之 草根乃繁 戀毛為鴨

[訓読]

貌鳥の間なくしば鳴く春の野の草根の繁き恋もするかも

[仮名]

かほどりの まなくしばなく はるののの くさねのしげき  こひもするかも

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春相聞 動物 恋情

1899

[題詞]

寄花

[原文]

春去者 宇乃花具多思 吾越之 妹我垣間者 荒来鴨

[訓読]

春されば卯の花ぐたし我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも

[仮名]

はるされば うのはなぐたし わがこえし いもがかきまは あれにけるかも

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春相聞 植物 恋情

1900

[題詞]

寄花

[原文]

梅花 咲散苑尓 吾将去 君之使乎 片待香花光

[訓読]

梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてり

[仮名]

うめのはな さきちるそのに われゆかむ きみがつかひを かたまちがてり

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春相聞 植物 恋情

1901

[題詞]

寄花

[原文]

藤浪 咲春野尓 蔓葛 下夜之戀者 久雲在

[訓読]

藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ

[仮名]

ふぢなみの さくはるののに はふくずの したよしこひば ひさしくもあらむ

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春相聞 植物 恋情 忍び恋

1902

[題詞]

寄花

[原文]

春野尓 霞棚引 咲花乃 如是成二手尓 不逢君可母

[訓読]

春の野に霞たなびき咲く花のかくなるまでに逢はぬ君かも

[仮名]

はるののに かすみたなびき さくはなの かくなるまでに あはぬきみかも

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春相聞 植物 恋情 恨み

1903

[題詞]

寄花

[原文]

吾瀬子尓 吾戀良久者 奥山之 馬酔花之 今盛有

[訓読]

我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり

[仮名]

わがせこに あがこふらくは おくやまの あしびのはなの いまさかりなり

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春相聞 植物 恋情

1904

[題詞]

寄花

[原文]

梅花 四垂柳尓 折雜 花尓供養者 君尓相可毛

[訓読]

梅の花しだり柳に折り交へ花に供へば君に逢はむかも

[仮名]

うめのはな しだりやなぎに をりまじへ はなにそなへば きみにあはむかも

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春相聞 植物 恋情

1905

[題詞]

寄花

[原文]

姫部思 咲野尓生 白管自 不知事以 所言之吾背

[訓読]

をみなへし佐紀野に生ふる白つつじ知らぬこともち言はえし我が背

[仮名]

をみなへし さきのにおふる しらつつじ しらぬこともち いはえしわがせ

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春相聞 奈良 地名 植物 序詞

1906

[題詞]

寄花

[原文]

梅花 吾者不令落 青丹吉 平城之人 来管見之根

[訓読]

梅の花我れは散らさじあをによし奈良なる人も来つつ見るがね

[仮名]

うめのはな われはちらさじ あをによし ならなるひとも きつつみるがね

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春相聞 植物 枕詞

1907

[題詞]

寄花

[原文]

如是有者 何如殖兼 山振乃 止時喪哭 戀良苦念者

[訓読]

かくしあらば何か植ゑけむ山吹のやむ時もなく恋ふらく思へば

[仮名]

かくしあらば なにかうゑけむ やまぶきの やむときもなく こふらくおもへば

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春相聞 植物 恋情

1908

[題詞]

寄霜

[原文]

春去者 水草之上尓 置霜乃 消乍毛我者 戀度鴨

[訓読]

春されば水草の上に置く霜の消につつも我れは恋ひわたるかも

[仮名]

はるされば みくさのうへに おくしもの けにつつもあれは こひわたるかも

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春相聞 恋情

1909

[題詞]

寄霞

[原文]

春霞 山棚引 欝 妹乎相見 後戀毳

[訓読]

春霞山にたなびきおほほしく妹を相見て後恋ひむかも

[仮名]

はるかすみ やまにたなびき おほほしく いもをあひみて のちこひむかも

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春相聞 恋情 季節

1910

[題詞]

寄霞

[原文]

春霞 立尓之日従 至今日 吾戀不止 本之繁家波 [一云 片念尓指天]

[訓読]

春霞立ちにし日より今日までに我が恋やまず本の繁けば [一云 片思にして]

[仮名]

はるかすみ たちにしひより けふまでに あがこひやまず もとのしげけば [かたもひにして]

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春相聞 恋情

1911

[題詞]

寄霞

[原文]

左丹頬經 妹乎念登 霞立 春日毛晩尓 戀度可母

[訓読]

さ丹つらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひわたるかも

[仮名]

さにつらふ いもをおもふと かすみたつ はるひもくれに こひわたるかも 

[注解]

母 [元][類](塙) 毛

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春相聞 恋情 季節

1912

[題詞]

寄霞

[原文]

霊寸春 吾山之於尓 立霞 雖立雖座 君之随意

[訓読]

たまきはる我が山の上に立つ霞立つとも居とも君がまにまに

[仮名]

たまきはる わがやまのうへに たつかすみ たつともうとも きみがまにまに

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春相聞 枕詞 序詞 恋情

1913

[題詞]

寄霞

[原文]

見渡者 春日之野邊 立霞 見巻之欲 君之容儀香

[訓読]

見わたせば春日の野辺に立つ霞見まくの欲しき君が姿か

[仮名]

みわたせば かすがののへに たつかすみ みまくのほしき きみがすがたか

[注解]

邊 [西(右書)] 邊尓

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春相聞 奈良 地名 恋情

1914

[題詞]

寄霞

[原文]

戀乍毛 今日者暮都 霞立 明日之春日乎 如何将晩

[訓読]

恋ひつつも今日は暮らしつ霞立つ明日の春日をいかに暮らさむ

[仮名]

こひつつも けふはくらしつ かすみたつ あすのはるひを いかにくらさむ

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春相聞 恋情

1915

[題詞]

寄雨

[原文]

吾背子尓 戀而為便莫 春雨之 零別不知 出而来可聞

[訓読]

我が背子に恋ひてすべなみ春雨の降るわき知らず出でて来しかも

[仮名]

わがせこに こひてすべなみ はるさめの ふるわきしらず いでてこしかも

[検索用キーワード]

春相聞 恋情

1916

[題詞]

寄雨

[原文]

今更 君者伊不徃 春雨之 情乎人之 不知有名國

[訓読]

今さらに君はい行かじ春雨の心を人の知らずあらなくに

[仮名]

いまさらに きみはいゆかじ はるさめの こころをひとの しらずあらなくに

[検索用キーワード]

春相聞 恋情

1917

[題詞]

寄雨

[原文]

春雨尓 衣甚 将通哉 七日四零者 七<日>不来哉

[訓読]

春雨に衣はいたく通らめや七日し降らば七日来じとや

[仮名]

はるさめに ころもはいたく とほらめや なぬかしふらば なぬかこじとや

[注解]

夜→日 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

春相聞 恋情 雨隠り

1918

[題詞]

寄雨

[原文]

梅花 令散春雨 多零 客尓也君之 廬入西留良武

[訓読]

梅の花散らす春雨いたく降る旅にや君が廬りせるらむ

[仮名]

うめのはな ちらすはるさめ いたくふる たびにやきみが いほりせるらむ

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春相聞 植物 恋情 雨隠り

1919

[題詞]

寄草

[原文]

國栖等之 春菜将採 司馬乃野之 數君麻 思比日

[訓読]

国栖らが春菜摘むらむ司馬の野のしばしば君を思ふこのころ

[仮名]

くにすらが はるなつむらむ しまののの しばしばきみを おもふこのころ

[検索用キーワード]

春相聞 吉野 地名 植物 恋情

1920

[題詞]

寄草

[原文]

春草之 繁吾戀 大海 方徃浪之 千重積

[訓読]

春草の繁き我が恋大海の辺に行く波の千重に積もりぬ

[仮名]

はるくさの しげきあがこひ おほうみの へにゆくなみの ちへにつもりぬ

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春相聞 恋情

1921

[題詞]

寄草

[原文]

不明 公乎相見而 菅根乃 長春日乎 孤<悲>渡鴨

[訓読]

おほほしく君を相見て菅の根の長き春日を恋ひわたるかも

[仮名]

おほほしく きみをあひみて すがのねの ながきはるひを こひわたるかも

[注解]

戀→ 悲 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

春相聞 植物 恋情

1922

[題詞]

寄松

[原文]

梅花 咲而落去者 吾妹乎 将来香不来香跡 吾待乃木曽

[訓読]

梅の花咲きて散りなば我妹子を来むか来じかと我が松の木ぞ

[仮名]

うめのはな さきてちりなば わぎもこを こむかこじかと わがまつのきぞ

[検索用キーワード]

春相聞 植物 恋情

1923

[題詞]

寄雲

[原文]

白檀弓 今春山尓 去雲之 逝哉将別 戀敷物乎

[訓読]

白真弓今春山に行く雲の行きや別れむ恋しきものを

[仮名]

しらまゆみ いまはるやまに ゆくくもの ゆきやわかれむ こほしきものを

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春相聞 枕詞 恋情 序詞

1924

[題詞]

贈蘰

[原文]

大夫之 伏居嘆而 造有 四垂柳之 蘰為吾妹

[訓読]

大夫の伏し居嘆きて作りたるしだり柳のかづらせ我妹

[仮名]

ますらをの ふしゐなげきて つくりたる しだりやなぎの かづらせわぎも

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春相聞 植物 恋情

1925

[題詞]

<悲>別

[原文]

朝戸出乃 君之儀乎 曲不見而 長春日乎 戀八九良三

[訓読]

朝戸出の君が姿をよく見ずて長き春日を恋ひや暮らさむ

[仮名]

あさとでの きみがすがたを よくみずて ながきはるひを こひやくらさむ

[注解]

非 →悲 [西(訂正)][元][紀][矢]

[検索用キーワード]

春相聞 恋情

1926

[題詞]

問答

[原文]

春山之 馬酔花之 不悪 公尓波思恵也 所因友好

[訓読]

春山の馬酔木の花の悪しからぬ君にはしゑや寄そるともよし

[仮名]

はるやまの あしびのはなの あしからぬ きみにはしゑや よそるともよし

[検索用キーワード]

春相聞 植物 序詞 恋情

1927

[題詞]

問答

[原文]

石上 振乃神杉 神備<西> 吾八更々 戀尓相尓家留

[訓読]

石上布留の神杉神びにし我れやさらさら恋にあひにける

[仮名]

いそのかみ ふるのかむすぎ かむびにし われやさらさら こひにあひにける

[注解]

而→ 西 [元][類] / 歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

春相聞 奈良 地名 植物 恋情

1928

[題詞]

問答

[原文]

狭野方波 實尓雖不成 花耳 開而所見社 戀之名草尓

[訓読]

さのかたは実にならずとも花のみに咲きて見えこそ恋のなぐさに

[仮名]

さのかたは みにならずとも はなのみに さきてみえこそ こひのなぐさに

[検索用キーワード]

春相聞 植物 恋情 問答

1929

[題詞]

問答

[原文]

狭野方波 實尓成西乎 今更 春雨零而 花将咲八方

[訓読]

さのかたは実になりにしを今さらに春雨降りて花咲かめやも

[仮名]

さのかたは みになりにしを いまさらに はるさめふりて はなさかめやも

[検索用キーワード]

春相聞 植物 恋情 問答

1930

[題詞]

問答

[原文]

梓弓 引津邊有 莫告藻之 花咲及二 不會君毳

[訓読]

梓弓引津の辺なるなのりその花咲くまでに逢はぬ君かも

[仮名]

あづさゆみ ひきつのへなる なのりその はなさくまでに あはぬきみかも

[検索用キーワード]

春相聞 福岡県 地名 植物 恋情 問答

1931

[題詞]

問答

[原文]

川上之 伊都藻之花乃 何時々々 来座吾背子 時自異目八方

[訓読]

川の上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも

[仮名]

かはのうへの いつものはなの いつもいつも きませわがせこ ときじけめやも

[検索用キーワード]

春相聞 序詞 植物 恋情 問答

1932

[題詞]

問答

[原文]

春雨之 不止零々 吾戀 人之目尚矣 不令相見

[訓読]

春雨のやまず降る降る我が恋ふる人の目すらを相見せなくに

[仮名]

はるさめの やまずふるふる あがこふる ひとのめすらを あひみせなくに

[検索用キーワード]

春相聞 恋情 問答

1933

[題詞]

問答

[原文]

吾妹子尓 戀乍居者 春雨之 彼毛知如 不止零乍

[訓読]

我妹子に恋ひつつ居れば春雨のそれも知るごとやまず降りつつ

[仮名]

わぎもこに こひつつをれば はるさめの それもしるごと やまずふりつつ 

[検索用キーワード]

春相聞 恋情 問答

1934

[題詞]

問答

[原文]

相不念 妹哉本名 菅根乃 長春日乎 念晩牟

[訓読]

相思はぬ妹をやもとな菅の根の長き春日を思ひ暮らさむ

[仮名]

あひおもはぬ いもをやもとな すがのねの ながきはるひを おもひくらさむ

[検索用キーワード]

春相聞 恋情 問答 植物

1935

[題詞]

問答

[原文]

春去者 先鳴鳥乃 鴬之 事先立之 君乎之将待

[訓読]

春さればまづ鳴く鳥の鴬の言先立ちし君をし待たむ

[仮名]

はるされば まづなくとりの うぐひすの ことさきだちし きみをしまたむ

[検索用キーワード]

春相聞 動物 恋情 問答

1936

[題詞]

問答

[原文]

相不念 将有兒故 玉緒 長春日乎 念晩久

[訓読]

相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緒の長き春日を思ひ暮らさく

[仮名]

あひおもはず あるらむこゆゑ たまのをの ながきはるひを おもひくらさく

[検索用キーワード]

春相聞 問答 恋情

~ 夏雜歌 ~

1937

[題詞]

詠鳥

[原文]

大夫<之> 出立向 故郷之 神名備山尓 明来者 柘之左枝尓 暮去者 小松之若末尓 里人之 聞戀麻田 山彦乃 答響萬田 霍公鳥 都麻戀為良思 左夜中尓鳴

[訓読]

大夫の 出で立ち向ふ 故郷の 神なび山に 明けくれば 柘のさ枝に 夕されば 小松が末に 里人の 聞き恋ふるまで 山彦の 相響むまで 霍公鳥 妻恋ひすらし さ夜中に鳴く

[仮名]

ますらをの いでたちむかふ ふるさとの かむなびやまに あけくれば つみのさえだに ゆふされば こまつがうれに さとびとの ききこふるまで やまびこの あひとよむまで ほととぎす つまごひすらし さよなかになく

[注解]

歌 [西] 謌 / 丹→之 [元][類]

[検索用キーワード]

夏雑歌 古歌集 飛鳥 地名 動物 恋情 植物 羈旅

1938

[題詞]

(詠鳥)反歌

[原文]

客尓為而 妻戀為良思 霍公鳥 神名備山尓 左夜深而鳴

[訓読]

旅にして妻恋すらし霍公鳥神なび山にさ夜更けて鳴く

[仮名]

たびにして つまごひすらし ほととぎす かむなびやまに さよふけてなく

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

夏雑歌 古歌集 飛鳥 地名 動物 恋情 羈旅

1939

[題詞]

詠鳥

[原文]

霍公鳥 汝始音者 於吾欲得 五月之珠尓 交而将貫

[訓読]

霍公鳥汝が初声は我れにもが五月の玉に交へて貫かむ

[仮名]

ほととぎす ながはつこゑは われにもが さつきのたまに まじへてぬかむ

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夏雑歌 動物 植物

1940

[題詞]

詠鳥

[原文]

朝霞 棚引野邊 足桧木乃 山霍公鳥 何時来将鳴

[訓読]

朝霞たなびく野辺にあしひきの山霍公鳥いつか来鳴かむ

[仮名]

あさかすみ たなびくのへに あしひきの やまほととぎす いつかきなかむ

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夏雑歌 動物

1941

[題詞]

詠鳥

[原文]

旦<霧> 八重山越而 喚孤鳥 吟八汝来 屋戸母不有九<二>

[訓読]

朝霧の八重山越えて呼子鳥鳴きや汝が来る宿もあらなくに

[仮名]

あさぎりの やへやまこえて よぶこどり なきやながくる やどもあらなくに

[注解]

霞→ 霧 [類] / 三 →二 [西(訂正)][元][類][紀]

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夏雑歌 枕詞 動物 叙景

1942

[題詞]

詠鳥

[原文]

霍公鳥 <鳴>音聞哉 宇能花乃 開落岳尓 田葛引D嬬

[訓読]

霍公鳥鳴く声聞くや卯の花の咲き散る岡に葛引く娘女

[仮名]

ほととぎす なくこゑきくや うのはなの さきちるをかに くずひくをとめ

[注解]

<>→鳴 [西(右書)][元][類][紀] / 葛 [万葉集略解](塙) 草

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夏雑歌 動物 植物 叙景

1943

[題詞]

詠鳥

[原文]

月夜吉 鳴霍公鳥 欲見 吾草取有 見人毛欲得

[訓読]

月夜よみ鳴く霍公鳥見まく欲り我れ草取れり見む人もがも

[仮名]

つくよよみ なくほととぎす みまくほり われくさとれり みむひともがも

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夏雑歌 動物 恋情

1944

[題詞]

詠鳥

[原文]

藤浪之 散巻惜 霍公鳥 今城岳S 鳴而越奈利

[訓読]

藤波の散らまく惜しみ霍公鳥今城の岡を鳴きて越ゆなり

[仮名]

ふぢなみの ちらまくをしみ ほととぎす いまきのをかを なきてこゆなり

[検索用キーワード]

夏雑歌 地名 植物 動物 叙景

1945

[題詞]

詠鳥

[原文]

旦霧 八重山越而 霍公鳥 宇能花邊柄 鳴越来

[訓読]

朝霧の八重山越えて霍公鳥卯の花辺から鳴きて越え来ぬ

[仮名]

あさぎりの やへやまこえて ほととぎす うのはなへから なきてこえきぬ

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夏雑歌 枕詞 動物 叙景

1946

[題詞]

詠鳥

[原文]

木高者 曽木不殖 霍公鳥 来鳴令響而 戀令益

[訓読]

木高くはかつて木植ゑじ霍公鳥来鳴き響めて恋まさらしむ

[仮名]

こだかくは かつてきうゑじ ほととぎす きなきとよめて こひまさらしむ

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物

1947

[題詞]

詠鳥

[原文]

難相 君尓逢有夜 霍公鳥 他時従者 今<社>鳴目

[訓読]

逢ひかたき君に逢へる夜霍公鳥他時よりは今こそ鳴かめ

[仮名]

あひかたき きみにあへるよ ほととぎす ことときよりは いまこそなかめ

[注解]

杜→社 [元][類][紀]

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夏雑歌 動物

1948

[題詞]

詠鳥

[原文]

木晩之 暮闇有尓 [一云 有者] 霍公鳥 何處乎家登 鳴渡良<武>

[訓読]

木の暗の夕闇なるに [一云 なれば] 霍公鳥いづくを家と鳴き渡るらむ

[仮名]

このくれの ゆふやみなるに[なれば] ほととぎす いづくをいへと なきわたるらむ

[注解]

哉→武 [元][紀][矢][京]

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夏雑歌 動物 叙景

1949

[題詞]

詠鳥

[原文]

霍公鳥 今朝之旦明尓 鳴都流波 君将聞可 朝宿疑将寐

[訓読]

霍公鳥今朝の朝明に鳴きつるは君聞きけむか朝寐か寝けむ

[仮名]

ほととぎす けさのあさけに なきつるは きみききけむか あさいかねけむ

[注解]

1949〜1951順序に錯簡

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 問いかけ

1950

[題詞]

詠鳥

[原文]

霍公鳥 花橘之 枝尓居而 鳴響者 花波散乍

[訓読]

霍公鳥花橘の枝に居て鳴き響もせば花は散りつつ

[仮名]

ほととぎす はなたちばなの えだにゐて なきとよもせば はなはちりつつ

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 植物 叙景

1951

[題詞]

詠鳥

[原文]

慨哉 四去霍公鳥 今社者 音之干蟹 来喧響目

[訓読]

うれたきや醜霍公鳥今こそば声の嗄るがに来鳴き響めめ

[仮名]

うれたきや しこほととぎす いまこそば こゑのかるがに きなきとよめめ 

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物

1952

[題詞]

詠鳥

[原文]

今夜乃 於保束無荷 霍公鳥 喧奈流聲之 音乃遥左

[訓読]

今夜のおほつかなきに霍公鳥鳴くなる声の音の遥けさ

[仮名]

こよひの おほつかなきに ほととぎす なくなるこゑの おとのはるけさ

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 叙景

1953

[題詞]

詠鳥

[原文]

五月山 宇能花月夜 霍公鳥 雖聞不飽 又鳴鴨

[訓読]

五月山卯の花月夜霍公鳥聞けども飽かずまた鳴かぬかも

[仮名]

さつきやま うのはなづくよ ほととぎす きけどもあかず またなかぬかも

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 動物

1954

[題詞]

詠鳥

[原文]

霍公鳥 来居裳鳴香 吾屋前乃 花橘乃 地二落六見牟

[訓読]

霍公鳥来居も鳴かぬか我がやどの花橘の地に落ちむ見む

[仮名]

ほととぎす きゐもなかぬか わがやどの はなたちばなの つちにおちむみむ

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 植物

1955

[題詞]

詠鳥

[原文]

霍公鳥 厭時無 菖蒲 蘰将為日 従此鳴度礼

[訓読]

霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ

[仮名]

ほととぎす いとふときなし あやめぐさ かづらにせむひ こゆなきわたれ

[注解]

菖 [元][類] 昌

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 植物

1956

[題詞]

詠鳥

[原文]

山跡庭 啼而香将来 霍公鳥 汝鳴毎 無人所念

[訓読]

大和には鳴きてか来らむ霍公鳥汝が鳴くごとになき人思ほゆ

[仮名]

やまとには なきてかくらむ ほととぎす ながなくごとに なきひとおもほゆ

[検索用キーワード]

夏雑歌 奈良 地名 動物 懐古

1957

[題詞]

詠鳥

[原文]

宇能花乃 散巻惜 霍公鳥 野出山入 来鳴令動

[訓読]

卯の花の散らまく惜しみ霍公鳥野に出で山に入り来鳴き響もす

[仮名]

うのはなの ちらまくをしみ ほととぎす のにいでやまにいり きなきとよもす

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 動物 叙景

1958

[題詞]

詠鳥

[原文]

橘之 林乎殖 霍公鳥 常尓冬及 住度金

[訓読]

橘の林を植ゑむ霍公鳥常に冬まで棲みわたるがね

[仮名]

たちばなの はやしをうゑむ ほととぎす つねにふゆまで すみわたるがね

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 動物

1959

[題詞]

詠鳥

[原文]

雨へ之 雲尓副而 霍公鳥 指春日而 従此鳴度

[訓読]

雨晴れの雲にたぐひて霍公鳥春日をさしてこゆ鳴き渡る

[仮名]

あまばれの くもにたぐひて ほととぎす かすがをさして こゆなきわたる

[検索用キーワード]

夏雑歌 奈良 地名 動物 叙景

1960

[題詞]

詠鳥

[原文]

物念登 不宿旦開尓 霍公鳥 鳴而左度 為便無左右二

[訓読]

物思ふと寐ねぬ朝明に霍公鳥鳴きてさ渡るすべなきまでに

[仮名]

ものもふと いねぬあさけに ほととぎす なきてさわたる すべなきまでに

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物

1961

[題詞]

詠鳥

[原文]

吾衣 於君令服与登 霍公鳥 吾乎領 袖尓来居管

[訓読]

我が衣を君に着せよと霍公鳥我れをうながす袖に来居つつ

[仮名]

わがきぬを きみにきせよと ほととぎす われをうながす そでにきゐつつ

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物

1962

[題詞]

詠鳥

[原文]

本人 霍公鳥乎八 希将見 今哉汝来 戀乍居者

[訓読]

本つ人霍公鳥をやめづらしく今か汝が来る恋ひつつ居れば

[仮名]

もとつひと ほととぎすをや めづらしく いまかながくる こひつつをれば

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物

1963

[題詞]

詠鳥

[原文]

如是許 雨之零尓 霍公鳥 宇<乃>花山尓 猶香将鳴

[訓読]

かくばかり雨の降らくに霍公鳥卯の花山になほか鳴くらむ

[仮名]

かくばかり あめのふらくに ほととぎす うのはなやまに なほかなくらむ

[注解]

之 →乃 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 叙景

1964

[題詞]

詠蝉

[原文]

黙然毛将有 時母鳴奈武 日晩乃 物念時尓 鳴管本名

[訓読]

黙もあらむ時も鳴かなむひぐらしの物思ふ時に鳴きつつもとな

[仮名]

もだもあらむ ときもなかなむ ひぐらしの ものもふときに なきつつもとな

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物

1965

[題詞]

詠榛

[原文]

思子之 衣将摺尓 々保比与 嶋之榛原 秋不立友

[訓読]

思ふ子が衣摺らむににほひこそ島の榛原秋立たずとも

[仮名]

おもふこが ころもすらむに にほひこそ しまのはりはら あきたたずとも

[検索用キーワード]

夏雑歌 飛鳥 地名 植物

1966

[題詞]

詠花

[原文]

風散 花橘S 袖受而 為君御跡 思鶴鴨

[訓読]

風に散る花橘を袖に受けて君がみ跡と偲ひつるかも

[仮名]

かぜにちる はなたちばなを そでにうけて きみがみあとと しのひつるかも

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 恋情

1967

[題詞]

詠花

[原文]

香細寸 花橘乎 玉貫 将送妹者 三礼而毛有香

[訓読]

かぐはしき花橘を玉に貫き贈らむ妹はみつれてもあるか

[仮名]

かぐはしき はなたちばなを たまにぬき おくらむいもは みつれてもあるか

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 恋情

1968

[題詞]

詠花

[原文]

霍公鳥 来鳴響 橘之 花散庭乎 将見人八孰

[訓読]

霍公鳥来鳴き響もす橘の花散る庭を見む人や誰れ

[仮名]

ほととぎす きなきとよもす たちばなの はなちるにはを みむひとやたれ

[検索用キーワード]

夏雑歌 動物 植物

1969

[題詞]

詠花

[原文]

吾屋前之 花橘者 落尓家里 悔時尓 相在君鴨

[訓読]

我が宿の花橘は散りにけり悔しき時に逢へる君かも

[仮名]

わがやどの はなたちばなは ちりにけり くやしきときに あへるきみかも

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 恨み

1970

[題詞]

詠花

[原文]

見渡者 向野邊乃 石竹之 落巻惜毛 雨莫零行年

[訓読]

見わたせば向ひの野辺のなでしこの散らまく惜しも雨な降りそね

[仮名]

みわたせば むかひののへの なでしこの ちらまくをしも あめなふりそね

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物

1971

[題詞]

詠花

[原文]

雨間開而 國見毛将為乎 故郷之 花橘者 散家<武>可聞

[訓読]

雨間明けて国見もせむを故郷の花橘は散りにけむかも

[仮名]

あままあけて くにみもせむを ふるさとの はなたちばなは ちりにけむかも

[注解]

牟 →武 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 季節

1972

[題詞]

詠花

[原文]

野邊見者 瞿麦之花 咲家里 吾待秋者 近就良思母

[訓読]

野辺見ればなでしこの花咲きにけり我が待つ秋は近づくらしも

[仮名]

のへみれば なでしこのはな さきにけり わがまつあきは ちかづくらしも

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 季節

1973

[題詞]

詠花

[原文]

吾妹子尓 相市乃花波 落不過 今咲有如 有与奴香聞

[訓読]

我妹子に楝の花は散り過ぎず今咲けるごとありこせぬかも

[仮名]

わぎもこに あふちのはなは ちりすぎず いまさけるごと ありこせぬかも

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 枕詞 惜別

1974

[題詞]

詠花

[原文]

春日野之 藤者散去而 何物鴨 御狩人之 折而将挿頭

[訓読]

春日野の藤は散りにて何をかもみ狩の人の折りてかざさむ

[仮名]

かすがのの ふぢはちりにて なにをかも みかりのひとの をりてかざさむ

[検索用キーワード]

雑歌 奈良 地名 植物 季節

1975

[題詞]

詠花

[原文]

不時 玉乎曽連有 宇能花乃 五月乎待者 可久有

[訓読]

時ならず玉をぞ貫ける卯の花の五月を待たば久しくあるべみ

[仮名]

ときならず たまをぞぬける うのはなの さつきをまたば ひさしくあるべみ

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物

1976

[題詞]

問答

[原文]

宇能花乃 咲落岳従 霍公鳥 鳴而沙<度> 公者聞津八

[訓読]

卯の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥鳴きてさ渡る君は聞きつや

[仮名]

うのはなの さきちるをかゆ ほととぎす なきてさわたる きみはききつや

[注解]

沙 [元] 紗 / 渡→度 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

夏雑歌 問答 植物 動物

1977

[題詞]

問答

[原文]

聞津八跡 君之問世流 霍公鳥 小竹野尓所沾而 従此鳴綿類

[訓読]

聞きつやと君が問はせる霍公鳥しののに濡れてこゆ鳴き渡る

[仮名]

ききつやと きみがとはせる ほととぎす しののにぬれて こゆなきわたる

[検索用キーワード]

夏雑歌 問答 動物 叙景

1978

[題詞]

譬喩歌

[原文]

橘 花落里尓 通名者 山霍公鳥 将令響鴨

[訓読]

橘の花散る里に通ひなば山霍公鳥響もさむかも

[仮名]

たちばなの はなちるさとに かよひなば やまほととぎす とよもさむかも

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

夏雑歌 植物 動物

~ 夏相聞 ~

1979

[題詞]

寄鳥

[原文]

春之在者 酢軽成野之 霍公鳥 保等穂跡妹尓 不相来尓家里

[訓読]

春さればすがるなす野の霍公鳥ほとほと妹に逢はず来にけり

[仮名]

はるされば すがるなすのの ほととぎす ほとほといもに あはずきにけり

[検索用キーワード]

夏相聞 動物

1980

[題詞]

寄鳥

[原文]

五月山 花橘尓 霍公鳥 隠合時尓 逢有公鴨

[訓読]

五月山花橘に霍公鳥隠らふ時に逢へる君かも

[仮名]

さつきやま はなたちばなに ほととぎす こもらふときに あへるきみかも

[検索用キーワード]

夏相聞 動物 植物

1981

[題詞]

寄鳥

[原文]

霍公鳥 来鳴五月之 短夜毛 獨宿者 明不得毛

[訓読]

霍公鳥来鳴く五月の短夜もひとりし寝れば明かしかねつも

[仮名]

ほととぎす きなくさつきの みじかよも ひとりしぬれば あかしかねつも

[検索用キーワード]

夏相聞 動物 植物 恋情

1982

[題詞]

寄蝉

[原文]

日倉足者 時常雖鳴 我戀 手弱女我者 不定哭

[訓読]

ひぐらしは時と鳴けども片恋にたわや女我れは時わかず泣く

[仮名]

ひぐらしは ときとなけども かたこひに たわやめわれは ときわかずなく

[注解]

我 [元][類][紀](塙) 於

[検索用キーワード]

夏相聞 動物 恋情

1983

[題詞]

寄草

[原文]

人言者 夏野乃草之 繁友 妹与吾<師> 携宿者

[訓読]

人言は夏野の草の繁くとも妹と我れとし携はり寝ば

[仮名]

ひとごとは なつののくさの しげくとも いもとあれとし たづさはりねば

[注解]

<>→ 師 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

夏相聞 植物 恋情

1984

[題詞]

寄草

[原文]

廼者之 戀乃繁久 夏草乃 苅掃友 生布如

[訓読]

このころの恋の繁けく夏草の刈り掃へども生ひしくごとし

[仮名]

このころの こひのしげけく なつくさの かりはらへども おひしくごとし

[検索用キーワード]

夏相聞 植物 恋情

1985

[題詞]

寄草

[原文]

真田葛延 夏野之繁 如是戀者 信吾命 常有目八<面>

[訓読]

ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひばまこと我が命常ならめやも

[仮名]

まくずはふ なつののしげく かくこひば まことわがいのち つねならめやも

[注解]

方→ 面 [元][類]

[検索用キーワード]

夏相聞 恋情

1986

[題詞]

寄草

[原文]

吾耳哉 如是戀為良武 <垣>津旗 丹<頬合>妹者 如何将有

[訓読]

我れのみやかく恋すらむかきつはた丹つらふ妹はいかにかあるらむ

[仮名]

あれのみや かくこひすらむ かきつはた につらふいもは いかにかあるらむ

[注解]

垣 [西(上書訂正)][元][紀] / 類令→ 頬合 [元][類]

[検索用キーワード]

夏相聞 恋情 植物

1987

[題詞]

寄花

[原文]

片搓尓 絲S曽吾搓 吾背兒之 花橘乎 将貫跡母日手

[訓読]

片縒りに糸をぞ我が縒る我が背子が花橘を貫かむと思ひて

[仮名]

かたよりに いとをぞわがよる わがせこが はなたちばなを ぬかむとおもひて

[検索用キーワード]

夏相聞 植物

1988

[題詞]

寄花

[原文]

鴬之 徃来垣根乃 宇能花之 厭事有哉 君之不来座

[訓読]

鴬の通ふ垣根の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ

[仮名]

うぐひすの かよふかきねの うのはなの うきことあれや きみがきまさぬ

[検索用キーワード]

夏相聞 動物 植物

1989

[題詞]

寄花

[原文]

宇能花之 開登波無二 有人尓 戀也将渡 獨念尓指天

[訓読]

卯の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思にして

[仮名]

うのはなの さくとはなしに あるひとに こひやわたらむ かたもひにして

[検索用キーワード]

夏相聞 植物 恋情

1990

[題詞]

寄花

[原文]

吾社葉 憎毛有目 吾屋前之 花橘乎 見尓波不来鳥屋

[訓読]

我れこそば憎くもあらめ我がやどの花橘を見には来じとや

[仮名]

われこそば にくくもあらめ わがやどの はなたちばなを みにはこじとや

[検索用キーワード]

夏相聞 植物

1991

[題詞]

寄花

[原文]

霍公鳥 来鳴動 岡<邊>有 藤浪見者 君者不来登夜

[訓読]

霍公鳥来鳴き響もす岡辺なる藤波見には君は来じとや

[仮名]

ほととぎす きなきとよもす をかへなる ふぢなみみには きみはこじとや

[注解]

部→邊 [類][紀]

[検索用キーワード]

夏相聞 動物 植物 勧誘

1992

[題詞]

寄花

[原文]

隠耳 戀者苦 瞿麦之 花尓開出与 朝旦将見

[訓読]

隠りのみ恋ふれば苦しなでしこの花に咲き出よ朝な朝な見む

[仮名]

こもりのみ こふればくるし なでしこの はなにさきでよ あさなさなみむ

[検索用キーワード]

夏相聞 植物

1993

[題詞]

寄花

[原文]

外耳 見筒戀牟 紅乃 末採花之 色不出友

[訓読]

外のみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出でずとも

[仮名]

よそのみに みつつこひなむ くれなゐの すゑつむはなの いろにいでずとも

[検索用キーワード]

夏相聞 植物

1994

[題詞]

寄露

[原文]

夏草乃 露別衣 不著尓 我衣手乃 干時毛名寸

[訓読]

夏草の露別け衣着けなくに我が衣手の干る時もなき

[仮名]

なつくさの つゆわけごろも つけなくに わがころもでの ふるときもなき

[検索用キーワード]

夏相聞 植物

1995

[題詞]

寄日

[原文]

六月之 地副割而 照日尓毛 吾袖将乾哉 於君不相四手

[訓読]

六月の地さへ裂けて照る日にも我が袖干めや君に逢はずして

[仮名]

みなづきの つちさへさけて てるひにも わがそでひめや きみにあはずして

[検索用キーワード]

夏相聞 恋情

~ 秋雜歌 ~

1996

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 水左閇而照 舟竟 舟人 妹等所見寸哉

[訓読]

天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや

[仮名]

[注釈]

あまのがは みづさへにてる ふねはてて ふねなるひとは いもとみえきや

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

1997

[題詞]

七夕

[原文]

久方之 天漢原丹 奴延鳥之 裏歎座<都> 乏諸手丹

[訓読]

久方の天の川原にぬえ鳥のうら歎げましつすべなきまでに

[仮名]

ひさかたの あまのかはらに ぬえどりの うらなげましつ すべなきまでに

[注解]

津 →都 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

1998

[題詞]

七夕

[原文]

吾戀 嬬者知遠 徃船乃 過而應来哉 事毛告火

[訓読]

我が恋を嬬は知れるを行く舟の過ぎて来べしや言も告げなむ

[仮名]

あがこひを つまはしれるを ゆくふねの すぎてくべしや こともつげなむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

1999

[題詞]

七夕

[原文]

朱羅引 色妙子 數見者 人妻故 吾可戀奴

[訓読]

赤らひく色ぐはし子をしば見れば人妻ゆゑに我れ恋ひぬべし

[仮名]

あからひく いろぐはしこを しばみれば ひとづまゆゑに あれこひぬべし

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2000

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 安渡丹 船浮而 秋立待等 妹告与具

[訓読]

天の川安の渡りに舟浮けて秋立つ待つと妹に告げこそ

[仮名]

あまのがは やすのわたりに ふねうけて あきたつまつと いもにつげこそ

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2001

[題詞]

七夕

[原文]

従蒼天 徃来吾等須良 汝故 天漢道 名積而叙来

[訓読]

大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し

[仮名]

おほそらゆ かよふわれすら ながゆゑに あまのかはぢを なづみてぞこし

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2002

[題詞]

七夕

[原文]

八千<戈> 神自御世 乏つ 人知尓来 告思者

[訓読]

八千桙の神の御代よりともし妻人知りにけり継ぎてし思へば

[仮名]

やちほこの かみのみよより ともしづま ひとしりにけり つぎてしおもへば

[注解]

才→戈 [元][類][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2003

[題詞]

七夕

[原文]

吾等戀 丹穂面 今夕母可 天漢原 石枕巻

[訓読]

我が恋ふる丹のほの面わこよひもか天の川原に石枕まかむ

[仮名]

あがこふる にのほのおもわ こよひもか あまのかはらに いしまくらまかむ

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2004

[題詞]

七夕

[原文]

己つ 乏子等者 竟津 荒礒巻而寐 君待難

[訓読]

己夫にともしき子らは泊てむ津の荒礒巻きて寝む君待ちかてに

[仮名]

おのづまに ともしきこらは はてむつの ありそまきてねむ きみまちかてに

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2005

[題詞]

七夕

[原文]

天地等 別之時従 自つ 然叙<年>而在 金待吾者

[訓読]

天地と別れし時ゆ己が妻しかぞ年にある秋待つ我れは

[仮名]

あめつちと わかれしときゆ おのがつま しかぞかれてあり あきまつわれは

[注解]

手 →年 [万葉集童蒙抄]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2006

[題詞]

七夕

[原文]

孫星 嘆須つ 事谷毛 告<尓>叙来鶴 見者苦弥

[訓読]

彦星は嘆かす妻に言だにも告げにぞ来つる見れば苦しみ

[仮名]

ひこほしは なげかすつまに ことだにも つげにぞきつる みればくるしみ

[注解]

余→尓 [元][類][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2007

[題詞]

七夕

[原文]

久方 天印等 水無<川> 隔而置之 神世之恨

[訓読]

ひさかたの天つしるしと水無し川隔てて置きし神代し恨めし

[仮名]

ひさかたの あまつしるしと みなしがは へだてておきし かむよしうらめし

[注解]

河→川 [元][類][京]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2008

[題詞]

七夕

[原文]

黒玉 宵霧隠 遠鞆 妹傳 速告与

[訓読]

ぬばたまの夜霧に隠り遠くとも妹が伝へは早く告げこそ

[仮名]

ぬばたまの よぎりにこもり とほくとも いもがつたへは はやくつげこそ

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2009

[題詞]

七夕

[原文]

汝戀 妹命者 飽足尓 袖振所見都 及雲隠

[訓読]

汝が恋ふる妹の命は飽き足らに袖振る見えつ雲隠るまで

[仮名]

ながこふる いものみことは あきだらに そでふるみえつ くもがくるまで

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2010

[題詞]

七夕

[原文]

夕星毛 徃来天道 及何時鹿 仰而将待 月人<壮>

[訓読]

夕星も通ふ天道をいつまでか仰ぎて待たむ月人壮士

[仮名]

ゆふつづも かよふあまぢを いつまでか あふぎてまたむ つきひとをとこ

[注解]

牡→壮 [元][類]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2011

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 已向立而 戀等尓 事谷将告 つ言及者

[訓読]

天の川い向ひ立ちて恋しらに言だに告げむ妻と言ふまでは

[仮名]

あまのがは いむかひたちて こひしらに ことだにつげむ つまといふまでは

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2012

[題詞]

七夕

[原文]

水良玉 五百<都>集乎 解毛不<見> 吾者干可太奴 相日待尓

[訓読]

白玉の五百つ集ひを解きもみず我は干しかてぬ逢はむ日待つに

[仮名]

しらたまの いほつつどひを ときもみず わはほしかてぬ あはむひまつに

[注解]

部→都 [元][類] / 及→見 [西(訂正右書)][元][類][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2013

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 水陰草 金風 靡見者 時来之

[訓読]

天の川水蔭草の秋風に靡かふ見れば時は来にけり

[仮名]

あまのがは みづかげくさの あきかぜに なびかふみれば ときはきにけり

[注解]

之 [元][類](塙) 々

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2014

[題詞]

七夕

[原文]

吾等待之 白芽子開奴 今谷毛 尓寶比尓徃奈 越方人邇

[訓読]

我が待ちし秋萩咲きぬ今だにもにほひに行かな彼方人に

[仮名]

わがまちし あきはぎさきぬ いまだにも にほひにゆかな をちかたひとに

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2015

[題詞]

七夕

[原文]

吾世子尓 裏戀居者 天<漢> 夜船滂動 梶音所聞

[訓読]

我が背子にうら恋ひ居れば天の川夜舟漕ぐなる楫の音聞こゆ

[仮名]

わがせこに うらこひをれば あまのがは よふねこぐなる かぢのおときこゆ

[注解]

河→漢 [元][類][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2016

[題詞]

七夕

[原文]

真氣長 戀心自 白風 妹音所聴 紐解徃名

[訓読]

ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解き行かな

[仮名]

まけながく こふるこころゆ あきかぜに いもがおときこゆ ひもときゆかな

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2017

[題詞]

七夕

[原文]

戀敷者 氣長物乎 今谷 乏<之>牟可哉 可相夜谷

[訓読]

恋ひしくは日長きものを今だにもともしむべしや逢ふべき夜だに

[仮名]

こひしくは けながきものを いまだにも ともしむべしや あふべきよだに

[注解]

<> →之 [元][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2018

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 去歳渡代 遷閇者 河瀬於踏 夜深去来

[訓読]

天の川去年の渡りで移ろへば川瀬を踏むに夜ぞ更けにける

[仮名]

あまのがは こぞのわたりで うつろへば かはせをふむに よぞふけにける

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2019

[題詞]

七夕

[原文]

自古 擧而之服 不顧 天河津尓 年序經去来

[訓読]

いにしへゆあげてし服も顧みず天の川津に年ぞ経にける

[仮名]

いにしへゆ あげてしはたも かへりみず あまのかはづに としぞへにける

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2020

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 夜船滂而 雖明 将相等念夜 袖易受将有

[訓読]

天の川夜船を漕ぎて明けぬとも逢はむと思ふ夜袖交へずあらむ

[仮名]

あまのがは よふねをこぎて あけぬとも あはむとおもふよ そでかへずあらむ

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2021

[題詞]

七夕

[原文]

遥ほ等 手枕易 寐夜 鶏音莫動 明者雖明

[訓読]

遠妻と手枕交へて寝たる夜は鶏がねな鳴き明けば明けぬとも

[仮名]

とほづまと たまくらかへて ねたるよは とりがねななき あけばあけぬとも

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2022

[題詞]

七夕

[原文]

相見久 Q雖不足 稲目 明去来理 舟出為牟つ

[訓読]

相見らく飽き足らねどもいなのめの明けさりにけり舟出せむ妻

[仮名]

あひみらく あきだらねども いなのめの あけさりにけり ふなでせむつま

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2023

[題詞]

七夕

[原文]

左尼始而 何太毛不在者 白栲 帶可乞哉 戀毛不<過>者

[訓読]

さ寝そめていくだもあらねば白栲の帯乞ふべしや恋も過ぎねば

[仮名]

さねそめて いくだもあらねば しろたへの おびこふべしや こひもすぎねば

[注解]

遏→過 [元][類][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2024

[題詞]

七夕

[原文]

万世 携手居而 相見鞆 念可過 戀<尓>有莫國

[訓読]

万代にたづさはり居て相見とも思ひ過ぐべき恋にあらなくに

[仮名]

よろづよに たづさはりゐて あひみとも おもひすぐべき こひにあらなくに

[注解]

奈 →尓 [元][類]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2025

[題詞]

七夕

[原文]

万世 可照月毛 雲隠 苦物叙 将相登雖念

[訓読]

万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢はむと思へど

[仮名]

よろづよに てるべきつきも くもがくり くるしきものぞ あはむとおもへど

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2026

[題詞]

七夕

[原文]

白雲 五百遍隠 雖遠 夜不去将見 妹當者

[訓読]

白雲の五百重に隠り遠くとも宵さらず見む妹があたりは

[仮名]

しらくもの いほへにかくり とほくとも よひさらずみむ いもがあたりは

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2027

[題詞]

七夕

[原文]

為我登 織女之 其屋戸尓 織白布 織弖兼鴨

[訓読]

我がためと織女のそのやどに織る白栲は織りてけむかも

[仮名]

あがためと たなばたつめの そのやどに おるしろたへは おりてけむかも

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2028

[題詞]

七夕

[原文]

君不相 久時 織服 白栲衣 垢附麻弖尓

[訓読]

君に逢はず久しき時ゆ織る服の白栲衣垢付くまでに

[仮名]

きみにあはず ひさしきときゆ おるはたの しろたへころも あかつくまでに

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2029

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 梶音聞 孫星 与織女 今夕相霜

[訓読]

天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふらしも

[仮名]

あまのがは かぢのおときこゆ ひこほしと たなばたつめと こよひあふらしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2030

[題詞]

七夕

[原文]

秋去者 <川>霧 天川 河向居而 戀夜多

[訓読]

秋されば川霧立てる天の川川に向き居て恋ふる夜ぞ多き

[仮名]

あきされば かはぎりたてる あまのがは かはにむきゐて こふるよぞおほき

[注解]

河→川 [元][類] / 霧 [温](塙) 霧立

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2031

[題詞]

七夕

[原文]

吉哉 雖不直 奴延鳥 浦嘆居 告子鴨

[訓読]

よしゑやし直ならずともぬえ鳥のうら嘆げ居りと告げむ子もがも

[仮名]

よしゑやし ただならずとも ぬえどりの うらなげをりと つげむこもがも

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 略体 七夕

2032

[題詞]

七夕

[原文]

一年邇 七夕耳 相人之 戀毛不<過>者 夜深徃久毛 [一云 不盡者 佐宵曽明尓来]

[訓読]

一年に七日の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも [一云 尽きねばさ夜ぞ明けにける]

[仮名]

ひととせに なぬかのよのみ あふひとの こひもすぎねば よはふけゆくも [つきねば さよぞあけにける]

[注解]

遏→過 [元][類][紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2033

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 安川原 定而神競者磨待無

[訓読]

天の川安の川原定而神競者磨待無

[仮名]

あまのがは やすのかはら* ***** ******* *******

[注解]

歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 七夕

2034

[題詞]

七夕

[原文]

棚機之 五百機立而 織布之 秋去衣 孰取見

[訓読]

織女の五百機立てて織る布の秋さり衣誰れか取り見む

[仮名]

たなばたの いほはたたてて おるぬのの あきさりごろも たれかとりみむ

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秋雑歌 七夕

2035

[題詞]

七夕

[原文]

年有而 今香将巻 烏玉之 夜霧隠 遠妻手乎

[訓読]

年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠れる遠妻の手を

[仮名]

としにありて いまかまくらむ ぬばたまの よぎりこもれる とほづまのてを

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秋雑歌 七夕

2036

[題詞]

七夕

[原文]

吾待之 秋者来沼 妹与吾 何事在曽 紐不解在牟

[訓読]

我が待ちし秋は来りぬ妹と我れと何事あれぞ紐解かずあらむ

[仮名]

わがまちし あきはきたりぬ いもとあれと なにことあれぞ ひもとかずあらむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2037

[題詞]

七夕

[原文]

年之戀 今夜盡而 明日従者 如常哉 吾戀居牟

[訓読]

年の恋今夜尽して明日よりは常のごとくや我が恋ひ居らむ

[仮名]

としのこひ こよひつくして あすよりは つねのごとくや あがこひをらむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2038

[題詞]

七夕

[原文]

不合者 氣長物乎 天漢 隔又哉 吾戀将居

[訓読]

逢はなくは日長きものを天の川隔ててまたや我が恋ひ居らむ

[仮名]

あはなくは けながきものを あまのがは へだててまたや あがこひをらむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2039

[題詞]

七夕

[原文]

戀家口 氣長物乎 可合有 夕谷君之 不来益有良武

[訓読]

恋しけく日長きものを逢ふべくある宵だに君が来まさずあるらむ

[仮名]

こひしけく けながきものを あふべくある よひだにきみが きまさずあるらむ

[注解]

武 [元][類][紀](塙) 牟

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秋雑歌 七夕

2040

[題詞]

七夕

[原文]

牽牛 与織女 今夜相 天漢門尓 浪立勿謹

[訓読]

彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆめ

[仮名]

ひこほしと たなばたつめと こよひあふ あまのかはとに なみたつなゆめ

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2041

[題詞]

七夕

[原文]

秋風 吹漂蕩 白雲者 織女之 天津領巾毳

[訓読]

秋風の吹きただよはす白雲は織女の天つ領巾かも

[仮名]

あきかぜの ふきただよはす しらくもは たなばたつめの あまつひれかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2042

[題詞]

七夕

[原文]

數裳 相不見君矣 天漢 舟出速為 夜不深間

[訓読]

しばしばも相見ぬ君を天の川舟出早せよ夜の更けぬ間に

[仮名]

しばしばも あひみぬきみを あまのがは ふなではやせよ よのふけぬまに

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2043

[題詞]

七夕

[原文]

秋風之 清夕 天漢 舟滂度 月人<壮>子

[訓読]

秋風の清き夕に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士

[仮名]

あきかぜの きよきゆふへに あまのがは ふねこぎわたる つきひとをとこ

[注解]

牡→ 壮 [類][紀][温]

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2044

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 霧立度 牽牛之 楫音所聞 夜深徃

[訓読]

天の川霧立ちわたり彦星の楫の音聞こゆ夜の更けゆけば

[仮名]

あまのがは きりたちわたり ひこほしの かぢのおときこゆ よのふけゆけば

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2045

[題詞]

七夕

[原文]

君舟 今滂来良之 天漢 霧立度 此川瀬

[訓読]

君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ちわたるこの川の瀬に

[仮名]

きみがふね いまこぎくらし あまのがは きりたちわたる このかはのせに

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2046

[題詞]

七夕

[原文]

秋風尓 河浪起 ま 八十舟津 三舟停

[訓読]

秋風に川波立ちぬしましくは八十の舟津にみ舟留めよ

[仮名]

あきかぜに かはなみたちぬ しましくは やそのふなつに みふねとどめよ

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秋雑歌 七夕

2047

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 <河>聲清之 牽牛之 秋滂船之 浪せ香

[訓読]

天の川川の音清し彦星の秋漕ぐ舟の波のさわきか

[仮名]

あまのがは かはのおときよし ひこほしの あきこぐふねの なみのさわきか

[注解]

川→河 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2048

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 <河>門立 吾戀之 君来奈里 紐解待 [一云 天<河> <川>向立]

[訓読]

天の川川門に立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き待たむ [一云 天の川川に向き立ち]

[仮名]

あまのがは かはとにたちて あがこひし きみきますなり ひもときまたむ [あまのがは かはにむきたち]

[注解]

川→河 [元][類][紀] / 川→河 [元][紀][温] / 河→川 [元][紀][温]

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秋雑歌 七夕 異伝

2049

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 <河>門座而 年月 戀来君 今夜會可母

[訓読]

天の川川門に居りて年月を恋ひ来し君に今夜逢へるかも

[仮名]

あまのがは かはとにをりて としつきを こひこしきみに こよひあへるかも

[注解]

川 →河 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2050

[題詞]

七夕

[原文]

明日従者 吾玉床乎 打拂 公常不宿 孤可母寐

[訓読]

明日よりは我が玉床をうち掃ひ君と寐ねずてひとりかも寝む

[仮名]

あすよりは あがたまどこを うちはらひ きみといねずて ひとりかもねむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2051

[題詞]

七夕

[原文]

天原 徃射跡 白檀 挽而隠在 月人<壮>子

[訓読]

天の原行きて射てむと白真弓引きて隠れる月人壮士

[仮名]

あまのはら ゆきていてむと しらまゆみ ひきてこもれる つきひとをとこ

[注解]

牡→壮 [類][紀][温]

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2052

[題詞]

七夕

[原文]

此夕 零来雨者 男星之 早滂船之 賀伊乃散鴨

[訓読]

この夕降りくる雨は彦星の早漕ぐ舟の櫂の散りかも

[仮名]

このゆふへ ふりくるあめは ひこほしの はやこぐふねの かいのちりかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2053

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 八十瀬霧合 男星之 時待船 今滂良之

[訓読]

天の川八十瀬霧らへり彦星の時待つ舟は今し漕ぐらし

[仮名]

あまのがは やそせきらへり ひこほしの ときまつふねは いましこぐらし

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2054

[題詞]

七夕

[原文]

風吹而 河浪起 引船丹 度裳来 夜不降間尓

[訓読]

風吹きて川波立ちぬ引き船に渡りも来ませ夜の更けぬ間に

[仮名]

かぜふきて かはなみたちぬ ひきふねに わたりもきませ よのふけぬまに

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2055

[題詞]

七夕

[原文]

天河 遠<渡>者 無友 公之舟出者 年尓社候

[訓読]

天の川遠き渡りはなけれども君が舟出は年にこそ待て

[仮名]

あまのがは とほきわたりは なけれども きみがふなでは としにこそまて

[注解]

度→渡 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2056

[題詞]

七夕

[原文]

天<漢> 打橋度 妹之家道 不止通 時不待友

[訓読]

天の川打橋渡せ妹が家道やまず通はむ時待たずとも

[仮名]

あまのがは うちはしわたせ いもがいへぢ やまずかよはむ ときまたずとも

[注解]

河→漢 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2057

[題詞]

七夕

[原文]

月累 吾思妹 會夜者 今之七夕 續巨勢奴鴨

[訓読]

月重ね我が思ふ妹に逢へる夜は今し七夜を継ぎこせぬかも

[仮名]

つきかさね あがおもふいもに あへるよは いましななよを つぎこせぬかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2058

[題詞]

七夕

[原文]

年丹装 吾舟滂 天河 風者吹友 浪立勿忌

[訓読]

年に装る我が舟漕がむ天の川風は吹くとも波立つなゆめ

[仮名]

としにかざる わがふねこがむ あまのがは かぜはふくとも なみたつなゆめ

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2059

[題詞]

七夕

[原文]

天河 浪者立友 吾舟者 率滂出 夜之不深間尓

[訓読]

天の川波は立つとも我が舟はいざ漕ぎ出でむ夜の更けぬ間に

[仮名]

あまのがは なみはたつとも わがふねは いざこぎいでむ よのふけぬまに

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2060

[題詞]

七夕

[原文]

直今夜 相有兒等尓 事問母 未為而 左夜曽明二来

[訓読]

ただ今夜逢ひたる子らに言どひもいまだせずしてさ夜ぞ明けにける

[仮名]

ただこよひ あひたるこらに ことどひも いまだせずして さよぞあけにける

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2061

[題詞]

七夕

[原文]

天河 白浪高 吾戀 公之舟出者 今為下

[訓読]

天の川白波高し我が恋ふる君が舟出は今しすらしも

[仮名]

あまのがは しらなみたかし あがこふる きみがふなでは いましすらしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2062

[題詞]

七夕

[原文]

機 さ木持徃而 天<漢> 打橋度 公之来為

[訓読]

機物のまね木持ち行きて天の川打橋渡す君が来むため

[仮名]

はたものの まねきもちゆきて あまのがは うちはしわたす きみがこむため

[注解]

河→漢 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2063

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 霧立上 棚幡乃 雲衣能 飄袖鴨

[訓読]

天の川霧立ち上る織女の雲の衣のかへる袖かも

[仮名]

あまのがは きりたちのぼる たなばたの くものころもの かへるそでかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2064

[題詞]

七夕

[原文]

古 織義之八多乎 此暮 衣縫而 君待吾乎

[訓読]

いにしへゆ織りてし服をこの夕衣に縫ひて君待つ我れを

[仮名]

いにしへゆ おりてしはたを このゆふへ ころもにぬひて きみまつわれを

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秋雑歌 七夕

2065

[題詞]

七夕

[原文]

足玉母 手珠毛由良尓 織旗乎 公之御衣尓 縫将堪可聞

[訓読]

足玉も手玉もゆらに織る服を君が御衣に縫ひもあへむかも

[仮名]

あしだまも ただまもゆらに おるはたを きみがみけしに ぬひもあへむかも

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秋雑歌 七夕

2066

[題詞]

七夕

[原文]

擇月日 逢義之有者 別乃 惜有君者 明日副裳欲得

[訓読]

月日おき逢ひてしあれば別れまく惜しくある君は明日さへもがも

[仮名]

つきひおき あひてしあれば わかれまく をしくあるきみは あすさへもがも

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秋雑歌 七夕

2067

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 渡瀬深弥 泛船而 掉来君之 楫<音>所聞

[訓読]

天の川渡り瀬深み舟浮けて漕ぎ来る君が楫の音聞こゆ

[仮名]

あまのがは わたりぜふかみ ふねうけて こぎくるきみが かぢのおときこゆ

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秋雑歌 七夕

2068

[題詞]

七夕

[原文]

天原 振放見者 天漢 霧立渡 公者来良志

[訓読]

天の原降り放け見れば天の川霧立ちわたる君は来ぬらし

[仮名]

あまのはら ふりさけみれば あまのがは きりたちわたる きみはきぬらし

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秋雑歌 七夕

2069

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 瀬毎幣 奉 情者君乎 幸来座跡

[訓読]

天の川瀬ごとに幣をたてまつる心は君を幸く来ませと

[仮名]

あまのがは せごとにぬさを たてまつる こころはきみを さきくきませと

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秋雑歌 七夕

2070

[題詞]

七夕

[原文]

久<堅>之 天河津尓 舟泛而 君待夜等者 不明毛有寐鹿

[訓読]

久方の天の川津に舟浮けて君待つ夜らは明けずもあらぬか

[仮名]

ひさかたの あまのかはづに ふねうけて きみまつよらは あけずもあらぬか

[注解]

方→堅 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2071

[題詞]

七夕

[原文]

天河 足沾渡 君之手毛 未枕者 夜之深去良久

[訓読]

天の川なづさひ渡る君が手もいまだまかねば夜の更けぬらく

[仮名]

あまのがは なづさひわたる きみがても いまだまかねば よのふけぬらく

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秋雑歌 七夕

2072

[題詞]

七夕

[原文]

渡守 船度世乎跡 呼音之 不至者疑 梶<聲之>不為

[訓読]

渡り守舟渡せをと呼ぶ声の至らねばかも楫の音のせぬ

[仮名]

わたりもり ふねわたせをと よぶこゑの いたらねばかも かぢのおとのせぬ

[注解]

之聲→聲之 [元][類]

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秋雑歌 七夕

2073

[題詞]

七夕

[原文]

真氣長 河向立 有之袖 今夜巻跡 念之吉沙

[訓読]

ま日長く川に向き立ちありし袖今夜巻かむと思はくがよさ

[仮名]

まけながく かはにむきたち ありしそで こよひまかむと おもはくがよさ

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秋雑歌 七夕

2074

[題詞]

七夕

[原文]

天<河> 渡湍毎 思乍 来之雲知師 逢有久念者

[訓読]

天の川渡り瀬ごとに思ひつつ来しくもしるし逢へらく思へば

[仮名]

あまのがは わたりぜごとに おもひつつ こしくもしるし あへらくおもへば

[注解]

漢→河 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2075

[題詞]

七夕

[原文]

人左倍也 見不継将有 牽牛之 嬬喚舟之 近附徃乎 [一云 見乍有良武]

[訓読]

人さへや見継がずあらむ彦星の妻呼ぶ舟の近づき行くを [一云 見つつあるらむ]

[仮名]

ひとさへや みつがずあらむ ひこほしの つまよぶふねの ちかづきゆくを [みつつあるらむ]

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秋雑歌 七夕

2076

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 瀬乎早鴨 烏珠之 夜者闌尓乍 不合牽牛

[訓読]

天の川瀬を早みかもぬばたまの夜は更けにつつ逢はぬ彦星

[仮名]

あまのがは せをはやみかも ぬばたまの よはふけにつつ あはぬひこほし

[注解]

闌 [元][類] 開

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秋雑歌 七夕

2077

[題詞]

七夕

[原文]

渡守 舟早渡世 一年尓 二遍徃来 君尓有勿久尓

[訓読]

渡り守舟早渡せ一年にふたたび通ふ君にあらなくに

[仮名]

わたりもり ふねはやわたせ ひととせに ふたたびかよふ きみにあらなくに

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秋雑歌 七夕

2078

[題詞]

七夕

[原文]

玉葛 不絶物可良 佐宿者 年之度尓 直一夜耳

[訓読]

玉葛絶えぬものからさ寝らくは年の渡りにただ一夜のみ

[仮名]

たまかづら たえぬものから さぬらくは としのわたりに ただひとよのみ

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秋雑歌 七夕

2079

[題詞]

七夕

[原文]

戀日者 <食>長物乎 今夜谷 令乏應哉 可相物乎

[訓読]

恋ふる日は日長きものを今夜だにともしむべしや逢ふべきものを

[仮名]

こふるひは けながきものを こよひだに ともしむべしや あふべきものを

[注解]

氣→ 食 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2080

[題詞]

七夕

[原文]

織女之 今夜相奈婆 如常 明日乎阻而 年者将長

[訓読]

織女の今夜逢ひなば常のごと明日を隔てて年は長けむ

[仮名]

たなばたの こよひあひなば つねのごと あすをへだてて としはながけむ

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秋雑歌 七夕

2081

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 棚橋渡 織女之 伊渡左牟尓 棚橋渡

[訓読]

天の川棚橋渡せ織女のい渡らさむに棚橋渡せ

[仮名]

あまのがは たなはしわたせ たなばたの いわたらさむに たなはしわたせ

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秋雑歌 七夕

2082

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 河門八十有 何尓可 君之三船乎 吾待将居

[訓読]

天の川川門八十ありいづくにか君がみ舟を我が待ち居らむ

[仮名]

あまのがは かはとやそあり いづくにか きみがみふねを わがまちをらむ

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秋雑歌 七夕

2083

[題詞]

七夕

[原文]

秋風乃 吹西日従 天漢 瀬尓出立 待登告許曽

[訓読]

秋風の吹きにし日より天の川瀬に出で立ちて待つと告げこそ

[仮名]

あきかぜの ふきにしひより あまのがは せにいでたちて まつとつげこそ

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秋雑歌 七夕

2084

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 去年之渡湍 有二家里 君<之>将来 道乃不知久

[訓読]

天の川去年の渡り瀬荒れにけり君が来まさむ道の知らなく

[仮名]

あまのがは こぞのわたりぜ あれにけり きみがきまさむ みちのしらなく

[注解]

<>→ 之 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2085

[題詞]

七夕

[原文]

天漢 湍瀬尓白浪 雖高 直渡来沼 時者苦三

[訓読]

天の川瀬々に白波高けども直渡り来ぬ待たば苦しみ

[仮名]

あまのがは せぜにしらなみ たかけども ただわたりきぬ またばくるしみ

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秋雑歌 七夕

2086

[題詞]

七夕

[原文]

牽牛之 嬬喚舟之 引<綱>乃 将絶跡君乎 吾<之>念勿國

[訓読]

彦星の妻呼ぶ舟の引き綱の絶えむと君を我が思はなくに

[仮名]

ひこほしの つまよぶふねの ひきづなの たえむときみを わがおもはなくに

[注解]

綱 [西(上書訂正)][元][類][紀] / 久→之 [万葉考]

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秋雑歌 七夕

2087

[題詞]

七夕

[原文]

渡守 舟出為将出 今夜耳 相見而後者 不相物可毛

[訓読]

渡り守舟出し出でむ今夜のみ相見て後は逢はじものかも

[仮名]

わたりもり ふなでしいでむ こよひのみ あひみてのちは あはじものかも

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秋雑歌 七夕

2088

[題詞]

七夕

[原文]

吾隠有 楫棹無而 渡守 舟将借八方 須臾者有待

[訓読]

我が隠せる楫棹なくて渡り守舟貸さめやもしましはあり待て

[仮名]

わがかくせる かぢさをなくて わたりもり ふねかさめやも しましはありまて

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秋雑歌 七夕

2089

[題詞]

七夕

[原文]

乾坤之 初時従 天漢 射向居而 一年丹 兩遍不遭 妻戀尓 物念人 天漢 安乃川原乃 有通 出々乃渡丹 具穂船乃 艫丹裳舳丹裳 船装 真梶繁<抜> 旗<芒> 本葉裳具世丹 秋風乃 吹<来>夕丹 天<河> 白浪凌 落沸 速湍渉 稚草乃 妻手枕迹 大<舟>乃 思憑而 滂来等六 其夫乃子我 荒珠乃 年緒長 思来之 戀将盡 七月 七日之夕者 吾毛悲焉

[訓読]

天地の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居りて 一年に ふたたび逢はぬ 妻恋ひに 物思ふ人 天の川 安の川原の あり通ふ 出の渡りに そほ舟の 艫にも舳にも 舟装ひ ま楫しじ貫き 旗すすき 本葉もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 白波しのぎ 落ちたぎつ 早瀬渡りて 若草の 妻を巻かむと 大船の 思ひ頼みて 漕ぎ来らむ その夫の子が あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽すらむ 七月の 七日の宵は 我れも悲しも

[仮名]

あめつちの はじめのときゆ あまのがは いむかひをりて ひととせに ふたたびあはぬ つまごひに ものもふひと あまのがは やすのかはらの ありがよふ いでのわたりに そほぶねの ともにもへにも ふなよそひ まかぢしじぬき はたすすき もとはもそよに あきかぜの ふきくるよひに あまのがは しらなみしのぎ おちたぎつ はやせわたりて わかくさの つまをまかむと おほぶねの おもひたのみて こぎくらむ そのつまのこが あらたまの としのをながく おもひこし こひつくすらむ ふみつきの なぬかのよひは われもかなしも

[注解]

出々 (塙)(楓) 出 / <>→抜 [西(右書)][元][類][紀] / 荒→芒 [万葉考] /<>→来 [元][類][紀] / 川→河 [元][類][紀] / 船→舟 [元][紀]

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秋雑歌 七夕

2090

[題詞]

(七夕)反歌

[原文]

狛錦 紐解易之 天人乃 妻問夕叙 吾裳将偲

[訓読]

高麗錦紐解きかはし天人の妻問ふ宵ぞ我れも偲はむ

[仮名]

こまにしき ひもときかはし あめひとの つまどふよひぞ われもしのはむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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秋雑歌 七夕

2091

[題詞]

(七夕)反歌

[原文]

彦星之 <河>瀬渡 左小舟乃 得行而将泊 河津石所念

[訓読]

彦星の川瀬を渡るさ小舟のい行きて泊てむ川津し思ほゆ

[仮名]

ひこほしの かはせをわたる さをぶねの いゆきてはてむ かはづしおもほゆ

[注解]

川→河 [元][類][紀]

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秋雑歌 七夕

2092

[題詞]

七夕

[原文]

天地跡 別之時従 久方乃 天驗常 <定>大王 天之河原尓 璞 月累而 妹尓相 時候跡 立待尓 吾衣手尓 秋風之 吹反者 立<座> 多土伎乎不知 村肝 心不欲 解衣 思乱而 何時跡 吾待今夜 此川 行長 有得鴨

[訓読]

天地と 別れし時ゆ 久方の 天つしるしと 定めてし 天の川原に あらたまの 月重なりて 妹に逢ふ 時さもらふと 立ち待つに 我が衣手に 秋風の 吹きかへらへば 立ちて居て たどきを知らに むらきもの 心いさよひ 解き衣の 思ひ乱れて いつしかと 我が待つ今夜 この川の 流れの長く ありこせぬかも

[仮名]

あめつちと わかれしときゆ ひさかたの あまつしるしと さだめてし あまのかはらに あらたまの つきかさなりて いもにあふ ときさもらふと たちまつに わがころもでに あきかぜの ふきかへらへば たちてゐて たどきをしらに むらきもの こころいさよひ とききぬの おもひみだれて いつしかと わがまつこよひ このかはの ながれのながく ありこせぬかも

[注解]

弖→定 [元][類][紀] / 坐→座 [元][類][紀] / 欲 [万葉集古義](塙)(楓) 知欲比

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2093

[題詞]

(七夕)反歌

[原文]

妹尓相 時片待跡 久方乃 天之漢原尓 月叙經来

[訓読]

妹に逢ふ時片待つとひさかたの天の川原に月ぞ経にける

[仮名]

いもにあふ ときかたまつと ひさかたの あまのかはらに つきぞへにける

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

秋雑歌 七夕

2094

[題詞]

詠花

[原文]

竿志鹿之 心相念 秋芽子之 <鍾>礼零丹 落僧惜毛

[訓読]

さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも

[仮名]

さをしかの こころあひおもふ あきはぎの しぐれのふるに ちらくしをしも

[注解]

鐘→鍾 [紀]

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 動物 植物 季節

2095

[題詞]

詠花

[原文]

夕去 野邊秋芽子 末若 露枯 金待難

[訓読]

夕されば野辺の秋萩うら若み露にぞ枯るる秋待ちかてに

[仮名]

ゆふされば のへのあきはぎ うらわかみ つゆにぞかるる あきまちかてに

[注解]

歌 [西] 謌

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秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 季節

2096

[題詞]

詠花

[原文]

真葛原 名引秋風 <毎吹> 阿太乃大野之 芽子花散

[訓読]

真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る

[仮名]

まくずはら なびくあきかぜ ふくごとに あだのおほのの はぎのはなちる

[注解]

吹毎→毎吹 [元][類]

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秋雑歌 奈良県 五条市 地名 植物 季節

2097

[題詞]

詠花

[原文]

鴈鳴之 来喧牟日及 見乍将有 此芽子原尓 雨勿零根

[訓読]

雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの萩原に雨な降りそね

[仮名]

かりがねの きなかむひまで みつつあらむ このはぎはらに あめなふりそね

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 植物

2098

[題詞]

詠花

[原文]

奥山尓 住云男鹿之 初夜不去 妻問芽子乃 散久惜裳

[訓読]

奥山に棲むといふ鹿の夕さらず妻どふ萩の散らまく惜しも

[仮名]

おくやまに すむといふしかの よひさらず つまどふはぎの ちらまくをしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 植物

2099

[題詞]

詠花

[原文]

白露乃 置巻惜 秋芽子乎 折耳折而 置哉枯

[訓読]

白露の置かまく惜しみ秋萩を折りのみ折りて置きや枯らさむ

[仮名]

しらつゆの おかまくをしみ あきはぎを をりのみをりて おきやからさむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2100

[題詞]

詠花

[原文]

秋田苅 借廬之宿 <丹>穂經及 咲有秋芽子 雖見不飽香聞

[訓読]

秋田刈る刈廬の宿りにほふまで咲ける秋萩見れど飽かぬかも

[仮名]

あきたかる かりいほのやどり にほふまで さけるあきはぎ みれどあかぬかも

[注解]

尓→丹 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 叙景

2101

[題詞]

詠花

[原文]

吾衣 <揩>有者不在 高松之 野邊行之者 芽子之<揩>類曽

[訓読]

我が衣摺れるにはあらず高松の野辺行きしかば萩の摺れるぞ

[仮名]

あがころも すれるにはあらず たかまつの のへゆきしかば はぎのすれるぞ

[注解]

摺→揩 [元] / 摺→揩 [元]

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秋雑歌 奈良 高円 地名 植物

2102

[題詞]

詠花

[原文]

此暮 秋風吹奴 白露尓 荒争芽子之 明日将咲見

[訓読]

この夕秋風吹きぬ白露に争ふ萩の明日咲かむ見む

[仮名]

このゆふへ あきかぜふきぬ しらつゆに あらそふはぎの あすさかむみむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2103

[題詞]

詠花

[原文]

秋風 冷成<奴 馬>並而 去来於野行奈 芽子花見尓

[訓読]

秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に

[仮名]

あきかぜは すずしくなりぬ うまなめて いざのにゆかな はぎのはなみに

[注解]

駑→奴馬 [元][類][紀]

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秋雑歌 植物

2104

[題詞]

詠花

[原文]

朝<杲> 朝露負 咲雖云 暮陰社 咲益家礼

[訓読]

朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけり

[仮名]

あさがほは あさつゆおひて さくといへど ゆふかげにこそ さきまさりけり

[注解]

果→杲 [元][紀]

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秋雑歌 植物 叙景

2105

[題詞]

詠花

[原文]

春去者 霞隠 不所見有師 秋芽子咲 折而将挿頭

[訓読]

春されば霞隠りて見えずありし秋萩咲きぬ折りてかざさむ

[仮名]

はるされば かすみがくりて みえずありし あきはぎさきぬ をりてかざさむ

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秋雑歌 植物

2106

[題詞]

詠花

[原文]

沙額田乃 野邊乃秋芽子 時有者 今盛有 折而将挿頭

[訓読]

沙額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折りてかざさむ

[仮名]

さぬかたの のへのあきはぎ ときなれば いまさかりなり をりてかざさむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 地名 植物

2107

[題詞]

詠花

[原文]

事更尓 衣者不<揩> 佳人部為 咲野之芽子尓 丹穂日而将居

[訓読]

ことさらに衣は摺らじをみなへし佐紀野の萩ににほひて居らむ

[仮名]

ことさらに ころもはすらじ をみなへし さきののはぎに にほひてをらむ

[注解]

摺→揩 [元][類]

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秋雑歌 奈良 地名 植物

2108

[題詞]

詠花

[原文]

秋風者 急<々>吹来 芽子花 落巻惜三 競<立見>

[訓読]

秋風は疾く疾く吹き来萩の花散らまく惜しみ競ひ立たむ見む

[仮名]

あきかぜは とくとくふきこ はぎのはな ちらまくをしみ きほひたたむみむ

[注解]

之→々 [元][紀][温][矢] / 竟→立見 [万葉考]

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秋雑歌 植物

2109

[題詞]

詠花

[原文]

我屋前之 芽子之若末長 秋風之 吹南時尓 将開跡思<手>

[訓読]

我が宿の萩の末長し秋風の吹きなむ時に咲かむと思ひて

[仮名]

わがやどの はぎのうれながし あきかぜの ふきなむときに さかむとおもひて

[注解]

乎→手 [類]

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秋雑歌 植物

2110

[題詞]

詠花

[原文]

人皆者 芽子乎秋云 縦吾等者 乎花之末乎 秋跡者将言

[訓読]

人皆は萩を秋と言ふよし我れは尾花が末を秋とは言はむ

[仮名]

ひとみなは はぎをあきといふ よしわれは をばながうれを あきとはいはむ

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秋雑歌 植物

2111

[題詞]

詠花

[原文]

玉梓 公之使乃 手折来有 此秋芽子者 雖見不飽鹿裳

[訓読]

玉梓の君が使の手折り来るこの秋萩は見れど飽かぬかも

[仮名]

たまづさの きみがつかひの たをりける このあきはぎは みれどあかぬかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2112

[題詞]

詠花

[原文]

吾屋前尓 開有秋芽子 常有者 我待人尓 令見猿物乎

[訓読]

我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に見せましものを

[仮名]

わがやどに さけるあきはぎ つねならば わがまつひとに みせましものを

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秋雑歌 植物

2113

[題詞]

詠花

[原文]

手寸<十>名相 殖之名知久 出見者 屋前之早芽子 咲尓家類香聞

[訓読]

手寸十名相植ゑしなしるく出で見れば宿の初萩咲きにけるかも

[仮名]

***** うゑしなしるく いでみれば やどのはつはぎ さきにけるかも

[注解]

<>→十 [西(右書)][元][類][紀

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秋雑歌 植物 難訓

2114

[題詞]

詠花

[原文]

吾屋外尓 殖生有 秋芽子乎 誰標刺 吾尓不所知

[訓読]

我が宿に植ゑ生ほしたる秋萩を誰れか標刺す我れに知らえず

[仮名]

わがやどに うゑおほしたる あきはぎを たれかしめさす われにしらえず

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2115

[題詞]

詠花

[原文]

手取者 袖并丹覆 美人部師 此白露尓 散巻惜

[訓読]

手に取れば袖さへにほふをみなへしこの白露に散らまく惜しも

[仮名]

てにとれば そでさへにほふ をみなへし このしらつゆに ちらまくをしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2116

[題詞]

詠花

[原文]

白露尓 荒争金手 咲芽子 散惜兼 雨莫零根

[訓読]

白露に争ひかねて咲ける萩散らば惜しけむ雨な降りそね

[仮名]

しらつゆに あらそひかねて さけるはぎ ちらばをしけむ あめなふりそね

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2117

[題詞]

詠花

[原文]

D嬬等<尓> 行相乃速稲乎 苅時 成来下 芽子花咲

[訓読]

娘女らに行相の早稲を刈る時になりにけらしも萩の花咲く

[仮名]

をとめらに ゆきあひのわせを かるときに なりにけらしも はぎのはなさく

[注解]

<>→尓 [類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2118

[題詞]

詠花

[原文]

朝霧之 棚引小野之 芽子花 今哉散濫 未Q尓

[訓読]

朝霧のたなびく小野の萩の花今か散るらむいまだ飽かなくに

[仮名]

あさぎりの たなびくをのの はぎのはな いまかちるらむ いまだあかなくに

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2119

[題詞]

詠花

[原文]

戀之久者 形見尓為与登 吾背子我 殖之秋芽子 花咲尓家里

[訓読]

恋しくは形見にせよと我が背子が植ゑし秋萩花咲きにけり

[仮名]

こひしくは かたみにせよと わがせこが うゑしあきはぎ はなさきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2120

[題詞]

詠花

[原文]

秋芽子 戀不盡跡 雖念 思恵也安多良思 又将相八方

[訓読]

秋萩に恋尽さじと思へどもしゑやあたらしまたも逢はめやも

[仮名]

あきはぎに こひつくさじと おもへども しゑやあたらし またもあはめやも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 恋情

2121

[題詞]

詠花

[原文]

秋風者 日異吹奴 高圓之 野邊之秋芽子 散巻惜裳

[訓読]

秋風は日に異に吹きぬ高円の野辺の秋萩散らまく惜しも

[仮名]

あきかぜは ひにけにふきぬ たかまとの のへのあきはぎ ちらまくをしも

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秋雑歌 奈良 地名 植物

2122

[題詞]

詠花

[原文]

大夫之 心者無而 秋芽子之 戀耳八方 奈積而有南

[訓読]

大夫の心はなしに秋萩の恋のみにやもなづみてありなむ

[仮名]

ますらをの こころはなしに あきはぎの こひのみにやも なづみてありなむ

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秋雑歌 植物

2123

[題詞]

詠花

[原文]

吾待之 秋者来奴 雖然 芽子之花曽毛 未開家類

[訓読]

我が待ちし秋は来たりぬしかれども萩の花ぞもいまだ咲かずける

[仮名]

わがまちし あきはきたりぬ しかれども はぎのはなぞも いまださかずける

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秋雑歌 植物

2124

[題詞]

詠花

[原文]

欲見 吾待戀之 秋芽子者 枝毛思美三荷 花開二家里

[訓読]

見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり

[仮名]

みまくほり あがまちこひし あきはぎは えだもしみみに はなさきにけり

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秋雑歌 植物 属目

2125

[題詞]

詠花

[原文]

春日野之 芽子落者 朝東 風尓副而 此間尓落来根

[訓読]

春日野の萩し散りなば朝東風の風にたぐひてここに散り来ね

[仮名]

かすがのの はぎしちりなば あさごちの かぜにたぐひて ここにちりこね

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秋雑歌 奈良 地名 植物

2126

[題詞]

詠花

[原文]

秋芽子者 於鴈不相常 言有者香 [一云 言有可聞] 音乎聞而者 花尓散去流

[訓読]

秋萩は雁に逢はじと言へればか [一云 言へれかも] 声を聞きては花に散りぬる

[仮名]

あきはぎは かりにあはじと いへればか [いへれかも] こゑをききては はなにちりぬる

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秋雑歌 動物 植物 異伝

2127

[題詞]

詠花

[原文]

秋去者 妹令視跡 殖之芽子 露霜負而 散来毳

[訓読]

秋さらば妹に見せむと植ゑし萩露霜負ひて散りにけるかも

[仮名]

あきさらば いもにみせむと うゑしはぎ つゆしもおひて ちりにけるかも

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秋雑歌 植物

2128

[題詞]

詠鴈

[原文]

秋風尓 山跡部越 鴈鳴者 射矢遠放 雲隠筒

[訓読]

秋風に大和へ越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ

[仮名]

あきかぜに やまとへこゆる かりがねは いやとほざかる くもがくりつつ

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秋雑歌 奈良 地名 動物

2129

[題詞]

詠鴈

[原文]

明闇之 朝霧隠 鳴而去 鴈者言戀 於妹告社

[訓読]

明け暮れの朝霧隠り鳴きて行く雁は我が恋妹に告げこそ

[仮名]

あけぐれの あさぎりごもり なきてゆく かりはあがこひ いもにつげこそ

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秋雑歌 動物

2130

[題詞]

詠鴈

[原文]

吾屋戸尓 鳴之鴈哭 雲上尓 今夜喧成 國方可聞遊群

[訓読]

我が宿に鳴きし雁がね雲の上に今夜鳴くなり国へかも行く

[仮名]

わがやどに なきしかりがね くものうへに こよひなくなり くにへかもゆく

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秋雑歌 動物

2131

[題詞]

詠鴈

[原文]

左小<壮>鹿之 妻問時尓 月乎吉三 切木四之泣所聞 今時来等霜

[訓読]

さを鹿の妻どふ時に月をよみ雁が音聞こゆ今し来らしも

[仮名]

さをしかの つまどふときに つきをよみ かりがねきこゆ いましくらしも

[注解]

牡→壮 [定本万葉集]

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秋雑歌 動物

2132

[題詞]

詠鴈

[原文]

天雲之 外鴈鳴 従聞之 薄垂霜零 寒此夜者 [一云 弥益々尓 戀許曽増焉]

[訓読]

天雲の外に雁が音聞きしよりはだれ霜降り寒しこの夜は [一云 いやますますに恋こそまされ]

[仮名]

あまくもの よそにかりがね ききしより はだれしもふり さむしこのよは [いやますますに こひこそまされ]

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秋雑歌 動物 恋情

2133

[題詞]

詠鴈

[原文]

秋田 吾苅婆可能 過去者 鴈之喧所聞 冬方設而

[訓読]

秋の田の我が刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞こゆ冬かたまけて

[仮名]

あきのたの わがかりばかの すぎぬれば かりがねきこゆ ふゆかたまけて

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秋雑歌 動物 季節

2134

[題詞]

詠鴈

[原文]

葦邊在 荻之葉左夜藝 秋風之 吹来苗丹 鴈鳴渡 [一云 秋風尓 鴈音所聞 今四来霜]

[訓読]

葦辺なる荻の葉さやぎ秋風の吹き来るなへに雁鳴き渡る [一云 秋風に雁が音聞こゆ今し来らしも]

[仮名]

あしへなる をぎのはさやぎ あきかぜの ふきくるなへに かりなきわたる [あきかぜに かりがねきこゆ いましくらしも]

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秋雑歌 植物 動物 異伝

2135

[題詞]

詠鴈

[原文]

押照 難波穿江之 葦邊者 鴈宿有疑 霜乃零尓

[訓読]

おしてる難波堀江の葦辺には雁寝たるかも霜の降らくに

[仮名]

おしてる なにはほりえの あしへには かりねたるかも しものふらくに

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秋雑歌 大阪 地名 動物 植物

2136

[題詞]

詠鴈

[原文]

秋風尓 山飛越 鴈鳴之 聲遠離 雲隠良思

[訓読]

秋風に山飛び越ゆる雁がねの声遠ざかる雲隠るらし

[仮名]

あきかぜに やまとびこゆる かりがねの こゑとほざかる くもがくるらし

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秋雑歌 動物 属目

2137

[題詞]

詠鴈

[原文]

朝尓徃 鴈之鳴音者 如吾 物<念>可毛 聲之悲

[訓読]

朝に行く雁の鳴く音は我がごとく物思へれかも声の悲しき

[仮名]

あさにゆく かりのなくねは あがごとく ものもへれかも こゑのかなしき

[注解]

尓→念 [元][類][紀]

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秋雑歌 動物

2138

[題詞]

詠鴈

[原文]

多頭我鳴乃 今朝鳴奈倍尓 鴈鳴者 何處指香 雲隠良<武>

[訓読]

鶴がねの今朝鳴くなへに雁がねはいづくさしてか雲隠るらむ

[仮名]

たづがねの けさなくなへに かりがねは いづくさしてか くもがくるらむ

[注解]

哉→武 [元][類][紀]

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秋雑歌 動物

2139

[題詞]

詠鴈

[原文]

野干玉之 夜<渡>鴈者 欝 幾夜乎歴而鹿 己名乎告

[訓読]

ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜を経てかおのが名を告る

[仮名]

ぬばたまの よわたるかりは おほほしく いくよをへてか おのがなをのる

[注解]

度→渡 [元][類]

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秋雑歌 枕詞 動物

2140

[題詞]

詠鴈

[原文]

璞 年之經徃者 阿跡念登 夜渡吾乎 問人哉誰

[訓読]

あらたまの年の経ゆけばあどもふと夜渡る我れを問ふ人や誰れ

[仮名]

あらたまの としのへゆけば あどもふと よわたるわれを とふひとやたれ

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秋雑歌 枕詞

2141

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

比日之 秋朝開尓 霧隠 妻呼雄鹿之 音之亮左

[訓読]

このころの秋の朝明に霧隠り妻呼ぶ鹿の声のさやけさ

[仮名]

このころの あきのあさけに きりごもり つまよぶしかの こゑのさやけさ

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秋雑歌 動物 叙景

2142

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

左男<壮>鹿之 妻整登 鳴音之 将至極 靡芽子原

[訓読]

さを鹿の妻ととのふと鳴く声の至らむ極み靡け萩原

[仮名]

さをしかの つまととのふと なくこゑの いたらむきはみ なびけはぎはら

[注解]

牡→壮 [元]

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秋雑歌 動物 植物

2143

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

於君戀 裏觸居者 敷野之 秋芽子凌 左<小壮>鹿鳴裳

[訓読]

君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の秋萩しのぎさを鹿鳴くも

[仮名]

きみにこひ うらぶれをれば しきののの あきはぎしのぎ さをしかなくも

[注解]

牡 →小壮 [元]

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秋雑歌 動物 植物 恋情 地名

2144

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

鴈来 芽子者散跡 左小<壮>鹿之 鳴成音毛 裏觸丹来

[訓読]

雁は来ぬ萩は散りぬとさを鹿の鳴くなる声もうらぶれにけり

[仮名]

かりはきぬ はぎはちりぬと さをしかの なくなるこゑも うらぶれにけり

[注解]

牡→壮 [元]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 植物 季節

2145

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

秋芽子之 戀裳不盡者 左<壮>鹿之 聲伊續伊継 戀許増益焉

[訓読]

秋萩の恋も尽きねばさを鹿の声い継ぎい継ぎ恋こそまされ

[仮名]

あきはぎの こひもつきねば さをしかの こゑいつぎいつぎ こひこそまされ

[注解]

牡→壮 [元]

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秋雑歌 植物 動物 恋情

2146

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

山近 家哉可居 左小<壮>鹿乃 音乎聞乍 宿不勝鴨

[訓読]

山近く家や居るべきさを鹿の声を聞きつつ寐ねかてぬかも

[仮名]

やまちかく いへやをるべき さをしかの こゑをききつつ いねかてぬかも

[注解]

牡→壮 [類]

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秋雑歌 動物 恋情

2147

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

山邊尓 射去薩雄者 雖大有 山尓文野尓文 沙小<壮>鹿鳴母

[訓読]

山の辺にい行くさつ男は多かれど山にも野にもさを鹿鳴くも

[仮名]

やまのへに いゆくさつをは さはにあれど やまにものにも さをしかなくも

[注解]

牡→壮 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 叙景

2148

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

足日木<笶> 山従来世波 左小<壮>鹿之 妻呼音 聞益物乎

[訓読]

あしひきの山より来せばさを鹿の妻呼ぶ声を聞かましものを

[仮名]

あしひきの やまよりきせば さをしかの つまよぶこゑを きかましものを

[注解]

笑→笶 [西(訂正)][元] / 牡→壮 [元][類]

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秋雑歌 枕詞 動物

2149

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

山邊庭 薩雄乃<祢>良比 恐跡 小<壮>鹿鳴成 妻之眼乎欲焉

[訓読]

山辺にはさつ男のねらひ畏けどを鹿鳴くなり妻が目を欲り

[仮名]

やまへには さつをのねらひ かしこけど をしかなくなり つまがめをほり

[注解]

尓 →祢 [元][矢][京] / 牡→壮 [元][類]

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秋雑歌 動物

2150

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

秋芽子之 散去見 欝三 妻戀為良思 棹<壮>鹿鳴母

[訓読]

秋萩の散りゆく見ればおほほしみ妻恋すらしさを鹿鳴くも

[仮名]

あきはぎの ちりゆくみれば おほほしみ つまごひすらし さをしかなくも

[注解]

牡→壮 [元][類]

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秋雑歌 植物 動物

2151

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

山遠 京尓之有者 狭小<壮>鹿之 妻呼音者 乏毛有香

[訓読]

山遠き都にしあればさを鹿の妻呼ぶ声は乏しくもあるか

[仮名]

やまとほき みやこにしあれば さをしかの つまよぶこゑは ともしくもあるか

[注解]

牡→壮 [元][類]

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秋雑歌 植物 動物

2152

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

秋芽子之 散過去者 左<小壮>鹿者 和備鳴将為名 不見者乏焉

[訓読]

秋萩の散り過ぎゆかばさを鹿はわび鳴きせむな見ずはともしみ

[仮名]

あきはぎの ちりすぎゆかば さをしかは わびなきせむな みずはともしみ

[注解]

牡→小壮 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 動物

2153

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

秋芽子之 咲有野邊者 左小<壮>鹿曽 露乎別乍 嬬問四家類

[訓読]

秋萩の咲きたる野辺はさを鹿ぞ露を別けつつ妻どひしける

[仮名]

あきはぎの さきたるのへは さをしかぞ つゆをわけつつ つまどひしける

[注解]

牡→壮 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 動物

2154

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

奈何<壮>鹿之 和備鳴為成 蓋毛 秋野之芽子也 繁将落

[訓読]

なぞ鹿のわび鳴きすなるけだしくも秋野の萩や繁く散るらむ

[仮名]

なぞしかの わびなきすなる けだしくも あきののはぎや しげくちるらむ

[注解]

牡→壮 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 植物

2155

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

秋芽子之 開有野邊 左<壮>鹿者 落巻惜見 鳴去物乎

[訓読]

秋萩の咲たる野辺にさを鹿は散らまく惜しみ鳴き行くものを

[仮名]

あきはぎの さきたるのへに さをしかは ちらまくをしみ なきゆくものを

[注解]

牡→壮 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 動物

2156

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

足日木乃 山之跡陰尓 鳴鹿之 聲聞為八方 山田守酢兒

[訓読]

あしひきの山の常蔭に鳴く鹿の声聞かすやも山田守らす子

[仮名]

あしひきの やまのとかげに なくしかの こゑきかすやも やまたもらすこ

[検索用キーワード]

秋雑歌 枕詞 動物

2157

[題詞]

詠鹿鳴

[原文]

暮影 来鳴日晩之 幾許 毎日聞跡 不足音可聞

[訓読]

夕影に来鳴くひぐらしここだくも日ごとに聞けど飽かぬ声かも

[仮名]

ゆふかげに きなくひぐらし ここだくも ひごとにきけど あかぬこゑかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 季節

2158

[題詞]

詠<蟋>

[原文]

秋風之 寒吹奈倍 吾屋前之 淺茅之本尓 蟋蟀鳴毛

[訓読]

秋風の寒く吹くなへ我が宿の浅茅が本にこほろぎ鳴くも

[仮名]

あきかぜの さむくふくなへ わがやどの あさぢがもとに こほろぎなくも

[注解]

蟋蟀→蟋 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 季節

2159

[題詞]

詠<蟋>

[原文]

影草乃 生有屋外之 暮陰尓 鳴蟋蟀者 雖聞不足可聞

[訓読]

蔭草の生ひたる宿の夕影に鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも

[仮名]

かげくさの おひたるやどの ゆふかげに なくこほろぎは きけどあかぬかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物

2160

[題詞]

詠<蟋>

[原文]

庭草尓 村雨落而 蟋蟀之 鳴音聞者 秋付尓家里

[訓読]

庭草に村雨降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり

[仮名]

にはくさに むらさめふりて こほろぎの なくこゑきけば あきづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 季節

2161

[題詞]

詠蝦

[原文]

三吉野乃 石本不避 鳴川津 諾文鳴来 河乎浄

[訓読]

み吉野の岩もとさらず鳴くかはづうべも鳴きけり川をさやけみ

[仮名]

みよしのの いはもとさらず なくかはづ うべもなきけり かはをさやけみ

[検索用キーワード]

秋雑歌 吉野 地名 動物 叙景

2162

[題詞]

詠蝦

[原文]

神名火之 山下動 去水丹 川津鳴成 秋登将云鳥屋

[訓読]

神なびの山下響み行く水にかはづ鳴くなり秋と言はむとや

[仮名]

かむなびの やましたとよみ ゆくみづに かはづなくなり あきといはむとや

[検索用キーワード]

秋雑歌 飛鳥 地名 動物 季節

2163

[題詞]

詠蝦

[原文]

草枕 客尓物念 吾聞者 夕片設而 鳴川津可聞

[訓読]

草枕旅に物思ひ我が聞けば夕かたまけて鳴くかはづかも

[仮名]

くさまくら たびにものもひ わがきけば ゆふかたまけて なくかはづかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 枕詞 動物 叙景

2164

[題詞]

詠蝦

[原文]

瀬呼速見 落當知足 白浪尓 <河>津鳴奈里 朝夕毎

[訓読]

背を早み落ちたぎちたる白波にかはづ鳴くなり朝夕ごとに

[仮名]

せをはやみ おちたぎちたる しらなみに かはづなくなり あさよひごとに

[注解]

川→河 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物

2165

[題詞]

詠蝦

[原文]

上瀬尓 河津妻呼 暮去者 衣手寒三 妻将枕跡香

[訓読]

上つ瀬にかはづ妻呼ぶ夕されば衣手寒み妻まかむとか

[仮名]

かみつせに かはづつまよぶ ゆふされば ころもでさむみ つままかむとか

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物

2166

[題詞]

詠鳥

[原文]

妹手<呼> 取石池之 浪間従 鳥音異鳴 秋過良之

[訓読]

妹が手を取石の池の波の間ゆ鳥が音異に鳴く秋過ぎぬらし

[仮名]

いもがてを とろしのいけの なみのまゆ とりがねけになく あきすぎぬらし

[注解]

乎→呼 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 大阪府 高石市 地名 枕詞 動物 季節

2167

[題詞]

詠鳥

[原文]

秋野之 草花我末 鳴<百舌>鳥 音聞濫香 片聞吾妹

[訓読]

秋の野の尾花が末に鳴くもずの声聞きけむか片聞け我妹

[仮名]

あきののの をばながうれに なくもずの こゑききけむか かたきけわぎも

[注解]

舌百→ 百舌 [類] / 濫 [元][類][紀](塙) 監

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 動物

2168

[題詞]

詠露

[原文]

冷芽子丹 置白霧 朝々 珠<年>曽見流 置白霧

[訓読]

秋萩に置ける白露朝な朝な玉としぞ見る置ける白露

[仮名]

あきはぎに おけるしらつゆ あさなさな たまとしぞみる おけるしらつゆ

[注解]

斗→年 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 属目

2169

[題詞]

詠露

[原文]

暮立之 雨落毎 [一云 打零者] 春日野之 尾花之上乃 白霧所念

[訓読]

夕立ちの雨降るごとに [一云 うち降れば] 春日野の尾花が上の白露思ほゆ

[仮名]

ゆふだちの あめふるごとに[うちふれば] かすがのの をばながうへの しらつゆおもほゆ

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 地名 植物

2170

[題詞]

詠露

[原文]

秋芽子之 枝毛十尾丹 露霜置 寒毛時者 成尓家類可聞

[訓読]

秋萩の枝もとををに露霜置き寒くも時はなりにけるかも

[仮名]

あきはぎの えだもとををに つゆしもおき さむくもときは なりにけるかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2171

[題詞]

詠露

[原文]

白露 与秋芽子者 戀乱 別事難 吾情可聞

[訓読]

白露と秋萩とには恋ひ乱れ別くことかたき我が心かも

[仮名]

しらつゆと あきはぎとには こひみだれ わくことかたき あがこころかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2172

[題詞]

詠露

[原文]

吾屋戸之 麻花押靡 置露尓 手觸吾妹兒 落巻毛将見

[訓読]

我が宿の尾花押しなべ置く露に手触れ我妹子散らまくも見む

[仮名]

わがやどの をばなおしなべ おくつゆに てふれわぎもこ ちらまくもみむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2173

[題詞]

詠露

[原文]

白露乎 取者可消 去来子等 露尓争而 芽子之遊将為

[訓読]

白露を取らば消ぬべしいざ子ども露に競ひて萩の遊びせむ

[仮名]

しらつゆを とらばけぬべし いざこども つゆにきほひて はぎのあそびせむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2174

[題詞]

詠露

[原文]

秋田苅 借廬乎作 吾居者 衣手寒 露置尓家留

[訓読]

秋田刈る刈廬を作り我が居れば衣手寒く露ぞ置きにける

[仮名]

あきたかる かりいほをつくり わがをれば ころもでさむく つゆぞおきにける

[検索用キーワード]

秋雑歌 季節

2175

[題詞]

詠露

[原文]

日来之 秋風寒 芽子之花 令散白露 置尓来下

[訓読]

このころの秋風寒し萩の花散らす白露置きにけらしも

[仮名]

このころの あきかぜさむし はぎのはな ちらすしらつゆ おきにけらしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2176

[題詞]

詠露

[原文]

秋田苅 苫手揺奈利 白露<志> 置穂田無跡 告尓来良思 [一云 告尓来良思母]

[訓読]

秋田刈る苫手動くなり白露し置く穂田なしと告げに来ぬらし [一云 告げに来らしも]

[仮名]

あきたかる とまでうごくなり しらつゆし おくほだなしと つげにきぬらし [つげにくらしも]

[注解]

者→志 [元][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 異伝

2177

[題詞]

詠山

[原文]

春者毛要 夏者緑丹 紅之 綵色尓所見 秋山可聞

[訓読]

春は萌え夏は緑に紅のまだらに見ゆる秋の山かも

[仮名]

はるはもえ なつはみどりに くれなゐの まだらにみゆる あきのやまかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 属目 季節

2178

[題詞]

詠黄葉

[原文]

妻隠 矢野神山 露霜尓 々寶比始 散巻惜

[訓読]

妻ごもる矢野の神山露霜ににほひそめたり散らまく惜しも

[仮名]

つまごもる やののかむやま つゆしもに にほひそめたり ちらまくをしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 地名 季節

2179

[題詞]

詠黄葉

[原文]

朝露尓 染始 秋山尓 <鍾>礼莫零 在渡金

[訓読]

朝露ににほひそめたる秋山にしぐれな降りそありわたるがね

[仮名]

あさつゆに にほひそめたる あきやまに しぐれなふりそ ありわたるがね

[注解]

鐘→鍾 [元][紀] / 歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 季節

2180

[題詞]

詠黄葉

[原文]

九月乃 <鍾>礼乃雨丹 沾通 春日之山者 色付丹来

[訓読]

九月のしぐれの雨に濡れ通り春日の山は色づきにけり

[仮名]

ながつきの しぐれのあめに ぬれとほり かすがのやまは いろづきにけり

[注解]

鐘→鍾 [元][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 地名 季節 属目

2181

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈鳴之 寒朝開之 露有之 春日山乎 令黄物者

[訓読]

雁が音の寒き朝明の露ならし春日の山をもみたすものは

[仮名]

かりがねの さむきあさけの つゆならし かすがのやまを もみたすものは

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 地名 動物

2182

[題詞]

詠黄葉

[原文]

比日之 暁露丹 吾屋前之 芽子乃下葉者 色付尓家里

[訓読]

このころの暁露に我がやどの萩の下葉は色づきにけり

[仮名]

このころの あかときつゆに わがやどの はぎのしたばは いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2183

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈<音>者 今者来鳴沼 吾待之 黄葉早継 待者辛苦母

[訓読]

雁がねは今は来鳴きぬ我が待ちし黄葉早継げ待たば苦しも

[仮名]

かりがねは いまはきなきぬ わがまちし もみちはやつげ またばくるしも

[注解]

鳴→音 [元][類][温][京]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 植物

2184

[題詞]

詠黄葉

[原文]

秋山乎 謹人懸勿 忘西 其黄葉乃 所思君

[訓読]

秋山をゆめ人懸くな忘れにしその黄葉の思ほゆらくに

[仮名]

あきやまを ゆめひとかくな わすれにし そのもみちばの おもほゆらくに

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2185

[題詞]

詠黄葉

[原文]

大坂乎 吾越来者 二上尓 黄葉流 志具礼零乍

[訓読]

大坂を我が越え来れば二上に黄葉流るしぐれ降りつつ

[仮名]

おほさかを わがこえくれば ふたかみに もみちばながる しぐれふりつつ

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 地名 植物 季節

2186

[題詞]

詠黄葉

[原文]

秋去者 置白露尓 吾門乃 淺茅何浦葉 色付尓家里

[訓読]

秋されば置く白露に我が門の浅茅が末葉色づきにけり

[仮名]

あきされば おくしらつゆに わがかどの あさぢがうらば いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2187

[題詞]

詠黄葉

[原文]

妹之袖 巻来乃山之 朝露尓 仁寶布黄葉之 散巻惜裳

[訓読]

妹が袖巻来の山の朝露ににほふ黄葉の散らまく惜しも

[仮名]

いもがそで まききのやまの あさつゆに にほふもみちの ちらまくをしも

[注解]

巻 [元][類](塙) 莫

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秋雑歌 地名 枕詞 植物 季節

2188

[題詞]

詠黄葉

[原文]

黄葉之 丹穂日者繁 然鞆 妻梨木乎 手折可佐寒

[訓読]

黄葉のにほひは繁ししかれども妻梨の木を手折りかざさむ

[仮名]

もみちばの にほひはしげし しかれども つまなしのきを たをりかざさむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2189

[題詞]

詠黄葉

[原文]

露霜乃 寒夕之 秋風丹 黄葉尓来毛 妻梨之木者

[訓読]

露霜の寒き夕の秋風にもみちにけらし妻梨の木は

[仮名]

つゆしもの さむきゆふへの あきかぜに もみちにけらし つまなしのきは

[注解]

毛 (塙)(楓) 之

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 属目 季節

2190

[題詞]

詠黄葉

[原文]

吾門之 淺茅色就 吉魚張能 浪柴乃野之 黄葉散良新

[訓読]

我が門の浅茅色づく吉隠の浪柴の野の黄葉散るらし

[仮名]

わがかどの あさぢいろづく よなばりの なみしばののの もみちちるらし

[検索用キーワード]

秋雑歌 桜井市 地名 植物 季節

2191

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈之鳴乎 聞鶴奈倍尓 高松之 野上<乃>草曽 色付尓家留

[訓読]

雁が音を聞きつるなへに高松の野の上の草ぞ色づきにける

[仮名]

かりがねを ききつるなへに たかまつの ののうへのくさぞ いろづきにける

[注解]

之→乃 [元][類][紀][温]

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 高円 地名 動物 植物 季節 属目

2192

[題詞]

詠黄葉

[原文]

吾背兒我 白細衣 徃觸者 應染毛 黄變山可聞

[訓読]

我が背子が白栲衣行き触ればにほひぬべくももみつ山かも

[仮名]

わがせこが しろたへころも ゆきふれば にほひぬべくも もみつやまかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 季節 属目

2193

[題詞]

詠黄葉

[原文]

秋風之 日異吹者 水莫能 岡之木葉毛 色付尓家里

[訓読]

秋風の日に異に吹けば水茎の岡の木の葉も色づきにけり

[仮名]

あきかぜの ひにけにふけば みづくきの をかのこのはも いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節 属目秋雑歌 植物 季節 属目

2194

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈鳴乃 来鳴之共 韓衣 裁田之山者 黄始南

[訓読]

雁がねの来鳴きしなへに韓衣龍田の山はもみちそめたり

[仮名]

かりがねの きなきしなへに からころも たつたのやまは もみちそめたり

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 生駒郡 地名 動物 植物 枕詞 季節

2195

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈之鳴 聲聞苗荷 明日従者 借香能山者 黄始南

[訓読]

雁がねの声聞くなへに明日よりは春日の山はもみちそめなむ

[仮名]

かりがねの こゑきくなへに あすよりは かすがのやまは もみちそめなむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 地名 動物 季節

2196

[題詞]

詠黄葉

[原文]

四具礼能雨 無間之零者 真木葉毛 争不勝而 色付尓家里

[訓読]

しぐれの雨間なくし降れば真木の葉も争ひかねて色づきにけり

[仮名]

しぐれのあめ まなくしふれば まきのはも あらそひかねて いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2197

[題詞]

詠黄葉

[原文]

灼然 四具礼乃雨者 零勿國 大城山者 色付尓家里 [謂大城山者 在筑前<國>御笠郡之大野山頂 号曰大城者也]

[訓読]

いちしろくしぐれの雨は降らなくに大城の山は色づきにけり [謂大城山者 在筑前<國>御笠郡之大野山頂 号曰大城者也]

[仮名]

いちしろく しぐれのあめは ふらなくに おほきのやまは いろづきにけり

[注解]

<>→國 [元][類][紀

[検索用キーワード]

秋雑歌 福岡県 太宰府 地名 季節 属目

2198

[題詞]

詠黄葉

[原文]

風吹者 黄葉散乍 小雲 吾松原 清在莫國

[訓読]

風吹けば黄葉散りつつすくなくも吾の松原清くあらなくに

[仮名]

かぜふけば もみちちりつつ すくなくも あがのまつばら きよくあらなくに

[検索用キーワード]

秋雑歌 三重県 地名 植物

2199

[題詞]

詠黄葉

[原文]

物念 隠座而 今日見者 春日山者 色就尓家里

[訓読]

物思ふと隠らひ居りて今日見れば春日の山は色づきにけり

[仮名]

ものもふと こもらひをりて けふみれば かすがのやまは いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 地名 季節 属目

2200

[題詞]

詠黄葉

[原文]

九月 白露負而 足日木乃 山之将黄變 見幕下吉

[訓読]

九月の白露負ひてあしひきの山のもみたむ見まくしもよし

[仮名]

ながつきの しらつゆおひて あしひきの やまのもみたむ みまくしもよし

[検索用キーワード]

秋雑歌 枕詞 季節 植物

2201

[題詞]

詠黄葉

[原文]

妹許跡 馬鞍置而 射駒山 撃越来者 紅葉散筒

[訓読]

妹がりと馬に鞍置きて生駒山うち越え来れば黄葉散りつつ

[仮名]

いもがりと うまにくらおきて いこまやま うちこえくれば もみちちりつつ

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 地名 植物 季節 属目

2202

[題詞]

詠黄葉

[原文]

黄葉為 時尓成良之 月人 楓枝乃 色付見者

[訓読]

黄葉する時になるらし月人の桂の枝の色づく見れば

[仮名]

もみちする ときになるらし つきひとの かつらのえだの いろづくみれば

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節 属目

2203

[題詞]

詠黄葉

[原文]

里異 霜者置良之 高松 野山司之 色付見者

[訓読]

里ゆ異に霜は置くらし高松の野山づかさの色づく見れば

[仮名]

さとゆけに しもはおくらし たかまつの のやまづかさの いろづくみれば

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 高円 地名 季節 属目

2204

[題詞]

詠黄葉

[原文]

秋風之 日異吹者 露重 芽子之下葉者 色付来

[訓読]

秋風の日に異に吹けば露を重み萩の下葉は色づきにけり

[仮名]

あきかぜの ひにけにふけば つゆをおもみ はぎのしたばは いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節 属目

2205

[題詞]

詠黄葉

[原文]

秋芽子乃 下葉赤 荒玉乃 月之歴去者 風疾鴨

[訓読]

秋萩の下葉もみちぬあらたまの月の経ぬれば風をいたみかも

[仮名]

あきはぎの したばもみちぬ あらたまの つきのへぬれば かぜをいたみかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2206

[題詞]

詠黄葉

[原文]

真十鏡 見名淵山者 今日鴨 白露置而 黄葉将散

[訓読]

まそ鏡南淵山は今日もかも白露置きて黄葉散るらむ

[仮名]

まそかがみ みなぶちやまは けふもかも しらつゆおきて もみちちるらむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 飛鳥 地名 季節 枕詞

2207

[題詞]

詠黄葉

[原文]

吾屋戸之 淺茅色付 吉魚張之 夏身之上尓 四具礼零疑

[訓読]

我がやどの浅茅色づく吉隠の夏身の上にしぐれ降るらし

[仮名]

わがやどの あさぢいろづく よなばりの なつみのうへに しぐれふるらし

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 桜井市 地名 植物 季節

2208

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈鳴之 寒鳴従 水茎之 岡乃葛葉者 色付尓来

[訓読]

雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の岡の葛葉は色づきにけり

[仮名]

かりがねの さむくなきしゆ みづくきの をかのくずはは いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 枕詞 動物 植物 季節

2209

[題詞]

詠黄葉

[原文]

秋芽子之 下葉乃黄葉 於花継 時過去者 後将戀鴨

[訓読]

秋萩の下葉の黄葉花に継ぎ時過ぎゆかば後恋ひむかも

[仮名]

あきはぎの したばのもみち はなにつぎ ときすぎゆかば のちこひむかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2210

[題詞]

詠黄葉

[原文]

明日香河 黄葉流 葛木 山之木葉者 今之<落>疑

[訓読]

明日香川黄葉流る葛城の山の木の葉は今し散るらし

[仮名]

あすかがは もみちばながる かづらきの やまのこのはは いましちるらし

[注解]

散→落 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 飛鳥 地名 植物 季節

2211

[題詞]

詠黄葉

[原文]

妹之紐 解登結而 立田山 今許曽黄葉 始而有家礼

[訓読]

妹が紐解くと結びて龍田山今こそもみちそめてありけれ

[仮名]

いもがひも とくとむすびて たつたやま いまこそもみち そめてありけれ

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 生駒郡 地名 植物 季節

2212

[題詞]

詠黄葉

[原文]

鴈鳴之 <寒>喧之従 春日有 三笠山者 色付丹家里

[訓読]

雁がねの寒く鳴きしゆ春日なる御笠の山は色づきにけり

[仮名]

かりがねの さむくなきしゆ かすがなる みかさのやまは いろづきにけり

[注解]

<>→寒 [新校]

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 地名 動物 季節 属目

2213

[題詞]

詠黄葉

[原文]

比者之 五更露尓 吾屋戸乃 秋之芽子原 色付尓家里

[訓読]

このころの暁露に我が宿の秋の萩原色づきにけり

[仮名]

このころの あかときつゆに わがやどの あきのはぎはら いろづきにけり

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節 属目

2214

[題詞]

詠黄葉

[原文]

夕去者 鴈之越徃 龍田山 四具礼尓競 色付尓家里

[訓読]

夕されば雁の越え行く龍田山しぐれに競ひ色づきにけり

[仮名]

ゆふされば かりのこえゆく たつたやま しぐれにきほひ いろづきにけり

[注解]

尓 [元][類](塙) 丹

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 生駒郡 地名 動物 季節 属目

2215

[題詞]

詠黄葉

[原文]

左夜深而 四具礼勿零 秋芽子之 本葉之黄葉 落巻惜裳

[訓読]

さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも

[仮名]

さよふけて しぐれなふりそ あきはぎの もとはのもみち ちらまくをしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 哀惜 季節

2216

[題詞]

詠黄葉

[原文]

古郷之 始黄葉乎 手折<以> 今日曽吾来 不見人之為

[訓読]

故郷の初黄葉を手折り持ち今日ぞ我が来し見ぬ人のため

[仮名]

ふるさとの はつもみちばを たをりもち けふぞわがこし みぬひとのため

[注解]

以而→以 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2217

[題詞]

詠黄葉

[原文]

君之家<乃> 黄葉早者 落 四具礼乃雨尓 所沾良之母

[訓読]

君が家の黄葉は早く散りにけりしぐれの雨に濡れにけらしも

[仮名]

きみがいへの もみちばははやく ちりにけり しぐれのあめに ぬれにけらしも

[注解]

乃之→乃 [紀] / 早者 (塙) 者早

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2218

[題詞]

詠黄葉

[原文]

一年 二遍不行 秋山乎 情尓不飽 過之鶴鴨

[訓読]

一年にふたたび行かぬ秋山を心に飽かず過ぐしつるかも

[仮名]

ひととせに ふたたびゆかぬ あきやまを こころにあかず すぐしつるかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 季節

2219

[題詞]

詠水田

[原文]

足曳之 山田佃子 不秀友 縄谷延与 守登知金

[訓読]

あしひきの山田作る子秀でずとも縄だに延へよ守ると知るがね

[仮名]

あしひきの やまたつくるこ ひでずとも なはだにはへよ もるとしるがね

[検索用キーワード]

秋雑歌 比喩

2220

[題詞]

詠水田

[原文]

左小<壮>鹿之 妻喚山之 岳邊在 早田者不苅 霜者雖零

[訓読]

さを鹿の妻呼ぶ山の岡辺なる早稲田は刈らじ霜は降るとも

[仮名]

さをしかの つまよぶやまの をかへなる わさだはからじ しもはふるとも

[注解]

牡→壮 [元][類]

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 比喩

2221

[題詞]

詠水田

[原文]

<我>門尓 禁田乎見者 沙穂内之 秋芽子為酢寸 所念鴨

[訓読]

我が門に守る田を見れば佐保の内の秋萩すすき思ほゆるかも

[仮名]

わがかどに もるたをみれば さほのうちの あきはぎすすき おもほゆるかも

[注解]

祇→我 [西(右書)][元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節

2222

[題詞]

詠河

[原文]

暮不去 河蝦鳴成 三和河之 清瀬音乎 聞師吉毛

[訓読]

夕さらずかはづ鳴くなる三輪川の清き瀬の音を聞かくしよしも

[仮名]

ゆふさらず かはづなくなる みわがはの きよきせのおとを きかくしよしも

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良県 桜井市 地名 動物 土地讃美

2223

[題詞]

詠月

[原文]

天海 月船浮 桂梶 懸而滂所見 月人<壮>子

[訓読]

天の海に月の舟浮け桂楫懸けて漕ぐ見ゆ月人壮士

[仮名]

あめのうみに つきのふねうけ かつらかぢ かけてこぐみゆ つきひとをとこ

[注解]

牡→壮 [類][紀][温]

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2224

[題詞]

詠月

[原文]

此夜等者 沙夜深去良之 鴈鳴乃 所聞空従 月立度

[訓読]

この夜らはさ夜更けぬらし雁が音の聞こゆる空ゆ月立ち渡る

[仮名]

このよらは さよふけぬらし かりがねの きこゆるそらゆ つきたちわたる

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 属目

2225

[題詞]

詠月

[原文]

吾背子之 挿頭之芽子尓 置露乎 清見世跡 月者照良思

[訓読]

我が背子がかざしの萩に置く露をさやかに見よと月は照るらし

[仮名]

わがせこが かざしのはぎに おくつゆを さやかにみよと つきはてるらし

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 属目

2226

[題詞]

詠月

[原文]

無心 秋月夜之 物念跡 寐不所宿 照乍本名

[訓読]

心なき秋の月夜の物思ふと寐の寝らえぬに照りつつもとな

[仮名]

こころなき あきのつくよの ものもふと いのねらえぬに てりつつもとな

[検索用キーワード]

秋雑歌 季節 風景讃美

2227

[題詞]

詠月

[原文]

不念尓 四具礼乃雨者 零有跡 天雲霽而 月夜清焉

[訓読]

思はぬにしぐれの雨は降りたれど天雲晴れて月夜さやけし

[仮名]

おもはぬに しぐれのあめは ふりたれど あまくもはれて つくよさやけし

[検索用キーワード]

秋雑歌 讃美

2228

[題詞]

詠月

[原文]

芽子之花 開乃乎再入緒 見代跡可聞 月夜之清 戀益良國

[訓読]

萩の花咲きのををりを見よとかも月夜の清き恋まさらくに

[仮名]

はぎのはな さきのををりを みよとかも つくよのきよき こひまさらくに

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物

2229

[題詞]

詠月

[原文]

白露乎 玉作有 九月 在明之月夜 雖見不飽可聞

[訓読]

白露を玉になしたる九月の有明の月夜見れど飽かぬかも

[仮名]

しらつゆを たまになしたる ながつきの ありあけのつくよ みれどあかぬかも

[検索用キーワード]

秋雑歌 讃美

2230

[題詞]

詠風

[原文]

戀乍裳 稲葉掻別 家居者 乏不有 秋之暮風

[訓読]

恋ひつつも稲葉かき別け家居れば乏しくもあらず秋の夕風

[仮名]

こひつつも いなばかきわけ いへをれば ともしくもあらず あきのゆふかぜ

[検索用キーワード]

秋雑歌 季節

2231

[題詞]

詠風

[原文]

芽子花 咲有野邊 日晩之乃 鳴奈流共 秋風吹

[訓読]

萩の花咲きたる野辺にひぐらしの鳴くなるなへに秋の風吹く

[仮名]

はぎのはな さきたるのへに ひぐらしの なくなるなへに あきのかぜふく

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 動物 季節

2232

[題詞]

詠風

[原文]

秋山之 木葉文未赤者 今旦吹風者 霜毛置應久

[訓読]

秋山の木の葉もいまだもみたねば今朝吹く風は霜も置きぬべく

[仮名]

あきやまの このはもいまだ もみたねば けさふくかぜは しももおきぬべく

[検索用キーワード]

秋雑歌 季節

2233

[題詞]

詠芳

[原文]

高松之 此峯迫尓 笠立而 盈盛有 秋香乃吉者

[訓読]

高松のこの峰も狭に笠立てて満ち盛りたる秋の香のよさ

[仮名]

たかまつの このみねもせに かさたてて みちさかりたる あきのかのよさ

[検索用キーワード]

秋雑歌 奈良 高円 地名 讃美 季節

2234

[題詞]

詠雨

[原文]

一日 千重敷布 我戀 妹當 為暮零礼見

[訓読]

一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があたりにしぐれ降れ見む

[仮名]

ひとひには ちへしくしくに あがこふる いもがあたりに しぐれふれみむ

[注解]

麿→麻呂 [元][紀][温] / 歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

秋雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 恋情 季節

2235

[題詞]

詠雨

[原文]

秋田苅 客乃廬入尓 四具礼零 我袖沾 干人無二

[訓読]

秋田刈る旅の廬りにしぐれ降り我が袖濡れぬ干す人なしに

[仮名]

あきたかる たびのいほりに しぐれふり わがそでぬれぬ ほすひとなしに

[検索用キーワード]

秋雑歌 羈旅

2236

[題詞]

詠雨

[原文]

玉手次 不懸時無 吾戀 此具礼志零者 沾乍毛将行

[訓読]

玉たすき懸けぬ時なし我が恋はしぐれし降らば濡れつつも行かむ

[仮名]

たまたすき かけぬときなし あがこひは しぐれしふらば ぬれつつもゆかむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 枕詞 恋情

2237

[題詞]

詠雨

[原文]

黄葉乎 令落四具礼能 零苗尓 夜副衣寒 一之宿者

[訓読]

黄葉を散らすしぐれの降るなへに夜さへぞ寒きひとりし寝れば

[仮名]

もみちばを ちらすしぐれの ふるなへに よさへぞさむき ひとりしぬれば

[検索用キーワード]

秋雑歌 植物 季節 恋情

2238

[題詞]

詠霜

[原文]

天飛也 鴈之翅乃 覆羽之 何處漏香 霜之零異牟

[訓読]

天飛ぶや雁の翼の覆ひ羽のいづく漏りてか霜の降りけむ

[仮名]

あまとぶや かりのつばさの おほひばの いづくもりてか しものふりけむ

[検索用キーワード]

秋雑歌 動物 季節

~ 秋相聞 ~

2239

[題詞]

[原文]

金山 舌日下 鳴鳥 音<谷>聞 何嘆

[訓読]

秋山のしたひが下に鳴く鳥の声だに聞かば何か嘆かむ

[仮名]

あきやまの したひがしたに なくとりの こゑだにきかば なにかなげかむ

[注解]

<> →谷 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 動物 恋情

2240

[題詞]

[原文]

誰彼 我莫問 九月 露沾乍 君待吾

[訓読]

誰ぞかれと我れをな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つ我れを

[仮名]

たぞかれと われをなとひそ ながつきの つゆにぬれつつ きみまつわれを

[検索用キーワード]

秋相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情

2241

[題詞]

[原文]

秋夜 霧發渡 <凡>々 夢見 妹形矣

[訓読]

秋の夜の霧立ちわたりおほほしく夢にぞ見つる妹が姿を

[仮名]

あきのよの きりたちわたり おほほしく いめにぞみつる いもがすがたを

[注解]

夙→凡 [万葉考]

[検索用キーワード]

秋相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情

2242

[題詞]

[原文]

秋野 尾花末 生靡 心妹 依鴨

[訓読]

秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも

[仮名]

あきののの をばながうれの おひなびき こころはいもに よりにけるかも

[検索用キーワード]

秋相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 恋情

2243

[題詞]

[原文]

秋山 霜零覆 木葉落 歳雖行 我忘八

[訓読]

秋山に霜降り覆ひ木の葉散り年は行くとも我れ忘れめや

[仮名]

あきやまに しもふりおほひ このはちり としはゆくとも われわすれめや

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

秋相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情

2244

[題詞]

寄水田

[原文]

住吉之 岸乎田尓墾 蒔稲 乃而及苅 不相公鴨

[訓読]

住吉の岸を田に墾り蒔きし稲かくて刈るまで逢はぬ君かも

[仮名]

すみのえの きしをたにはり まきしいね かくてかるまで あはぬきみかも

[検索用キーワード]

秋相聞 大阪 地名 恋情

2245

[題詞]

寄水田

[原文]

剱後 玉纒田井尓 及何時可 妹乎不相見 家戀将居

[訓読]

太刀の後玉纒田居にいつまでか妹を相見ず家恋ひ居らむ

[仮名]

たちのしり たままきたゐに いつまでか いもをあひみず いへこひをらむ

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秋相聞 地名 恋情

2246

[題詞]

寄水田

[原文]

秋田之 穂<上>置 白露之 可消吾者 所念鴨

[訓読]

秋の田の穂の上に置ける白露の消ぬべくも我は思ほゆるかも

[仮名]

あきのたの ほのうへにおける しらつゆの けぬべくもわは おもほゆるかも

[注解]

上尓→上 [類][紀][温]

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秋相聞 植物

2247

[題詞]

寄水田

[原文]

秋田之 穂向之所依 片縁 吾者物念 都礼無物乎

[訓読]

秋の田の穂向きの寄れる片寄りに我れは物思ふつれなきものを

[仮名]

あきのたの ほむきのよれる かたよりに われはものもふ つれなきものを

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秋相聞 植物 恋情

2248

[題詞]

寄水田

[原文]

秋田<苅> 借廬作 五目入為而 有藍君S 将見依毛欲<得>

[訓読]

秋田刈る刈廬を作り廬りしてあるらむ君を見むよしもがも

[仮名]

あきたかる かりいほをつくり いほりして あるらむきみを みむよしもがも

[注解]

田 [元][類][紀] 山 / S→苅 [万葉考] / 将→得 [元][類][紀][温]

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秋相聞 恋情

2249

[題詞]

寄水田

[原文]

鶴鳴之 所聞田井尓 五百入為而 吾客有跡 於妹告社

[訓読]

鶴が音の聞こゆる田居に廬りして我れ旅なりと妹に告げこそ

[仮名]

たづがねの きこゆるたゐに いほりして われたびなりと いもにつげこそ

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秋相聞 動物 羈旅

2250

[題詞]

寄水田

[原文]

春霞 多奈引田居尓 廬付而 秋田苅左右 令思良久

[訓読]

春霞たなびく田居に廬つきて秋田刈るまで思はしむらく

[仮名]

はるかすみ たなびくたゐに いほつきて あきたかるまで おもはしむらく

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秋相聞 恋情

2251

[題詞]

寄水田

[原文]

橘乎 守部乃五十戸之 門田年稲 苅時過去 不来跡為等霜

[訓読]

橘を守部の里の門田早稲刈る時過ぎぬ来じとすらしも

[仮名]

たちばなを もりべのさとの かどたわせ かるときすぎぬ こじとすらしも

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秋相聞 地名 植物 枕詞 恋情

2252

[題詞]

寄露

[原文]

秋芽子之 開散野邊之 暮露尓 沾乍来益 夜者深去鞆

[訓読]

秋萩の咲き散る野辺の夕露に濡れつつ来ませ夜は更けぬとも

[仮名]

あきはぎの さきちるのへの ゆふつゆに ぬれつつきませ よはふけぬとも

[注解]

鞆 [元][類][紀] 韓

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秋相聞 植物 勧誘

2253

[題詞]

寄露

[原文]

色付相 秋之露霜 莫零<根> 妹之手本乎 不纒今夜者

[訓読]

色づかふ秋の露霜な降りそね妹が手本をまかぬ今夜は

[仮名]

いろづかふ あきのつゆしも なふりそね いもがたもとを まかぬこよひは

[注解]

<>→ 根 [元][類]

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2254

[題詞]

寄露

[原文]

秋芽子之 上尓置有 白露之 消鴨死猿 戀<乍>不有者

[訓読]

秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは

[仮名]

あきはぎの うへにおきたる しらつゆの けかもしなまし こひつつあらずは

[注解]

尓→乍 [万葉考] / 猿 [元][類](塙) ミ

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2255

[題詞]

寄露

[原文]

吾屋前 秋芽子上 置露 市白霜 吾戀目八面

[訓読]

我が宿の秋萩の上に置く露のいちしろくしも我れ恋ひめやも

[仮名]

わがやどの あきはぎのうへに おくつゆの いちしろくしも あれこひめやも

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秋相聞 植物 恋情

2256

[題詞]

寄露

[原文]

秋穂乎 之努尓<押>靡 置露 消鴨死益 戀乍不有者

[訓読]

秋の穂をしのに押しなべ置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは

[仮名]

あきのほを しのにおしなべ おくつゆの けかもしなまし こひつつあらずは

[注解]

狎 →押 [元][類][紀]

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秋相聞 恋情

2257

[題詞]

寄露

[原文]

露霜尓 衣袖所沾而 今谷毛 妹許行名 夜者雖深

[訓読]

露霜に衣手濡れて今だにも妹がり行かな夜は更けぬとも

[仮名]

つゆしもに ころもでぬれて いまだにも いもがりゆかな よはふけぬとも

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2258

[題詞]

寄露

[原文]

秋芽子之 枝毛十尾尓 置霧之 消毳死猿 戀乍不有者

[訓読]

秋萩の枝もとををに置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは

[仮名]

あきはぎの えだもとををに おくつゆの けかもしなまし こひつつあらずは

[注解]

猿 [元][類](塙) ヱ

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2259

[題詞]

寄露

[原文]

秋芽子之 上尓白霧 毎置 見管曽思<怒>布 君之光儀<呼>

[訓読]

秋萩の上に白露置くごとに見つつぞ偲ふ君が姿を

[仮名]

あきはぎの うへにしらつゆ おくごとに みつつぞしのふ きみがすがたを

[注解]

努→怒 [元][類][紀] / 乎→呼 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2260

[題詞]

寄風

[原文]

吾妹子者 衣丹有南 秋風之 寒比来 下著益乎

[訓読]

我妹子は衣にあらなむ秋風の寒きこのころ下に着ましを

[仮名]

わぎもこは ころもにあらなむ あきかぜの さむきこのころ したにきましを

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2261

[題詞]

寄風

[原文]

泊瀬風 如是吹三更者 及何時 衣片敷 吾一将宿

[訓読]

泊瀬風かく吹く宵はいつまでか衣片敷き我がひとり寝む

[仮名]

はつせかぜ かくふくよひは いつまでか ころもかたしき わがひとりねむ

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秋相聞 初瀬 地名 恋情

2262

[題詞]

寄雨

[原文]

秋芽子乎 令落長雨之 零比者 一起居而 戀夜曽大寸

[訓読]

秋萩を散らす長雨の降るころはひとり起き居て恋ふる夜ぞ多き

[仮名]

あきはぎを ちらすながめの ふるころは ひとりおきゐて こふるよぞおほき

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2263

[題詞]

寄雨

[原文]

九月 四具礼乃雨之 山霧 烟寸<吾>胸 誰乎見者将息 [一云 十月 四具礼乃雨降]

[訓読]

九月のしぐれの雨の山霧のいぶせき我が胸誰を見ばやまむ [一云 十月しぐれの雨降り]

[仮名]

ながつきの しぐれのあめの やまぎりの いぶせきあがむね たをみばやまむ [かむなづき しぐれのあめふり]

[注解]

吾告 →吾 [万葉集略解]

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秋相聞 恋情 鬱屈 異伝

2264

[題詞]

寄蟋

[原文]

蟋蟀之 待歡 秋夜乎 寐驗無 枕与吾者

[訓読]

こほろぎの待ち喜ぶる秋の夜を寝る験なし枕と我れは

[仮名]

こほろぎの まちよろこぶる あきのよを ぬるしるしなし まくらとわれは

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秋相聞 動物 恋情

2265

[題詞]

寄蝦

[原文]

朝霞 鹿火屋之下尓 鳴蝦 聲谷聞者 吾将戀八方

[訓読]

朝霞鹿火屋が下に鳴くかはづ声だに聞かば我れ恋ひめやも

[仮名]

あさかすみ かひやがしたに なくかはづ こゑだにきかば あれこひめやも

[検索用キーワード]

秋相聞 動物 恋情

2266

[題詞]

寄鴈

[原文]

出去者 天飛鴈之 可泣美 且今<日>々々々云二 年曽經去家類

[訓読]

出でて去なば天飛ぶ雁の泣きぬべみ今日今日と言ふに年ぞ経にける

[仮名]

いでていなば あまとぶかりの なきぬべみ けふけふといふに としぞへにける

[注解]

且→日 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 動物 恋情

2267

[題詞]

寄鹿

[原文]

左小<壮>鹿之 朝伏小野之 草若美 隠不得而 於人所知名

[訓読]

さを鹿の朝伏す小野の草若み隠らひかねて人に知らゆな

[仮名]

さをしかの あさふすをのの くさわかみ かくらひかねて ひとにしらゆな

[注解]

牡→壮 [類]

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秋相聞 動物 秘密

2268

[題詞]

寄鹿

[原文]

左小<壮>鹿之 小野<之>草伏 灼然 吾不問尓 人乃知良久

[訓読]

さを鹿の小野の草伏いちしろく我がとはなくに人の知れらく

[仮名]

さをしかの をののくさぶし いちしろく わがとはなくに ひとのしれらく

[注解]

牡 →壮 [定本] / <>→ 之 [類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 動物 秘密

2269

[題詞]

寄鶴

[原文]

今夜乃 暁降 鳴鶴之 念不過 戀許増益也

[訓読]

今夜の暁ぐたち鳴く鶴の思ひは過ぎず恋こそまされ

[仮名]

こよひの あかときぐたち なくたづの おもひはすぎず こひこそまされ

[検索用キーワード]

秋相聞 動物 恋情

2270

[題詞]

寄草

[原文]

道邊之 乎花我下之 思草 今更尓 何物可将念

[訓読]

道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ

[仮名]

みちのへの をばながしたの おもひぐさ いまさらさらに なにをかおもはむ

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2271

[題詞]

寄花

[原文]

草深三 蟋多 鳴屋前 芽子見公者 何時来益牟

[訓読]

草深みこほろぎさはに鳴くやどの萩見に君はいつか来まさむ

[仮名]

くさぶかみ こほろぎさはに なくやどの はぎみにきみは いつかきまさむ

[検索用キーワード]

秋相聞 動物 恋情

2272

[題詞]

寄花

[原文]

秋就者 水草花乃 阿要奴蟹 思跡不知 直尓不相在者

[訓読]

秋づけば水草の花のあえぬがに思へど知らじ直に逢はざれば

[仮名]

あきづけば みくさのはなの あえぬがに おもへどしらじ ただにあはざれば

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2273

[題詞]

寄花

[原文]

何為等加 君乎将Q 秋芽子乃 其始花之 歡寸物乎

[訓読]

何すとか君をいとはむ秋萩のその初花の嬉しきものを

[仮名]

なにすとか きみをいとはむ あきはぎの そのはつはなの うれしきものを

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 問答

2274

[題詞]

寄花

[原文]

展轉 戀者死友 灼然 色庭不出 朝容皃之花

[訓読]

臥いまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝顔の花

[仮名]

こいまろび こひはしぬとも いちしろく いろにはいでじ あさがほのはな

[注解]

轉 [元][類] 傳

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2275

[題詞]

寄花

[原文]

言出而 云<者>忌染 朝皃乃 穂庭開不出 戀為鴨

[訓読]

言に出でて云はばゆゆしみ朝顔の穂には咲き出ぬ恋もするかも

[仮名]

ことにいでて いはばゆゆしみ あさがほの ほにはさきでぬ こひもするかも

[注解]

<>→者 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情 秘密

2276

[題詞]

寄花

[原文]

鴈鳴之 始音聞而 開出有 屋前之秋芽子 見来吾世古

[訓読]

雁がねの初声聞きて咲き出たる宿の秋萩見に来我が背子

[仮名]

かりがねの はつこゑききて さきでたる やどのあきはぎ みにこわがせこ

[検索用キーワード]

秋相聞 動物 植物 勧誘

2277

[題詞]

寄花

[原文]

左小<壮>鹿之 入野乃為酢寸 初尾花 何時<加> 妹之<手将>枕

[訓読]

さを鹿の入野のすすき初尾花いづれの時か妹が手まかむ

[仮名]

さをしかの いりののすすき はつをばな いづれのときか いもがてまかむ

[注解]

牡→壮 [類] / 如→加 [元][紀][温] / 将手→手将 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 地名 動物 植物

2278

[題詞]

寄花

[原文]

戀日之 氣長有者 三苑圃能 辛藍花之 色出尓来

[訓読]

恋ふる日の日長くしあれば我が園の韓藍の花の色に出でにけり

[仮名]

こふるひの けながくしあれば わがそのの からあゐのはなの いろにいでにけり

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情 露見

2279

[題詞]

寄花

[原文]

吾郷尓 今咲花乃 娘部<四> 不堪情 尚戀二家里

[訓読]

我が里に今咲く花のをみなへし堪へぬ心になほ恋ひにけり

[仮名]

わがさとに いまさくはなの をみなへし あへぬこころに なほこひにけり

[注解]

四敝之→四 [定本]

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2280

[題詞]

寄花

[原文]

芽子花 咲有乎見者 君不相 真毛久二 成来鴨

[訓読]

萩の花咲けるを見れば君に逢はずまことも久になりにけるかも

[仮名]

はぎのはな さけるをみれば きみにあはず まこともひさに なりにけるかも

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2281

[題詞]

寄花

[原文]

朝露尓 咲酢左乾垂 鴨頭草之 日斜共 可消所念

[訓読]

朝露に咲きすさびたる月草の日くたつなへに消ぬべく思ほゆ

[仮名]

あさつゆに さきすさびたる つきくさの ひくたつなへに けぬべくおもほゆ

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2282

[題詞]

寄花

[原文]

長夜乎 於君戀乍 不生者 開而落西 花有益乎

[訓読]

長き夜を君に恋ひつつ生けらずは咲きて散りにし花ならましを

[仮名]

ながきよを きみにこひつつ いけらずは さきてちりにし はなならましを

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2283

[題詞]

寄花

[原文]

吾妹兒尓 相坂山之 皮為酢寸 穂庭開不出 戀<度>鴨

[訓読]

我妹子に逢坂山のはだすすき穂には咲き出ず恋ひわたるかも

[仮名]

わぎもこに あふさかやまの はだすすき ほにはさきでず こひわたるかも

[注解]

渡→度 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 京都 地名 植物 恋情

2284

[題詞]

寄花

[原文]

率尓 今毛欲見 秋芽子之 四搓二将有 妹之光儀乎

[訓読]

いささめに今も見が欲し秋萩のしなひにあるらむ妹が姿を

[仮名]

いささめに いまもみがほし あきはぎの しなひにあるらむ いもがすがたを

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2285

[題詞]

寄花

[原文]

秋芽子之 花野乃為酢寸 穂庭不出 吾戀度 隠嬬波母

[訓読]

秋萩の花野のすすき穂には出でず我が恋ひわたる隠り妻はも

[仮名]

あきはぎの はなののすすき ほにはいでず あがこひわたる こもりづまはも

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情 秘密

2286

[題詞]

寄花

[原文]

吾屋戸尓 開秋芽子 散過而 實成及丹 於君不相鴨

[訓読]

我が宿に咲きし秋萩散り過ぎて実になるまでに君に逢はぬかも

[仮名]

わがやどに さきしあきはぎ ちりすぎて みになるまでに きみにあはぬかも

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2287

[題詞]

寄花

[原文]

吾屋前之 芽子開二家里 不落間尓 早来可見 平城里人

[訓読]

我が宿の萩咲きにけり散らぬ間に早来て見べし奈良の里人

[仮名]

わがやどの はぎさきにけり ちらぬまに はやきてみべし ならのさとびと

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 勧誘

2288

[題詞]

寄花

[原文]

石走 間々生有 皃花乃 花西有来 在筒見者

[訓読]

石橋の間々に生ひたるかほ花の花にしありけりありつつ見れば

[仮名]

いしはしの ままにおひたる かほばなの はなにしありけり ありつつみれば

[検索用キーワード]

秋相聞 植物

2289

[題詞]

寄花

[原文]

藤原 古郷之 秋芽子者 開而落去寸 君待不得而

[訓読]

藤原の古りにし里の秋萩は咲きて散りにき君待ちかねて

[仮名]

ふぢはらの ふりにしさとの あきはぎは さきてちりにき きみまちかねて

[検索用キーワード]

秋相聞 奈良 地名 植物 恋情

2290

[題詞]

寄花

[原文]

秋芽子乎 落過沼蛇 手折持 雖見不怜 君西不有者

[訓読]

秋萩を散り過ぎぬべみ手折り持ち見れども寂し君にしあらねば

[仮名]

あきはぎを ちりすぎぬべみ たをりもち みれどもさぶし きみにしあらねば

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2291

[題詞]

寄花

[原文]

朝開 夕者消流 鴨頭草<乃> 可消戀毛 吾者為鴨

[訓読]

朝咲き夕は消ぬる月草の消ぬべき恋も我れはするかも

[仮名]

あしたさき ゆふへはけぬる つきくさの けぬべきこひも あれはするかも

[注解]

<>→乃 [元][古][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2292

[題詞]

寄花

[原文]

蜒野之 尾花苅副 秋芽子之 花乎葺核 君之借廬

[訓読]

秋津野の尾花刈り添へ秋萩の花を葺かさね君が仮廬に

[仮名]

あきづのの をばなかりそへ あきはぎの はなをふかさね きみがかりほに

[検索用キーワード]

秋相聞 吉野 地名 植物

2293

[題詞]

寄花

[原文]

咲友 不知師有者 黙然将有 此秋芽子乎 令視管本名

[訓読]

咲けりとも知らずしあらば黙もあらむこの秋萩を見せつつもとな

[仮名]

さけりとも しらずしあらば もだもあらむ このあきはぎを みせつつもとな

[検索用キーワード]

秋相聞 植物

2294

[題詞]

寄山

[原文]

秋去者 鴈飛越 龍田山 立而毛居而毛 君乎思曽念

[訓読]

秋されば雁飛び越ゆる龍田山立ちても居ても君をしぞ思ふ

[仮名]

あきされば かりとびこゆる たつたやま たちてもゐても きみをしぞおもふ

[検索用キーワード]

秋相聞 奈良 地名 動物 恋情

2295

[題詞]

寄黄葉

[原文]

我屋戸之 田葛葉日殊 色付奴 不<来>座君者 何情曽毛

[訓読]

我が宿の葛葉日に異に色づきぬ来まさぬ君は何心ぞも

[仮名]

わがやどの くずはひにけに いろづきぬ きまさぬきみは なにごころぞも

[注解]

<>→来 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

秋相聞 植物

2296

[題詞]

寄黄葉

[原文]

足引乃 山佐奈葛 黄變及 妹尓不相哉 吾戀将居

[訓読]

あしひきの山さな葛もみつまで妹に逢はずや我が恋ひ居らむ

[仮名]

あしひきの やまさなかづら もみつまで いもにあはずや あがこひをらむ

[検索用キーワード]

秋相聞 植物 恋情

2297

[題詞]

寄黄葉

[原文]

黄葉之 過不勝兒乎 人妻跡 見乍哉将有 戀敷物乎

[訓読]

黄葉の過ぎかてぬ子を人妻と見つつやあらむ恋しきものを

[仮名]

もみちばの すぎかてぬこを ひとづまと みつつやあらむ こほしきものを

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情 植物 恋情

2298

[題詞]

寄月

[原文]

於君戀 之奈要浦觸 吾居者 秋風吹而 月斜焉

[訓読]

君に恋ひ萎えうらぶれ我が居れば秋風吹きて月かたぶきぬ

[仮名]

きみにこひ しなえうらぶれ わがをれば あきかぜふきて つきかたぶきぬ

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情 恋情

2299

[題詞]

寄月

[原文]

秋夜之 月疑意君者 雲隠 須臾不見者 幾許戀敷

[訓読]

秋の夜の月かも君は雲隠りしましく見ねばここだ恋しき

[仮名]

あきのよの つきかもきみは くもがくり しましくみねば ここだこほしき

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2300

[題詞]

寄月

[原文]

九月之 在明能月夜 有乍毛 君之来座者 吾将戀八方

[訓読]

九月の有明の月夜ありつつも君が来まさば我れ恋ひめやも

[仮名]

ながつきの ありあけのつくよ ありつつも きみがきまさば あれこひめやも

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2301

[題詞]

寄夜

[原文]

忍咲八師 不戀登為跡 金風之 寒吹夜者 君乎之曽念

[訓読]

よしゑやし恋ひじとすれど秋風の寒く吹く夜は君をしぞ思ふ

[仮名]

よしゑやし こひじとすれど あきかぜの さむくふくよは きみをしぞおもふ

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情

2302

[題詞]

寄夜

[原文]

<或>者之 痛情無跡 将念 秋之長夜乎 <寤><臥>耳

[訓読]

ある人のあな心なと思ふらむ秋の長夜を寝覚め臥すのみ

[仮名]

あるひとの あなこころなと おもふらむ あきのながよを ねざめふすのみ

[注解]

惑→或 [元][紀] / 寐→寤 [元] / 師→臥 [元][類]

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情 孤独

2303

[題詞]

寄夜

[原文]

秋夜乎 長跡雖言 積西 戀盡者 短有家里

[訓読]

秋の夜を長しと言へど積もりにし恋を尽せば短くありけり

[仮名]

あきのよを ながしといへど つもりにし こひをつくせば みじかくありけり

[検索用キーワード]

秋相聞 恋愛

2304

[題詞]

寄衣

[原文]

秋都葉尓 々寶敝流衣 吾者不服 於君奉者 夜毛著金

[訓読]

秋つ葉ににほへる衣我れは着じ君に奉らば夜も着るがね

[仮名]

あきつはに にほへるころも あれはきじ きみにまつらば よるもきるがね

[検索用キーワード]

秋相聞 恋愛

2305

[題詞]

問答

[原文]

旅尚 襟解物乎 事繁三 丸宿吾為 長此夜

[訓読]

旅にすら紐解くものを言繁みまろ寝ぞ我がする長きこの夜を

[仮名]

たびにすら ひもとくものを ことしげみ まろねぞわがする ながきこのよを

[検索用キーワード]

秋相聞 うわさ 問答

2306

[題詞]

問答

[原文]

四具礼零 暁月夜 紐不解 戀君跡 居益物

[訓読]

しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君と居らましものを

[仮名]

しぐれふる あかときづくよ ひもとかず こふらむきみと をらましものを

[検索用キーワード]

秋相聞 恋情 恋情 問答

2307

[題詞]

問答

[原文]

於黄葉 置白露之 色葉二毛 不出跡念者 事之繁家口

[訓読]

黄葉に置く白露の色端にも出でじと思へば言の繁けく

[仮名]

もみちばに おくしらつゆの いろはにも いでじとおもへば ことのしげけく

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秋相聞 問答 うわさ

2308

[題詞]

問答

[原文]

雨零者 瀧都山川 於石觸 君之摧 情者不持

[訓読]

雨降ればたぎつ山川岩に触れ君が砕かむ心は持たじ

[仮名]

あめふれば たぎつやまがは いはにふれ きみがくだかむ こころはもたじ

[注解]

歌 [西] 謌

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秋相聞 問答

2309

[題詞]

譬喩歌

[原文]

祝部等之 齊經社之 黄葉毛 標縄越而 落云物乎

[訓読]

祝らが斎ふ社の黄葉も標縄越えて散るといふものを

[仮名]

はふりらが いはふやしろの もみちばも しめなはこえて ちるといふものを

[注解]

歌 [西] 謌

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秋相聞 植物 比喩

2310

[題詞]

旋頭歌

[原文]

蟋蟀之 吾床隔尓 鳴乍本名 起居管 君尓戀尓 宿不勝尓

[訓読]

こほろぎの我が床の辺に鳴きつつもとな置き居つつ君に恋ふるに寐ねかてなくに

[仮名]

こほろぎの あがとこのへに なきつつもとな おきゐつつ きみにこふるに いねかてなくに

[注解]

歌 [西] 謌

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秋相聞 動物 旋頭歌 恋情

2311

[題詞]

旋頭歌

[原文]

皮為酢寸 穂庭開不出 戀乎吾為 玉蜻 直一目耳 視之人故尓

[訓読]

はだすすき穂には咲き出ぬ恋をぞ我がする玉かぎるただ一目のみ見し人ゆゑに

[仮名]

はだすすき ほにはさきでぬ こひをぞあがする たまかぎる ただひとめのみ みしひとゆゑに

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秋相聞 植物 旋頭歌 恋情

~ 冬雜歌 ~

2312

[題詞]

[原文]

我袖尓 雹手走 巻隠 不消有 妹為見

[訓読]

我が袖に霰た走る巻き隠し消たずてあらむ妹が見むため

[仮名]

わがそでに あられたばしる まきかくし けたずてあらむ いもがみむため

[注解]

歌 [西] 謌

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冬雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 恋愛

2313

[題詞]

[原文]

足曳之 山鴨高 巻向之 木志乃子松二 三雪落来

[訓読]

あしひきの山かも高き巻向の崖の小松にみ雪降りくる

[仮名]

あしひきの やまかもたかき まきむくの きしのこまつに みゆきふりくる

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冬雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 地名 叙景

2314

[題詞]

[原文]

巻向之 桧原毛未 雲居者 子松之末由 沫雪流

[訓読]

巻向の桧原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る

[仮名]

まきむくの ひはらもいまだ くもゐねば こまつがうれゆ あわゆきながる

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冬雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 地名 叙景

2315

[題詞]

[原文]

足引 山道不知 白<み><む> 枝母等乎々尓 雪落者 [或云 枝毛多和々々]

[訓読]

あしひきの山道も知らず白橿の枝もとををに雪の降れれば [或云 枝もたわたわ]

[仮名]

あしひきの やまぢもしらず しらかしの えだもとををに ゆきのふれれば [えだもたわたわ]

[注解]

歌 [西] 謌 / 杜→み [万葉集略解] / 材 [西(右書)]→む [万葉集略解] / <> →件 [元][紀]

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冬雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 叙景

2316

[題詞]

詠雪

[原文]

奈良山乃 峯尚霧合 宇倍志社 前垣之下乃 雪者不消家礼

[訓読]

奈良山の嶺なほ霧らふうべしこそ籬が下の雪は消ずけれ

[仮名]

ならやまの みねなほきらふ うべしこそ まがきがしたの ゆきはけずけれ

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冬雑歌 奈良 地名 季節

2317

[題詞]

詠雪

[原文]

殊落者 袖副沾而 可通 将落雪之 空尓消二管

[訓読]

こと降らば袖さへ濡れて通るべく降りなむ雪の空に消につつ

[仮名]

ことふらば そでさへぬれて とほるべく ふりなむゆきの そらにけにつつ

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冬雑歌

2318

[題詞]

詠雪

[原文]

夜乎寒三 朝戸乎開 出見者 庭毛薄太良尓 三雪落有 [一云 庭裳保杼呂尓 雪曽零而有]

[訓読]

夜を寒み朝門を開き出で見れば庭もはだらにみ雪降りたり [一云 庭もほどろに 雪ぞ降りたる]

[仮名]

よをさむみ あさとをひらき いでみれば にはもはだらに みゆきふりたり [にはもほどろに ゆきぞふりたる]

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冬雑歌 属目

2319

[題詞]

詠雪

[原文]

暮去者 衣袖寒之 高松之 山木毎 雪曽零有

[訓読]

夕されば衣手寒し高松の山の木ごとに雪ぞ降りたる

[仮名]

ゆふされば ころもでさむし たかまつの やまのきごとに ゆきぞふりたる

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冬雑歌 高円 奈良 地名 叙景

2320

[題詞]

詠雪

[原文]

吾袖尓 零鶴雪毛 流去而 妹之手本 伊行觸<粳>

[訓読]

我が袖に降りつる雪も流れ行きて妹が手本にい行き触れぬか

[仮名]

わがそでに ふりつるゆきも ながれゆきて いもがたもとに いゆきふれぬか

[注解]

糠→粳 [元][類]

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冬雑歌 恋愛

2321

[題詞]

詠雪

[原文]

沫雪者 今日者莫零 白妙之 袖纒将干 人毛不有<君>

[訓読]

淡雪は今日はな降りそ白栲の袖まき干さむ人もあらなくに

[仮名]

あわゆきは けふはなふりそ しろたへの そでまきほさむ ひともあらなくに

[注解]

悪→君 [類][紀]

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冬雑歌 恋愛

2322

[題詞]

詠雪

[原文]

甚多毛 不零雪故 言多毛 天三空者 <陰>相管

[訓読]

はなはだも降らぬ雪ゆゑこちたくも天つみ空は雲らひにつつ

[仮名]

はなはだも ふらぬゆきゆゑ こちたくも あまつみそらは くもらひにつつ

[注解]

隠→陰 [元][類][紀]

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冬雑歌 叙景

2323

[題詞]

詠雪

[原文]

吾背子乎 且今々々 出見者 沫雪零有 庭毛保杼呂尓

[訓読]

我が背子を今か今かと出で見れば淡雪降れり庭もほどろに

[仮名]

わがせこを いまかいまかと いでみれば あわゆきふれり にはもほどろに

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冬雑歌 属目 恋愛

2324

[題詞]

詠雪

[原文]

足引 山尓白者 我屋戸尓 昨日暮 零之雪疑意

[訓読]

あしひきの山に白きは我が宿に昨日の夕降りし雪かも

[仮名]

あしひきの やまにしろきは わがやどに きのふのゆふへ ふりしゆきかも

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冬雑歌 叙景

2325

[題詞]

詠花

[原文]

誰苑之 梅花毛 久堅之 消月夜尓 幾許散来

[訓読]

誰が園の梅の花ぞもひさかたの清き月夜にここだ散りくる

[仮名]

たがそのの うめのはなぞも ひさかたの きよきつくよに ここだちりくる

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冬雑歌 属目 植物

2326

[題詞]

詠花

[原文]

梅花 先開枝<乎> 手折而者 L常名付而 与副手六香聞

[訓読]

梅の花まづ咲く枝を手折りてばつとと名付けてよそへてむかも

[仮名]

うめのはな まづさくえだを たをりてば つととなづけて よそへてむかも

[注解]

<>→乎 [元][類][紀]

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冬雑歌 植物 比喩

2327

[題詞]

詠花

[原文]

誰苑之 梅尓可有家武 幾許毛 開有可毛 見我欲左右手二

[訓読]

誰が園の梅にかありけむここだくも咲きてあるかも見が欲しまでに

[仮名]

たがそのの うめにかありけむ ここだくも さきてあるかも みがほしまでに

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冬雑歌 比喩 植物

2328

[題詞]

詠花

[原文]

来可視 人毛不有尓 吾家有 梅<之>早花 落十方吉

[訓読]

来て見べき人もあらなくに我家なる梅の初花散りぬともよし

[仮名]

きてみべき ひともあらなくに わぎへなる うめのはつはな ちりぬともよし

[注解]

<>→之 [元][類][紀]

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冬雑歌 植物

2329

[題詞]

詠花

[原文]

雪寒三 咲者不開 梅花 縦比来者 然而毛有金

[訓読]

雪寒み咲きには咲かぬ梅の花よしこのころはかくてもあるがね

[仮名]

ゆきさむみ さきにはさかぬ うめのはな よしこのころは かくてもあるがね

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冬雑歌 植物

2330

[題詞]

詠露

[原文]

為妹 末枝梅乎 手折登波 下枝之露尓 沾<尓>家類可聞

[訓読]

妹がためほつ枝の梅を手折るとは下枝の露に濡れにけるかも

[仮名]

いもがため ほつえのうめを たをるとは しづえのつゆに ぬれにけるかも

[注解]

<>→尓 [元][類]

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冬雑歌 植物

2331

[題詞]

詠黄葉

[原文]

八田乃野之 淺茅色付 有乳山 峯之沫雪 <寒>零良之

[訓読]

八田の野の浅茅色づく有乳山嶺の淡雪寒く散るらし

[仮名]

やたののの あさぢいろづく あらちやま みねのあわゆき さむくちるらし

[注解]

<>→寒 [西(右書)][元][類][紀][細]

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冬雑歌 奈良 福井 地名 叙景

2332

[題詞]

詠月

[原文]

左夜深者 出来牟月乎 高山之 峯白雲 将隠鴨

[訓読]

さ夜更けば出で来む月を高山の嶺の白雲隠すらむかも

[仮名]

さよふけば いでこむつきを たかやまの みねのしらくも かくすらむかも

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冬雑歌

~ 冬相聞 ~

2333

[題詞]

[原文]

零雪 虚空可消 雖戀 相依無 月經在

[訓読]

降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける

[仮名]

ふるゆきの そらにけぬべく こふれども あふよしなしに つきぞへにける

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冬相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情

2334

[題詞]

[原文]

<阿和>雪 千<重>零敷 戀為来 食永我 見偲

[訓読]

沫雪は千重に降りしけ恋ひしくの日長き我れは見つつ偲はむ

[仮名]

あわゆきは ちへにふりしけ こひしくの けながきわれは みつつしのはむ

[注解]

沫→阿和 [元][類][紀][温] / 里→重 [元] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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冬相聞 作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情

2335

[題詞]

寄露

[原文]

咲出照 梅之下枝<尓> 置露之 可消於妹 戀頃者

[訓読]

咲き出照る梅の下枝に置く露の消ぬべく妹に恋ふるこのころ

[仮名]

さきでてる うめのしづえに おくつゆの けぬべくいもに こふるこのころ

[注解]

<>→尓 [元][類][紀]

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冬相聞 植物 恋情

2336

[題詞]

寄霜

[原文]

甚毛 夜深勿行 道邊之 湯小竹之於尓 霜降夜焉

[訓読]

はなはだも夜更けてな行き道の辺の斎笹の上に霜の降る夜を

[仮名]

はなはだも よふけてなゆき みちのへの ゆささのうへに しものふるよを

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冬相聞 植物 逢会

2337

[題詞]

寄雪

[原文]

小竹葉尓 薄太礼零覆 消名羽鴨 将忘云者 益所念

[訓読]

笹の葉にはだれ降り覆ひ消なばかも忘れむと言へばまして思ほゆ

[仮名]

ささのはに はだれふりおほひ けなばかも わすれむといへば ましておもほゆ

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冬相聞 植物 恋情

2338

[題詞]

寄雪

[原文]

霰落 板敢風吹 寒夜也 旗野尓今夜 吾獨寐牟

[訓読]

霰降りいたく風吹き寒き夜や旗野に今夜我が独り寝む

[仮名]

あられふり いたもかぜふき さむきよや はたのにこよひ わがひとりねむ

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冬相聞 奈良 飛鳥 地名 孤独 恋情

2339

[題詞]

寄雪

[原文]

吉名張乃 野木尓零覆 白雪乃 市白霜 将戀吾鴨

[訓読]

吉隠の野木に降り覆ふ白雪のいちしろくしも恋ひむ我れかも

[仮名]

よなばりの のぎにふりおほふ しらゆきの いちしろくしも こひむあれかも

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冬相聞 桜井 地名 恋情 序詞

2340

[題詞]

寄雪

[原文]

一眼見之 人尓戀良久 天霧之 零来雪之 可消所念

[訓読]

一目見し人に恋ふらく天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ

[仮名]

ひとめみし ひとにこふらく あまぎらし ふりくるゆきの けぬべくおもほゆ

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冬相聞 恋情

2341

[題詞]

寄雪

[原文]

思出 時者為便無 豊國之 木綿山雪之 可消<所>念

[訓読]

思ひ出づる時はすべなみ豊国の由布山雪の消ぬべく思ほゆ

[仮名]

おもひいづる ときはすべなみ とよくにの ゆふやまゆきの けぬべくおもほゆ

[注解]

可→所 [西(右書)][元][類][紀]

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冬相聞 大分 地名 懐旧 恋情 序詞

2342

[題詞]

寄雪

[原文]

如夢 君乎相見而 天霧之 落来雪之 可消所念

[訓読]

夢のごと君を相見て天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ

[仮名]

いめのごと きみをあひみて あまぎらし ふりくるゆきの けぬべくおもほゆ

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冬相聞 恋情 序詞

2343

[題詞]

寄雪

[原文]

吾背子之 言愛美 出去者 裳引将知 雪勿零

[訓読]

我が背子が言うるはしみ出でて行かば裳引きしるけむ雪な降りそね

[仮名]

わがせこが ことうるはしみ いでてゆかば もびきしるけむ ゆきなふりそね

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冬相聞 逢会

2344

[題詞]

寄雪

[原文]

梅花 其跡毛不所見 零雪之 市白兼名 間使遣者 [一云 零雪尓 間使遣者 其将知<奈>]

[訓読]

梅の花それとも見えず降る雪のいちしろけむな間使遣らば [一云 降る雪に間使遣らばそれと知らなむ]

[仮名]

うめのはな それともみえず ふるゆきの いちしろけむな まつかひやらば [ふるゆきに まつかひやらば それとしらなむ]

[注解]

名→奈 [元][類][紀]

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冬相聞 植物 序詞

2345

[題詞]

寄雪

[原文]

天霧相 零来雪之 消友 於君合常 流經度

[訓読]

天霧らひ降りくる雪の消なめども君に逢はむとながらへわたる

[仮名]

あまぎらひ ふりくるゆきの けなめども きみにあはむと ながらへわたる

[検索用キーワード]

冬相聞 恋情

2346

[題詞]

寄雪

[原文]

窺良布 跡見山雪之 灼然 戀者妹名 人将知可聞

[訓読]

うかねらふ跡見山雪のいちしろく恋ひば妹が名人知らむかも

[仮名]

うかねらふ とみやまゆきの いちしろく こひばいもがな ひとしらむかも

[検索用キーワード]

冬相聞 桜井 地名 恋情

2347

[題詞]

寄雪

[原文]

海小船 泊瀬乃山尓 落雪之 消長戀師 君之音曽為流

[訓読]

海人小舟泊瀬の山に降る雪の日長く恋ひし君が音ぞする

[仮名]

あまをぶね はつせのやまに ふるゆきの けながくこひし きみがおとぞする

[検索用キーワード]

冬相聞 桜井 地名 恋情

2348

[題詞]

寄雪

[原文]

和射美能 嶺徃過而 零雪乃 Q毛無跡 白其兒尓

[訓読]

和射見の嶺行き過ぎて降る雪のいとひもなしと申せその子に

[仮名]

わざみの みねゆきすぎて ふるゆきの いとひもなしと まをせそのこに

[検索用キーワード]

冬相聞 岐阜県 関ヶ原 地名

2349

[題詞]

寄花

[原文]

吾屋戸尓 開有梅乎 月夜好美 夕々令見 君乎祚待也

[訓読]

我が宿に咲きたる梅を月夜よみ宵々見せむ君をこそ待て

[仮名]

わがやどに さきたるうめを つくよよみ よひよひみせむ きみをこそまて

[検索用キーワード]

冬相聞 植物

2350

[題詞]

寄夜

[原文]

足桧木乃 山下風波 雖不吹 君無夕者 豫寒毛

[訓読]

あしひきの山のあらしは吹かねども君なき宵はかねて寒しも

[仮名]

あしひきの やまのあらしは ふかねども きみなきよひは かねてさむしも

[検索用キーワード]

冬相聞 恋情